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'''日本語の起源'''(にほんごのきげん)は、現在[[日本語]]([[日本語族]])として同定される言語体系の起源のことで、[[言語学]]上の論点のひとつである。言語学では'''日本語系統論'''とも言う。
 
 
 
== 概要 ==
 
日本語<ref>琉球の言葉を方言として日本語に含む場合</ref>は、系統関係の不明な[[孤立した言語]]<ref>琉球語を別言語とし、日本語とともに[[日本語族]]を成すとする立場では、日本語族は、一般的な語族のうちの一つに過ぎない</ref>のひとつであり、他の言語との系統関係が未だ明らかになっていない<ref>[[松本克己]]『世界言語のなかの日本語』三省堂2007</ref>。
 
 
 
[[琉球列島]]の[[琉球語]](琉球方言、あるいは琉球語派・琉球諸語)と、日本語(本土方言、あるいは日本語派)との系統関係は明らかである。国際的には、両者を別言語とみなし、合わせて[[日本語族]]を形成するという立場が一般的であるが、日本語の起源論では、琉球語と日本語の系統関係は証明済みとし、「日本語の起源」という言葉で「日本語+琉球語」全体(日本語族)の起源を論ずることが一般的である。なお、日本語と琉球語で[[日本語族]]とする説と、琉球語を日本語の琉球方言とする説とは、日本語の起源論においては単なる言葉の定義の異同の問題であり、本質的な争点とはならない。
 
 
 
これまでにいくつかの系統関係に関する理論仮説は出されてきたものの、総意を得たものは無い<ref name="E">亀井 孝 他 [編] (1963)『日本語の歴史1 民族のことばの誕生』(平凡社)。</ref><ref>大野 晋・柴田 武 [編] (1978)『岩波講座 日本語 第12巻 日本語の系統と歴史』(岩波書店)。</ref>。これまでの理論仮説で、類縁関係が強いと主張された言語系統には、以下のものがある。
 
 
 
;[[朝鮮語]]との関係
 
:[[朝鮮語]]とは文法構造における類似性が高いが、基礎語彙については一部単語の類似性が指摘されているものの偶然の一致の範囲を出るものとは言い難く、また古い時代における借用の可能性もある。音韻の面では、固有語において語頭に[[流音]]が立たないこと、一種の母音調和があることなど、アルタイ諸語と共通点がある一方で、閉音節であること、子音連結の存在、有声・無声の区別が無いなどの相違点もある。
 
;[[高句麗語]]・[[扶余諸語]]との系統関係
 
:[[死語 (言語学)|死語]]である[[高句麗語]]とは、数詞など似る語彙もあるという説<ref>新村 出 (1916)「国語及び朝鮮語の数詞に就いて」『芸文』7-2・4(1971年の『新村出全集 第1巻』(筑摩書房)に収録)。</ref>。ただし高句麗語の実態はほとんど分かっていない。高句麗語は[[扶余諸語]]の一つであることから、扶余諸語との関係との見方もある。
 
;[[アルタイ諸語|アルタイ語族]]説
 
:アルタイ語族仮説では、日本語、朝鮮語は共にアルタイ語族の一員とする。朝鮮語との関係と同様に、文法構造での高い類似性、音韻面での部分的類似性がある一方で、基礎語彙については同系統とするに足るだけの類似性は見出されていない。
 
;[[オーストロネシア語族]]との関係
 
:オーストロネシア系言語は、文法・形態は日本語と異なるが、音韻については発音体系が比較的単純で開音節であるなど日本語と似ており、基礎語彙についても一部類似性が指摘されている。また、日本語をオーストロネシア系言語とアルタイ系言語との混合言語だとする説もある。しかし、近年の研究ではオーストロネシア系言語は古くは閉音節だったとされ、また語彙の類似性についても偶然の一致の範囲を出るものとは言い難い。
 
;[[ドラヴィダ語族]]との関係
 
:インドの[[ドラヴィダ語族]]、とりわけその1つである[[タミル語]]との関連を提唱する説。
 
;[[アイヌ語]]との系統関係
 
:[[アイヌ語]]は語順(SOV語順)において日本語と似るものの、文法・形態は類型論的に異なる[[抱合語]]に属し、音韻構造も有声・無声の区別はなく[[音節|閉音節]]が多い、などの相違がある。基礎語彙の類似に関する指摘<ref name="R">服部 四郎 (1959)『日本語の系統』(岩波書店、1999年に岩波文庫)。</ref>もあるが、例は不十分である。一般に似ているとされる語の中には、日本語からアイヌ語への[[外来語|借用語]]が多く含まれるとみられる<ref>中川 裕 (2005)「アイヌ語にくわわった日本語」『国文学 解釈と鑑賞』70-1。</ref>。総じて、目下、系統的関連性を示す材料は乏しい。一部では、[[古事記]]や[[風土記]]のような口伝による伝承がアイヌ語で解釈可能であることから、縄文時代の日本語がアイヌ語と同系統の言語であるとする意見もある<ref>大山 元 (2002)『古代史料に見る縄文伝承』(きこ書房)</ref>。
 
;[[中国語]](古典中国語)との関係
 
:日本は中国を中心とした[[漢字文化圏]]に属しており、[[中国語]](古典中国語)は、古来、[[漢字]]・[[漢語]]を通じて日本語の表記や、語彙・形態素に強い影響を与え、拗音等の音韻面での影響や、書面語における古典中国語の文法・語法の模倣を通じた文法・語法・文体の影響も見られたが、言語学的には系統的関連性は認められない。
 
 
 
== 方法に関する問題 ==
 
日本語の起源・系統関係を分析するにあたって、様々なアプローチがある。
 
 
 
===言語学の諸分野によるもの===
 
==== 日本語学・国語学 ====
 
日本語の起源に関する議論は、[[新井白石]]『東雅』や[[本居宣長]]らの研究を嚆矢とするが、それ以前にも言語学的な研究は行なわれていた。しかし意識的に「起源」つまり「日本語」の総体を歴史的に分析していこうとしたのはとりわけ本居宣長らの[[国学]]派であった。以来、今日に至る「[[国語学]]」も江戸以来の膨大な研究蓄積を基礎にしている。西欧の[[比較言語学]]が輸入されてからは相互に批判・対立もあったが、近年は双方の方法を折衷しながら、いまだ決着の着かない「日本語」の由来について研究が進んでいる。
 
