Warning : Undefined variable $type in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/extensions/HeadScript/HeadScript.php on line 3
Warning : "continue" targeting switch is equivalent to "break". Did you mean to use "continue 2"? in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/includes/json/FormatJson.php on line 297
Warning : Trying to access array offset on value of type bool in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/includes/Setup.php on line 660
Warning : session_name(): Session name cannot be changed after headers have already been sent in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/includes/Setup.php on line 834
Warning : ini_set(): Session ini settings cannot be changed after headers have already been sent in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/includes/session/PHPSessionHandler.php on line 126
Warning : ini_set(): Session ini settings cannot be changed after headers have already been sent in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/includes/session/PHPSessionHandler.php on line 127
Warning : session_cache_limiter(): Session cache limiter cannot be changed after headers have already been sent in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/includes/session/PHPSessionHandler.php on line 133
Warning : session_set_save_handler(): Session save handler cannot be changed after headers have already been sent in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/includes/session/PHPSessionHandler.php on line 140
Warning : "continue" targeting switch is equivalent to "break". Did you mean to use "continue 2"? in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/languages/LanguageConverter.php on line 773
Warning : Cannot modify header information - headers already sent by (output started at /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/extensions/HeadScript/HeadScript.php:3) in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/includes/Feed.php on line 294
Warning : Cannot modify header information - headers already sent by (output started at /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/extensions/HeadScript/HeadScript.php:3) in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/includes/Feed.php on line 300
Warning : Cannot modify header information - headers already sent by (output started at /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/extensions/HeadScript/HeadScript.php:3) in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/includes/WebResponse.php on line 46
Warning : Cannot modify header information - headers already sent by (output started at /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/extensions/HeadScript/HeadScript.php:3) in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/includes/WebResponse.php on line 46
Warning : Cannot modify header information - headers already sent by (output started at /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/extensions/HeadScript/HeadScript.php:3) in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/includes/WebResponse.php on line 46
http:///mymemo.xyz/wiki/api.php?action=feedcontributions&user=126.114.83.232&feedformat=atom
miniwiki - 利用者の投稿記録 [ja]
2024-04-29T13:37:05Z
利用者の投稿記録
MediaWiki 1.31.0
糖尿病
2018-08-07T18:17:10Z
<p>126.114.83.232: /* 外部リンク */</p>
<hr />
<div>{{独自研究|date=2017年1月}}<br />
{{Infobox_Disease<br />
|name=糖尿病<br />
|Image = Blue circle for diabetes.svg<br />
|Caption = 世界糖尿病デーのシンボルマーク「ブルーサークル」<ref>{{cite web| title=Diabetes Blue Circle Symbol |url=http://www.diabetesbluecircle.org |date=2006-03-17 |publisher=International Diabetes Federation |accessdate=2009-03-09}}</ref><br />
|ICD10 = {{ICD10|E|10||e|10}}–{{ICD10|E|14||e|10}}<br />
|ICD9 = {{ICD9|250}}<br />
|MedlinePlus = 001214<br />
|eMedicineSubj = med<br />
|eMedicineTopic = 546<br />
|eMedicine_mult = {{eMedicine2|emerg|134}}<br />
|Meshname="Diabetes"<br />
|MeshNumber = C18.452.394.750<br />
}}<br />
{{世界の疾病負荷}}<br />
'''糖尿病'''(とうにょうびょう、{{lang-la|diabetes mellitus}}、DM)は、[[血糖値]]や[[ヘモグロビンA1c]](HbA1c)値が一定の基準を超えている状態をさす疾患である。東洋医学では'''[[消渇]]'''と呼ばれる。なお、[[腎臓]]での再吸収障害のため尿糖の出る[[腎性糖尿]]は別の疾患である。<br />
<br />
糖尿病は高血糖そのものによる症状を起こすこともあるほか、長期にわたると血中の高濃度のグルコースがその[[アルデヒド基]]の反応性の高さのため血管内皮のタンパク質と結合する[[糖化反応]]を起こし、体中の微小血管が徐々に破壊されていき、[[糖尿病性神経障害]]・[[糖尿病性網膜症]]・[[糖尿病性腎症]]などに繋がる。<br />
<br />
糖尿病患者の90%は2型であり、これは予防可能な病気である<ref name=whofact />。2型糖尿病の予防や軽減には、健康的な食事、適度な運動、適切な体重管理、[[禁煙]]が有効である<ref name=whofact />。<br />
<br />
世界における有病率は9%であり3億4,700万人、世界のDALYの19位を占め(1.3%)、2012年は150万人が糖尿病により死亡した<ref>{{Cite report|publisher=WHO |title=10 facts about diabetes |date=2014-11 |url=http://www.who.int/features/factfiles/diabetes/en/}}</ref><ref name="whofact">{{Cite report|publisher=WHO |title=Factsheet - Diabetes |date=2015-01 |url=http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs312/en/ }}</ref>。糖尿病による死者の8割は中低所得国であり、さらにWHOは2030年には世界第7位の死因となると推定している<ref name=whofact />。<br />
<br />
== 概要 ==<br />
[[血液]]中の[[グルコース]]濃度([[血糖値]]、血糖)は、様々なホルモン([[インスリン]]、[[グルカゴン]]、[[コルチゾール]]など)の働きによって常に一定範囲内に調節されている。<!--これは、ブドウ糖が[[脳]]をはじめとした各器官の主要なエネルギー源となるのに対し、一方で組織の[[糖化]]ストレスをもたらす有害物質として働くからである。←これは文学的な解釈という感じがしました。むしろ何によって調節されているのかを書いてみましたが。--><!--血糖が上昇したときの調節能力('''耐糖能''')が弱くなり、血糖値が病的に高まった状態(または、高まることのある状態)を糖尿病と言う。←1型DMは耐糖能は関係ないので、百科事典的記述としては間違いだと思います。-->いろいろな理由によってこの調節機構が破綻すると、血液中の糖分が異常に増加し、糖尿病になる。糖尿病は1型と2型があり、この調節機構の破綻の様式の違いを表している。'''[[1型糖尿病]]'''では[[膵臓]]のβ細胞が何らかの理由によって破壊されることで、血糖値を調節するホルモンの一つである[[インスリン]]が枯渇してしまい、高血糖、糖尿病へと至る。一方'''[[2型糖尿病]]'''では、肥満などを原因として、[[膵臓]]のランゲルハンス島(膵島)にあるβ細胞からのインスリン分泌量が減少し、筋肉、脂肪組織へのグルコースの取り込み能が低下(インスリン抵抗性が増大)し、結果として血中のグルコースが肝臓や脂肪組織でグリコーゲンとして貯蔵されず、血中のグルコースが正常範囲を逸脱して高い血糖値(空腹時血糖≧126mg/dL、HbA1c≧6.5%、[[経口ブドウ糖負荷試験]](75gOGTT)で2時間値が200mg/dL以上など)となり、糖尿病となる(正常値:空腹時血糖60〜100mg/dL、HbA1c4.6〜6.2%、75gOGTTの2時間値が140mg/dL以下)。HbA1cは、1〜2か月前の血糖コントロール状態が反映される。その他にも、[[妊娠糖尿病]]があり、妊娠糖尿病は、妊娠後初めて糖尿病には至らない程度の耐糖能異常が生じたもので、児の過剰発育による周産期のリスクが高く、出産後に糖尿病を発症するリスクも高いため、厳格な血糖管理が行われる。また、妊娠前に糖尿病と診断されていた女性が妊娠したものを[[糖尿病合併妊娠]]という。<br />
<br />
「糖尿病」の名称は、血糖が高まる結果、尿中に糖が排出されることに由来する。<!--糖が利用できない細胞レベルでの飢餓による[[糖尿病性昏睡]]や持続的な高血糖による慢性変性である[[糖尿病慢性期合併症]]が問題となる。←ここらへんが「ジャーゴン」なんでしょう。-->1型糖尿病の場合、放置すると容易に急激な高血糖と生命の危険も伴う意識障害を来す[[糖尿病性ケトアシドーシス]]が起こるため、[[インスリン]]注射などにより血糖値をコントロールすることが基本的な治療目標となる<!--低血糖にならないために、下げるのではなく適切な数値にコントロールすることが重要--><!--糖が利用できない細胞レベルでの飢餓による[[糖尿病性昏睡]]や持続的な高血糖による慢性変性である[[糖尿病慢性期合併症]]が問題となる。←ここらへんが「ジャーゴン」なんでしょう。-->。一方2型糖尿病においては、治療せず長期に放置すると[[糖尿病性神経障害]]、[[糖尿病性網膜症]]、[[糖尿病性腎症]]などの[[糖尿病慢性期合併症]]の起こる頻度が多くなるため、生活習慣の是正、[[経口血糖降下薬]]やインスリン注射により血糖値をコントロールすることで合併症を防ぐことが治療目標である。糖尿病は[[心臓病]]や[[脳血管障害]]の発症の危険因子でもある<ref name=mhlw/>。<!--一番多いといわれる[[2型糖尿病]]では[[糖尿病慢性期合併症]]の予防が最も重要視されている。合併症は治療が困難なものが多く、他の[[生活習慣病]]と同じように予防が重要視されている。予防を行うためには早期発見と治療効果判定が不可欠であり、それを目的とした糖尿病の検査が多数存在し、それらを総合的に判断し、治療するという戦略がとられている。-->長期的に落ち着いている1型糖尿病においては、やはり治療目標は2型と同様のものになる。[[妊娠糖尿病]]においては、妊婦の高血糖を原因として[[胎児奇形]]や[[妊産婦合併症]]の頻度が高くなる理由となるので、それを防ぐために血糖値を下げる治療をするのである。<br />
<br />
== 分類 ==<br />
{| class="wikitable floatright" style="font-size:90%; margin-left:1em"<br />
|+ 糖尿病1型と2型の比較<ref name="Will2011">{{cite book|title=Williams textbook of endocrinology|publisher=Elsevier/Saunders|location=Philadelphia|isbn=978-1-4377-0324-5|pages=1371–1435|edition=12th}}</ref><br />
|-<br />
! 要素 !! [[1型糖尿病]] !! [[2型糖尿病]]<br />
|-<br />
! 発症<br />
| 突然に || 徐々に<br />
|-<br />
! 発症年齢<br />
| 多くは児童期に || 多くは成人期<br />
|-<br />
! 体形<br />
| 痩せているか普通<ref>{{cite journal |author=Lambert P, Bingley PJ |title=What is Type 1 Diabetes? |journal=Medicine |volume=30 |pages=1–5 |year=2002 |doi=10.1383/medc.30.1.1.28264 }}</ref> || 多くは肥満<br />
|-<br />
! [[糖尿病性ケトアシドーシス|ケトアシドーシス]]<br />
| 一般的 || まれ<br />
|-<br />
! [[自己抗体]]<br />
| 通常存在する || 欠けている<br />
|-<br />
! 内因性インスリン<br />
| 低いか欠けている || 普通か<br />増加または減少<br />
|-<br />
! 一卵性双生児に<br />おいて一致率<br />
| 50% || 90%<br />
|-<br />
! 有病率<br />
| 〜10% || 〜90%<ref name=whofact /><br />
|}<br />
糖尿病は、以下に挙げられているように、発症の<!--耐糖能が低下する←耐糖能だけじゃないです-->機序(メカニズム)によって<!--大きく1型糖尿病と2型糖尿病に分けられるまた近年、[[境界型糖尿病]]も重要視されている。それぞれの病型によって原因は異なると考えられている。←「考えられている」というレベルではないような。一言に糖尿病といっても多種多様な病気を含んでいて、本来[[症候群]]とでもいうべき疾患群である。糖尿病患者のほとんどを占める1型、2型の原因については確定的なことは何も分かっていない。ここでは''提唱されている仮説''について分類と合わせて述べていく。1型と2型を除いたほとんどの糖尿病については原因が明らかなことが多い。-->分類されている。以前は治療のやり方によって「インスリン依存型糖尿病」あるいは「インスリン非依存型糖尿病」に分類されていたことがあった。さらにそれより以前には、I型糖尿病、II型糖尿病とローマ字を使って分類されていた。しかし2010年現在ほぼ世界中すべてにおいて、以下のように病気の原因に基づく分類が用いられている。ここでは日本糖尿病学会分類基準([[1999年]])にしたがって分類している。<br />
<br />
=== 1型糖尿病 ===<br />
{{main|1型糖尿病}}<br />
'''1型糖尿病'''(いちがたとうにょうびょう、[[疾病及び関連保健問題の国際統計分類|ICD]]-10:E10)は、<!--「インスリン依存型糖尿病」ともいい、←正確に言えばT1DMとIDDMは1対1ではありません。-->[[膵臓]]の[[ランゲルハンス島]]で[[インスリン]]を分泌しているβ細胞が死滅する病気である。その原因は主に自分の免疫細胞が自らの膵臓を攻撃するためと考えられているが('''自己免疫性''')、まれに自己免疫反応の証拠のない1型糖尿病もみられる('''特発性''')。<br />
<br />
一般的に患者の多くは10代でこれを発症する。[[血糖]]を下げる[[ホルモン]]であるインスリンの分泌が極度に低下するかほとんど分泌されなくなるため、血中の糖が異常に増加し[[糖尿病性ケトアシドーシス]]を起こす危険性が高い。そのためインスリン注射などの強力な治療を常に必要とすることがほとんどである。<!--その結果、さまざまな合併症をきたす危険な病である。糖尿病の1種であるが、1型は[[自己免疫性疾患]]であり、後述の2型とは全く異なる病気である。--><br />
<br />
=== 2型糖尿病 ===<br />
{{Main|2型糖尿病}}<br />
'''2型糖尿病'''(にがたとうにょうびょう、[[疾病及び関連保健問題の国際統計分類|ICD]]-10:E11)は、<!--「インスリン非依存型糖尿病」ともいい、上記と同様。T2DMとNIDDMは1対1ではありません。-->[[インスリン]]分泌低下と感受性低下の二つを原因とする糖尿病である。欧米では感受性低下([[インスリン抵抗性]]が高い状態)のほうが原因として強い影響をしめすが、日本では[[膵臓]]のインスリン分泌能低下も重要な原因である。少なくとも初期には、前者では太った糖尿病、後者ではやせた糖尿病となる。[[遺伝]]的因子と生活習慣がからみあって発症する[[生活習慣病]]で、日本では糖尿病全体の9割を占める。<!--基本的には除外診断によって診断していく。気をつけるべき点としては2型にみえる1型糖尿病が存在するということである。SPIDDM(slowly progressive IDDM)と言われるものがある。1型にしては30〜50歳で発症と発症年齢が高く、臨床像は2型そのものだが徐々にインスリン依存状態に陥っていく。こういった患者は[[抗GAD抗体]]が持続陽性となっており、検査をしないと1型とわからない。SU剤が一時期効果あったかのようにみえることもあるが基本的に1型糖尿病であるのでSU剤は進行を進める作用となるので注意が必要である。←僕が書いたような気もしますが、臨床では重要ですが、簡潔な百科事典的記載として不必要と思いました。--><br />
<br />
2型糖尿病が発症する原因は完全に明らかではないが、<!--。主な病態が「[[インスリン抵抗性]]」と「インスリン分泌低下」の二つであり、それぞれに原因が提唱されている。-->大筋を言うと、遺伝的に糖尿病になりやすい体質(遺伝因子)の人が、糖尿病になりやすいような生活習慣を送ること(環境因子)によって2型糖尿病になると考えられている。遺伝的な原因としては、''[[KCNQ2]]''<ref name="YasudaMiyake2008">{{cite journal|author=Yasuda.K et al |title=Variants in KCNQ1 are associated with susceptibility to type 2 diabetes mellitus|journal=Nature Genetics|volume=40|issue=9|year=2008|pages=1092–1097|issn=1061-4036|doi=10.1038/ng.207}}</ref><ref name="UnokiTakahashi2008">{{cite journal|author=Unoki H et al. |title=SNPs in KCNQ1 are associated with susceptibility to type 2 diabetes in East Asian and European populations|journal=Nature Genetics|volume=40|issue=9|year=2008|pages=1098–1102|issn=1061-4036|doi=10.1038/ng.208}}</ref>、''[[PPARG]]''、''[[KCNJ11]]''、''[[TCF2L7]]''<ref name="BurtonClayton2007">{{cite journal|author=The Welcome Trust Case Control Consortium |title=Genome-wide association study of 14,000 cases of seven common diseases and 3,000 shared controls|journal=Nature|volume=447|issue=7145|year=2007|pages=661–678|issn=0028-0836|doi=10.1038/nature05911}}</ref><ref name="SladekRocheleau2007">{{cite journal|author=>Sladek R et al. |title=A genome-wide association study identifies novel risk loci for type 2 diabetes|journal=Nature|volume=445|issue=7130|year=2007|pages=881–885|issn=0028-0836|doi=10.1038/nature05616}}</ref><ref name="ScottMohlke2007">{{cite journal|last1=Scott L et al. |title=A Genome-Wide Association Study of Type 2 Diabetes in Finns Detects Multiple Susceptibility Variants|journal=Science|volume=316|issue=5829|year=2007|pages=1341–1345|issn=0036-8075|doi=10.1126/science.1142382}}</ref>などとい った遺伝子上の配列の違いによって、同じような生活習慣を送っていても、ある人は糖尿病が起こりやすく、別の人は起こりにくくなるという違いがあることがわかってきている。また、日本で欧米と比較して多く見られるインスリン分泌能低下を主要因とするやせ型糖尿病の原因遺伝子として''[[KCNJ15]]''が挙げられていて、日本人において発見されたこの遺伝子上の危険因子となる配列は欧米人にはきわめてまれであると報告されている<ref>Okamoto, K et al. Identification of KCNJ15 as a Susceptibility Gene in Asian Patients with Type 2 Diabetes Mellitus. Am J Hum Genet 2010;86:54.</ref>。<br />