 
 
==== 比較言語学 ====
 
[[日本語]]の起源を解明するための方法の一つとして、[[比較言語学]]が用いられる。[[比較言語学]]は歴史言語学のうち[[印欧語族]]の起源を明らかにするなかで発展してきたものである。主な手法は、「[[祖語]]」を仮説的に想定し、それに沿って言語変化の規則を比較・対照することによって言語間の系統関係を導き出すという方法である。文献資料のない[[オーストロネシア語族]]に適用しても数多くの業績が出ているので、8世紀頃までのものしか文献資料が見つかっていない日本語にも、ある程度は適用可能とされてきた。
 
しかし、例えば比較言語学者[[高津春繁]]も、[[セム・ハム語族]]の研究においてすら、印欧語族の比較方法をそのまま用いることは無理であるとしている<ref>高津春繁『比較言語学入門』(岩波文庫・[[1992年]])p.9</ref>。
 
 
 
==== 言語類型論 ====
 
しかしながら[[印欧語族]]の系統樹と東アジア諸言語の系統樹とは当然異なるものであり、近年は比較言語学の通時主義を包摂する形で地理的背景にも配慮する[[言語類型論]]などの観点からも研究が行なわれている<ref>[[松本克己]]『世界言語のなかの日本語』三省堂2007</ref>。
 
 
 
===その他の関連分野によるもの===
 
==== 比較神話学 ====
 
比較言語学と連携して進められた[[比較神話学]]の方法も[[大林太良]]や[[吉田敦彦]]らによって進められてきた。比較神話学は基本的には[[神話]]や[[説話]]の構造や特性を比較分析するものであるが、要素の単位をどこまで限定できるかという問題がある。構造神話学者[[クロード・レヴィ=ストロース]]は言語学の[[音素]]概念に影響された「{{仮リンク|神話素|en|Mytheme}}」概念を創造し使用しているが、分析概念としての有効性は未確定である。しかしながら参考となる知見も当然あり、比較神話学的分析によれば日本神話は北方民族(北東ユーラシア)と南方民族(東南アジア、太平洋諸島ポリネシア等)との混合とされ、日本語の起源に関する言語学的研究の成果との対応がみられる。
 
 
 
==== 考古学・民俗学 ====
 
より新しい時代に起源を求める場合には、考古学的遺物・遺構や習俗の類似も日本語の起源の傍証となる場合がある。[[大野晋]]などの主張によれば、言語と文化は一致するものではないにせよ、完全に無関係のものとして分けきれないものである。
 
 
 
==== 分子人類学 ====
 
{{main|日本人#分子人類学による説明}}
 
日本語の担い手である日本人の人類学的ルーツを探ることで、日本語の起源を探ろうとするアプローチである。この分野は学術的な調査が進行している状況であり、学会の統一された見解は存在しない。<!--例えば[[崎谷満]]は、[[Y染色体ハプログループ]]の分布からすると、日本語の母体は[[ハプログループD-M64.1 (Y染色体)|D1b系統]]の縄文人が話していた言語だと主張している。母系にしか遺伝しない[[ミトコンドリアDNAハプログループ]]においても、[[篠田謙一]]は「日本には世界で日本人にしか見られない[[ハプログループM7a (mtDNA)|M7a]]というグループがある」と主張している<ref>篠田謙一『日本人になった祖先たち』2007年、日本放送出版協会:P111-113</ref>。篠田はこのグループは陸化していた[[黄海]]から[[東シナ海]]付近で発生したと推定している。このため、M7a を原日本人と仮定するならば、オーストロネシア語との関係の可能性もうかがえることになる。しかし、このような説に対し先述の崎谷満は、M7a は日本列島に固有のものではなくそのホームランドはシベリア南部からロシア極東あたりと予想され、台湾から北上して日本列島へ入ったものではないとし<ref>崎谷満『新日本人の起源』2009年、勉誠出版:P45</ref>、議論が紛糾している。-->このアプローチによる主張は、言語学的手法に沿ってなされているわけではなく、遺伝子における共通性から文化や言語などにおいて類似性も見られるグループは存在している可能性があるのではないか、という事を示唆するものである。
 
 
 
== これまでに唱えられた主要な学説 ==
 
以下、これまでに言語学的見地から唱えられた主要な説について解説する。
 
 
 
=== アルタイ語族説 ===
 
日本語をアルタイ系言語、[[アルタイ諸語]]の一つとする説。ただし[[アルタイ語族]]説の基盤を築いた[[グスターフ・ラムステッド]]や[[エフゲニー・ポリワーノフ]]、 [[ニコラス・ポッペ]]ら自身もこの仮説があくまで仮説にすぎないことを強調していた。この説の基礎理論的な課題は、[[ツングース諸語]]、[[朝鮮語]]([[古代朝鮮語]])の[[内的再構]]がどの程度まで可能かである。<!--アルタイ語は[[テュルク諸語]]の一つでもあり、テュルク諸語との関連性も意味する。←いわゆる「アルタイ諸語」は、アルタイ山脈に由来するものであり、本来の「アルタイ語」との関連性は薄いです。この段落には不要の記述でしょう。-->
 
 
 
[[アルタイ諸語]]に属するとする説は、[[明治|明治時代]]末から特に注目されてきた<ref>[[藤岡勝二]] (1908)「日本語の位置」『國學院雑誌』14。</ref>。その根拠として、古代の日本語([[大和言葉]])において語頭にr音が立たないこと、一種の[[母音調和]]<ref name="G">有坂 秀世 (1931)「国語にあらはれる一種の母音交替について」『音声の研究』第4輯(1957年の『国語音韻史の研究 増補新版』(三省堂)に収録)。</ref>がみられることなどが挙げられる。ただし、アルタイ諸語に属するとされるそれぞれの言語自体、互いの親族関係が証明されているわけではなく<ref>北村 甫 [編] (1981)『講座言語 第6巻 世界の言語』(大修館書店)p.121。</ref>、したがって、古代日本語に上記の特徴がみられることは、日本語が類型として「アルタイ型」の言語である<ref>亀井 孝・河野 六郎・千野 栄一 [編] (1996)『言語学大辞典6 術語編』(三省堂)の「アルタイ型」。</ref>という以上の意味をもたない。またかつて[[ウラル・アルタイ語族]]という分類がなされていた時代には、それと日本語をつなげる見方もあったが、これもその後、ウラル・アルタイ語族という分類自体が無いとする考えが支持されている。
 
 
 
[[ロイ・アンドリュー・ミラー]]『日本語』(1967)『日本語とアルタイ諸語』(1971)と <ref>Roy Andrew Miller: [[ロイ・アンドリュー・ミラー]]『日本語 歴史と構造』[[小黒昌一]]訳、三省堂、1972年(原著は1967年)。R. A. ミラー『日本語とアルタイ諸語』西田龍雄監訳、近藤達生、庄垣内正弘、橋本勝、樋口康一共訳、大修館書店、1981(原著は1971年)</ref> は、[[サミュエル・マーティン]]の日本・朝鮮共通祖語を元に、[[モンゴル語]]、[[テュルク諸語]]、[[ツングース語]]の語形も参照しながら分析を展開している。他には、カール・H・メンゲス『日本語とアルタイ語』<ref>R. A. ミラー『日本語とアルタイ諸語』前掲書、1981,p.x</ref>やロシアの[[セルゲイ・スタロスティン]]、辞典では"Etymological Dictionary of the Altaic Languages"<ref>3 vols.(Brill,2003)</ref>などがある。日本においては[[服部四郎]]、[[野村正良]]、[[池上二良]]等がいる。彼らは日本語の系統問題には慎重ではあったが、日本語をアルタイ系の言語とする仮説に沿って研究を進めていた。また南島([[オーストロネシア語族|オーストロネシア]])語研究で知られる[[泉井久之助]]も、日本語の系統はアルタイ系とみなしていた。
 
 
 
しかしながら研究者間で意見の一致が見られる比較例は、全般的な[[統語論]]的特徴([[言語類型論|タイポロジー]])、いくつかの[[音韻論]]的要素、人称・指示代名詞システム、[[動詞]]や[[形容詞]]の[[活用形]]の一部、[[助詞]]の一部、高々数十の語彙などにとどまっており、いまだ日本語=アルタイ語族説は十分に実証されていない。ポッペの[[アルタイ祖語]]の音韻の再構についても批判的に検討され、アルタイ仮説は破綻したと見る研究者もいる{{要出典|date=2009年9月}}
 
 
 
現在は、より包括的な[[大語族]]または超語族という概念で分類を再考している流れもある(マクロアルタイ説・[[ユーラシア大語族]]説・[[ノストラティック大語族]]説など)。しかしこの包括理論によって日本語の系統の解明が進む可能性は低いとされている。これに対してツングース諸語・満州語・日本語・朝鮮語に対象領域を縮小し比較の精度を上げる研究の流れもある(米国の[[アレキサンダー・ボビン|A. ボビン]]〈[[2003年]]〉)。
 
 
 
=== 朝鮮語同系説 ===
 
朝鮮語と日本語の関係についての議論は、日本では江戸時代に遡る古い歴史がある。[[儒学]]者の[[新井白石]]は、「[[東雅]]」([[1717年]])において、[[百済]]語の「熊」=クマ、「海」=ホタイを日本語と比べた。後に[[ウィリアム・ジョージ・アストン]]([[1879年]])や[[白鳥庫吉]]([[1897年]])などにより、語彙を中心とした比較が行われた。[[比較言語学]]の手法に基づく初めての本格的な研究は、[[金沢庄三郎]]『日韓両国語同系論』([[1910年]])である。なお金沢の著作は「日鮮同祖論」(1929年)をはじめ大日本帝国時代に朝鮮半島政策の正当性を証明する根拠としてひろく引用されたため、戦後は糾弾の対象として嫌悪され、忘却されたが、金沢自身はあくまで学術的な関心として研究し、政治的意図を持っていなかった。
 
 
 
[[サミュエル・マーティン]]は両言語の音対応の法則性から日本・朝鮮共通祖語を再構し、この音対応法則は後にミラーや[[ジョン・ホイットマン (言語学者)|ジョン・ホイットマン]]らによって大きく改良された。ただし、再構に2言語だけを使用したこと、対応しない語彙が多すぎること、対応するとされる語彙が借用である可能性があることなどの問題がある。一方で、A. ボビン(2003年)のように、日本語と朝鮮語間でいくつかの[[文法]]的要素が一致する事を根拠に、系統的に同一のものと主張される場合もある。ほか、研究としては宋敏『韓国語と日本語のあいだ』(草風館、1999年)がある。
 
 
 
===扶余語・高句麗語・百済語同系説===
 
==== 高句麗語同系説 ====
 
{{関連記事|高句麗語#日本語との関係}}
 
朝鮮の歴史書「[[三国史記]]」に記された[[高句麗]]の故地名の音訓併用表記から推測される、いわゆる「[[高句麗語]]」が、日本語と組織的に顕著な類似性を示す事を初めて指摘したのは、[[新村出]]である([[1916年]])。新村は、「三」「五」「七」「十」の4つの[[数詞]]が日本語と類似することなどを指摘したが、日本語アルタイ起源説と関連させてこの類似を更に深く追究したのは、{{仮リンク|李基文|ko|이기문 (언어학자)|label=李基文(イ・ギムン)}}([[1961年]]-[[1967年]])、[[村山七郎]](1961-[[1963年]])である。最新の論考には[[板橋義三]]のものがある(2003年)が、どのような語彙を抽出し、どのような[[音価]]を当てるかは論者によって異なる。更に、抽出された語彙の解釈については大きな見解の相違がある。例えば、[[金芳漢]]([[1985年]])は、語彙数を80語とし、ツングース系と解釈されるものは10数語を超えないとするのに対し、板橋は111語を抽出してツングース系語彙は21語とする。また、マズール<ref>ジャリガシノヴァ「朝鮮民族の形成における北方系・南方系要素の相互関係」『古代の朝鮮と日本』現代のエスプリ、至文堂1976年。また大林太良『邪馬台国』中公新書、1977、122頁。</ref>や村山七郎の説([[1979年]])を継承してオーストロネシア起源の語彙が含まれるとする。
 