<br />
慢性に高血糖が持続すると膵β細胞機能が障害されると共に、過剰な血糖を[[グリコーゲン]]に転換して蓄える[[筋肉]]や[[肝臓]]、脂肪に転換して蓄える[[脂肪組織]]においてもインスリン抵抗性が生じて更なる高血糖をもたらし、これがインスリン分泌不全、インスリン抵抗性を更に増悪させ、糖尿病状態を一層悪化させる状態が糖毒性として取り上げられている<ref name=waka/>。[[インスリン抵抗性]]などによって生じた高血糖状態は、膵β細胞内において、大量の[[活性酸素]]種の生成や[[タンパク質]]と[[グルコース]]との[[糖化反応]]を引き起こす。一般に糖毒性と呼ばれるこの現象は、β細胞のインスリン含量の減少やβ細胞数の減少を引き起こすと考えられる<ref>{{Cite journal|和書|author=綿田裕孝 |doi=10.11213/tonyobyo1958.45.707 |title=特集 病期別にみた糖尿病およびその合併症への新しい対策 膵β細胞不全からみた2型糖尿病の病期とそれに応じた対策 |journal=糖尿病 |volume=45 |date=2002 |issue=10}}</ref>。<br />
<br />
さらに血中[[遊離脂肪酸]]の上昇がみられる[[肥満]]では肥大した[[脂肪細胞]]から種々の[[サイトカイン]]や[[脂肪酸]]が分泌され、遊離脂肪酸が膵β細胞機能を障害すると共に、インスリン抵抗性が増強される状態が脂肪毒性として取り上げられている<ref name=waka>[http://dx.doi.org/10.2740/jisdh.10.4_3 II型糖尿病の成因と病態]、若林孝雄、日本食生活学会誌、Vol.10 (2000) No.4</ref>。<br />
<!--昔糖尿病のリスクとしてのクロムをここで力説した方がいましたが国際的コンセンサスではありません。ご理解願います。--><!--病因は以上の通りです。病態ですが、インスリン受容体やインスリン抵抗性、アディポネクチンなどサイトカインネットワークについてなど、上記にうまくまとめてくれる方を募集したいと思います。<br />
近年特に国際的に特に注目されていて、広く認められている研究成果としては、[[アディポネクチン]]をはじめとするサイトカインネットワークの異常を原因とするものや、あるいは[[炎症]]を原因と考えるものなどがある。<br />
*アディポサイトカイン([[アディポネクチン]]、[[TNF-α]]、[[レプチン]]、[[レジスチン]]、RBP4)<br />
*食事パターン<br />
*内臓脂肪型の脂肪分布パターン<br />
*喫煙<br />
*夜間頻尿(特に[[皮下脂肪型肥満]])<br />
*[[睡眠時無呼吸症候群]]<br />
*:<small>2007年に発表されたメタ分析<ref>Willi C, Bodenmann P, Ghali WA, Faris PD, Cornuz J. Active smoking and the risk of type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2007 Dec 12;298(22):2654-64.</ref>(対象論文25、調査人数1200万人)によれば、喫煙者は非喫煙者よりも2型糖尿病の罹患率が1.6倍高いという。さらに、喫煙量と罹患率には正の相関があり、特にヘビースモーカーでは罹患率がさらに高いと報告されている</small><br />
*炎症<br />
*[[小胞体ストレス]]<br />
--><!--下記コメントアウトの理由ですが、境界型を入れるのは「糖尿病」の分類としてはおかしいですね。日本糖尿病学会の分類基準にも入っていないです。<br />
<br />
=== 境界型糖尿病 ===<br />
[[境界型糖尿病]]が2型糖尿病の前段階と考えられている。糖尿病の診断基準を満たしていないという意味では厳密には糖尿病ではない。しかし、糖尿病と同様に大血管障害、即ち心筋梗塞などを起こすリスクが高いということ、[[食事療法]]、[[運動療法]]以外に[[経口血糖降下薬]]を用いた薬物療法を行うことで慢性期合併症を予防できる可能性が示唆されているため、病気として扱い治療を受けた方がよいという意見もある(ガイドライン上は推奨されていない)。2型糖尿病と同様に[[生活習慣病]]である。<br />
<br />
この時期の糖尿病は[[肝臓病]]としての側面が強く、糖新生を行う肝臓をターゲットとした[[インスリン抵抗性]]を改善する薬がよく用いられる。また[[NASH]]、[[脂肪肝]]といった肝疾患との関連や[[メタボリックシンドローム]]との関連が示唆されている。[[NAFLD]](非アルコール性脂肪性肝疾患)といった概念が確立されつつある。肝障害の起こり方によって血糖コントロールの仕方が今後変わってくる可能性がある。<br />
--><br />
=== 遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの ===<br />
1型、2型の糖尿病は、その原因が完全に明らかにはなっていない。一方この項目に分類される疾患は、特定の遺伝子の機能異常によって糖尿病が発症している、という原因がわかっている糖尿病である。頻度は極めて稀。いずれも比較的若年(一般的に25歳以下)に発症し、1型ほど重症ではなく、強い家族内発症がみられるという特徴があるが、臨床所見は大きく異なる。<br />
; 若年発症成人型糖尿病<ref>{{lang-en-short|maturity onset diabetes of young}}、MODY</ref><br />
: 純粋に糖尿病のみを来すメンデル遺伝疾患で、常染色体[[優性遺伝]]を示す。内服薬による治療が奏効する場合が多い。<br />
: MODYにはMODY1 - 6という6種類の病型が知られている。MODY1では肝細胞核転写因子 (HNF) 4αを、MODY2では[[グルコキナーゼ]]を、MODY3ではHNF1αを、MODY4ではインスリンプロモーター因子 (IPF) 1を、MODY5ではHNF1βを、MODY6ではneuroD1をコードする遺伝子にそれぞれ変異が認められる。<br />
; [[ミトコンドリア]]遺伝子異常<br />
: そのメカニズム通り(参考: [[ミトコンドリアDNA]])母方のみから遺伝し、[[難聴]]を伴うMIDD<ref>{{lang-en-short|maternally inherited diabetes and deafness}}</ref>、最重症型で[[脳卒中]]・[[乳酸アシドーシス]]などを来す[[MELAS]]など多彩な病像を呈する。<br />
: ミトコンドリア遺伝子異常にはいくつかの変異ポイントがあるが、最多のものは3243A->G変異である。<br />
; インスリン受容体異常症<br />
: [[黒色表皮腫]]や体毛が濃いなどの特徴的な体格がみられる。糖尿病として診断されるのは[[ヘテロ接合型]]の患者であり、[[ホモ接合型]]では乳児期以降まで生存しない。膵臓のインスリン分泌能は十分であるため、血糖値を下げようと大量のインスリンが分泌され、血中のインスリン濃度が異常高値を示す。他のタイプと違いインスリン投与が無効だが、[[インスリン様成長因子]]の投与により血糖値を下げることが可能である。<br />
; [[インスリン]]自体の遺伝子異常<br />
: 報告されているが極めて稀である。インスリン投与が有効である。<br />
<br />
いずれも診断には[[ゲノム]][[デオキシリボ核酸|DNA]]や[[ミトコンドリアDNA]]を検体とした特殊な検査が必要である。<br />
<br />
=== 続発性糖尿病 ===<br />
続発性糖尿病(ぞくはつせいとうにょうびょう、二次性糖尿病)([[ICD]]-10:E13)は、他の疾患によって引き起こされる糖尿病である。<!--原因となる疾患は[[#血糖の調節機構|血糖の調節機構]]に挙げたホルモンが異常高値になるものである。-->以下に挙げたものは代表的な疾患で、ほかにも原因となる疾患は存在する。<br />
* [[グルカゴン]]を異常分泌する[[グルカゴン産生腫瘍]]<br />
* [[副腎皮質ホルモン]]([[コルチゾル]]他)の作用が異常増加する[[クッシング症候群]]、[[原発性アルドステロン症]]<br />
* [[副腎髄質ホルモン]]([[アドレナリン]])を異常分泌する[[褐色細胞腫]]<br />
* [[成長ホルモン]]を異常分泌する成長ホルモン産生腫瘍([[先端巨大症]])<br />
* [[肝硬変]]<br />
* 慢性[[膵炎]]、[[ヘモクロマトーシス]]、[[膵癌]]<br />
* [[筋緊張性ジストロフィー]]<br />
* 薬剤性([[サイアザイド]]系[[利尿薬]]、[[フェニトイン]]、[[糖質コルチコイド]](ステロイド)など)<br />
<br />
====ステロイド糖尿病====<br />
{{main|ステロイド糖尿病}}<br />
'''[[ステロイド糖尿病]]'''は、[[膠原病]]などで[[ステロイド]]を長期に内服したことによって生じる続発性糖尿病である。ステロイド(糖質コルチコイド)作用の、[[肝臓]]の糖新生亢進作用、末梢組織のインスリン抵抗性の亢進、食欲増進作用が関わっているとされる。ステロイドを減量すれば軽快する。ステロイド糖尿病では通常の糖尿病と異なり、網膜症などの血管合併症が起こりにくいとされる。食後高血糖のパターンをとることが多く、入院中ならば[[インスリン]]やαGIといった経口剤を用いることが多い。<br />
<br />
=== 妊娠糖尿病 ===<br />
{{main|妊娠糖尿病}}<br />
<!--妊娠糖尿病に関する内容が単独記事とほぼ重複。妊娠糖尿病について書く場合はそちらに記入してください。--><br />
<br />
== 症状 ==<br />
[[File:Main symptoms of diabetes.svg|thumb|right|主要な症状]]<br />
通常糖尿病患者は自覚症状はないと考えることが多い。下記に列挙するような手足のしびれや便秘などが実はあるのだが、特別な症状と考えていないことがある。血糖値がかなり高くなってくると、口渇・多飲・多尿という明白な典型的症状が生じる。これらは血糖値が高いということをそのまま反映した症状なので、治療により血糖値が低下するとこれらの症状は収まる。血糖値がさらに高くなると、重篤な[[糖尿病性昏睡]]に陥り、意識障害、腹痛などをきたすこともある。<!--<br />
糖尿病は、極度の高血糖(約600mg/dl以上)にならない限り自覚症状は多飲・多尿程度である(血糖値の上昇による浸透圧の上昇のため)。-->いっぽう発症初期の血糖高値のみで[[こむら返り]]などの特異的な神経障害がおこることがある。また発症初期に急激に血糖値が上昇した場合、体重が減少することが多い(血液中に糖分が多い一方、脂肪細胞などは糖分が枯渇した状態になるためである)。<br />
<br />
その他の症状は、たいてい[[糖尿病慢性期合併症]]にもとづくものである。<br />
<br />
=== 余命への影響 ===<br />
1971年から1980年のデータで糖尿病患者と日本人一般の平均寿命を比べると男性で約10年、女性では約15年の寿命の短縮が認められた<ref name=sakamoto>{{Cite journal|和書|author=坂本信夫 |doi=10.2169/naika.78.1540 |title=内科診療の進歩糖尿病合併症の成因と対策 |jounral=日本内科学会雑誌 |volume=78 |date=1989 |issue=11 |pages=1540-1543}}</ref><ref name="SakamotoHotta1983">{{cite journal|last1=Sakamoto.N et al |title=The features of causes of death in Japanese diabetics during the period 1971-1980.|journal=The Tohoku Journal of Experimental Medicine|volume=141|issue=Suppl|year=1983|pages=631–638|issn=1349-3329|doi=10.1620/tjem.141.Suppl_631}}</ref>。このメカニズムとして高血糖が生体のタンパク質を非酵素的に糖化させ、タンパク質本来の機能を損うことによって障害が発生する。この糖化による影響は、例えば[[血管]]の主要構成成分である[[コラーゲン]]や[[水晶体]]蛋白[[クリスタリン]]など寿命の長いタンパク質ほど大きな影響を受ける。例えば[[白内障]]は[[老化]]によって引き起こされるが、血糖が高い状況ではこの老化現象がより高度に進行することになる<ref name=sakamoto/>。同様のメカニズムにより[[動脈硬化]]や微小血管障害も進行する。また、糖化反応により生じた[[フリーラジカル]]等により[[酸化ストレス]]も増大させる<ref>川上正舒、[http://doi.org/10.11213/tonyobyo1958.46.913 動脈硬化症の分子機構] 糖尿病 Vol.46 (2003) No.12 P913-915, {{doi|10.11213/tonyobyo1958.46.913}}</ref>。<br />
<br />
日本において1991年から2000年までの10年間の18,385症例を分析した結果からは、死因第1位は[[悪性新生物]] 34.1%(うち肝臓癌 8.6%)、第2位は血管障害(糖尿病性腎症,虚血性心疾患,脳血管障害) 26.8%、第3位は感染症 14.3%、糖尿病性昏睡 1.2%と報告されている<ref name=tonyobyo.50.47>堀田饒、中村二郎、岩本安彦 ほか、[https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/50/1/50_1_47/_article/-char/ja/ アンケート調査による日本人糖尿病の死因 -1991∼2000年の10年間,18,385名での検討-] 糖尿病 Vol.50 (2007) No.1 P.47-61, {{doi|10.11213/tonyobyo.50.47}}</ref>。また、血糖コントロールの良否が死亡時年齢に影響を与え、男性で2.5歳、女性で1.6歳短命であった<ref name=tonyobyo.50.47 />。更に、糖尿病患者の平均死亡時年齢は、男性68.0歳、女性71.6歳で同時代の日本人一般の平均寿命に対し、男性9.6歳、女性13.0歳短命であった<ref name=tonyobyo.50.47 />。<br />
<br />
=== 糖尿病合併症 ===<br />
{{main|糖尿病慢性期合併症}}<br />
糖尿病合併症は3つの合併症([[糖尿病性神経障害]]、[[糖尿病性網膜症]]、[[糖尿病性腎症]])が特徴的であり、総称して'''細小血管障害'''と呼ばれる。また、高血糖を引き起こす急性合併症としては、[[糖尿病性ケトアシドーシス]]及び[[高浸透圧高血糖症候群]]がある。<br />
;糖尿病性神経障害<br />
:3つの合併症の中で最初に出現することが多く、末梢神経障害による手足先端のしびれや感覚の低下、自律神経障害による便秘・立ちくらみ(起立性低血圧)・[[勃起不全]]などを引き起こす。また、温痛覚が鈍り他の疾患の自覚症状に乏しくなることがある。臨床的には[[心筋梗塞]]の[[胸痛]]、重症[[虫垂炎]]の腹膜刺激症状、低温やけどなどが重要である。<br />
;糖尿病性網膜症<br />
:発症すると、硝子体や網膜の出血が起きるようになり、繰り返すごとに視力が低下する。生命を脅かすことはないが、[[QOL]]の観点から重要な合併症である。また突然の[[失明]]の危険性から激しい運動療法が禁忌になるため、治療自体の妨げにもなる{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2015|loc=Introduction}}。<br />
;糖尿病性腎症<br />
:3つの合併症の中で最も晩期に出現するが、最終的な寿命に大きな影響を与える合併症である。最初はごく微量のアルブミン尿のみだが、次第に明らかな尿蛋白や浮腫(むくみ)が出現し、最終的には[[腎不全]]となって[[血液透析]]が必要になる。<br />
<br />
[[心筋梗塞]]、[[閉塞性動脈硬化症]]、[[脳梗塞]]といった血管系疾患のリスクが上がるのも重大で、細小血管障害と対比して'''大血管障害'''と呼ばれる。<br />
<br />
他にも[[脂肪肝]]<ref>[http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201706/551537.html 糖尿病第4の合併症「脂肪肝由来の肝硬変」] 日経メディカル 記事:2017年6月6日</ref>、皮膚症状(糖尿病性リポイド類壊死)、創傷治癒能力の低下、易感染性(終末像は[[敗血症]])などの症状が起こりやすい{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2015|loc=Introduction}}<ref name=kiyo/>。<br />
<!--<br />
慢性期になって、下記の合併症が発症したり進行すると、それに応じた症状が出現する。<br />
<br />
=== 糖尿病性昏睡 ===<br />
[[糖尿病性昏睡]]は糖尿病の急性合併症であり、一時的に著しい高血糖になることによって昏睡状態となる。体調不良によって平常通りに服薬できなかった場合、いわゆる[[シックデイ]]の時に特に起こりやすく[[糖尿病性ケトアシドーシス]](DKA)、[[高浸透圧高血糖症候群]](HHS、非ケトン性高浸透圧性昏睡、HONK)、[[乳酸アシドーシス]]などがある。<br />
{{main|糖尿病性昏睡}}<br />
<br />
=== 慢性期合併症 ===<br />
{{main|糖尿病慢性期合併症}}<br />
<br />
2型糖尿病の治療の目的は慢性期合併症の予防である。動脈硬化による合併症に近いものが多い傾向がある。[[分子]]中に[[アルデヒド基]]を持ち、[[蛋白質]]を構成する塩基性アミノ酸側鎖の[[アミノ基]]と高い反応性を持つブドウ糖の糖化ストレスにより血管系をはじめとした各器官に慢性的な障害をもたらす。このブドウ糖とタンパク質の反応は[[メイラード反応]]の前半部分に相当し、またアルデヒド基とアミノ残基の反応によるタンパク質の[[架橋反応]]である点で[[ホルマリン]]による生物組織の[[固定 (組織学)|固定]]作用とも共通する要素を持つ。<br />
特に有名な合併症は大血管障害としての[[心筋梗塞]]、小血管障害としては[[糖尿病性腎症]]、[[糖尿病性網膜症]]、糖尿病性神経症の三大合併症などがあげられる。また感染症にかかりやすくなったりもする。<br />
--><br />
<br />
===アルツハイマー型認知症===<br />
糖尿病は[[アルツハイマー型認知症]]のリスク要因となっている<ref name=kiyo/>。インスリンの分泌を増やす糖質中心の食習慣、運動不足、内臓脂肪過多がアルツハイマー型認知症の原因となる[[アミロイド]]ベータの分解を妨げているとしている。アミロイドベータも分解する能力のあるインスリン分解酵素が糖質中心の食生活習慣によって血中のインスリンに集中的に作用するため、[[脳]]でのインスリン分解酵素の濃度が低下し、アミロイドベータの分解に手が回らずに蓄積されてしまうとしている。<br />
<br />
===悪性腫瘍===<br />
1998年の久山町の調査では、糖尿病は[[悪性腫瘍]]死の発生のリスクを有意に増大させ、[[高血糖]]の程度を示す[[ヘモグロビンA1c]]の高値の者ほど[[胃がん]]の発生率が高かった。糖尿病及び高血糖は悪性腫瘍の重要な危険因子である<ref name=kiyo>[http://dx.doi.org/10.11320/ningendock.24.1169 変貌する生活習慣病の現状と課題:久山町研究]、清原 裕、人間ドック (Ningen Dock)、Vol.24 (2010) No.Suppl</ref>。糖尿病と診断されたことのある人はない人に比べ20-30%ほど、後にがんになりやすくなる傾向があり、男性では[[肝がん]]、[[腎臓がん]]、[[膵がん]]、[[結腸がん]]、[[胃がん]]、女性では[[胃がん]]、[[肝がん]]、[[卵巣がん]]でこの傾向が強かった<ref>[http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/288.html 糖尿病とその後のがん罹患との関連について]| 現在までの成果 |多目的コホート研究 |独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部</ref>。C-ペプチドは、[[インスリン]]生成の際、インスリンの前駆体であるプロインスリンから切り放された部分を指すが、男性では、C-ペプチド値が高いと[[大腸癌]]リスクが高くなる。C-ペプチドは男性の結腸癌と関連がある<ref>[http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/296.html インスリン関連マーカーと大腸がん罹患との関係についてJPHC Study 多目的コホート研究] (独立行政法人国立がん研究センター)</ref>。<br />
<br />
== 検査 ==<br />
{{main|糖尿病の検査}}<br />
糖尿病の診断や治療効果判定のためには血液検査のほかに様々な検査を行う。また慢性期合併症の治療目的で行われることもある。<br />
<br />
* [[耐糖能異常]]検出マーカーとしての[[イノシトール]]<br />
[[イノシトール]]([[myo-イノシトール]])はグルコースと類似の構造を持つ糖アルコールであり、[[ホスファチジルイノシトール]]を加水分解することで得られる[[インスリンメッセンジャー]]である。<ref>[http://iospress.metapress.com/content/x03208172522kw60/ Urinary chiro- and myo-inositol levels as a biological marker for type 2 diabetes mellitus.]</ref>[[イノシトール]]は、通常糸球体より排泄され、尿細管で再吸収されるが、高血糖状態においては、グルコースと競合するため、再吸収されず尿中排泄量が増加する。その結果、体内の[[イノシトール]]量が低下し、ポリオール代謝異常によって、神経症の成因となる<ref>{{cite journal |author=Yamakoshi M, Kawazu S |title=Lucica MI urinary myoinositol kit: a new diagnostic test for diabetes mellitus and glucose intolerance |journal=Mol Diagn Ther |volume=12 |issue=3 |pages=189–91 |year=2008 |pmid=18510382 |doi= |url=}}</ref>。<br />
<br />
== 診断 ==<br />
{{main|糖尿病の診断}}<br />
[[日本]]では、日本糖尿病学会が2010年7月より新しい診断基準を施行した。(従来の診断基準は1999年に施行されたもの)<br />
<br />
新基準では、血糖値だけでなく[[ヘモグロビンA1c]](HbA1c)の基準も設けられ、血糖値(空腹時血糖値、[[経口ブドウ糖負荷試験]](75gOGTT)の2時間後血糖値、随時血糖値)及びHbA1cの検査結果で判定を行う。<br />
<br />
{| class="wikitable" style="width:55%; text-align:center" <br />
|+ブドウ糖負荷試験の判定基準<br />
! !! 正常型 !! 境界型 !! 糖尿病型<br />
|-<br />
| 空腹時血糖値 || (未満)<math> 110mg/dl <\ </math> || <math> 110 \sim 125mg/dl </math>|| <math>\geqq 126mg/dl</math>(以上)<br />
|-<br />
| 2時間後血糖値 || (未満)<math> 140mg/dl <\ </math> || <math> 140 \sim 199mg/dl </math>|| <math>\geqq 200mg/dl</math>(以上)<br />
|-<br />
| 判定条件 || 空腹と2時間後の<br>いずれも || または || または<br />
|}<br />
<br />
;一回目の判定で糖尿病と診断されるケース<br />
*血糖値とHbA1cがともに糖尿病型だった場合<br />
*血糖値のみが糖尿病型であり、口渇や多飲、多尿など糖尿病の典型症状や糖尿病性網膜症がみられる場合<br />
<br />
;二回目の判定で糖尿病と診断されるケース<br />
*一回目では血糖値のみが糖尿病型。二回目で血糖値、HbA1cのいずれか(若しくは両方)が糖尿病型だった場合<br />
*一回目ではHbA1cのみが糖尿病型。二回目で血糖値が糖尿病型だった場合<br />
<br />
血糖値、HbA1cのいずれかが糖尿病型だったにもかかわらず、上記以外ケースで糖尿病と診断にいたらなかった場合は「糖尿病疑い」とされる。糖尿病疑いの人は3〜6か月以内の再検査が推奨され、その時点で再度判定することになる。<br />
<br />
== 治療 ==<br />
{{main|糖尿病の治療}}<br />
<br />
概要としては以下のとおりである。糖尿病の治療は分類、または重症度(進行度)によって異なる。<br />
<br />
*1型糖尿病においては分泌できなくなったインスリンを補う他ないため、早期から一生涯インスリン治療(各種インスリン製剤の皮下注射)を行う。<br />
*2型糖尿病に対しては様々なパターンの治療が行われる。<br />
**まずは[[食事療法]]と[[運動療法]]が行われる{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2015|loc=Chapt.1.2}}。具体的には食事パターンを規則正しくし、食欲を増進させるアルコールを控え、摂取エネルギー量を体重に応じた値以下とする{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2015|loc=Chapt.1.2.1}}。糖尿病患者向けに開発された食品の利用も推奨される{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2015|loc=Chapt.1.2.1}}。これによって血糖値が正常化するならそれで問題はない。<br />
**食事療法と運動療法で血糖値が正常化しない、もしくは最初から血糖値が非常に高くこれらの治療だけでは不十分と考えられるなら、[[経口血糖降下薬]]あるいは[[GLP-1]]受容体作動薬<!--、[[インクレチン]][[アナログ (化学)|アナログ]]←まだ概要に書くべきではないのでは。「それでもさらに不十分なら」といった位置づけかと思いますが・・・-->を併用する。<br />
**経口血糖降下薬あるいはGLP-1受容体作動薬でも血糖値が正常化しないなら[[インスリン]]自己注射を開始する。ただし、経口血糖降下剤を経由せず、当初からインスリン自己注射を行うという考え方も存在する。<br />
***2型糖尿病の場合では一度インスリンを導入しても、食行動と生活習慣を改善すれば血糖値が正常化してインスリン自己注射を止めることができる場合が多いが、高血糖の影響でインスリン分泌能が失われてしまい、一生涯インスリン自己注射を続けざるを得ない場合もある。<br />
**一度良好な血糖コントロールが得られてもその治療のまま一生続けられるわけではなく、生活習慣、低血糖のリスク、腎機能、肝機能、他の予後規定因子、治療継続可能性、経済性などを考えながら調整していく必要がある。<br />
<!--*治療効果判定は血糖値に準ずるパラメータで行うこととなっている。治療する目的は糖尿病の各種合併症を防ぐことである--><br />
**高血糖が過食を原因としている場合、[[袖状胃切除術]]や[[十二指腸スイッチ]]といった外科[[手術]]により食欲を減退させ、肥満や2型糖尿病の治療の一環とすることもある<ref>小島 正継ほか. 日本消化器外科学会雑誌 2013;46(5):334-341.</ref>。『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013』では、[[歯周病]]との関連を説明し、必要に応じて治療するとされている日本歯周病学会もガイドラインを出している<ref>日本歯周病学会『[http://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_diabetes.pdf 糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン]』改定第2版</ref>。<br />
<br />
== 疫学 ==<br />
[[File:Diabetes world map - 2000.svg|thumb|300px|2000年における世界の糖尿病罹患率(千人あたり)。世界平均は2.8%である。<br />
{{Multicol}}<br />
{{legend|#b3b3b3|no data}}<br />
{{legend|#ffff65|≤&nbsp;7.5}}<br />
{{legend|#fff200|7.5–15}}<br />
{{legend|#ffdc00|15–22.5}}<br />
{{legend|#ffc600|22.5–30}}<br />
{{legend|#ffb000|30–37.5}}<br />
{{legend|#ff9a00|37.5–45}}<br />
{{Multicol-break}}<br />
{{legend|#ff8400|45–52.5}}<br />
{{legend|#ff6e00|52.5–60}}<br />
{{legend|#ff5800|60–67.5}}<br />
{{legend|#ff4200|67.5–75}}<br />
{{legend|#ff2c00|75–82.5}}<br />
{{legend|#cb0000|≥&nbsp;82.5}}<br />
{{Multicol-end}}]]<br />
[[Image:Diabetes mellitus world map - DALY - WHO2004.svg|thumb|300px|2004年の100,000人あたりの糖尿病の[[障害調整生命年]] (DALY){{Multicol}}<br />
{{legend|#b3b3b3|No data}}<br />
{{legend|#ffff65|<100}}<br />
{{legend|#fff200|100–200}}<br />
{{legend|#ffdc00|200–300}}<br />
{{legend|#ffc600|300–400}}<br />
{{legend|#ffb000|400–500}}<br />
{{legend|#ff9a00|500–600}}<br />
{{Multicol-break}}<br />
{{legend|#ff8400|600–700}}<br />
{{legend|#ff6e00|700–800}}<br />
{{legend|#ff5800|800–900}}<br />
{{legend|#ff4200|900–1,000}}<br />
{{legend|#ff2c00|1,000–1,500}}<br />
{{legend|#cb0000|>1,500}}<br />
{{Multicol-end}}]]<br />
<br />
[[世界保健機関]] (WHO) によると、2006年の時点で世界には少なくとも1億7100万人の糖尿病患者がいるという。患者数は急増しており、2030年までにこの数は倍増すると推定されている。糖尿病患者は世界中にいるが、先進国ほど(2型の)患者数が多い。しかしもっとも増加率の高い地域はアジアとアフリカになるとみられており、2030年までに患者数が最多になると考えられている。発展途上国の糖尿病は、都市化とライフスタイルの変化にともなって増加する傾向があり、食生活の西欧化よりも、糖質の多量摂取と運動量のバランスを欠く生活が長期間続くと発病する可能性がある。このことから糖尿病には(食事など)生活環境の変化が大きくかかわってくると考えられる。<br />
<br />
糖尿病は先進国において10大(あるいは5大)疾病となっており、他の国でもその影響は増加しつつある。米国を例にとると、北米における糖尿病比率は、少なくともここ20年間は増加を続けている。[[2005年]]には、米国だけでおよそ2,080万人の糖尿病患者がいた。全米糖尿病協会<ref>{{lang-en-short|American Diabetes Association}}</ref>によると、620万人の人々がまだ診断を受けておらず、糖尿病予備軍は4,100万人にまで及ぶ。英国イングランドとウェールズにおいては、有病率は 6-6.7%であり3200万人の患者がいる{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2015|loc=Introduction}}。<br />
<br />
{{Seealso|肥満#疫学}}<br />
=== 日本の有病率 ===<br />
{{Seealso|日本の健康}}<br />
[[日本]]国内の患者数は、この40年間で約3万人から700万人程度にまで増加しており、[[境界型糖尿病]](糖尿病予備軍)を含めると2000万人に及ぶとも言われる。厚生労働省発表によると、[[2006年]]11月時点の調査データから、日本国内で糖尿病の疑いが強い人は推計820万人であった。<br />
<br />
[[厚生労働省]]の2006年の[[人口動態統計]]によれば、全国の死亡率の都道府県ワースト1位は[[1993年]]から14年連続で[[徳島県]]である(10万人当たり19.5人、ちなみに最低は愛知県で7.5人)。特定の[[疾患]]等による[[死亡率]]で10年以上継続して、同一の県が1位で最低値と3倍近い差があるのは他にあまり例を見ない(他の地域的な高率としては、[[精神医療]]の分野において、[[秋田県]]が[[1995年]]から2006年まで12年連続[[自殺]]率1位であることなどが挙げられる。秋田県の自殺率、すなわち人口10万人当たりの自殺者数は42.7人で、全国平均は23.7人である)。糖尿病は[[生活習慣病]]の一種であるため、治療型から保健指導型の[[予防医療]]への転換を図らない限り、その死亡率を劇的に下げることは難しい。徳島県は医療機関数・医師数などが全国平均よりも高い県であるため、徳島県[[医師会]]や医療機関、徳島県その他行政機関及び地域住民の糖尿病予防に対する知識と意識の低さが要因として毎年指摘されている。徳島県は2005年11月に「糖尿病緊急事態宣言」を宣言したが、2006年時点では10万人当たりの死亡率は前年の18.0人から19.5人に悪化し、2007年時点では14.2人と改善した。また徳島県では20歳以上の男性の37.2パーセントが肥満であり、全国平均の28.4パーセントを上回っている。<br />
<br />
なお、厚生労働省の[[2007年]]の人口動態統計(概数)によれば、徳島県はワースト1位を15年ぶりに脱し、平均14.2人(人口10万人当たり死亡率)ワースト6位になった(全国平均は11.1人)<br />
<br />
2006年は、徳島県を筆頭に、2位鹿児島県(14.2人)、3位福島県(14.1人)、4位鳥取県(13.7人)、5位青森県(13.6人)がワースト5であり、逆に東京都(9.9人)の他、岐阜県(9.5人)、長崎県(9.5人)、大分県(9.5人)、宮崎県(9.3人)、滋賀県(9.1人)、埼玉県(8.9人)、奈良県(8.5人)、神奈川県(8.4人)、愛知県(7.5人)の10都県が10万人当たりの死亡率が10人を下回る。<br />
<br />
平成14年度に行われた厚生労働省の調査では、糖尿病が強く疑われる人の割合は、20歳以上の男性全体で12.8%であり、20歳以上の女性全体で6.5%であった。糖尿病が強く疑われ、現在治療を受けている人で合併症を併発している人の割合は、[[糖尿病性神経障害|神経障害]]で15.6%、[[糖尿病性網膜症|網膜症]]で13.1%、[[糖尿病性腎症|腎症]]で15.2%、足[[壊疽]]で1.6%であった。また、[[加齢]]と糖尿病は関連があり、糖尿病が強く疑われる男性の割合は、20-29歳で0%、30-39歳で0.8%、40-49歳で4.4%、50-59歳で14.0%、60-69歳で17.9%、70歳以上21.3%であった。さらに、[[肥満]]と糖尿病は関連があり、40-59歳の男性で、糖尿病が強く疑われる人の割合は、[[ボディマス指数|BMI]]18.5-22で5.9%、BMI22-25で7.7%、BMI25-30で14.5%、BMI30以上で28.6%であった。なお、加齢を重ねていない20-39歳の男性ではこのような大きな差は出ていなかった<ref name=mhlw>[http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/03/s0318-15.html 「平成14年度糖尿病実態調査報告」平成16年6月厚生労働省健康局]</ref>。<br />
<br />
=== 発症リスクに関する研究 ===<br />
さまざまな研究がなされている研究の一例を列挙する。<br />
<br />
#糖尿病になりやすくなる環境因子としては、圧倒的な危険因子として肥満<ref>{{cite journal |author=Mokdad AH, Ford ES, Bowman BA, Dietz WH, Vinicor F, Bales VS, Marks JS |title=Prevalence of obesity, diabetes, and obesity-related health risk factors, 2001 |journal=JAMA |volume=289 |issue=1 |pages=76–9 |year=2003 |pmid=12503980 |doi= |url=}}</ref>が挙げられるほか、喫煙<ref>{{cite journal |author=Willi C, Bodenmann P, Ghali WA, Faris PD, Cornuz J |title=Active smoking and the risk of type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis |journal=JAMA |volume=298 |issue=22 |pages=2654–64 |year=2007 |pmid=18073361 |doi=10.1001/jama.298.22.2654 |url=}}</ref>や運動不足<ref>{{cite journal |author=Hu FB, Sigal RJ, Rich-Edwards JW, Colditz GA, Solomon CG, Willett WC, Speizer FE, Manson JE |title=Walking compared with vigorous physical activity and risk of type 2 diabetes in women: a prospective study |journal=JAMA |volume=282 |issue=15 |pages=1433–9 |year=1999 |pmid=10535433 |doi= |url=}}</ref>などがある。<br />
# 20歳から体重が5kg以上増加した群で糖尿病発症のリスクが上昇<ref>[http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2120.html 成人期における体重変化と糖尿病との関連について]、現在までの成果|多目的コホート研究|独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部</ref>。<br />
# コホート研究によって筋肉労働や激しいスポーツをしない人が多量の米飯を摂取することで糖尿病リスクを上昇させていることが報告されている<ref>[http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2418.html 米飯摂取と糖尿病との関連について]、現在までの成果|多目的コホート研究|独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部</ref>。<br />
# [[亜鉛]]の欠乏が糖尿病の発症リスクを高めるとする報告がある<ref>[http://dx.doi.org/10.1265/jjh.69.15 亜鉛と糖尿病] 日本衛生学雑誌 Vol.69 (2014) No.1 p.15-23</ref>。<br />
# 「[[マグネシウム]]摂取量が関与している」との報告があり<ref name="N525011">[http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jds2012/201205/525011.html マグネシウム摂取量の増加で2型糖尿病発症率が有意に低下]日経メディカルオンライン 記事:2012.5.21</ref>、インスリン抵抗性、慢性炎症、飲酒習慣を有する患者では摂取量の上昇が発症抑制に効果があるとされている。しかし、一方で、マグネシウム摂取量と糖尿病発症との関連なしとの報告がある<ref name="K2119">[http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2119.html マグネシウム摂取と糖尿病との関連について]、現在までの成果 |多目的コホート研究 |独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部</ref>。<br />
#2010年のハーバード大学による[[システマティック・レビュー]]と[[メタ分析]]によると、赤肉とくにハムやソーセージの加工肉の摂取量の増加は、糖尿病と冠動脈疾患のリスクの増加に関連付けられている<ref name="pmid20479151">{{cite journal| author=Micha R, Wallace SK, Mozaffarian D| title=Red and processed meat consumption and risk of incident coronary heart disease, stroke, and diabetes mellitus: a systematic review and meta-analysis. |journal=Circulation |year= 2010 |volume= 121 |issue= 21 |pages= 2271-83 |pmid=20479151 |doi=10.1161/CIRCULATIONAHA.109.924977 |pmc=2885952 }} </ref>。2010年のハーバード大学の研究で約20万人に対するコホート調査で1日あたり白米を50グラム玄米に置き換えることで、2型糖尿病のリスクが16%低下する<ref name="pmid20548009">{{cite journal| author=Sun Q, Spiegelman D, van Dam RM, Holmes MD, Malik VS, Willett WC et al.| title=White rice, brown rice, and risk of type 2 diabetes in US men and women. |journal=Arch Intern Med |year= 2010 |volume= 170 |issue= 11 |pages= 961-9 |pmid=20548009 |doi=10.1001/archinternmed.2010.109 |pmc=3024208 }} </ref>。また、妊娠前に[[ファーストフード]]を頻繁に食べた場合、糖尿病罹患リスクが増大することが報告されている<ref>[http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/ada2013/201306/531279.html 妊娠前にファーストフードを頻繁に食べた場合、妊娠糖尿病リスクがおよそ2倍に] 日経メディカルオンライン 記事:2013年6月25日</ref>。<br />
#女性では[[コーラ (飲料)|コーラ]]や[[果汁飲料]]などの[[清涼飲料水]]の飲用量が多いほど糖尿病の発症リスクが高いとの報告がある。多量の清涼飲料水の摂取は、急激な[[血糖]]・インスリン濃度の上昇をもたらし、[[耐糖能異常]]、[[インスリン抵抗性]]にもつながる可能性が指摘されている<ref>[http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3119.html 清涼飲料水(ソフトドリンク)と糖尿病発症との関連について]| 現在までの成果 |多目的コホート研究 |独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部</ref>。<br />
# [[野菜]]や[[果物]]の摂取は全体としては糖尿病発症リスクとの関連は認められないが、男性の過体重(BMI25以上)もしくは喫煙習慣のある人では野菜、特に[[アブラナ科]]の野菜を多く摂取しているグループで糖尿病リスクの若干の低下が示唆された<ref>[http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2978.html 野菜・果物摂取と糖尿病との関連について]| 現在までの成果 |多目的コホート研究 |独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部</ref>。<br />
# [[歯周病]]は、[[心筋梗塞]]や[[閉塞性血栓性血管炎|バージャー病]]、肋間神経痛、三叉神経痛、糖尿病と密接な関係にあることが、ごく最近の研究で確認された。糖尿病では''Porphyromonas gingivalis''感染が分泌を促進する[[腫瘍壊死因子]](TNF-α)によって、糖尿病が増悪され、この糖尿病によって歯周病が増悪されるという負の連鎖が起こる。これは「歯周病菌連鎖」や「歯周病連鎖」と呼ばれている<ref>吉江弘正他 『臨床歯周病学』 [[医歯薬出版]] 2007年 ISBN 4263456041</ref>。<br />
# コーヒーをよく飲む人たちでは糖尿病発症のリスクが低くなる傾向が見られた<ref>[http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/352.html 精神的要因、コーヒーと糖尿病との関連について]、独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部</ref>。<br />
# 糖や炭水化物主体の食生活を繰り返すことにより食後高血糖と[[インスリン]]分泌過多を繰り返すことによる[[インスリン抵抗性]]となり、インスリンの効きが悪くなり高血糖を維持、尿に糖が排出されることが分かっている。また食後高血糖とインスリン分泌過多を繰り返すことにより、[[膵臓]]の[[ランゲルハンス島]]β細胞が少しずつ死滅し、インスリン分泌能力が低下する。<br />
# 果物の摂食は2型糖尿病の発症リスクを低くするが、ジュースにした場合は逆に発症リスクを高める<ref name="MurakiImamura2013">{{cite journal|last1=Muraki|first1=I.|last2=Imamura|first2=F.|last3=Manson|first3=J. E.|last4=Hu|first4=F. B.|last5=Willett|first5=W. C.|last6=van Dam|first6=R. M.|last7=Sun|first7=Q.|title=Fruit consumption and risk of type 2 diabetes: results from three prospective longitudinal cohort studies|journal=BMJ|volume=347|issue=aug28 1|year=2013|pages=f5001–f5001|issn=1756-1833|doi=10.1136/bmj.f5001}}</ref>。<br />
# 7〜9時間の[[睡眠]]が望ましい。1晩の睡眠が6時間を切ると糖尿病のリスクも高まる<ref>{{cite web|url=http://www.cnn.co.jp/fringe/35066277.html|title=米学会が7時間の睡眠を勧告、不足で心臓病や脳卒中のリスク|accessdate=2016-04-01}}</ref>。<br />
<br />
=== 世界糖尿病デー ===<br />
{{main|世界糖尿病デー}}<br />
[[File:Bandai bridge Blue Lightup 2010.JPG|thumb|世界糖尿病デーのブルーライトアップをしている萬代橋]]<br />
上述の通り、現在、糖尿病を世界の成人人口の約5〜6パーセントが抱えており、その数は増加の一途を辿っている。また糖尿病による死者数は、[[後天性免疫不全症候群]] (AIDS) による死者数に匹敵し、糖尿病関連死亡は、AIDSのそれを超えると推計している。このような状況を踏まえ[[国際連合]]は、国際糖尿病連合 (IDF) が要請してきた「糖尿病の全世界的脅威を認知する決議」を[[2006年]][[12月20日]]に国連総会で採択し、[[インスリン]]の発見者であるバンティング博士の誕生日である[[11月14日]]を「世界糖尿病デー」に指定した。日本でも、[[2007年]]11月14日には東京タワーや鎌倉大仏、通天閣などを「世界糖尿病デー」のシンボルカラーである青にライトアップし、糖尿病の予防、治療、療養を喚起する啓発活動が展開された。<br />
<br />
なお、国連が「[[国際デー|世界○○デー]]」と疾患名を冠した啓発の日を設けたのは、[[12月1日]]の「世界エイズデー」に続き「世界糖尿病デー」が2つ目である。<br />
<br />
== 歴史 ==<br />