 
 
いずれにしても、数詞に加え、「口(古次)」「海(波且)」「深(伏)」「白(尸臘)」「兎(烏斯含)」「猪(烏)」「谷(旦)」などの類似は印象的であり、更に興味深いのは、[[中期朝鮮語]]よりも[[上代日本語]]との方が、類似語が見出される割合が大きい(板橋によれば30%と42%)事である。
 
 
 
ただし[[古代朝鮮]]半島から旧南満州における言語分布状況がどのようなものだったかは不明な点が多い。そもそも再構された「高句麗語」が、本当に高句麗の言語だったかについても疑問がある。「[[三国志 (歴史書)|魏志東夷伝]]」や「[[後漢書]]」などから推測すると、[[3世紀]]後半に鴨緑江以北を本拠地としていた[[夫余]]・高句麗の言語がツングース系だった可能性は高いが(村山説: 1979年)、肝心の朝鮮半島北部から中部にかけて、3世紀当時どのような言語が分布していたかについては、「[[三国志 (歴史書)|魏志東夷伝]]」などの「[[正史#中国の正史|中国史書]]」には全く言及がないのである(金芳漢: 1985年)。
 
「高句麗語」と日本語との系統関係についてもいまだ十分に実証されていない。
 
 
 
==== 百済語起源説 ====
 
近年において、韓国の[[金容雲]]らによって日本語は[[百済語]]が起源であるという説が提唱されている。ただし百済語は高句麗語以上に実態不明であり、根拠薄弱という批判がある。
 
 
 
====扶余諸語起源説====
 
朝鮮半島の国家、{{疑問点範囲|百済は高句麗の[[王族]]によって建てられ|date=2017年6月}}、その[[先祖]]は[[夫余|扶余]]に遡ると考えられている。百済は後に、[[大和時代]]の日本と密接な関係を持つようになり、{{仮リンク|クリストファー・I. ベックウィズ|en|Christopher_I._Beckwith}}は、この時点の[[日本語]]には、まだ[[扶余語]]との関連性が認められると指摘する。ベックウィズは、古代の[[地名]]から140の高句麗語の単語を再構築した
 
<ref>Christopher Beckwith, 2004. [http://books.google.ca/books?id=FgaUF46o1UQC&printsec=frontcover&dq=Christopher+Beckwith&ei=l67MS6L1JoqIzASc3-2VCA&cd=1#v=onepage&q&f=false ''Koguryo, the language of Japan's continental relatives'']</ref>。この中には、[[属格]]「''-の''」や[[形容詞]][[連体形]]「''-し''」のように、日本語と機能が類似し同一起源と見なせる文法的[[形態素]]が多く含まれる。
 
 
 
=== オーストロネシア語族説 ===
 
[[オーストロネシア語族]]が[[日本祖語]]を形成した言語のひとつだったとする説。現在、主流な説は、日本語がアルタイ系言語と南島語の混合語起源とするものであるが、「混合」の定義・プロセスについては、論者の間で見解の相違がある。日本人の民族学人類学的な特徴が混合的なものであることは、古くから指摘されてきた所であるが、言語学者の間では日本語アルタイ起源説が19世紀以来、定説とみなされてきた。
 
 
 
==== 国語学の観点 ====
 
日本語と南方系言語との関係は、昭和中期までは、主に国語学者によって論じられた。[[新村出]]は、日本語と南方系言語との関係を論じ、「ウルチ(粳)」を[[インドネシア語]]の「ブラス」と比較した([[1930年]])。この時期の先駆者として、[[北里闌]]<ref>1935: [[細菌学]]者の[[北里柴三郎]]の従兄弟</ref>や[[奥寺将健]]<ref>[[1943年]]: 国語学者</ref>がいる。また昭和30年代には、日本語学者の[[大野晋]]が、日本語の母音の終わりの[[音韻構造]]をポリネシア語起源とし、身体語彙にインドネシア語と類似するものが多いと主張した([[1957年]])。
 
 
 
==== オーストロネシア比較言語学の観点 ====
 
オーストロネシア比較言語学は、[[1938年]]、ドイツの[[オットー・デンプヴォルフ]]によって基礎が確立された。祖語が再構されたことにより、古代日本語と南島諸語の比較を行う前提条件が整い、音韻体系や語彙に関する類似が指摘された。しかし、いまだ系統関係は実証されたとはいいがたく、逆に従来指摘されていた類似性が必ずしも成り立たないことも判明してきた。例えば上記の「(粳)ウルチ」の例では、現代インドネシア語で「粳」は「ブラス」に類似した発音であるが、祖語に遡れば、むしろ「ブハス」に近い発音であった。また[[ポリネシア諸語]]の母音終わりの特徴も、子音終わりを許す祖形からの発展である事が証明された。
 
 
 
再構された南島祖語と[[上代日本語]]の比較を初めて組織的に行ったのは、言語学者の[[泉井久之助]]<ref>泉井 久之助 (1952)「日本語と南島諸語」『民族学研究』17-2(1975年の『マライ=ポリネシア諸語 比較と系統』(弘文堂)に収録)。</ref>である。泉井は約50語を取り上げて音韻対応則の検討を行ったが、日本語と南島語の系統的な関係については懐疑的であり、両者間の類似語の存在は借用によるとみなした。
 
 
 
日本語と南島諸語が系統関係にある可能性を指摘したのは、ロシアの言語学者、[[エフゲニー・ポリワーノフ|E. ポリワーノフ]]である。ポリワーノフは、日本語の接頭辞が南島諸語起源と考えられる事、日本語のピッチ(高低)アクセントや、重複形による強調表現などが[[フィリピン]]の[[タガログ語]]や[[メラネシア語]]と類似している事などを指摘し、日本語が南島諸語と系統的な関係にあることの証明を試みた<ref>[[1915年]]-[[1925年]]の研究</ref><ref>1938年、奇しくも南島比較言語学の誕生の年に、スターリン粛清の犠牲者の一人として獄中死した。</ref>。
 