[[1674年]]、イギリスの臨床医学者[[トーマス・ウィリス]]はヨーロッパで当時奇病とされていた[[多尿症]]の研究をしていた。ウィリスは尿に含まれる成分を何としても知りたいと考え、患者の尿を舐めてみたところ、甘かったことが本病確認のきっかけとされている<ref>[[テルモ]]編『先駆者の勇気に応えたい―医療の歴史エピソード集』([[1981年]]、非売品)</ref>。<br />
<br />
== 脚注 ==<br />
{{脚注ヘルプ}}<br />
{{Reflist|2}}<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
'''臨床ガイドライン'''<br />
* {{Cite book|和書<br />
|author=国際糖尿病連合<br />
|year=2008<br />
|title=食後血糖値の管理に関するガイドライン<br />
|url=http://www.idf.org/webdata/docs/Japanese_GMPG_Final_280308.pdf<br />
|publisher=International Diabetes Federation:IDF<br />
}}<br />
* {{Cite book<br />
|author=International Diabetes Federation:IDF<br />
|year=2009<br />
|title=Oral health for people with diabetes<br />
|url=http://www.idf.org/webdata/docs/OralHealth_EN_RTP.pdf<br />
|publisher=International Diabetes Federation:IDF<br />
}}<br />
* {{Cite report|title=NG21: Type 2 diabetes: The management of type 2 diabetes |publisher=[[英国国立医療技術評価機構]] |date=2015 |url=https://www.nice.org.uk/guidance/ng21 |ref={{SfnRef|英国国立医療技術評価機構|2015}} }}<br />
*『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2010第1版』日本糖尿病学会編、南江堂、2010年10月、ISBN 978-4524253364。<br />
*『[http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0004/G0000270 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版(2010年)]』日本糖尿病学会([http://minds.jcqhc.or.jp/ Minds医療情報サービス])<br />
*『[http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0004/G0000188 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版(2007年)]』日本糖尿病学会、ISBN 978-4524242115。([http://minds.jcqhc.or.jp/ Minds医療情報サービス])<br />
*『糖尿病治療ガイド2010』日本糖尿病学会編、ISBN 9784830613760<br />
*『[http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0070/G0000192 糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン]』日本歯科医学会監、日本歯周病学会編。2008年。([http://minds.jcqhc.or.jp/ Minds医療情報サービス])<br />
<br />
'''その他'''<br />
*『超速効! 糖尿病診療エクスプレス(上巻)』ISBN 4903331032<br />
*『超速効! 糖尿病診療エクスプレス(下巻)』ISBN 4903331040<br />
*『Dr.東田の今さら聞けない病態生理 下巻』 ISBN 4903331083<br />
* 渡辺敏明・福井徹 『糖尿病精密検査該当者における血清ビオチンと血糖との関連についての検討』 1995年 第12回 微量栄養素研究会シンポジウム [http://www.japanclinic.co.jp/gakuju/sym12/12_099.pdf PDF]<br />
*『切手にみる糖尿病の歴史』堀田饒 ライフ・サイエンス出版 ISBN 978-4897753126<br />
*{{Cite book|和書|author=[[宮本正章]]|year=2011|title=知らないと怖い糖尿病の話|publisher=[[PHP研究所]]|isbn=978-4569799346}}<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
{{Commonscat|Diabetes mellitus}}<br />
*[[栄養学]]<br />
*[[ステビア]]<br />
*[[イノシトール]]<br />
*[[インスリン]]<br />
*[[運転免許に関する欠格条項問題]]<br />
<br />
== 外部リンク ==<br />
{{外部リンクの注意}}<br />
* [http://www.who.int/diabetes/en/ Diabetes Programme] - WHO<br />
* [http://pathways.nice.org.uk/pathways/diabetes Diabetes] - NICE Pathways<br />
* [http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/tounyou/ 糖尿病] - 厚生労働省<br />
* [http://www.mymed.jp/di/c6k.html MyMed糖尿病]<br />
* [http://www.wddj.jp/ 世界糖尿病デー]<br />
* [http://www.nittokyo.or.jp/ (社)日本糖尿病協会]<br />
* [http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/080/index.html 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター]<br />
<br />
*学会<br />
** [http://www.jds.or.jp/ 日本糖尿病学会] - 日本<br />
** [http://www.diabetes.org.uk/ The British Diabetic Association] - イギリス<br />
** [http://www.diabetes.org/home.jsp American Diabetes Association] - アメリカ<br />
** [http://www.deutsche-diabetes-gesellschaft.de Deutsche Diabetes-Gesellschaft] - ドイツ<br />
** [http://www.afd.asso.fr/ Association Française des Diabétiques] - フランス<br />
** [http://www.diabetes.org.br/ Sociedade Brasileira de Diabetes] - ブラジル<br />
** [http://www.fundaciondiabetes.org/ Fundación para la Diabetes] - スペイン<br />
** [http://www.diabetes.org/espanol American Diabetes Association Español] - ラテンアメリカ<br />
<br />
{{デフォルトソート:とうにようひよう}}<br />
[[Category:糖尿病|*]]</div>
126.114.83.232
スマートエントリー
2018-07-23T23:54:46Z
<p>126.114.83.232: /* 参考リンク */</p>
<hr />
<div>'''スマートエントリー'''とは、機械的な[[鍵]]を使用せずに車両のドア・トランクの施錠・開錠、エンジンの始動が可能な[[自動車]]の機能のことである。<br />
<br />
== 概要 ==<br />
スマートエントリーはキーレスエントリーを進化させたものであり、キーレスエントリーはキーのボタンを押さないと解錠・施錠はできないが、スマートエントリーは、ポケットやカバンに入れておいても、車両に近づく、あるいはドアノブに触れるだけでドアが解錠し、鍵穴にキーを指すことなくスマートエントリー搭載車にはたいてい装備されているエンジンスタートボタンを押すことでエンジンがかかる仕組みである<ref>[http://www.carsensor.net/contents/terms/category_465/_4471.html キーレスエントリー 【きー・れす・えんとりー】自動車なんでも用語集 カーセンサーネット]</ref>。<br />
<br />
1993年に[[シボレー・コルベット]]に採用されたパッシブ・キーレスエントリー・システム(Passive Keyless Entry System)や1998年に[[メルセデス・ベンツ・Sクラス]]に採用された「キーレス・ゴー」などを筆頭に2000年代中頃から高級車を中心に採用され始め、[[2012年]]現在、高級車から[[軽自動車]]まで、車種により標準装備、またはオプションで装着可能になりつつある。運転者の持つ携帯機(鍵)と自動車に搭載されているECU([[エレクトロニックコントロールユニット|Electronic Control Unit]])やBCM(Body Control Module)との間で通信を行い、通信が成立すればドアの施錠/開錠を行う。通信が成立した合図として、ドアの施錠・開錠した際に[[ハザード]]やルームランプを点滅させること(これをアンサーバックもしくはウェルカムランプという)や、メーカーによっては電子音(ピー音)でドライバーに通知する。エンジン、ハイブリッドシステム、EVシステムの始動も機械的な鍵なしで可能であるが、[[イモビライザー]]やステアリングロックなどの盗難防止機能がついていることが多いため、エンジン動作に関しては多重にセキュリティがかけられている。<br />
<br />
スマートエントリーは、ドライバーが車から離れるとは自動的に施錠されるが、携帯機を車内に置いたまま車外からドアを閉めると、施錠されずに警報音がなるなどの対策が各車両にとられている<ref>[http://gazoo.com/nvis/im/torisetu/1107/1107_3_3.pdf キー閉じ込み防止機能]</ref>。しかし、この対策も携帯機と通信が成立しない限り動作させることができないため、完璧ではない。車内とはいえ、どうしても電波の届かない空間が存在するため、ドライバーは常に携帯機を携帯し、車内に放置しない心がけが必要とされる。またそのことは各自動車のマニュアルにも明記されている。便利な反面、従来の機械式のキーでは起こらなかった問題も発生している。特に盲点となるのが、携帯機に触れなくてもエンジン始動、そして走行が可能なため、携帯機(キー)の存在が薄れること。例えば車に乗り込んだ際に携帯機がポケットから滑り出してシート脇や下に落ちたとする。しかしドライバーはポケットに入っていると思い込んでおり、目的地に到着してエンジン停止後降車しようとすると警報音が鳴り響き、それから携帯機を探さなくてはならない。さらに1つの携帯機を夫婦2人で共用している場合など、他方が途中で携帯機を持ったまま(カバンやポケットに入れたまま)降車してしまった場合、エンジンはかかっているが携帯機が手元にないという状態に陥ることがある。この場合ボタンを2回押さないとエンジンが停止しないような保護機能もあるが、マニュアル車でエンストした場合などはこの限りではないし、そのまま遠出をした場合など到着地で携帯機がないという状況になってしまう。<br />
<br />
携帯機の形は大抵、コンパクトなリモコン状のものだが[[トヨタ・クラウン|クラウン]](12代目: S180系 2005年以降)や[[トヨタ・エスティマ|エスティマ]](3代目 2006年以降)などの一部車種ではリモコン・センサー機能を統合させた腕時計式になっているものもある(トヨタではこれを「キーインテグレーテッドウォッチ」と呼ぶ)。<br />
<br />
なお、スマートエントリーとは[[トヨタ自動車]]の商品名であり、各メーカーにより名称は異なる。ただし、一般的に同機能が話題に上がる際、総称として「スマートエントリー」「インテリジェントキー」という言葉が使われることが多い{{疑問点|date=2012年11月}}([[商標の普通名称化]])。<br />
<br />
== メーカー別名称 ==<br />
{|class="wikitable" style=font-size:small<br />
|-<br />
! メーカー !! 機能名称 !! 携帯機名称<br />
|-<br />
! トヨタ自動車<br />
| スマートエントリー&スタートシステム || スマートキー<br />
|-<br />
! [[日産自動車]]<br />
| [[インテリジェントキーシステム]] || インテリジェントキー<br />
|-<br />
! [[本田技研工業]]<br />
| Hondaスマートキー・スマートカードキーシステム|| Hondaスマートキー・スマートカードキーシステム<br />
|-<br />
! [[スズキ (企業)|スズキ]]<br />
| キーレススタートシステム || 携帯リモコン<br />
|-<br />
! [[SUBARU (自動車)|SUBARU]]<br />
| キーレスアクセス&プッシュスタート || アクセスキー<br />
|-<br />
! [[三菱自動車工業]]<br />
| キーレスオペレーションシステム || キーレスオペレーションキー<br />
|-<br />
! [[ダイハツ工業]]<br />
| キーフリーシステム || 電子カードキー<br />
|-<br />
! [[マツダ]]<br />
| アドバンストキーレスエントリー&スタートシステム || アドバンストキー<br />
|-<br />
! [[いすゞ自動車]]<br />
| パッシブエントリー&スタートシステム ||<br />
|-<br />
! [[フォルクスワーゲン]]<br />
| スマートエントリー&スタートシステム“Keyless Access”<ref>[http://www.volkswagen.co.jp/ja/models/golf/spec_features.html フォルクスワーゲン公式ホームページ Golf 装備表]</ref>||<br />
|-<br />
! [[アウディ]]<br />
| アドバンストキーシステム ||<br />
|-<br />
! [[メルセデス・ベンツ]]<br />
| キーレスゴー&ハンズフリーアクセス ||<br />
|-<br />
! [[BMW]]/[[ミニ (BMW)|MINI]]<br />
| コンフォート・アクセス || リモート・コントロール・キー<br />
|-<br />
! [[ボルボ・カーズ|ボルボ]]<br />
| パーソナル・カー・コミュニケーター&キーレスドライブ || リモート・コントロール・キー<br />
|-<br />
! [[フォード・モーター|フォード]]<br />
| インテリジェントアクセス&プッシュボタンスタート/スマート・キーレスエントリーシステム ||<br />
|-<br />
! [[クライスラー]]/[[フィアット]]<br />
| キーレス Enter'N Go || <br />
|}<br />
なお、トヨタとダイハツでは、実際に製造したメーカーの名称が使われる(例:[[ダイハツ・ムーヴコンテ]]OEMの[[トヨタ・ピクシススペース]]や[[ダイハツ・ブーン]]OEMの[[トヨタ・パッソ]]<ref>2代目までは名義上はトヨタ製だが実際はダイハツ製のため「キーフリーシステム」。</ref>では「キーフリーシステム」、[[トヨタ・プリウスα]]OEMの[[ダイハツ・メビウス]]では「スマートエントリー&スタートシステム」)。<br />
<br />
== セキュリティ対策 ==<br />
自ら機械的な鍵をまわして施錠・開錠するのではなく、自動的に施錠/開錠するのでセキュリティ面に不安を覚える利用者も多い。<br />
そのため、施錠・開錠した際にセキュリティ動作を同時動作させることも多い。<br />
* 開錠した際に数秒間ドアを開かないままにしていると自動的に施錠する。<br />
* 施錠した際に盗難防止機能を動作させ、携帯機がない状態で無理やりドアを開くと警報が動作する(警笛、サイレン、無線通知など)<br />
<br />
== 携帯機の複数枚対応 ==<br />
家族などで1台の車両をシェアできるように携帯機も複数枚対応していることが多い。車両購入時付随してくる携帯機の数は1枚のみ(トヨタは2枚)であることが多いが、携帯機個別でも購入が可能である。各メーカー、車両にもよるが登録可能枚数は3 - 6枚対応の車両が多い。しかし、複数枚登録していると車両と携帯機の通信が競合することがあり、通信が成立しないときがある。そのため、各車両で[[アンチコリジョン]](衝突防止機能)や通信リトライなどで通信失敗を低減させている。ただし、登録枚数を多くすればするほど通信時間が長くなり、最悪の場合は利用者がボタンを押す、もしくは車両に近づいてから3秒程度間隔をおいてから開くことになり、違和感を覚えることがある。<br />
<br />
== 使用周波数帯 ==<br />
車両から携帯機に向けて発信される電波はLF([[長波]])、携帯機から車両に向けて発信される電波はUHF([[極超短波]])<ref>スマートエントリーの設計者は慣例としてUHFのことをRF([[高周波]])と呼ぶ。UHFでは通じないので注意が必要である。</ref>が使用されていることが多い。これは車内電波が車外に漏れてしまい、車外に携帯機が存在するのに車内に存在すると誤認するのを防ぐため、車両からの電界強度を調整するが、電界強度の微調整が可能なのがLF電波だからである。<br />
<br />
== 心臓ペースメーカーへの影響 ==<br />
電波を使用しているため、心臓ペースメーカーに対して影響を与える可能性がある。これは各種車両マニュアルにも記載されているが、心臓ペースメーカーを使用している場合は対応車両購入前に医療関係者と相談するなどの配慮が必要である。<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
* [[人体通信]]<br />
* [[センサネットワーク]]<br />
<br />
== 脚注 ==<br />
<div class="references-small"><references /></div><br />
<br />
==参考リンク==<br />
*[http://toyota.jp/request/equipment/function/index_02.html toyota.jp カーラインナップ |便利機能・安全装備 | スマートエントリー&プッシュスタート]<br />
*[https://www.asahi.com/articles/ASL6Y5QBTL6YTIPE03J.html 「軍艦の影響?車の電子キー不具合、長崎で多発 原因不明」(2018年7月23日、朝日新聞記事)]<br />
<br />
{{car-stub}}<br />
{{自動車部品}}<br />
{{デフォルトソート:すまあとえんとりい}}<br />
[[Category:自動車工学]]<br />
[[Category:自動車電子技術]]</div>
126.114.83.232
ノーム (数学)
2018-06-02T19:00:08Z
<p>126.114.83.232: </p>
<hr />
<div>{{要改訳}}<br />
数学の分野、特に[[楕円函数]]論において、'''ノーム''' (nome) とは、次式によって与えられる[[特殊函数]]のことである。 <br />
:<math>q<br />
=e^{-\frac{\pi K'}{K}}<br />
=e^{\frac{{\rm{i}}\pi\omega_2}{\omega_1}}<br />
=e^{{\rm{i}} \pi \tau}<br />
\, <br />
</math><br />
ここに ''K'' と ''iK''&nbsp;&prime; は{{仮リンク|1/4周期|en|quarter period}}(quarter period)であり、&omega;<sub>1</sub> と &omega;<sub>2</sub> は{{仮リンク|周期の基本ペア|en|fundamental pair of periods}}(fundamental pair of periods)である。記号としては、1/4周期 K と iK&nbsp;&prime; は通常、[[ヤコビの楕円函数]](Jacobian elliptic functions)の文脈においてのみ用いられるが、1/2周期 &omega;<sub>1</sub> と &omega;<sub>2</sub> は[[ヴァイエルシュトラスの楕円函数]]の文脈においてのみ用いられる。&omega;<sub>1</sub> と &omega;<sub>2</sub> を1/2周期というより全体の周期を表すために使うアポストル(Apostol)のような著者も居る。<br />
<br />
ノームは楕円函数やモジュラ函数が表す値として頻繁に使われる。その一方で、1/4周期が[[j-不変量|楕円モジュラス]]の函数であることから、函数として考えることもある。楕円モジュラス、1/4周期、従ってノームの実数値が一意に決まることから、この曖昧さが起きる。<br />
<br />
函数 &tau;&nbsp;=&nbsp;iK&nbsp;&prime;/K&nbsp;=&nbsp;&omega;<sub>1</sub>/&omega;<sub>2</sub> は、楕円函数の 2つの1/2周期の比なので、'''1/2周期比'''(half-period ratio)と呼ばれることもある。<br />
<br />
'''補ノーム'''(complementary nome) q<sub>1</sub> は、<br />
:<math>q_1=e^{-\frac{\pi K}{K'}}</math><br />
で与えられる。<br />
<br />
ノームに関連するさらなる定義や関係については、{{仮リンク|1/2周期|en|quarter period}}(quarter period)や[[楕円積分]](elliptic integral)を参照すること。<br />
<br />
==参考文献==<br />
* Milton Abramowitz and Irene A. Stegun, ''[[Abramowitz and Stegun|Handbook of Mathematical Functions]]'', (1964) Dover Publications, New York. {{OCLC|1097832}} . See sections 16.27.4 and 17.3.17. 1972 edition: ISBN 0-486-61272-4<br />
* [[Tom M. Apostol]], ''Modular Functions and Dirichlet Series in Number Theory, Second Edition'' (1990), Springer, New York ISBN 0-387-97127-0<br />
<br />
{{デフォルトソート:のおむ}}<br />
[[Category:楕円函数論]]<br />
[[Category:数学に関する記事]]</div>
126.114.83.232
出崎統
2018-03-30T17:36:05Z
<p>126.114.83.232: /* 参考文献 */</p>
<hr />
<div>{{記事名の制約|title=出﨑統}}<br />
{{JIS2004}}<br />
{{ActorActress<br />
| 芸名 = 出﨑 統<br />
| ふりがな = でざき おさむ<br />
| 画像ファイル = <br />
| 画像サイズ = <br />
| 画像コメント = <br />
| 本名 = <br />
| 別名義 = 崎枕、さきまくら、斉九洋、斎九陽、松戸館、松戸完、矢吹徹、多井雲<br />
| 出生地 = {{JPN}} [[東京都]][[目黒区]]<br />
| 死没地 = {{JPN}} 東京都[[三鷹市]]<br />
| 国籍 = <br />
| 民族 = <br />
| 身長 = <br />
| 血液型 = <br />
| 生年 = 1943<br />
| 生月 = 11<br />
| 生日 = 18<br />
| 没年 = 2011<br />
| 没月 = 4<br />
| 没日 = 17<br />
| 職業 = [[アニメ監督]]、[[演出家]]、[[脚本家]]<br />
| ジャンル = <br />
| 活動期間 = [[1963年]] - [[2011年]]<br />
| 活動内容 = <br />
| 配偶者 = <br />
| 著名な家族 = [[出崎哲|出﨑哲]](兄)<br />
| 所属劇団 = <br />
| 事務所 = <br />
| 公式サイト = <br />
| 主な作品 = <br />
| アカデミー賞 = <br />
| AFI賞 = <br />
| 英国アカデミー賞 = <br />
| セザール賞 = <br />
| エミー賞 = <br />
| ジェミニ賞 = <br />
| ゴールデングローブ賞 = <br />
| ゴールデンラズベリー賞 = <br />
| ゴヤ賞 = <br />
| グラミー賞 = <br />
| ブルーリボン賞 = <br />
| ローレンス・オリヴィエ賞 = <br />
| 全米映画俳優組合賞 = <br />
| トニー賞 = <br />
| 日本アカデミー賞 = <br />
| その他の賞 = <br />
| 備考 = <br />
}}<br />
'''出﨑 統'''(でざき おさむ、[[1943年]][[11月18日]] - [[2011年]][[4月17日]])は、[[日本]]の[[アニメ監督]]、[[演出家]]、[[脚本家]]、[[漫画家]]。[[東京都]][[目黒区]]生まれ。[[クレジットタイトル]]上では「出崎統」と表記されることもある。別名義として「崎枕」「さきまくら」「斉九洋」「斎九陽」「松戸館」「松戸完」「矢吹徹」「多井雲」など。生前は[[日本映画監督協会]]会員<ref>[http://www.dgj.or.jp/members/letter.php?type=3&jline=%E3%81%9F 日本映画監督協会 会員名鑑 物故会員名簿]</ref>。アニメ監督、[[プロデューサー]]の[[出崎哲|出﨑哲]]は実兄。<br />
<br />
==来歴==<br />
===少年期~1960年代===<br />
1943年、東京都目黒区で、[[東海大学|航空科学専門学校]]の[[教授]]であった出﨑晶の次男として誕生。[[明治時代]]に[[福島県]][[相馬郡]](現・福島県[[相馬市]])で[[干拓]]事業を行った出﨑栄太郎の曾孫にあたる。終戦後に相馬に移り住んだが、小学1年生のときに父が[[結核]]で死去。以後は東京都[[渋谷区]]や[[板橋区]]に転居し、母子家庭で育つ<ref>[[#大山・林2012|大山・林2012]]、P.74</ref>。小学4~5年生の頃より[[手塚治虫]]に憧れてストーリー漫画を描くかたわら、学校をさぼって映画館に通うほどの映画好きであった<ref>[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.10、11、13</ref>。その頃観た映画の中では『[[カサブランカ (映画)|カサブランカ]]』が特に印象に残っていると語っていた<ref name="[[#アニメック20|アニメック20]]、P.10">[[#アニメック20|アニメック20]]、P.10</ref>。<br />
<br />
[[1959年]]、[[東京都立北園高等学校]]に入学。同級生に[[江守徹]]、[[吉田日出子]]がいた。1年生のとき、[[貸本漫画]]誌『街』の新人コンクールで受賞し、貸本漫画家としてデビュー。『街』(セントラル文庫)などの雑誌で「ホオに傷のある男」「天使達」など<ref name="http://homepage.mac.com/wayang_gamelan/interview/dezaki/index.html 藤子FCネオ・ユートピア 出崎統インタビュー">[https://web.archive.org/web/20040205042319/http://homepage.mac.com/wayang_gamelan/interview/dezaki/index.html 藤子FCネオ・ユートピア 出崎統インタビュー]</ref>多数の読み切り作品を発表した<ref group="註">NHK『[[MAG・ネット]]』2011年6月4日放送分にて、本人が所有していた当時の作品「濁流」「ガラスは語る」の生原稿が公開された。また同原稿は出﨑の通夜および葬儀の際、斎場に展示された。</ref>。貸本漫画全盛期をよく知る漫画家の[[すがやみつる]]は、当時の出﨑の作風を「都会派アクション」と評し、バラリと前髪がたれたハンサムな若者が進駐軍払い下げの[[M3サブマシンガン|グリースガン]]をぶっ放すマンガばかり描いていた旨を記している<ref>[http://sugaya.otaden.jp/d2008-07-26.html すがやみつるblog 『仮面ライダー青春編』第14回 第2章 紙の街に生まれて]</ref>。しかし本人曰く、2年生のときに貸本業界の斜陽によって原稿依頼が来なくなったため<ref name="[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.11">[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.11</ref>、一旦漫画から足を洗って、同校卒業後に[[東芝]]に就職<ref>[[#少年マガジン別冊1981|少年マガジン別冊1981]]、P.116</ref><ref group="註">兄の哲も東芝に勤務していた。</ref>。1年半、工場勤務に従事する。<br />
<br />
翌[[1963年]]のゴールデンウイーク中、[[虫プロダクション]]の求人新聞広告を見つけ、同社のアニメーター採用試験を受験<ref name="[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.11">[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.11</ref>。応募約500人中、採用3人という難関を突破する<ref name="http://homepage.mac.com/wayang_gamelan/interview/dezaki/index.html 藤子FCネオ・ユートピア 出崎統インタビュー">[https://web.archive.org/web/20040205042319/http://homepage.mac.com/wayang_gamelan/interview/dezaki/index.html 藤子FCネオ・ユートピア 出崎統インタビュー]</ref>。本人の談によると、当然動画テストの試験はあったが、出﨑の漫画を読んだことがあった虫プロスタッフの[[杉井ギサブロー]]が「こいつなら採用しても大丈夫」と強く推したことが決め手だった。杉井はその際の印象を、面接時から独特の世界、明確な作家性、映像言語を持っていたと述懐している<ref name="[[#新潮2011|新潮2011]]、P.179">[[#新潮2011|新潮2011]]、P.179</ref>。<br />
<br />
これにより工場勤務を辞め、9月に同社に入社。1月から放送を開始していた初の本格的連続テレビアニメ『[[鉄腕アトム (アニメ第1作)|鉄腕アトム]]』の第39話「赤い猫の巻」(9月24日放送)で動画デビューを果たし、第51話「子象プーラの巻」(12月17日放送)では第二原画に昇格<ref name="[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.94">[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.94</ref>。入社3ヵ月ほどで4人の新人スタッフを束ねるポジションを与えられるなどの大抜擢を受ける<ref name="[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.12">[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.12</ref>。<br />
<br />
[[1964年]]、『鉄腕アトム』第66話「スペース・バイキングの巻」(4月4日放送)で原画担当となる<ref name="[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.94">[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.94</ref>。同年、先輩の高木厚に誘われ、アルバイトで[[東京ムービー]]制作作品『[[ビッグX]]』の絵コンテを担当。この当時から、シナリオを読んでつまらないと感じたら、独断によるストーリー改変を行って絵コンテを描いていた<ref name="[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.12">[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.12</ref>。同じくアルバイト仕事を受けていた杉井らとともに高木の自宅にスタジオを作り、虫プロに通いながらアルバイトをしていたが、やがてこれが虫プロの知るところとなる。<br />
<br />
結局、杉井を代表とする有限会社アートフレッシュとして独立することが認められ、虫プロの同僚だった[[吉川惣司]]、宇田川一彦、[[タツノコプロ]]の[[奥田誠治 (アニメーション演出家)|奥田誠治]]らとともに8月に同社に参加<ref group="註">後に脚本家の[[鈴木良武]]、東芝を退職した出﨑哲らが合流。</ref>。同社が虫プロの下請けとして受注した『鉄腕アトム』や『[[悟空の大冒険]]』で、各話演出/作画監督を担当した。初の公式各話演出作品は[[1965年]]3月27日放送の『鉄腕アトム』第112話「サムソンの髪の毛の巻」。<br />
<br />
[[1967年]]から放送がはじまった『悟空の大冒険』では、各話演出/作画監督の作業と並行して、[[虫プロダクション#虫プロ商事|虫プロ商事]]発行の月刊誌「[[COM (雑誌)|COM]]」にて同作の[[漫画化|コミカライズ]]版を7回にわたって連載<ref group="註">同連載は[[2003年]]発売の『悟空の大冒険』DVD-BOX付録として、虫プロ商事発行の「[[虫コミックス]]」仕様で単行本にまとめられた。</ref>。この頃に虫プロ内で演出に昇格した[[高橋良輔 (アニメ監督)|高橋良輔]]は、出﨑や[[富野由悠季]](当時は喜幸)の仕事を見て彼らの天才ぶりにショックを受け、長期にわたって挫折感の中にいたことを後に語った<ref>[http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20070828/133333/ 「まわりが“天才だらけ”の中で、どう生き延びる?」:日経ビジネスオンライン]</ref>。<br />
<br />
[[1968年]]、出﨑が独自性を活かすには「出﨑一家」を構えた方がいいとの杉井の判断により、同社を退社してフリーとなる<ref name="[[#アニメージュ201106|アニメージュ201106]]、P.143">[[#アニメージュ201106|アニメージュ201106]]、P.143</ref><ref group="註">「藤子FCネオ・ユートピア 出崎統インタビュー」ではフリーになった時期を『悟空の大冒険』の途中と語っているので、それに従えば1967年となる。</ref>。1969年には劇場用映画『[[千夜一夜物語 (1969年の映画)|千夜一夜物語]]』で原画とストーリーボードを担当<ref>[[#山本1989|山本1989]]、P.270</ref>。同作の制作終盤には、逼迫する制作進行状況を助けるため構成助手としても関わった。その際にチームワークによる映画作りの面白さに目覚めたと本人は語っていた。その後、日米合作アニメ『フロスティ・ザ・スノーマン』の制作時に杉野昭夫と机を並べて原画を描き、直接的に互いを意識するようになる<ref>[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.21、29</ref>。<br />
<br />
===1970年代===<br />
1970年4月から放送が開始された虫プロ制作の連続テレビシリーズ『[[あしたのジョー]]』で、初めて監督(チーフディレクター)を務める。同作の企画は、出﨑が自ら虫プロの企画室にいた[[丸山正雄]]に「どうしてもこれをやりたい」と持ちこんだものであった<ref name="[[#手塚FC2011|手塚FC2011]]、P.11">[[#手塚FC2011|手塚FC2011]]、P.11</ref>。出﨑の「実写を超えた迫力のあるものをつくる」という思いと、脚本家や各話演出家から上がってくるシナリオ、絵コンテには制作意図のズレがあり、出﨑はそれらの修正作業に時間を取られる。第1話「あれが野獣の眼だ!」で絵コンテを担当して以降、再び自分で1話分の絵コンテを全部描けたのは、第22話「まぼろしの力石徹」からだった<ref name="[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.14">[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.14</ref>。加えて、当時の制作進行を担当した下崎闊(真佐美ジュン)によれば、同作はスタッフ不足により、通常は1班が4週で1話を受け持つのに対し、2週に1本のペースで進められていた<ref>[http://blog.goo.ne.jp/mcsammy/c/34eae4ab0f2ae1bfbd1a08dc68236609 虫プロあしたのジョー - 真佐美 ジュン]</ref>。このためスケジュールが非常に逼迫したが、そのなかで出﨑はさまざまな実験的アイデアを作品に盛り込み、同作を最高視聴率29.2%(本放送時/ビデオリサーチ調べ<ref group="註">1980年の再放送では、さらに高い31.6%を記録。</ref>)を獲得するヒット作品に押し上げた。富野由悠季は後年、同作に各話演出で参加した際に出﨑の仕事を見て「日本のテレビアニメ界に天才がいる」と衝撃を受け、年下の出﨑を大先輩と敬い、頭を下げることができたと述べている<ref name="http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/100/80546.html NHK「かぶん」ブログ:出崎統さん通夜:富野 由悠季さん、ちばてつやさん、りんたろうさんインタビュー紹介">[http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/100/80546.html NHK「かぶん」ブログ:出崎統さん通夜:富野 由悠季さん、ちばてつやさん、りんたろうさんインタビュー紹介]</ref>。<br />
<br />
『ジョー』終了後、1年ほど絵コンテマンとして活動した後、1972年10月にプロデューサーの丸山正雄、おおだ靖夫、作画監督の[[杉野昭夫]]とともに、演出の[[波多正美]]、原画の[[川尻善昭]]ら『ジョー』制作班を引き連れて[[マッドハウス]]を設立。直後に東京ムービーから、杉野とのコンビで[[ちばてつや]]の『ユキの太陽』をアニメ化してほしいと打診があったが、企画段階で頓挫している<ref>[[#ムービー全史1999|ムービー全史1999]]、 P.95</ref>。結局、マッドハウスのスタッフとして最初に監督(クレジット上は「演出」)した作品は『[[ジャングル黒べえ]]』となった。これにより、「本来の仕事」が決まるまでとの約束で引き受けていた[[サンライズ (アニメ制作会社)|創映社]]制作の『[[ハゼドン]]』のチーフディレクター職を、第1話「ハゼドンがやってきた!」の演出のみで降板している<ref name="http://homepage.mac.com/wayang_gamelan/interview/dezaki/index.html 藤子FCネオ・ユートピア 出崎統インタビュー">[https://web.archive.org/web/20040205042319/http://homepage.mac.com/wayang_gamelan/interview/dezaki/index.html 藤子FCネオ・ユートピア 出崎統インタビュー]</ref>。<br />
<br />
以後は東京ムービー制作作品『[[エースをねらえ!]]』『[[空手バカ一代#アニメ版|空手バカ一代]]』『[[ギャートルズ|はじめ人間ギャートルズ]]』『[[ガンバの冒険]]』『[[元祖天才バカボン]]』や、[[ダックスインターナショナル]]制作の『[[まんが世界昔ばなし]]』など、多数の連続テレビシリーズを手がけた。当時の東京ムービー作品では、東京ムービーから資金援助を受けて設立された虫プロ系のマッドハウスと、東京ムービーとは業務提携関係にあったAプロダクション(元[[東映アニメーション|東映動画]]のスタッフで構成)がつねに同一作品に参加していた。両者間には激しいライバル意識が存在していた<ref>[http://www.style.fm/as/01_talk/ohashi02.shtml WEBアニメスタイル アニメの作画を語ろう animation interview 大橋学(2)]</ref>が、Aプロ主力の一人だった[[芝山努]]が『ガンバ』『元祖』の制作を通じて出﨑演出に触れるうち、虫プロ的作風である「少ない動画枚数でメリハリをつけた動き」の追求をするようになる<ref>『ガンバの冒険』DVD-BOX(デジタルサイト、2006年4月28日発売)付録ブックレット</ref>など、出﨑には大きな影響力があった。『元祖』で初めて出﨑と仕事をした鈴木清司は、当時の出﨑はすでにアニメ界ではカリスマ的存在だったと述べている<ref name="[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.38">[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.38</ref>。<br />
<br />
これらテレビシリーズと並行して、[[1974年]]には[[井上陽水]]の「[[闇夜の国から]]」の[[ミュージック・ビデオ|プロモーションフィルム]]や実写作品『[[愛と誠#派生作品|純愛山河 愛と誠]]』のオープニングなどの短編アニメも制作。「闇夜の国から」のプロデューサーを務めた[[山本又一朗]]は、同作品の制作時に出﨑の並々ならぬ才能を感じたことで、後にプロデュースを担当した劇場用映画『[[ゴルゴ13#劇場版アニメ|ゴルゴ13]]』の監督に出﨑を指名することになる<ref>[[#ビッグコミック1983|ビッグコミック1983]]</ref>。また[[1976年]]にはさきまくら名義で絵を担当し、アリス館から絵本『ドングドンとことだま大王』(ストーリー担当は脚本家の[[吉田喜昭]])を発表するなど、多方面での活動が活発化している。<br />
<br />
[[1977年]]、[[日本テレビ]]が「開局25周年記念作品」と銘打ち、テレビアニメとしては空前の制作費を投入して制作した連続テレビシリーズ『[[家なき子 (アニメ)|立体アニメーション 家なき子]]』で、総監督と全話の絵コンテを担当。加えて、同作で用いられた、画面が立体的に見える特殊な撮影法の秘密漏洩を避けるため、全カットのレイアウトチェックも一人で担当した(本人の談によれば、クレジットで「画面設定」と表示される[[大橋学]]は、実際はレイアウトに携わっていないとのこと)<ref>[[#早稲田アニメ同好会1983|早稲田アニメ同好会1983]]</ref>。その後番組『[[宝島 (テレビアニメ)|宝島]]』を経て、[[1979年]]、かつての連続テレビシリーズの再編集ではない完全新規制作の劇場用映画『エースをねらえ!』で初の劇場用映画の監督を務めた。『家なき子』『宝島』『劇場版エース』はいずれも前述の杉野、小林、高橋との「出﨑カルテット」の連携で作られた作品であり、丸山正雄は『劇場版エース』において出﨑の作風が完成したとの認識を示している<ref name="[[アニマックス]]『放送直前スペシャル!ウルトラヴァイオレット:コード044』(2008年7月5日放送)">[[アニマックス]]『放送直前スペシャル!ウルトラヴァイオレット:コード044』(2008年7月5日放送)</ref>。また『劇場版エース』を出崎の最高傑作とする評もある<ref>『アニメーション監督 出崎統の世界』河出書房新社</ref>。この時代の出﨑の作品群に刺激され、[[福島敦子 (アニメーター)|福島敦子]]、[[森本晃司 (アニメーター)|森本晃司]]ら多くの人材がアニメ界に身を投じた<ref>[http://www.style.fm/as/01_talk/fukushima01.shtml WEBアニメスタイル アニメの作画を語ろう animation interview 福島敦子(1)]</ref><ref>[http://www.style.fm/as/01_talk/morimoto01.shtml WEBアニメスタイル アニメの作画を語ろう animation interview 森本晃司(1)]</ref>。<br />
<br />
===1980~1990年代===<br />
[[1980年]]、[[長浜忠夫]]が監督を降板した連続テレビシリーズ『[[ベルサイユのばら]]』に、第19話「さよなら妹よ!」からチーフディレクターとして参加。同年9月放送の総集編「ベルサイユのばらと女たち」(最終回の翌週放送)まで同作を担当した。翌月から放送が開始された連続テレビシリーズ『あしたのジョー2』の制作開始を機にマッドハウスを離れ、杉野と[[スタジオあんなぷる]]を設立<ref name="CLSP">{{Cite book|和書|title =キャラクターランドSPECIAL [[ウルトラマンオーブ]] THE ORIGIN SAGA|series=HYPER MOOK |date = 2017-02-05<!--奥付表記-->|publisher = [[徳間書店]] |pages=pp.93-97|chapter=[[吉田豪]]インタビュー 巨匠ハンター 9回戦 [[丸山正雄]]|isbn = 978-4-19-730144-7}}</ref>。アニメーションとして世界初の[[ドルビーラボラトリーズ#主な技術・製品|ドルビー・ステレオ方式]]を採用した劇場用映画『[[コブラ (アニメ)#SPACE ADVENTURE コブラ|SPACE ADVENTURE コブラ]]』、当時最新鋭のコンピューター・グラフィックス映像を組み込んだ劇場用映画『ゴルゴ13』などを手がける。小学校や公民館での巡回上映用映画『[[ガンバの冒険|冒険者たち ガンバと7匹のなかま]]』([[1984年]]公開/連続テレビシリーズ『ガンバの冒険』の再編集版)の作業を終えたのち、アメリカ進出をめざしていた東京ムービー社長・[[藤岡豊]]の命を受けて渡米。『[[マイティ・オーボッツ]]』『[[バイオニックシックス]]』といったSF作品や、幼児向けの動物もの『Sweet Sea』『The Blinkins, the Bear and the Blizzard』など、日米合作アニメの制作に数年間携わった。<br />
<br />
帰国後、[[1988年]]のOVA『[[エースをねらえ!#アニメ|エースをねらえ!2]]』で4年ぶりに日本国内向け作品を発表する。テレビにおける国内復帰作は、[[1989年]]から年1作のペースで放送が開始された[[ルパン三世#TVスペシャル|『ルパン三世』テレビスペシャル]]。同シリーズでは、第1作『[[ルパン三世 バイバイ・リバティー・危機一発!|バイバイ・リバティー・危機一発!]]』を監督したのを皮切りに、[[1995年]]までの7年間で4本の監督、1本の監修を担当した。また、[[1991年]]には連続テレビシリーズ『[[おにいさまへ…#アニメ|おにいさまへ…]]』を監督。同作は、当時まだ一般家庭への普及率が低かった[[衛星放送]]([[NHK衛星第2テレビジョン|NHK-BS2]])で放映されたが、庵野秀明や[[高橋留美子]]ら、アニメ/漫画業界内にも熱狂的なファンを生み出した<ref group="註">同作の[[レーザーディスク]]4巻に庵野、5巻に高橋からの直筆メッセージが掲載されている。</ref>。<br />
<br />
『おにいさまへ…』を機に[[手塚プロダクション]]制作作品に携わるようになり、手塚治虫が制作を進めながら未完に終わっていた日伊合作の連続テレビシリーズ『手塚治虫の旧約聖書物語』を引き継いで完成させる。その後の[[1997年]]には杉野との共著「アニメーション制作技法」([[1994年]]、創芸社)に掲載された未完の[[パイロットフィルム]]『4701白鯨』を原作とする完全オリジナル連続テレビシリーズ『白鯨伝説』をアニメ化、NHK-BS2にて放映。同作は放送中に制作会社が倒産し、第18話「野獣伝説」をもって放送が中断されるが、[[1999年]]に手塚プロの制作によって再開され、完結した。<br />
<br />
一方、[[1980年代]]末から[[1990年代]]にかけては、出﨑哲が設立した[[マジックバス]]が制作に関わった『[[華星夜曲]]』『修羅之介斬魔剣・死鎌紋の男』ほか、多数のOVA作品を手がけている。なかでも最大のヒット作となったのが、1993年からリリースが開始された手塚プロ制作の『[[ブラック・ジャック (OVA)|ブラック・ジャック]]』である。原作と大きく異なる劇画調のキャラクターデザインを用いたこの作品は、[[2000年]]までに、OVA10話に加えて劇場用映画1本(第51回[[毎日映画コンクールアニメーション映画賞]]受賞)が制作された。また[[1998年]]には、再び山本又一朗のプロデュースにより15年ぶりに『ゴルゴ13』の新作『[[ゴルゴ13#OVA|ゴルゴ13~QUEEN BEE~]]』を監督し、OVAで発表している。<br />
<br />