 
 
また、オーストロ・タイ語の研究で世界的に知られる[[ポール・K・ベネディクト]]は、晩年に日本語とオーストロネシア語を同系とする論を発表した<ref>{{cite journal|和書|author=ポール K. ベネディクト|title=突破口:東南アジアの言語から日本語へ : 日の神の民の起源|year=1985|translator=西義郎|journal=アジア・アフリカ語の計数研究|issue=25}}</ref><ref>{{cite book|author=Benedict, Paul K|title=Japanese/Austro-Tai|year=1990|series=Linguistica Extranea. Studia|volume=20|publisher=Karoma Pub|isbn=0897200780}}</ref>。
 
 
 
===アイヌ語起源説===
 
[[片山龍峯]]は、日本語とアイヌ語の語彙には共通の語根があるとし、日本語の活用形の起源もアイヌ語で説明できるとした<ref>片山龍峯 (2004)『日本語とアイヌ語(新装版)』,東京:すずさわ書店</ref>。また、民族学者の[[梅原猛]]などは日本語の基層にアイヌ語の存在を想定している。
 
 
 
=== ドラヴィダ語族・タミル語説 ===
 
日本語と[[ドラヴィダ語族]]との関係を主張する説もあり、とりわけ[[大野晋]]による、ドラヴィダ語族のひとつのタミル語との対応関係研究があるが、批判も多く、学説としては定着していない。ドラヴィダ語族との対応関係については、文法構造が膠着語であること、そして語彙の対応があることを[[芝烝]]や藤原明、[[江実]]らが提起した<ref>大野晋『日本語の源流を求めて』岩波書店、2007年、pp.37-8</ref>。
 
 
 
[[大野晋]]はインド南方やスリランカで用いられている[[タミル語]]と日本語との基礎語彙を比較し、日本語が語彙・文法などの点で[[タミル語]]と共通点をもつとの説を唱えるが<ref>大野 晋 (1987)『日本語以前』(岩波新書)などを参照。研究の集大成として、大野 晋 (2000)『日本語の形成』(岩波書店)を参照。</ref>、比較言語学の方法上の問題から批判が多い<ref>下記「批判」参照</ref>。後に大野は批判をうけ、[[系統論]]を放棄し、日本語は'''クレオールタミル語'''であるとする説を唱えた。
 
 
 
{{See also|大野晋#クレオールタミル語説}}
 
 
 
日本語とタミル語の共通項は稲作関連語彙がほとんどであり、中国南部・東南アジアからインド、日本方面双方への稲作拡大に伴う住民移動と言語伝播が両言語の類似点を生み出したとみることもできよう。
 
 
 
===中国語起源説===
 
[[飯野睦毅]]は[[中国語]]の[[上古音]]の語末尾に母音を付加することで、日本語語彙が成り立つとした。例えば「考える(かんがふ)」は「勘合 [kəm ɦəp]」、「拐(かどわ)かす」は「拐 (guad)・惑 (ɦuək)」、「怪(あや)しむ」は「妖 (iɛu)・審 (ʃim)」が訛ったものであるとした。この際、漢語が日本語の動詞になる時、語尾が「p」の語は「ハ行」活用、「m」の語は「マ行」活用になったとし、日本語の動詞の活用に各行の別があるのはここに由来するとしている<ref>飯野睦毅 (1994)『奈良時代の日本語を解読する』東陽出版</ref>。
 
{| class="wikitable sortable"
 
|+日本語のなかの中国語からの借用語
 
|-
 
! 漢字 !! 平安時代の訓読み/ローマ字 !! 上古音 !!  現代音(ピンイン) !!広東語!!平安時代の吳音/ローマ字 !!平安時代の漢音/ローマ字!! 備考
 
|-
 
| 銭 || ぜに/zeni || tsian || qian2 || chin3 ||セン/sen、ゼン/zen || セン/sen || ①「ぜ/ゼ→セ」は中古漢語の音系が濁音清化の証拠。②中国語の韻尾/-n/含む漢字、上代日本語読みは語尾のナ行の子音を添える。
 
|-
 
| 睦 || むつ/mutu、む/mu || miu || mu4 || muk6 || モク/moku || ボク/boku
 
|-
 
| 峽 || かひ/kafi || ɣeap || xia2 || haap6 || ゲフ/gefu|| カフ/kafu || ①ハ行の子音は、上代には[p*]と発音。②中国語の韻尾/-p/含む漢字、日本語読みは語尾のハ行の子音を添える。
 
|-
 
| 注 || つ-ぐ/tu-gu || tɕio || zhu4 || jyu3 || ス/su || シュ/shyu|| ①「つ→ス/シュ」は古漢語の端母が知母へ移行したの証拠。
 
|-
 
| 牧 || まき/maki || miək || mu4 || muk6 || モク/moku || ボク/boku
 
|-
 
| 殿 || との/tono、どむ/domu || tyən || dian4 || din6 ||デン/den || テン/ten || ①中国語の韻尾/-n/含む漢字、上代日本語読みは語尾のナ行の子音を添える。
 
|-
 
| 国(語源: 郡) || くに/kuni(こほり/kofori) || (giuən) || (jun4) || (gwan6) ||(グン/gun)|| (クン/kun)
 
|-
 
| 止 || と/to、とむ/tomu、 || tɕiə || zhi3 || ji2 ||シ/shi || シ/shi
 
|-
 
| 馬 || むま/muma、んま/nma || xan || ma3 || ma5 || メ/me || バ/ba、マ/ma
 
|-
 
| 梅 || むめ/mume、んめ/nme || mə || mei2 || mui4 || マイ/mai、メ/me || バイ/bai
 
|-
 
| 麦 || むぎ/mugi || meək || mai4 || mak6 || ミャク/myaku||バク/baku
 
|-
 
| 我 || あ/a、あが/aga、われ/ware、わが/waga || ŋai || wo3 || ngo2 ||  ガ/ga || ガ/ga || ①中国語の疑母/ŋ/含む漢字、音読みはガ行の子音で表す。②中国語の疑母[ng-]は朝鮮漢字音や現代中国語の漢字音では規則的に脱落する。
 
|-
 
| 吾 || 同上 || ŋea  || wu2 || ng4 ||  グ/gu || ゴ/go || 同上①②。
 
|}
 
 
 