===2000~2011年===<br />
[[2000年代]]には幼児向け作品『[[とっとこハム太郎#劇場版|劇場版とっとこハム太郎]]』シリーズ全4作や、[[美少女ゲーム]]を原作とした『[[AIR (ゲーム)|AIR]]』『[[CLANNAD (ゲーム)|CLANNAD]]』劇場版など、自らの新境地となる作品の監督を務めた。また[[2005年]]には『[[コブラ (アニメ)#スペースコブラ|スペースコブラ]]』以来23年ぶりとなる地上波での連続テレビシリーズ『[[雪の女王 (NHKアニメ)|雪の女王 The Snow Queen]]』を監督。制作途中で病気を患いながらも、62歳にして全36話の絵コンテを全て担当(うち2本のみ他者と共同)する。<br />
<br />
さらに、28年ぶりにマッドハウス作品の監督となった[[2008年]]の『[[ウルトラヴァイオレット#テレビアニメ|ウルトラヴァイオレット:コード044]]』と、[[トムス・エンタテインメント]]と手塚プロが共同で制作した[[2009年]]の『[[源氏物語千年紀 Genji]]』では共に1クール弱の放送期間ながら、キャリア初の連続テレビシリーズ全話に渡る監督・脚本・絵コンテ担当を実現した。この時、既に癌を発症しており、『ウルトラヴァイオレット』は丸山から最後の仕事として持ちかけられたものであった<ref name="CLSP" />。<br />
<br />
ただし『ウルトラヴァイオレット』では、あらすじはあってもシナリオ決定稿はなく、ほぼぶっつけ本番で直接絵コンテ作業を行う方式だった<ref name="[[アニマックス]]『放送直前スペシャル!ウルトラヴァイオレット:コード044』(2008年7月5日放送)">[[アニマックス]]『放送直前スペシャル!ウルトラヴァイオレット:コード044』(2008年7月5日放送)</ref>。『Genji』は『あさきゆめみし』からの企画変更に伴う制作スケジュールの逼迫により、第3話「夕顔」以降は週1話ペースでの絵コンテ制作というハードな状況となった<ref>[[#別冊宝島2009|別冊宝島2009]]、P.86</ref>。第10話「謀叛」と11話「若紫へ」に至っては、後に本人が、もうすぐアフレコが始まるという時にまだ後半の絵コンテを描いていたと語った<ref>DVD『源氏物語千年紀 Genji 第四巻』([[角川エンタテインメント]]、2009年7月29日発売)特典:ミカドラジヲ4</ref>ほど緊迫した状態であった。<br />
<br />
『Genji』終了後は、2009年7月から放映される予定だった<ref group="註">実際には2010年1月から放送。</ref>『[[コブラ (アニメ)#COBRA THE ANIMATION|COBRA THE ANIMATION]]』テレビシリーズ版の監督を務めることになっており、すでに2008年6月には記者会見も開かれていた<ref>[http://www.buichi.com/top/cargo/anime_press/index.html COBRA THE ANIMATION制作会見 - buichi.com]</ref>が、土壇場で降板。[[肺癌]]の治療に入る。その後、11年ぶりに制作されたOVA『ブラック・ジャック』シリーズ2本に監修者として参加している途中の[[2011年]][[4月17日]]、肺癌のため東京都三鷹市の病院で死去。{{没年齢|1943|11|18|2011|4|17}}。喪主は出﨑哲が務めた<ref>[http://www.jiji.com/jc/zc?k=201104/2011041800340 時事ドットコム:出崎統氏死去=アニメーション監督]</ref>。<br />
<br />
==概要==<br />
テレビアニメの草創期より制作現場に入り、[[1970年]]に26歳で『[[あしたのジョー#あしたのジョー|あしたのジョー]]』(テレビ版)を監督。『[[エースをねらえ!#アニメ|エースをねらえ!]]』『[[ガンバの冒険]]』『[[家なき子 (アニメ)|立体アニメーション 家なき子]]』『[[宝島 (テレビアニメ)|宝島]]』『[[ベルサイユのばら#テレビアニメ|ベルサイユのばら]]』『[[あしたのジョー#あしたのジョー2|あしたのジョー2]]』など[[1970年代]]~[[1980年代]]のテレビ/劇場版アニメをはじめ、67歳で死去するまでにテレビシリーズ、劇場用映画、[[OVA]]アニメを30タイトル以上監督した。全キャリアを通じ、作品発表のインターバルが1年以上空いたことは稀で、ときには2本以上のテレビシリーズ監督(チーフディレクター)を掛け持ちしたこともある。<br />
<br />
[[劇画]]、[[ギャグ漫画]]、[[少女漫画]]、[[児童文学]]、内外の古典文学など幅広いジャンルをカバーした出﨑の作風について、アニメプロデューサーの[[山崎敬之]]は、絵をあまり動かさず、詩的に表現する演出であり、[[貸本漫画]]家の過去を持つことによりドラマを知っていると評した<ref>[[#山崎2005|山崎2005]]、P.180</ref>。本人は、若き日に『[[鉄腕アトム (アニメ第1作)|鉄腕アトム]]』の絵コンテチェックを受けた際、[[手塚治虫]]から、エンターテインメントを忘れないように、と声をかけられ、後々までその意味を考え続けたと語っていた<ref>[http://ascii.jp/elem/000/000/166/166784/index-3.html 五大監督かく語りき……「私が手塚治虫から学んだこと」]</ref>。<br />
<br />
また「出﨑演出」と総称される独創的な技法''([[#表現手法]]の項参照)''を編み出したことについて、[[虫プロダクション#株式会社虫プロダクション(旧虫プロ)|旧虫プロダクション]]の同僚だった[[りんたろう]]は「誰にも真似できない作り方」と評している<ref name="http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/100/80546.html NHK「かぶん」ブログ:出崎統さん通夜:富野 由悠季さん、ちばてつやさん、りんたろうさんインタビュー紹介">[http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/100/80546.html NHK「かぶん」ブログ:出崎統さん通夜:富野 由悠季さん、ちばてつやさん、りんたろうさんインタビュー紹介]</ref>。同社の後輩である[[富野由悠季]]は、[[リミテッド・アニメーション|リミテッドアニメ]]におけるもっとも論理的な画面の見せ方を発明したのは出﨑だとし、ジャパニメーションへの影響力の大きさを讃える<ref name="http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/100/80546.html NHK「かぶん」ブログ:出崎統さん通夜:富野 由悠季さん、ちばてつやさん、りんたろうさんインタビュー紹介">[http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/100/80546.html NHK「かぶん」ブログ:出崎統さん通夜:富野 由悠季さん、ちばてつやさん、りんたろうさんインタビュー紹介]</ref>とともに、自身は出﨑の演出を真似ようとしたが太刀打ちできなかったと述べている<ref>富野由悠季「だから、僕は...」より</ref>。<br />
<br />
作品作りの際の各セクション責任者には、深く信頼したメンバーを置くのが常だった。『あしたのジョー』からはじまった[[キャラクターデザイン]]・[[作画監督]]の[[杉野昭夫]]とのタッグは「アニメ界の黄金コンビ」と称され<ref>[http://www.style.fm/as/05_column/365/365_016.shtml WEBアニメスタイル アニメ様365日 第16回 『宝島』]</ref>、よく知られていたが、加えて[[美術監督#アニメーションの美術監督|美術監督]]の[[小林七郎]]と[[撮影監督#アニメの撮影監督|撮影監督]]の高橋宏固もきわめて重要なスタッフであり、1970年代後半~1980年代前半にはこの4人で「出﨑カルテット」とも呼べるチームを形成していた<ref name="[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.97">[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.97</ref>。他にも、美術監督の[[河野次郎]]、[[作曲家]]の[[羽田健太郎]]、[[音楽監督]]の[[鈴木清司]]、[[声優]]の[[野沢那智]]、[[菅谷政子]]、[[大塚明夫]]、[[水谷優子]]、[[武藤礼子]]、[[井上和彦 (声優)|井上和彦]]、[[勝生真沙子]]らが多数の出﨑作品に参加している。<br />
<br />
==作品作り==<br />
===絵コンテへのこだわりと作品の独自解釈===<br />
週に1本放送される連続テレビアニメシリーズでは、スケジュールの都合上、数人がローテーションで各話の[[絵コンテ]]を担当し、監督はそのチェック/修正指示を行って作品の方向性を統一するのが通例である。しかし出﨑は自身の監督作品において、一人の人間の感性に貫かれた作品でなければ見る人は何を見たらいいのかわからない<ref name="[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.14">[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.14</ref>との理由で、ほとんどの話数の絵コンテを自ら担当した。ちなみに富野由悠季の著書「∀の癒し」(ハルキ文庫)には出﨑と富野が「絵コンテが作品の表現を支配するパーセンテージは70%」と確認し合ったことが述べられている。<br />
<br />
正式にクレジットされた、ないしは担当したことが明らかな絵コンテの合計本数は500本超。日本アニメ界屈指の分量であり、これを上回る本数をこなしたのは富野や[[奥田誠治 (アニメーション演出家)|奥田誠治]]など数人にすぎない。ただし出﨑が彼らと大きく異なるのは、担当した全本数のうち約9割が自身の監督作品<ref group="註">シリーズを統一する総監督が不在のまま、いわば「各話監督制」で制作された『はじめ人間ギャートルズ』『元祖天才バカボン』での各話演出分も含む。</ref>における絵コンテであることである<ref group="註">富野の場合は半分程度が、また奥田の場合は総本数の大半が、他の監督の元での各話演出、あるいは純粋な絵コンテマンとしての制作となっている。</ref>。<br />
<br />
「原作は、ある新しい世界を作るためのきっかけ」が持論<ref>[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.17</ref>。原作つき作品を異なる展開に改変するのはもとより、脚本家が書き上げ会議で承認されたシナリオ決定稿すら叩き台として扱い、最終的なストーリーとセリフは絵コンテ段階で独自解釈による物語の咀嚼を行って決定した。アニメ界の先輩である[[杉井ギサブロー]]が、そんなに脚本を変えるなら最初から自分で書けばどうかと質問した際、出﨑は、他人の脚本をもとに自分のアイデアが生まれるので、他人の脚本は必要だが、その通りに進める必要も感じない旨を述べたとのことである<ref name="[[#アニメージュ201106|アニメージュ201106]]、P.143">[[#アニメージュ201106|アニメージュ201106]]、P.143</ref>。この脚本の変更に対し、『[[ガンバの冒険]]』では馬嶋満、『[[あしたのジョー2]]』では[[大和屋竺]]が抗議して途中降板している。両作に携わった[[飯岡順一]]は「自ら脚本を書けばよいのに、脚本がなければカットが割れない。絵コンテが描けない」と評している<ref>飯岡順一『私の「ルパン三世」奮闘記 アニメ脚本物語』河出書房新社、2015年</ref>。<br />
<br />
絵コンテ段階で原作や脚本から離れた作品になる理由を、兄の出﨑哲は「出﨑が登場人物に深く感情移入するため」と語る<ref name="[[#新潮2011|新潮2011]]、P.179">[[#新潮2011|新潮2011]]、P.179</ref>。出﨑作品においては、キャラクターの容姿や性格の設定は必ずしも原作通りではない。たとえば[[ロバート・ルイス・スティーヴンソン]]原作の『宝島』に登場する悪役[[ジョン・シルバー]]を、出﨑は「海賊の親分=ロマンの塊」との考えから、原作の記述よりはるかに容姿端麗で、善悪を超越した「男の中の男」に設定している<ref>DVD『宝島MEMORIAL BOX2』(ケイエスエス、2001年11月29日発売)ライナーノーツ</ref>。こうして作り上げたキャラクターにさまざまな感情を移入しながら絵コンテを描き進めることで、結果として出﨑はストーリーを改変したのである。<br />
<br />
本人は絵コンテ制作中の自身の状態について、自分もキャラクターとともに作品世界に入り込むため物語の結末はわからないとし、また登場人物と一体となることでセリフが自然に出てくるまで入り込むと述べていた<ref>[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.24</ref>。だがその一方で、作品世界全体を俯瞰できる視点がないと作品は成立しないとも語っている<ref>[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.25</ref>。鈴木清司によれば、その作業は、『[[白鯨伝説]]』終了時に[[円形脱毛症]]によって[[落武者]]のような髪になったり、『[[雪の女王 (NHKアニメ)|雪の女王 The Snow Queen]]』の制作途中に病気にかかったりの、命を削っての精魂投入であった<ref name="[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.38">[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.38</ref>。<br />
<br />
集団による分業で成り立つ商業アニメーションの現場で終世この姿勢を貫いたことにより、原作者や脚本家との軋轢が生まれる場合もあった。前述のように『あしたのジョー』では山崎忠昭と雪室俊一が、脚本のあまりの改変ぶりを理由に降板する事態に発展。後に山崎と雪室は『日活アクション無頼帖』(ワイズ出版)で出﨑を激しく批判した。また『[[源氏物語千年紀 Genji]]』は、当初は[[大和和紀]]の漫画『[[あさきゆめみし]]』のアニメ化として制作が進んでいたが、出﨑が描いた第1話と第2話の絵コンテが原作とかなりテイストの違うものであったことに難色を示した大和側が原作を引き上げた末に、急遽立ち上げられた作品である<ref>[[#SPA!2011|SPA!2011]]、P.93</ref>。<br />
<br />
一方、『あしたのジョー』原作者のちばてつやのように、出崎を「自分よりジョーを理解してらっしゃる」と絶賛している例もある<ref>『アニメーション監督 出崎統の世界』河出書房新社</ref>。『ゴルゴ13』の原作者さいとう・たかをは、自作のアニメ映画化の際、「うん、面白かった。よくできてたね」と評している<ref>『BIG COMIC GRAPHIC ゴルゴ13 THE ANIMATION』小学館</ref>。また池田理代子のように『ベルサイユのばら』に続いて『おにいさまへ…』の監督を出崎に任せた例もある。<br />
<br />
出﨑が絵コンテを重視したもうひとつの理由として、貸本漫画家の過去を持つことも挙げられる。本人は初めて絵コンテを担当した頃、自分の漫画に動き、声、音楽をつけられるという感覚を得られたことが楽しかったと語っている<ref name="[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.12">[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.12</ref>。つまり出﨑にとってアニメーションフィルムとは漫画や映画の延長線上に存在するものであり、「全ての場合において絵が動く事がアニメーションの基礎である」という考え方とは一線を画す演出スタイルを取っている。<br />
<br />
===絵コンテの特徴と評価===<br />
出﨑の絵コンテでは、カット割りにおいては必ずしも動きの繋がりは重視されない。また、視覚的効果を上げるだけでなく、ときにキャラクターの心理までも表現する大胆な画面レイアウトも大きな特徴。多くの場合、筆致が非常にラフなため<ref>[[#大塚2006|大塚2006]]、P.193</ref>絵・文字とも判読が困難で、「読むのだけでギャラが欲しい」と言った演出家もいるとのこと<ref>[[#押井2011|押井2011]]、P.19</ref>。<br />
<br />
しかし小林七郎は出﨑の絵コンテについて、慣れると他の監督の絵コンテに比べて一番演出意図がわかりやすい<ref name="NHK『BSアニメ夜話 エースをねらえ!』における小林七郎の発言">[[日本放送協会|NHK]]『[[BSアニメ夜話]] エースをねらえ!』(2005年6月28日放送)における小林七郎の発言</ref>と絶賛した。また、出﨑の絵コンテは単なる指示用の書類ではなく「たたき台」であるとし、そこに描かれている内容をさまざまなスタッフとともに議論、検討して、表現を引き出そうとしたとも語っている<ref name="[[#新潮2011|新潮2011]]、P.179">[[#新潮2011|新潮2011]]、P.179</ref>。実際に『エースをねらえ!』(劇場版)では、絵コンテのイメージを徹底するため、[[レイアウトシステム|レイアウト]]原図を元に全てのカットごとに作画・美術・撮影の主要スタッフを集めて打ち合わせるという、前代未聞の作業を敢行している<ref name="NHK『BSアニメ夜話 エースをねらえ!』における小林七郎の発言">[[日本放送協会|NHK]]『[[BSアニメ夜話]] エースをねらえ!』(2005年6月28日放送)における小林七郎の発言</ref>。出﨑とともに[[マッドハウス]]を設立した[[丸山正雄]]は、同社の若いスタッフが出﨑をまねた粗い筆致の絵コンテを描くことがあるが、出﨑の場合は絵が巧いので粗いタッチでも絵コンテが成立するのだと述べた<ref name="[[アニマックス]]『放送直前スペシャル!ウルトラヴァイオレット:コード044』(2008年7月5日放送)">[[アニマックス]]『放送直前スペシャル!ウルトラヴァイオレット:コード044』(2008年7月5日放送)</ref>。<br />
<br />
初期監督作品では他者が絵コンテを担当した割合が比較的多いが、それらの大部分は出﨑自身が徹底的な手直しを行った。対して、出﨑が絵コンテマンとして制作した絵コンテが他者に改変された事例もいくつか存在する。『[[ルパン三世 (TV第1シリーズ)|ルパン三世]]』(テレビ第1作)第13話「タイムマシンに気をつけろ!」と17話「罠にかかったルパン」では、当時[[Aプロダクション]]に所属していた[[宮崎駿]]と[[高畑勲]]による改変を受けた。もっとも同作の作画監督を務めた[[大塚康生]]によると、宮崎と高畑は基本的に「出﨑の絵コンテのままで面白いので、手をつけずにおこう」とのスタンスだったらしく、絵コンテ自体はあまり変えずに作画段階でニュアンスを変更した部分が大きかったとのことである<ref>[[#大塚2006|大塚2006]]、P.194、197</ref>。<br />
<br />
===アニメーターとしての仕事と評価===<br />
1970年代なかばまでは演出とアニメーターを兼務していた。『鉄腕アトム』(第1作)で動画デビューを果たした約1年半後には同作の作画監督に昇進<ref group="註">自らが各話演出を務めた回のみの、兼任各話作画監督。</ref>。以後、『[[悟空の大冒険]]』、[[防災アニメ]]『ザ・ファイヤーGメン』でも作画監督を務めている<ref group="註">いずれも演出と兼任。</ref>。その他、『[[新宝島 (テレビアニメ)|新宝島]]』、『[[どろろ#アニメ|どろろ]]』第11話「ばんもんの巻・その三」、『フロスティ・ザ・スノーマン』、『あしたのジョー』第14話「KOゴングはまだか!」、また虫プロの劇場用長編アニメ『[[千夜一夜物語 (1969年の映画)|千夜一夜物語]]』などで原画を描いた。<br />
<br />
杉野昭夫はアニメーターとしての出﨑の実力を「相当描ける」と語っており<ref>[[#DIRECTOR'S2007|DIRECTOR'S2007]]、P.29</ref>、『千夜一夜物語』監督の[[山本暎一]]は、暗いイメージのシーンが巧かった旨の評価をしている<ref>DVD『千夜一夜物語』(コロムビアエンターテインメント、2004年1月28日発売)副音声座談会</ref>。作画スタッフとしての参加が確認できる最後の作品は、[[1976年]]10月放送の『[[まんが世界昔ばなし]]』第2話「[[美女と野獣]]」(キャラクターデザイン)。<br />
なお『[[哀しみのベラドンナ]]』に原画でクレジットされているが、これは配給会社への納入期日に間に合わせるために急遽仕上げたダミー版のための作業であり、その後リテイクの名目で完成した本編には出﨑が描いた絵は使用されていない<ref>[http://www.style.fm/as/13_special/mini_060119.shtml WEBアニメスタイル【特別企画】「アニメラマ三部作」を研究しよう! 杉井ギサブローインタビュー 前編・後編]</ref>。<br />
<br />
===後進の育成と業界への影響===<br />
かつて出﨑のもとで演出助手を務めた監督/演出家には、[[高屋敷英夫]]、[[竹内啓雄]]、[[大賀俊二]]、[[西久保瑞穂]]、松園公、桑原智、西田正義らがいる。桑原智は、出﨑は人材育成が上手だったとし、生き様に学ぶべきものがあったと述べている。また脚本家の森田真由美は、出﨑は教わる側が自覚的に何かをつかむまで妥協しなかった旨を語っている<ref>[http://tezukaosamu.net/jp/mushi/201106/special1.html 虫ん坊 2011年6月号 特集1:出崎統さん追悼 『ブラック・ジャック』カルテ11・12スタッフが出崎統を語る]</ref>。<br />
<br />
それ以外にも、出﨑に影響を受けた後進のアニメ監督やアニメーターは多い。[[押井守]]は『エースをねらえ!』(劇場版)を10回以上観て、「アニメーションを映画にする方法」を研究した旨を語っている<ref>[[#押井2011|押井2011]]、P.8</ref>。また[[庵野秀明]]も出﨑作品を研究しており、監督作『[[トップをねらえ!]]』に、『エースをねらえ!』へのオマージュとしてのパロディ的な要素を盛り込んだ。[[板垣伸]]は『[[アニメスタイル|WEBアニメスタイル]]』での連載コラム「板垣伸のいきあたりバッタリ!」第21回で熱烈な出﨑ファンであることを明かし<ref>[http://www.style.fm/as/05_column/itagaki21.shtml WEBアニメスタイルCOLUMN 板垣伸のいきあたりバッタリ! 第21回 で、結局その偉大な監督って誰だよ!?~『D.M.C』情報#01]</ref>、以後も同コラム内でたびたび出﨑作品についての感想・分析を書き記している。[[新房昭之]]はたびたび出﨑からの影響を口にし、出﨑の功績に対して世の中の評価が低い旨を述べている<ref>[[#ニュータイプ201107|ニュータイプ201107]]、P.211</ref>。<br />
<br />
===幻の企画===<br />
出﨑が映像化を希望しながら、制作に至らなかった作品がいくつかある。『宝島』を制作した後には、劇場用映画として[[ハーマン・メルヴィル]]の「[[白鯨]]」を企画。杉野昭夫によるイメージイラストも制作され、プレゼンテーションがかけられた<ref group="註">『杉野昭夫作品集』(講談社、1982年3月15日発行) P.88~89に、杉野によるイラストが掲載されている。</ref>。これは実を結ばなかったが、アイデアを温め続け、後に同小説をモチーフにしたオリジナル作品『白鯨伝説』を制作している。長年にわたって[[ジュール・ルナール]]の「[[にんじん (小説)|にんじん]]」をアニメ化したいと話していた<ref name="[[#新潮2011|新潮2011]]、P.179">[[#新潮2011|新潮2011]]、P.179</ref>他、晩年には丸山正雄の要請により、オリジナル時代劇の草案も書き起こしていた<ref name="[[#手塚FC2011|手塚FC2011]]、P.11">[[#手塚FC2011|手塚FC2011]]、P.11</ref>。<br />
<br />
===人物===<br />
[[スポーツカー]]を好み、20代前半頃には[[トヨタ・スポーツ800]]<ref name="[[#手塚FC2011|手塚FC2011]]、P.9">[[#手塚FC2011|手塚FC2011]]、P.9</ref>、20代後半で[[トヨタ・カローラ]]のスポーツタイプ<ref>[[#アニメスタイル201202|アニメスタイル201202]]、P.164</ref>、60代で[[トヨタ・スープラ#4代目 A80型(1993年-2002年)|トヨタ・スープラ]]<ref group="註">NHK-BS2『37年目のスペシャル対談 監督・出﨑統vs漫画家・ちばてつや』(2007年3月29日放送)内に、出﨑がちばの自宅にスープラで乗りつける場面があった。</ref>に乗っていた。生前最後となった2011年1月のインタビューでは、[[若者の車離れ|若者がスポーツカーに乗りたがらなくなった風潮]]を嘆き、無駄を楽しむ余裕の大切さを訴えている<ref name="[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.95">[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.95</ref>。またアートフレッシュ~マッドハウス在籍時代は、自分の車に丸山正雄を乗せ、卓を囲む相手2人を探し歩く日々を送るほどの[[麻雀]]好きでもあったという<ref name="[[#手塚FC2011|手塚FC2011]]、P.11">[[#手塚FC2011|手塚FC2011]]、P.11</ref>。<br />