=== 東夷語説 ===
 
フィンランドの、[[ユハ・ヤンフネン]]は、先[[日本祖語]] (Pre-Proto Japanese) が[[シナ語派]]と同様の[[言語類型論|類型論]]的特徴(単[[音節]]の[[声調言語]])を持っており、[[山東半島]]近くの沿岸にいた[[東夷]]の一種の言語であったが、朝鮮半島に侵入して、そこで[[高句麗語]]のような言語と接触して[[アルタイ諸語|アルタイ語]]的な類型論的特徴を獲得した後、九州から日本に入ったという仮説を提出している<ref>{{cite book|和書|author=ユハ・ヤンフネン|year=2003|chapter=A Framework for the Study of Japanese Language Origins|title=日本語系統論の現在|location=京都|publisher=国際日本文化センター|pages=477-490|chapterurl=http://publications.nichibun.ac.jp/region/d/NSH/series/niso/2003-12-26-1/s001/s025/pdf/article.pdf|format=pdf}}</ref>。
 
 
 
===アルタイ・南島語混合説===
 
[[ロシア]]の[[言語学者]]、[[エフゲニー・ポリワーノフ]]は、特に日本語の[[アクセント]]史に関する研究<ref>1917年から1924年にかけての一連の論文において、西日本、特に土佐方言及び京都方言のアクセントが古形を保存していることを明らかにした。[[比較言語学]]の手法を取り入れたアクセントの本格的な研究は、日本では1930年代前半に[[服部四郎]]によって先鞭が付けられ、[[金田一春彦]]らによって推進されたが、ポリワーノフの研究はそれらに大きく先行するものだった。</ref>を基に、日本語が[[オーストロネシア語族|オーストロネシア諸語]]とアルタイ系言語との[[混合言語]]であるという説を初めて提唱した。例えば、「朝」のアクセントは京都方言では a_(低)sa^(高低) という形をしているが、後半の特徴的な[[音高|ピッチ]]の下降は、朝鮮語の「朝」 achΛm との比較から語末[[鼻音]] m の痕跡と解釈される事、また「朝顔」(asagawo) のような合成語に見られる[[連濁]]現象(k からg への[[有声音化]])も asam+kawo > asaNkawo > asagawo のような過程から生じた語末鼻音の痕跡であるとし、日本語の古形が子音終わりを許すものであったと主張した。更にポリワーノフは、日本語のピッチアクセントを、アルタイ系言語における位置固定のストレスアクセントとは根本的に異なるものと考え、その起源を[[フィリピン語群|フィリピン諸語]]に求めた。また、日本語の「真っ黒」(makkuro < ma+ku+kuro) は、[[接頭辞]] ma を伴う[[形容詞]] kuro の不完全重複形で、同一の形式がフィリピンや[[メラネシア]]諸語にも見られる事を指摘し、日本語は起源的に「[[オーストロネシア]]要素と大陸的なアルタイ的諸言語との混合物([[アマルガム]])」であると主張した<ref>『日本語研究』村山七郎編纂・翻訳 [[弘文堂]] (1976)、月刊「言語」別冊 「世界の言語学者101人」 [[大修館書店]] (2001.2)、また[http://www.peoples.ru/science/linguist/polivanov Polivanov 参考]</ref>。
 
 
 
[[村山七郎]]はポリワーノフの先駆的研究を再発見し、混合言語説を展開した。村山は元来、アルタイ比較言語学の立場から日本語系統問題を考究していたが、日本語にはアルタイ起源では説明がつかない語彙があまりに多いという見解に達し、南島語と日本語の比較に注目するようになった。村山によれば、いわゆる基礎語彙の約35%、文法要素の一部が南島語起源であり、このような深い浸透は借用と言えるレベルを超えたもので、日本語はアルタイ系言語と南島語の[[混合言語]]であると主張した([[1973年]]-[[1988年]])。この見解は、南島言語学の[[崎山理]]や[[板橋義三]]に継承されている。
 
 
 
現在、主流の見解は、南島語を[[基層言語|基層]]とし、アルタイ系言語が[[上層言語|上層]]として重なって日本語が形成されたとするものだが、[[安本美典]]<ref>「日本語の古層を統計的に探る」『言語』昭和62年7月号</ref>や[[川本崇雄]]([[1990年]])は、逆にアルタイ系言語が基層で南島語が上層言語であったと主張する。アルタイ単独起源説を主張するS. スタロスティン(2002年)ですら、南島語の基礎語彙への浸透を認めていることから分かるように、古代日本語の形成に南島語が重要な役割を演じたことについては、多くの論者が同意している。しかし、それを単なる借用とみなすのか、系統関係の証拠と見るかについてはまだ合意に至っていない。
 
 
 
===「古極東語」および周辺言語混合説===
 
計量言語学者の[[安本美典]]は、[[アイヌ語]]や[[朝鮮語|朝鮮]]基層語と祖先を同一にする「'''古極東語'''」を日本語の基層言語と想定したうえで、その後[[オーストロネシア語族|インドネシア系言語]]、[[オーストロアジア語族|カンボジア系言語]]、[[チベット・ビルマ語派|ビルマ系言語]]、[[中国語]]など複数系統の言語が順次、[[日本列島]]に流入・混合して日本語が成立したとする「'''流入混合説'''」を唱えている<ref>安本美典 (1991)『日本人と日本語の起源』, 東京:毎日新聞社</ref><ref>安本美典 (1978)『日本語の成立』, 東京:講談社</ref>。
 
 
 