<br />
愛煙家で、インタビュー時のスナップショット<ref name="[[#少年マガジン別冊1981|少年マガジン別冊1981]]、P.115">[[#少年マガジン別冊1981|少年マガジン別冊1981]]、P.115</ref>やプロフィール写真<ref>[[#出崎・杉野1994|出崎・杉野1994]]、P.159</ref>等で[[紙巻きたばこ|タバコ]]を吸っている姿が多く見られた。前述した生前最後のインタビューは肺癌の治療中に病院から一時帰宅して受けたものだったが、その際も喫茶店の喫煙席を指定していたことが記事中に記されている<ref name="[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.94">[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.94</ref>。<br />
<br />
インタビューや寄稿文によって、複数回の結婚歴があること<ref>[[#旧約聖書物語1999|旧約聖書物語1999]]、P.269</ref>や子どもがいること<ref>[[#旧約聖書物語1999|旧約聖書物語1999]]、P.270</ref>を明らかにしていた。<br />
<br />
自作品について自賛することが多く、他者の作品を褒めることはしなかった<ref name="CLSP" />。丸山正雄は、『[[時をかける少女 (アニメ映画)|時をかける少女]]』の[[細田守]]を「面白い」と評したのが唯一であったと証言している<ref name="CLSP" />。<br />
<br />
==表現手法==<br />
===概要===<br />
「アニメには、創造性を踏まえた、作画と撮影の技術的進歩が不可欠」<ref>[[#出崎・杉野1994|出崎・杉野1994]]、P.88</ref>との持論に基づき、新たな映像表現の開拓と同時に、それに付随する数多くの技術を編み出した。<br />
<br />
作画については、『あしたのジョー』において、杉野昭夫、[[金山明博]]、[[荒木伸吾]]の各作画監督に、目の表情による表現バリエーションの確立をオーダー<ref>NHK-BS2『アニメ「あしたのジョー」ができるまで』(2007年3月28日放送) における金山明博の発言</ref>。端的で漫画チックな表現が主流だった1970年代初頭までのアニメには珍しく、微妙な表情の変化によるキャラクターの繊細な内面描写を試みた。『エースをねらえ!』(テレビ版)では、背景にいる[[モブキャラクター|端役キャラクター]]の表情や色彩を大胆に省略する手法を取り入れている。<br />
<br />
止め絵や繰り返しショット等、リミテッドアニメにおいて定型的に使われる演出技法の多くを発想し、確立させたのも出﨑である。後述のように、これらは一般に「出﨑演出」などと称されるが、本人は技術について「表現したいことのために必然的に出てきたもので、技術自体を見せるのが目的ではない」としている<ref name="[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.95">[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.95</ref>。また自身の指向性については、虫プロで手塚治虫が率先して制作した実験アニメーションの志を、商業作品内で発揮しようと考えた旨を語っていた<ref>NHK-BS2『アニメ「あしたのジョー」ができるまで』(2007年3月28日放送) における出﨑統の発言</ref>。事実、非商業芸術作品としての実験アニメの類は、デビュー以来制作していない。<br />
<br />
撮影に関しては、フィルム撮影時代に多くの撮影表現を発想し、現実化した。なかには従前の常識では不可能と考えられるものもあったが、高橋宏固ら出﨑の信頼が厚い撮影スタッフたちが研究により問題を解決、数々の手法が技術的に確立された。処理の多くは、実写的な立体感や質感を伴わせるものである。ときには、[[セル画]]の絵をそのまま映し出すとギャグ漫画のように見えたり<ref name="[[#少年マガジン別冊1981|少年マガジン別冊1981]]、P.115">[[#少年マガジン別冊1981|少年マガジン別冊1981]]、P.115</ref>、あるいはセルと背景を組み合わせてピントを合わせて撮っただけの画面に何の面白味も感じない<ref name="[[アニマックス]]『放送直前スペシャル!ウルトラヴァイオレット:コード044』(2008年7月5日放送)">[[アニマックス]]『放送直前スペシャル!ウルトラヴァイオレット:コード044』(2008年7月5日放送)</ref>との理由から、アニメートされた絵を見えなくしてしまうほど大量のエフェクトを用いることもあった。<br />
<br />
デジタル作業によるアニメ制作が主流となって以降も、独自の技術的探求を進めた。『源氏物語千年紀 Genji』では、非常に複雑な衣装の柄(模様)を、人物の動きに合わせて自然に動かすことにこだわった。これはCG制作のみならず、撮影スタッフも連携することにより現実化している<ref>[http://www.p-tina.net/interview/283 ぷらちな「デジタル技術で描いた"古典"と"常識"『源氏物語千年紀Genji』出﨑統監督インタビュー」]</ref>。<br />
<br />
===技法===<br />
以下、作画と撮影に関わる技法の一例を紹介する。すべてを出﨑が開発したわけではないが、いずれもその作品において頻繁に使われているものであり、これらを総称して「出﨑演出」と呼ばれる場合が多い。<br />
<br />
;止め絵<br />
:その場面を印象づけるため、止まった絵で見せるカットの総称。回想シーン、決めシーン、CM直前のカット、ラストカットなどで多用される。<br />
:出﨑はこの手法を用いる場合、通常のフラットな彩色を施したセル画ではなく、マチエールをつけた彩色の上に線画のみのセル画を重ねて作った一枚絵のショットを使用することがほとんどである(アニメ業界用語で[[ハーモニー]]と呼ばれ、[[デジタルアニメ]]が主流になった今でも根強く使われている手法である)。[[パン (撮影技法)|パンニング]]や[[トラックバック]]など、[[カメラワーク]]で画面に動きをつける場合もある。また、ワンカットすべてが一枚絵とは限らず、通常のセル画による動きの途中でハーモニーに切り替えたり(瞬間的な[[オーバーラップ]]撮影で切り替わることが多い)、止め絵数枚を連続させてワンカットを構成したりするケースもある。<br />
:「予算面等から、作画枚数に制約を受けた状況を踏まえて編み出した手法か」との問いに対し、本人は「それはまったく考えていなかった」<ref>[[#OUT198011|OUT198011]]、P.28</ref>とし、「人間の一瞬の表情、瞬間の美しさや強烈な印象を残したいとの欲求から、[[スローモーション]]をせんじつめた結果として発想した」<ref name="[[#少年マガジン別冊1981|少年マガジン別冊1981]]、P.115">[[#少年マガジン別冊1981|少年マガジン別冊1981]]、P.115</ref>旨を述べている。<br />
;繰り返しショット<br />
:観客に印象づけたい重要な画面を、複数回繰り返して見せる手法。これもパンニング、トラックバック、オーバーラップなど、カメラワークと連動する場合が多い。繰り返す回数は3回が圧倒的に多いが、2回、あるいは4回以上のパターンもたびたび用いられる(『あしたのジョー2』第46話「凄絶…果てしなき死闘」では、3カット(実質ワンカット)を使って実に14回連続の[[ズームイン|トラックアップ]]を用いた)。単純に同一ワンカットをリピートするだけでなく、カメラが3回同じ動きを繰り返しながら継続しているひとつの動きを映し出したり、3回トラックアップをオーバーラップ処理する等のアレンジパターンもある。<br />
:本人によると、初使用は『エースをねらえ!』(テレビ版)第1話「テニス王国のシンデレラ」の宗方仁登場シーン。過去に同様の手法を別の映像作品で見たわけではないとのことである<ref name="[[#少年マガジン別冊1981|少年マガジン別冊1981]]、P.115">[[#少年マガジン別冊1981|少年マガジン別冊1981]]、P.115</ref>。りんたろうは、多くの演出家がこの演出をまねたが、絶妙な撮影指示が生み出す出﨑の味は、誰にも出せなかった旨を述べている<ref>[http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/110425/ent11042507300003-n1.htm 追悼 アニメーション監督・出崎統さん 絶妙だった撮影指示 -MSN産経ニュース]</ref>。<br />
:類似手法として、同じ動きを、アングルを変えた複数のショットで連続して見せる場合もある。<br />
;画面分割<br />
:映画『[[グラン・プリ]]』の影響で使うようになった<ref>[[#読売2009|読売2009]]</ref>。画面を上下・左右などに分割し、同時間軸にある別個の対象物あるいは別アングルから捉えた同一対象物等を同時に映し出す。分割した画面を連動させてひとつの動きを追う場合もある。<br />
;回り込み<br />
:キャラクターの周囲をカメラが回るようにしながら、ワンカットで動きを追う手法。背景画がすべて手描きだった時代は、この手法を用いると、動きによっては一枚絵の背景を制作することが困難な場合があるため、バックを透過光で処理することが多かった。しかし『あしたのジョー2』第5話「幻の…あのテンプルを撃て!」においては、人物だけでなく建物込みでの回り込みをすべて動画で描いた上、その動きにシンクロさせて空からの入射光、および海面の透過光までかぶせるという、作画・美術・撮影のいずれも非常に手間のかかるカットを実現している。<br />
;多重合成+パンニング<br />
:顔のアップを画面にいくつも多重合成し、縦や横にパンニングしながら動きの変化を映し出す手法。セリフの強調などに用いられる。<br />
;ボカシ<br />
:キャラクターの顔にトラックアップするなどの場合に、中心のみピントを合わせ、周囲をぼかしてスピード感を強調する手法。<br />
;陰影の強調<br />
:ほかのアニメーションでも人物や物体の描画には明部と暗部で色を塗り分けることはあるが、出﨑の場合は暗部に特に暗い色を用いて陰影を強調することが多い。<br />
;透過光<br />
:セル撮影時に、光を線状、帯状、円状、点状などで表現する手法。通常の方法で撮影したセル+背景(光が入る部分のみ黒く塗りつぶしたマスクをかけてある)の映像フィルムを巻き戻し、光が入る部分以外をすべて黒く塗りつぶしたマスクをかぶせて光を撮影した映像を二重露光で焼きつけて合成する<ref>[[#出崎・杉野1994|出崎・杉野1994]]、P.108</ref>。透過光を強調した上で、一部分をセルが見えなくなるほど暗くすることも多い(セル現像で用いる手法のため、本来デジタルアニメでは原理的に出来ないが、擬似的に再現している)。<br />
:血や吐瀉物も透過光で表現される場合がある(グロテスクさを抑えるため)。<br />
;入射光<br />
:画面に光が差し込んだように見せる手法。特殊なレンズの後ろに光を当てた金銀のモールを置いて撮影した映像に、あらかじめ通常の方法で撮影したセル+背景の映像を二重露光で焼きつけて合成する<ref group="註">NHK『BSアニメ夜話 あしたのジョー』(2004年9月8日放送)の番組内で、実際の撮影台を使用して撮影方法を解説。</ref>。<br />
:映画『[[イージー・ライダー]]』の、夕日に照らされてオートバイで走るシーンにヒントを得て導入された。本人は、当時の実写映画では太陽光を直接捉えた映像はエラー(失敗)で、絶対使わなかったが、『イージー・ライダー』に入っていたことに驚き、それを描きたくなったと述べている。ちなみに最初に撮影スタッフに提案したときは、「機械が壊れます」と言われたとのこと<ref name="[[アニマックス]]『放送直前スペシャル!ウルトラヴァイオレット:コード044』(2008年7月5日放送)">[[アニマックス]]『放送直前スペシャル!ウルトラヴァイオレット:コード044』(2008年7月5日放送)</ref>。<br />
;パラフィンによる影<br />
:舞台における[[スポットライト]]の効果を得るため<ref name="[[#少年マガジン別冊1981|少年マガジン別冊1981]]、P.115">[[#少年マガジン別冊1981|少年マガジン別冊1981]]、P.115</ref>に、セル+背景の前に透明な色つき[[パラフィン]]を置き、画面の端に影を作る手法。暗闇のシーンでは青や紫、夕方のシーンでは赤やオレンジなどが使われた。<br />
;波ガラス<br />
:セル撮影時代に頻繁に見られた手法で、レンズの前に波打ったガラスやプラスチック板を置いて撮影することにより、大気がゆらめくような質感を得る。押井守によると、撮影に使われたのは高橋宏固が工事現場で拾ってきたガラスであるという<ref>[[#押井2011|押井2011]]、P.6</ref>。<br />
;密着マルチ<br />
:奥行きがある背景等を捉えたカットで、近景から遠景まですべてにピントを合わせたままパンニングする技法。近くにある景色は移動スピードが速く、遠くにある景色は移動スピードが遅い。立体感を強調する目的で『立体アニメーション 家なき子』の初期話数で多用された。後述する[[マルチプレーン・カメラ]]を使った撮影法と区別するために「密着マルチ」と呼ばれる。<br />
;マルチのピン送り<br />
:撮影台を段状に据えたマルチプレーン・カメラでは、それぞれの段に絵を置いて撮影することで画面に奥行きを持たせるが、基本的にピントを合わせるのは任意の一点である。出﨑はワンカットの中で、遠景から近景へ、あるいは近景から遠景へと、ピントを合わせる対象を変化させる手法を多用した。アニメーションでは1秒あたり24枚の絵を撮影するため、フィルム撮影では1コマごとにタイミングから逆算した微妙なピントを設定せねばならず、出﨑が導入した当初は撮影監督などから苦情が絶えなかったという。<br />
<br />
上記のうちいくつかの技法を意図的に盛り込んで出﨑演出自体をパロディ化した作品として、押井守が脚本・絵コンテ・演出を担当した『[[うる星やつら (アニメ)#テレビアニメ版|うる星やつら]]』第66話「ニャオンの恐怖」が知られている。押井によれば、放映当時、この作品は[[スタジオあんなぷる]]内で大ウケだったという。押井はこの他にも、出﨑演出のタイミングを確かめようとして、その技法を何度も試したと語っている<ref>[[#押井2011|押井2011]]、P.5</ref>。<br />
<br />
==ペンネーム==<br />
基本的に本名で活動したが、絵コンテや各話演出を担当するときを中心に、以下に紹介するいくつかのペンネームを使い分けた。ペンネームを使用する理由について、本人は、演出の他に何かを担当した場合、クレジットに同じ名前が2回出てくるのが嫌だからと述べている<ref name="[[#アニメック20|アニメック20]]、P.10">[[#アニメック20|アニメック20]]、P.10</ref>。だが[[1993年]]以降の作品では原則的にペンネームの使用をやめたため、「出崎統」名がクレジットに2回以上登場することが増えた。2000年代からは名字の表記を「出崎」から正式な「出﨑」へと変更している。<br />
<br />
;崎枕→さき・まくら→さきまくら<br />
:もっとも使用頻度が高かったペンネームで、[[1969年]]~[[1992年]]の長きにわたって使われた<ref group="註">この他、1999年4月放送の『白鯨伝説』第24話「伝説のはじまり…迷走」で、各話演出として「さきまくら」名が表記されている。</ref>。初期には漢字表記だったが、やがて平仮名表記で「・」入りと「・」なしを併用するようになり、最終的には「・」なし表記に落ち着いた。ほぼ一貫して絵コンテ執筆時や各話演出時の名義であり、監督(チーフディレクター)として使用したのは連続テレビシリーズ『[[ハゼドン]]』とOVA『[[1ポンドの福音#OVA|1ポンドの福音]]』のみである。名字の「崎(﨑)」と「お先真っ暗」をかけたものと言われている<ref name="[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.97">[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.97</ref>が、本人は「枕(眠ること)が大好きなんだよね」とも述べている<ref name="[[#アニメック20|アニメック20]]、P.10">[[#アニメック20|アニメック20]]、P.10</ref>。<br />
;斉九洋→斎九陽<br />
:[[1971年]]~[[1972年]]にかけて、絵コンテマンとしての活動に使われた<ref group="註">ちなみに、16歳で執筆した漫画「ホオに傷のある男」にはすでに「斉九」なるキャラクターが登場している。</ref>。「さい・くよう」と読み、由来は「さあ行くよ」説<ref name="[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.97">[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.97</ref>と「(面倒)くさいよう」説<ref>[[#大塚2006|大塚2006]]、P.191</ref>がある。<br />
;松戸館、松戸完<br />
:『まんが世界昔ばなし』でのみ使用されたペンネームで、「館」がシリーズ監督としての名、「完」は各話演出時の名として使い分けた。ともに、由来は当時の所属会社マッドハウスから<ref name="[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.97">[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.97</ref>。ただし、この名義は出崎以外にもマッドハウス関係者が使用している場合がある<ref>『アニメーション監督 出崎統の世界』河出書房新社</ref>。<br />
<br />
;その他、単発で使用した名前<br />
:'''矢吹徹'''=『[[侍ジャイアンツ#アニメ|侍ジャイアンツ]]』第1話「ほえろ!バンババーン」絵コンテ執筆時に使用。由来は『あしたのジョー』の矢吹丈と力石徹。<br />
:'''多井雲'''=『[[まんが日本昔ばなし]]』第53話「雷さまと桑の木」演出時に使用。由来は「おーい、くも」と言われる<ref name="[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.97">[[#アニメージュ201107|アニメージュ201107]]、P.97</ref>。<br />
:'''善福次郎'''=『あしたのジョー2』第26話「チャンピオン…そして、敗者の栄光」と27話「ボクシング…その鎮魂歌」で脚本としてクレジット。厳密には出﨑のペンネームではなく、脚本家によるシナリオを出﨑が絵コンテ段階で改変した結果、原形をとどめないものになったため、便宜上作り出した架空の人物名である<ref>[http://www.style.fm/as/05_column/365/365_057.shtml WEBアニメスタイル アニメ様365日 第57回 敗者の栄光]</ref>。名前の由来は、出﨑が主宰した[[スタジオあんなぷる]]の当時の所在地、[[東京都]][[善福寺 (杉並区)|杉並区善福寺]]から。<br />
<br />
==フィルモグラフィ==<br />
'''太字'''は監督作品(クレジット上は「演出」「チーフディレクター」等の場合あり)<br />
===連続テレビアニメ===<br />
*[[鉄腕アトム (アニメ第1作)|鉄腕アトム]](第1作)〔1963年1月1日~1966年12月31日:全193話〕 ●動画/原画(#39、51、66、89他) ●各話演出/作画監督(#112、123、132、143、175)<br />
*[[ビッグX]]〔1964年8月3日~1965年9月27日:全59話〕 ●絵コンテ(話数不明/匿名あるいはペンネームで参加<ref group="註">クレジット上で「(アートフレッシュ)」の但書がついた各話演出者は、#5=佐々木哲治、#19=高木清、また脚本家は#19=高木寛がおり、また#18が演出が「アートフレッシュ」名義となっているが、これらも含めた全話の演出クレジット上に、出﨑統の名は見当たらない。なお、上記の3エピソードはいずれもフィルムの現存が確認されていない。</ref>)<br />
*[[悟空の大冒険]]〔1967年1月7日~9月30日:全39話〕 ●各話演出(#1、4、6、12、14、20、29、35<ref group="註">この他、第8話として途中まで制作されたが未放映に終わった『ニセ札で世界はまわる』がある。同作は、『悟空の大冒険』DVD-BOXに映像特典として収録された。</ref>) ●作画監督/原画(話数不明)<br />
*[[わんぱく探偵団]]〔1968年2月1日~9月26日:全35話〕 ●各話演出(#4、9、16、21、26、33) ●作画協力(出崎統名義/#4、9、21 出崎プロ名義/#26、33)<br />
*[[どろろ#アニメ|どろろ]]〔1969年4月6日~9月28日:全26話〕 ●各話演出(#1、6、11) ●原画(#11)<br />
*[[ムーミン (アニメ)#ムーミン(1969年版)|ムーミン]](第1作)〔1969年10月5日~1970年12月27日:全65話〕 ●絵コンテ(崎枕名義/#17、25)<br />
*'''[[あしたのジョー#あしたのジョー|あしたのジョー]]'''〔1970年4月1日~1971年9月29日:全79話〕 ●監督/チーフディレクター(全話) ●各話演出(出崎統名義/#1 崎枕名義/#22、36~38、42、43、46、51、53、58、65、69、70、76、78、79) ●原画(#14)<br />
*[[ルパン三世 (TV第1シリーズ)|ルパン三世]](第1作)〔1971年10月24日~1972年3月26日:全23話〕 ●絵コンテ(斉九洋名義/#3、7、13、17)<br />
*[[アンデルセン物語#テレビ版「アンデルセン物語」|アンデルセン物語]]〔1971年1月3日~12月26日:全52話〕 ●各話演出(崎枕名義/#49)<br />
*[[国松さまのお通りだい]]〔1971年10月6日~1972年9月25日:全46話〕 ●各話演出(崎枕名義/#7、40、44)<br />
*[[ムーミン (アニメ)#1972年版|ムーミン]](第2作)〔1972年1月9日~12月31日:全52話〕 ●絵コンテ(崎枕名義/話数不明)<br />
*[[赤胴鈴之助]]〔1972年4月5日~1973年3月28日:全52話〕 ●絵コンテ(斎九陽名義/#2、9、10、14、18、20、21、24、25、29、31、32、40、49)<br />
*[[ど根性ガエル#テレビアニメ|ど根性ガエル]]〔1972年10月7日~1974年9月28日:全103回(206話)〕 ●詳細不明<ref name="http://homepage.mac.com/wayang_gamelan/interview/dezaki/index.html 藤子FCネオ・ユートピア 出崎統インタビュー">[https://web.archive.org/web/20040205042319/http://homepage.mac.com/wayang_gamelan/interview/dezaki/index.html 藤子FCネオ・ユートピア 出崎統インタビュー]</ref><br />
*'''[[ハゼドン]]'''〔1972年10月5日~1973年3月29日:全26回(52話)〕 ●チーフディレクター(崎枕名義/シリーズ前半) ●各話演出(崎枕名義/#1)<br />
*'''[[ジャングル黒べえ]]'''〔1973年3月2日~9月28日:全31回(62話)〕 ●演出(全話) ●絵コンテ(さきまくら名義/#1、10、21、32、34、38、39、48、55、62)<br />
*'''[[エースをねらえ!#アニメ|エースをねらえ!]]'''〔1973年10月5日~1974年3月29日:全26話〕 ●演出(全話) ●絵コンテ(崎枕名義/#1、2、6、8、13、19、20、24、26 波多正美と共同/#10)<ref>{{Cite web | url = http://www.tms-e.co.jp/search/introduction.php?pdt_no=75| title = エースをねらえ!| publisher = トムス・エンタテインメント| accessdate = 2016-06-01}}</ref><br />
*'''[[空手バカ一代#アニメ版|空手バカ一代]]'''〔1973年10月3日~~1974年9月25日:全47話〕 ●演出(岡部英二と共同/全話) ●絵コンテ(崎枕名義/#36、40、44)<br />