===ウラル語族および周辺言語混合説===
 
[[金平譲司]]は、日本語は[[ウラル語族]]と同系であり、その他の言語の語彙を混合しながら成立したとする説を提唱している。漢語流入前の日本語の語彙は、[[ウラル語族]]([[遼河文明]]の言語)との共通語彙、[[黄河文明]]の言語との共通語彙、[[長江文明]]の言語との共通語彙、その他の語彙(1.日本語が大陸にいたときの取り入れたもので前の3つに含まれないもの、2.[[縄文時代]]の日本列島の言語から取り入れたもの)の5系統が存在するとしている<ref>金平譲司 [https://drive.google.com/file/d/1J4ZYXrkTUaKcTD6k6bR7q6MiF1gaYdfK/view 日本語の意外な歴史 第1話]</ref><ref>金平譲司 [https://drive.google.com/file/d/1J4ZYXrkTUaKcTD6k6bR7q6MiF1gaYdfK/view 日本語の意外な歴史 第2話]</ref><ref>金平譲司 [https://drive.google.com/file/d/14xORT2m2KAjnzzjMdCZUPnCbFGATvxXS/view 日本語の意外な歴史 第3話]</ref><ref>金平譲司 [http://www.jojikanehira.com/ 「日本語の意外な歴史」]</ref>。
 
 
 
=== オーストロアジア語族説===
 
日本語、特に[[弥生人]]の話した言語は[[オーストロアジア語族]]の言語であったとする説もある。本説を唱えるVovinによれば、稲作関連語彙を中心にオーストロアジア語族との共通性が見られる。Vovinは、日本列島に渡る前の中国南部で、日本祖語がオーストロネシア語族や[[タイ・カダイ語族]]とも接触したと推定している<ref>Vovin, Alexander. 1998. Japanese rice agriculture terminology and linguistic affiliation of Yayoi culture. In Archaeology and Language II: Archaeological Data and Linguistic Hypotheses. Routledge.</ref><ref>Vovin, Alexander. 2014. "Out of Southern China? – Philological and linguistic musings on the possible Urheimat of Proto-Japonic". Journées de CRLAO 2014. June 27–28, 2014. INALCO, Paris.</ref>。日本祖語はオーストロアジア語族の特徴である単音節、SVOの語順、そして[[孤立語]]という特徴を備えていた可能性がある<ref>Vovin, Alexander. 2014. "Out of Southern China? – Philological and linguistic musings on the possible Urheimat of Proto-Japonic". Journées de CRLAO 2014. June 27–28, 2014. INALCO, Paris.</ref>。また、[[アイヌ語]](族)がオーストロアジア語族に、深層で接続するのではないかという仮説がある<ref>Vovin A (1993) ''A Reconstruction of Proto-Ainu'' (Brill, Leiden, The Netherlands)</ref><ref>Sidwell PJ (1996) A reconstruction of Proto-Ainu. By Alexander Vovin. ''Diachronica'' '''13'''(1):179–186.</ref><ref name="Jäger2015">Gerhard Jäger, "Support for linguistic macrofamilies from weighted sequence alignment." PNAS vol. 112 no. 41, 12752–12757, doi:10.1073/pnas.1500331112. Published online before print 24 September 2015.</ref>。Jäger (2015) は、古い時代の言葉を再構築する語源学的方法によらず、[[ジョーゼフ・グリーンバーグ]]の提案した計算言語学的方法、すなわち、大量の語彙同士を比較する統計的かつ自動的な方法論により、当該仮説に肯定的な結果を得た<ref name="Jäger2015" />。Jäger (2015) によると、ユーラシア全体の言語を分類する目的で上記方法論を用いた場合、オーストロアジア語族とアイヌ語と[[日本語族]]は同一のスーパークレードに分類される可能性がある<ref name="Jäger2015" />。
 
 
 
=== オーストロ・タイ語族説 ===
 
[[タイ・カダイ語族]]と[[オーストロネシア語族]]を含む仮説段階の[[語族]]([[オーストロ・タイ語族]])に、日本語(族)が含まれるという説{{要出典|date=2018年8月}}。
 
{| border="1" class="prettytable"
 
|-bgcolor='#COFOFO'
 
!width="80"|Gloss
 
!width="80"|Proto-Japonic(日本語族)
 
!width="80"|proto-Japonic<br>accent
 
!width="80"|Proto-Tai(タイ・カダイ語族)
 
!width="80"|Tone in proto-Tai
 
|-
 
|Leaf || '''*pa''' || H || '''*Ɂbaï''' || A1
 
|-
 
|Side || '''*pia'''|| H || '''*Ɂbaïŋ''' ?< [[Old Chinese|OC]] '''*b<sup>ʕ</sup>âŋ''' || C1
 
|-
 
|Top || '''*po''' || H || '''*ʔboŋ''' || A1
 
|-
 
|Aunt || '''*-pa''' in '''*wo-n-pa''' || H || '''*paa''' 'elder sister of a parent' || C1
 
|-
 
|Wife, woman || '''*mia''' || L || '''*mia''' 'wife' || A2
 
|-
 
|Water || '''*na''' || L || '''*r-nam''' || C2
 
|-
 
|Fire || '''*poy''' || L || '''*vVy''' || A2
 
|-
 
|Tooth || '''*pa''' || L || '''*van'''<br>secondary voicing in Tai<br>branch || A2
 
|-
 
|Long || '''*nan-ka'''<br>(space & time) || L-L || '''*naan'''<br> (time) || A2
 
|-
 
| Edge || '''*pa''', cf. also '''*pasi''' || H, HH || '''*faŋ'''<br>'shore, bank' || B1
 
|-
 
|Insert || '''*pak-''' 'wear shoes, trousers' || H || '''*pak''' || D1S
 
|-
 
|Mountain || '''*wo''' 'peak' || L || '''*buo''' || A2, A1 in [[Northern Tai languages|NT]]
 
|-
 
|Split || '''*sak-''' || H || '''*čaak''' 'be separated' || D1L, š- in [[Northern Tai languages|NT]]
 
|-
 
|Suck || '''*sup-''' || H || '''*ču[u]p''' onomatopoetic? || D1S/L, š- in [[Northern Tai languages|NT]]
 
|-
 
|Get soaked || '''*sim-''' || H || '''*čim''' 'dip into' ?< Chin. || B1, C1, š- in [[Northern Tai languages|NT]]
 
|-
 
|Slander || '''*s<sup>ə</sup>/o-sir-''' cf. nono-sir- || H/L?, but<br> philology<br>indicates H || '''*sɔɔ''' 'slander, indicate' || A1
 
|-
 
|Cold || '''*sam-pu-''' cf. sam-as- 'cool it',<br> samë- 'get cool' || L || [[Northern Tai languages|NT]] '''*ǯam''' > šam || C2
 
|-
 
|Door || '''*to''' || H || proto-Tai '''*tu''',<br>but proto-Kam-Sui '''*to''',<br>''pace'' Thurgood's '''*tu''' (1988:211) || A1
 
|-
 
|Wing || '''*pa''' > [[Old Japanese]] ''pa'' 'wing, feather' || H || proto-Kam-Sui '''*pwa''' || C1
 
|-
 
|Inside || '''*naka''' < '''*na-ka''' 'inside-place' || LH || proto-Tai '''*ʔd-naï''' || [[Southwestern Tai languages|SW]], Sukhothai A2,<br>[[Central Tai languages|CT]], [[Northern Tai languages|NT]] A1
 
|-
 
|}
 
*Proto-Tai items are taken from [[Li Fang-Kuei|Li, Fang Kuei]] 1977. ''A Handbook of Comparative Tai''. Honolulu: University of Hawaii Press.
 
*Li Fang-Kuei '''ï''' is equivalent to '''ɯ'''.
 
*NT = Northern Tai, CT = Central Tai, SW = Southwestern Tai.
 
 
 
<!--
 
=== ヒッタイト語族説 ===
 
古代[[オリエント]]史を研究していた[[三笠宮崇仁親王]]は、日本と[[ヒッタイト]]の繋がりを示唆した。[[ヒッタイト語]]については不明である。ヒッタイト語の文法は[[SOV型]]である。
 
(出典なしのためコメントアウト)-->
 
 
 
=== その他 ===
 
厳密な実証科学によらないほかの仮説としては以下のものがある。
 
*日本語[[エジプト]]起源説
 
**明治時代の[[木村鷹太郎]]によって唱えられ、日本語は[[ラテン語]]や[[ギリシャ語]]などと同系であるという。
 
*日本語[[ヘブライ語]]同系論
 
**[[日ユ同祖論]]者によって、[[昭和]]の初期ごろ。
 
*[[レプチャ語]]との関連説
 
**医師の[[安田徳太郎]]による。
 
*ラテン語と日本語の語源的関係
 
**近年[[与謝野達]]によって唱えられた日本語の語源を古代ラテン語に求める説<ref>ラテン語と日本語の語源的関係,与謝野 達 著, 2006年12月.サンパウロ、(発売元: 日本キリスト教書販売)</ref>
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{Reflist}}
 
 
 
== 関連文献 ==
 
* [[服部四郎]] 『日本語の系統』([[1959年]] 単行本もあり)[[1999年]] 岩波文庫
 
* [[村山七郎]]・[[大林太良]] 『日本語の起源』[[1973年]] 弘文堂
 
* 村山七郎『日本語の語源』[[1974年]] 弘文堂
 
* [[亀井孝 (国語学者)|亀井孝]]・[[大藤時彦]]・[[山田俊雄]]編『日本語の歴史1』[[2006年]] 平凡社ライブラリー,ISBN 4582765955
 
* [[森博達]] 『[[日本書紀]]の謎を解く―述作者は誰か』[[1999年]] 中公新書
 
* [[森浩一]]編 「三世紀[[倭人]]語の[[音韻]]」(『[[魏志倭人伝|倭人伝]]を読む』所収)[[1985年]] 中公新書
 
* [[大野晋]] 『日本語の起源』[[1957年]] 岩波新書
 
* 大野晋 『日本語はいかにして成立したか』[[2002年]] 中央公論社
 
* 大野晋 『日本語の形成』[[2000年]] 岩波書店
 
* 大野晋・[[金関恕]]編『考古学・人類学・言語学との対話…日本語はどこから来たのか』[[2006年]]岩波書店
 
* [[風間喜代三]] 「ことばの系統」『東京大学公開講座 ことば』[[1983年]] 東京大学出版会
 
* [[宋敏]] 『韓国語と日本語のあいだ』[[1999年]] 草風館
 
* [[田中孝顕]] 『ささがねの蜘蛛―意味不明の枕詞・神話を解いてわかる古代人の思考法 (古事記・日本書紀・万葉集と古代タミル語の饗宴)』[[2008年]] 幻冬舎
 
* 田中孝顕 『日本語の真実/タミル語で記紀、万葉集を読み解く』[[2006年]] 幻冬舎
 
* [[国際日本文化研究センター]]『日本語系統論の現在』 [[2003年]]
 
 
 
== 関連項目 ==
 
各言語・諸語
 
*[[日本語族]]
 
**日本語派
 
**[[琉球語]]派
 
*[[アイヌ語]]
 
*[[アルタイ諸語]]
 
*[[朝鮮語]]
 
*[[シナ・チベット語族]]
 
*[[東アジア言語]]
 
*[[孤立した言語]]
 
*[[オーストリック大語族]]
 
 
 
各学問
 
*[[比較言語学]]
 
*[[言語類型論]]
 
*[[日本語学]]
 
 
 
== 外部リンク ==
 
* [http://homepage3.nifty.com/rosetta_stone/wissenshaft/wissenshaft.htm 学問の部屋]
 
* [http://www.dai3gen.net/index.html 日本古代史とアイヌ語]
 
* [http://ichhan.sakura.ne.jp 日本語の起源]
 
* [http://yamatai.cside.com/katudou/kiroku191.htm 日本人の起源]
 
* [http://ocra.sakura.ne.jp/202.html 日本語千夜一話]
 
 
 
{{DEFAULTSORT:にほんこのきけん}}
 
[[Category:日本語|きけん]]
 
[[Category:日本語の歴史]]
 
[[Category:日本の歴史論争]]
 
[[Category:起源・発祥]]
 
[[Category:系統学]]
 
[[Category:日本語族]]
 

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