*[[侍ジャイアンツ#アニメ|侍ジャイアンツ]]〔1973年10月7日~1974年9月15日:全48話〕 ●絵コンテ(矢吹徹名義/#1 出崎統名義/#39)<br />
*[[ギャートルズ#はじめ人間ギャートルズ(第1作)|はじめ人間ギャートルズ]]〔1974年10月5日~1976年3月15日:全77回(134話)〕 ●各話演出(さきまくら名義<ref group="註">「さき・まくら」名義の回もあり。</ref>/#8、18、28、42、45、56、64)<br />
*'''[[ガンバの冒険]]'''〔1975年4月7日~9月29日:全26話〕 ●チーフディレクター(全話) ●各話演出(さきまくら名義/#1、2、4、5、8、10、13、15、17、20、23、26)<br />
*[[元祖天才バカボン]]〔1975年10月6日~1977年9月26日:全103回(204話)〕 ●各話演出(さきまくら名義/#2、7、13、18、23、29、34、39、44、49、54、60、65、72、79、85、96、108、114、122、126、132、135、137、141、145、149、160、164、166、171、175、184、191、194、204) ●脚本(さきまくら名義/#67)<br />
*[[まんが日本昔ばなし]]〔1975年1月7日~2001年11月24日:全952回(1904話)※再放送分も1話とカウント〕 ●各話演出(多井雲名義/#53(再放送#184、1851)、出崎統名義/#1515、1583、1888)<br />
*[[大空魔竜ガイキング]]〔1976年4月1日~1977年1月27日:全44話〕 ●絵コンテ?<ref group="註">『動画王』Vol.7([[キネマ旬報社]]、1998年12月25日発行) P.151における杉野昭夫の発言より。ただし同作において、出﨑の名が正式にクレジットされたことはない。</ref><br />
*[[まんが世界昔ばなし]]〔1976年10月7日~1979年3月28日:全127回(241話)〕 ●監督(松戸館名義…葛生雅美と共同/#1~104) ●各話演出(松戸完名義/#2、20、29、48、61、67、68、85、174) ●キャラクターデザイン(松戸完名義/#2)<br />
*[[ジェッターマルス]]〔1977年2月3日~9月15日:全27話〕 ●絵コンテ(話数不明)<br />
*'''[[家なき子 (アニメ)|立体アニメーション 家なき子]]'''〔1977年10月9日~1978年10月1日:全51話〕 ●総監督/絵コンテ(全話) ●各話演出(さきまくら名義…竹内啓雄または高屋敷英夫(あるいはその両者)と共同/#1、3~12)<br />
*'''[[宝島 (テレビアニメ)|宝島]]'''〔1978年10月8日~1979年4月1日:全26話〕 ●演出(全話) ●絵コンテ(さきまくら名義/#1~4、6~10、13~16、18、19、21~26)<br />
*'''[[ベルサイユのばら#テレビアニメ|ベルサイユのばら]]'''〔1979年10月10日~1980年9月10日:全40話+総集編1話〕 ●チーフディレクター(#19~40、総集編) ●絵コンテ(さきまくら名義/#19~40、総集編)<br />
*'''[[あしたのジョー#あしたのジョー2|あしたのジョー2]]'''〔1980年10月13日~1981年8月31日:全47話〕 ●演出(全話) ●絵コンテ(さきまくら名義/#1~35、37、39、40、42~47)<br />
*'''[[コブラ (アニメ)#スペースコブラ|スペースコブラ]]'''〔1982年10月7日~1983年5月19日:全31話〕 ●チーフディレクター(竹内啓雄と共同/全話) ●絵コンテ(さきまくら名義/#1、3、4、11、12)<ref>{{Cite web | url = http://www.tms-e.co.jp/search/introduction.php?pdt_no=25| title = スペースコブラ| publisher = トムス・エンタテイメント| accessdate = 2016-05-22}}</ref><br />
*[[魔法少女レインボーブライト]]〔1984年6月27日~1986年7月24日、日米仏合作:全13話〕 ●ディレクター(#1)<br />
*'''[[マイティ・オーボッツ]]'''〔1984年9月8日~12月15日、日米合作:全13話〕 ●ディレクター(全話)<br />
*'''[[バイオニックシックス]]'''(第1シーズン)〔1987年4月19日~6月28日、日米合作:全11回(22話)〕、(第2シーズン)〔1987年9月8日~11月12日、日米合作:全43話〕 ●スーパーバイジング・ディレクター(全話)<br />
*Visionaries: Knights of the Magical Light〔1987年9月21日~12月14日、日米合作:全13話〕 ●Creative Consultant(全話)<br />
*'''[[おにいさまへ…#アニメ|おにいさまへ…]]'''〔1991年7月14日~1992年5月31日:全39話+総集編6話〕 ●監督(全話) ●絵コンテ(#1~7、9、11~13、15~30、32~34、36~39、総集編6話)<br />
*'''[[手塚治虫の旧約聖書物語]]'''〔1997年4月1日~5月9日:全26話〕 ●監督/絵コンテ(全話)<br />
*'''[[白鯨伝説]]'''〔1997年4月9日~10月29日、1999年3月24日~5月12日:全26話+総集編5話〕 ●原作(杉野昭夫と共同)/監督/絵コンテ(全話) ●脚本(単独/#4~6、8、9、13、14、16、18~26 森絵都と共同/#3 植田浩二と共同/#12、17 小出克彦と共同/#15 ※総集編5本はそれぞれ上記共同脚本家のいずれかと共同) ●各話演出(松園公と共同/#24)<br />
*[[アストロボーイ・鉄腕アトム]]〔2003年4月6日~2004年3月28日:全50話〕 ●絵コンテ(#9)<br />
*'''[[雪の女王 (NHKアニメ)|雪の女王 The Snow Queen]]'''〔2005年5月22日~2006年2月12日:全36話+総集編6話〕 ●監督(全話) ●絵コンテ(単独/#1~10、13~36 四分一節子と共同/#11 矢野篤と共同/#12)<ref>{{Cite news | url = http://www.tms-e.co.jp/search/introduction.php?pdt_no=129| title = 雪の女王| newspaper = | publisher = トムス・エンタテイメント| date = | accessdate = 2016-05-06}}</ref><br />
*'''[[ウルトラヴァイオレット#テレビアニメ|ウルトラヴァイオレット:コード044]]'''〔2008年7月1日~9月16日:全12話〕 ●監督/脚本/絵コンテ(全話)<br />
*'''[[源氏物語千年紀 Genji]]'''〔2009年1月15日~3月26日:全11話〕 ●監督/絵コンテ(全話) ●脚本(金春智子と共同/#1~4、7、8、10、11 森田真由美と共同/#5、6、9)<ref>{{Cite web | url = http://www.tms-e.co.jp/search/introduction.php?pdt_no=335| title = 源氏物語千年紀 Genji| publisher = トムス・エンタテイメント| accessdate = 2016-05-22}}</ref><br />
<br />
===劇場用アニメ===<br />
*[[鉄腕アトム (アニメ第1作)|鉄腕アトム 宇宙の勇者]]〔1964年7月26日/テレビシリーズ再編集〕 ●動画<br />
*[[千夜一夜物語 (1969年の映画)|千夜一夜物語]]〔1969年6月14日〕 ●ストーリーボード/原画/構成助手<br />
*[[哀しみのベラドンナ]]〔1973年6月30日〕 ●原画<br />
*'''[[エースをねらえ!#アニメ|エースをねらえ!]]'''〔1979年9月8日〕 ●監督/絵コンテ<ref>{{Cite web | url = http://www.tms-e.co.jp/search/introduction.php?pdt_no=309| title = エースをねらえ! 劇場版| publisher = トムス・エンタテインメント| accessdate = 2016-06-01}}</ref><br />
*[[あしたのジョー#劇場版アニメ|あしたのジョー]]〔1980年3月8日/他監督によるテレビシリーズ再編集〕 ●チーフディレクター(名義のみ)<br />
*'''[[家なき子_(アニメ)|長篇立体アニメーション 家なき子]]'''〔1980年3月15日/テレビシリーズを自身で再編集〕 ●監督<br />
*'''[[あしたのジョー#劇場版アニメ|あしたのジョー2]]'''〔1981年7月4日〕 ●監督/脚本/絵コンテ(テレビシリーズと同時制作)<br />
*'''[[コブラ (アニメ)#SPACE ADVENTURE コブラ|SPACE ADVENTURE コブラ]]'''〔1982年7月3日〕 ●監督/絵コンテ<ref>{{Cite web | url = http://www.tms-e.co.jp/search/introduction.php?pdt_no=26| title = スペース アドベンチャー コブラ| publisher = トムス・エンタテイメント| accessdate = 2016-05-22}}</ref><br />
*'''[[ゴルゴ13#劇場版アニメ|ゴルゴ13]]'''〔1983年5月28日〕 ●監督/絵コンテ<ref>{{Cite news | url = http://www.tms-e.co.jp/search/introduction.php?pdt_no=316| title = ゴルゴ13| newspaper = | publisher = トムス・エンタテイメント| date = | accessdate = 2016-05-05}}</ref><br />
*'''[[ガンバの冒険|冒険者たち ガンバと7匹のなかま]]'''〔1984年3月4日/テレビシリーズを自身で再編集〕 ●監督<br />
*[[宝島 (テレビアニメ)|宝島]]〔1987年5月9日/他監督によるテレビシリーズ再編集〕 ●演出協力(名義のみ)<br />
*'''[[ブラック・ジャック (OVA)#劇場版|ブラック・ジャック]]'''〔1996年11月30日〕 ●監督/絵コンテ/脚本<ref>{{Cite news | url = http://tezukaosamu.net/jp/anime/20.html| title = ブラック・ジャック 劇場版| newspaper = | publisher = 手塚治虫公式サイト| date = | accessdate = 2016-05-06}}</ref><br />
*'''[[劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険]]'''〔2001年12月15日〕 ●監督/絵コンテ<br />
*'''[[劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムハムージャ! 幻のプリンセス]]'''〔2002年12月14日〕 ●監督/絵コンテ<br />
*'''[[劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムグランプリン オーロラ谷の奇跡 リボンちゃん危機一髪!]]'''〔2003年12月13日〕 ●監督/絵コンテ<br />
*'''[[劇場版 とっとこハム太郎 はむはむぱらだいちゅ! ハム太郎とふしぎのオニの絵本塔]]'''〔2004年12月23日〕 ●監督/絵コンテ<br />
*'''[[AIR (ゲーム)#劇場版|劇場版AIR]]'''〔2005年2月5日〕 ●監督/絵コンテ<br />
*'''[[CLANNAD (ゲーム)#劇場版|劇場版CLANNAD -クラナド-]]'''〔2007年9月15日〕 ●監督/絵コンテ<br />
<br />
===単発テレビアニメ===<br />
*[[新宝島 (テレビアニメ)|新宝島]]〔1965年1月3日〕 ●原画<br />
*フロスティ・ザ・スノーマン〔1969年12月7日、日米合作〕 ●原画<br />
*[[坊っちゃん#アニメ|坊っちゃん]]〔1980年6月13日〕 ●監修<br />
*'''Sweet Sea'''〔1985年、日米合作〕 ●Director<br />
*The Blinkins, the Bear and the Blizzard〔1987年、日米合作〕 ●Creative Consultant<br />
*'''[[ルパン三世 バイバイ・リバティー・危機一発!]]'''〔1989年4月1日〕 ●監督 ●絵コンテ(さきまくら名義)<br />
*'''[[ルパン三世 ヘミングウェイ・ペーパーの謎]]'''〔1990年7月20日〕 ●監督 ●絵コンテ(さきまくら名義)<br />
*[[ルパン三世 ナポレオンの辞書を奪え]]〔1991年8月9日〕 ●監修<br />
*'''[[ルパン三世 ロシアより愛をこめて]]'''〔1992年7月24日〕 ●監督 ●絵コンテ(さきまくら名義)<br />
*'''[[ルパン三世 ハリマオの財宝を追え!!]]'''〔1995年8月4日〕 ●監督/絵コンテ<br />
*'''[[孔子#関連項目|孔子傳]]'''(こうしでん、日韓台3ヶ国共同制作)〔1995年10月15日〕 ●監督<br />
<br />
===OVA===<br />
*[[ベルサイユのばら#テレビアニメ|ベルサイユのばら 生命ある限り愛して(総集編)]]〔1987年5月21日/他監督によるテレビシリーズ再編集〕 ●演出協力(名義のみ)<br />
*[[エースをねらえ!#アニメ|エースをねらえ!2]]〔1988年7月25日~10月25日:全13話〕 ●総監修(全話) ●絵コンテ(さきまくら名義/#1、2、12、13)<ref>{{Cite web | url = http://www.tms-e.co.jp/search/introduction.php?pdt_no=77| title = エースをねらえ!2| publisher = トムス・エンタテインメント| accessdate = 2016-06-01}}</ref><br />
*'''[[1ポンドの福音#OVA|1ポンドの福音]]'''〔1988年12月2日〕 ●監督(さきまくら名義) ●絵コンテ(さきまくら名義)<br />
*'''[[華星夜曲]]'''〔1989年3月25日~9月25日:全4話〕 ●監督/絵コンテ(全話)<br />
*'''[[エースをねらえ!#アニメ|エースをねらえ!ファイナルステージ]]'''〔1989年10月23日~1990年4月24日:全12話〕 ●監督(全話) ●絵コンテ(さきまくら名義/#1~4、6、7、9~12)<ref>{{Cite web | url = http://www.tms-e.co.jp/search/introduction.php?pdt_no=78| title = エースをねらえ!ファイナルステージ| publisher = トムス・エンタテインメント| accessdate = 2016-06-01}}</ref><br />
*'''[[B・B#OVA|B・B]]'''〔1990年4月25日~1991年4月24日:全3話〕 ●監督/絵コンテ(全話)<br />
*'''修羅之介斬魔剣・死鎌紋の男'''〔1990年12月25日〕 ●監督/絵コンテ<br />
*'''[[創竜伝]]'''〔1991年6月25日~1993年3月10日:全12話〕 ●監督(#1~3) ●絵コンテ(さきまくら名義/#1~3)<br />
*'''[[宝島 (テレビアニメ)|宝島メモリアル 夕凪と呼ばれた男]]'''〔1992年12月21日〕 ●監督/脚本/絵コンテ<br />
*'''[[ブラック・ジャック (OVA)|ブラック・ジャック]]'''〔1993年12月21日~2000年7月25日:全10話〕 ●監督/絵コンテ(全話) ●脚本(単独/#10 山下久仁明と共同/#1 森絵都と共同/#2 小出克彦と共同/#3~6 日吉恵と共同/#7、9 金春智子と共同/#8 )<br />
*'''[[ゴルゴ13#OVA|ゴルゴ13~QUEEN BEE~]]'''〔1998年5月21日〕 ●監督/絵コンテ<br />
*'''[[ブラック・ジャック (OVA)|ブラック・ジャック FINAL]]'''〔2011年12月16日〕 ●監修・シリーズ名誉監督<br />
<br />
===その他のアニメ===<br />
*孫悟空が始まるよー黄風大王の巻〔1966年6月12日上映、パイロットフィルム〕 ●演出<br />
*新宿千夜一夜〔1967~1968年頃、パイロットフィルム〕 ●詳細不明<br />
*'''[[あしたのジョー#あしたのジョー|あしたのジョー]]'''〔1969年、パイロットフィルム3種〕 ●演出/絵コンテ<br />
*'''[[闇夜の国から]]'''〔1974年、[[ミュージック・ビデオ|プロモーションフィルム]]〕 ●演出ほか ※自ら撮影した実写パートを含む<br />
*'''葬列'''〔制作年不明、ドキュメンタリー映画〕 ●監督(森弘太と共同)<br />
*'''[[おれは直角]]'''〔制作年不明、パイロットフィルム〕 ●演出<br />
*'''[[愛と誠#派生作品|純愛山河 愛と誠]]'''〔1974年10月4日~1975年3月28日、オープニングアニメ〕 ●演出<br />
*'''ザ・ファイヤーGメン'''〔1975年1月上映、防災アニメ〕 ●演出/キャラクターデザイン/作画監督/原画<br />
*'''幸せは安全と共に'''〔1976年6月制作、PR映画〕 ●演出<br />
*'''[[コブラ (アニメ)#コブラ SPACE ADVENTURE|SPACE ADVENTURE COBRA]]'''〔1981年、英語版パイロットフィルム〕 ●演出<br />
*'''バイオニックシックス'''〔1986年、パイロットフィルム〕 ●演出<br />
*'''The Ronin'''〔1986年頃、パイロットフィルム〕 ●演出<br />
*'''[[リトル・ニモ]]'''〔1987年、パイロットフィルム〕 ●演出/絵コンテ<br />
*'''[[オツベルと象]]'''〔制作年不明、ハイビジョンテスト映像〕 ●監督?<br />
*'''[[アストロボーイ・鉄腕アトム]]特別編「アトム誕生の秘密」'''〔2003年4月6日、KYOTO手塚治虫ワールドにて公開〕 ●監督/絵コンテ<br />
*'''[[アストロボーイ・鉄腕アトム]]特別編「イワンの惑星」'''〔2003年9月13日、KYOTO手塚治虫ワールドにて公開〕 ●監督/絵コンテ<br />
*'''[[アトムの最後#劇場作品|アストロボーイ・鉄腕アトム特別編「輝ける地球 あなたは青く、美しい…」]]'''〔2004年2月7日、KYOTO手塚治虫ワールドにて公開〕 ●監督/絵コンテ<br />
<br />
== 脚注 ==<br />
<div class="references-small"><references group="註" /></div><br />
<br />
== 出典 ==<br />
{{reflist|3}}<br />
<br />
== 伝記 ==<br />
* 『アニメーション監督 出﨑統の世界』 [[河出書房新社]]、2012年3月刊<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
* {{Cite book|和書<br />
|author = 出崎統、杉野昭夫<br />
|year = 1994<br />
|title = アニメーション制作技法 ―『4701白鯨』を創る―<br />
|publisher =創芸社<br />
|isbn = 4-88144-063-2<br />
|ref = 出崎・杉野1994<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|author = 山崎敬之<br />
|year = 2005<br />
|title = テレビアニメ魂<br />
|publisher =[[講談社現代新書]]<br />
|isbn = 4-06-149789-8<br />
|ref = 山崎2005<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|author = 大塚康生、森遊机<br />
|year = 2006<br />
|title = 大塚康生インタビュー アニメーション縦横無尽<br />
|publisher = [[実業之日本社]]<br />
|isbn = 4-408-61255-3<br />
|ref = 大塚2006<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|author = 山本暎一<br />
|year = 1989<br />
|title = 虫プロ興亡記 安仁明太の青春<br />
|publisher = [[新潮社]]<br />
|isbn =<br />
|ref = 山本1989<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|author = 手塚治虫ファンクラブ<br />
|year = 2011<br />
|title = 『手塚ファンMagazine』Vol.243<br />
|publisher =手塚プロダクション<br />
|isbn = <br />
|ref = 手塚FC2011<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|author = 押井守<br />
|year = 2011<br />
|title = [[月刊COMICリュウ]] 2011年7月号別冊付録・『追悼企画 勝つために戦え!出﨑統編』<br />
|publisher = [[徳間書店]]<br />
|isbn =<br />
|ref = 押井2011<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|author = 早稲田大学早稲田アニメーション同好会<br />
|year = 1983<br />
|title = アニコムZ Vol.4 出崎統特集<br />
|publisher =<br />
|isbn = <br />
|ref = 早稲田アニメ同好会1983<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|author = 少年マガジン特別別冊<br />
|year = 1981<br />
|title = TV版 あしたのジョー2<br />
|publisher = [[講談社]]<br />
|isbn = <br />
|ref = 少年マガジン別冊1981<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|author = BIG COMIC GRAPHIC<br />
|year = 1983<br />
|title = ゴルゴ13 THE ANIMATION<br />
|publisher = [[小学館]]<br />
|isbn = <br />
|ref = ビッグコミック1983<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|year = 2007<br />
|title = DIRECTOR'S MAGAZINE No.113<br />
|publisher =クリーク・アンド・リバー社<br />
|isbn = 978-4-86152-115-7<br />
|ref = DIRECTOR'S2007<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|year = 1999<br />
|title = 東京ムービー アニメ大全史<br />
|publisher =[[辰巳出版]]<br />
|isbn = 4-88641-409-5<br />
|ref = ムービー全史1999<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|year = 2009<br />
|title = [[別冊宝島]]1603 源氏物語 千年の恋を読み解く<br />
|publisher = [[宝島社]]<br />
|isbn =978-4-7966-6980-1<br />
|ref = 別冊宝島2009<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|year = 2011<br />
|title = 月刊[[アニメージュ]] 2011年6月号<br />
|publisher = 徳間書店<br />
|isbn =<br />
|ref = アニメージュ201106<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|year = 2011<br />
|title = 月刊アニメージュ 2011年7月号<br />
|publisher = 徳間書店<br />
|isbn =<br />
|ref = アニメージュ201107<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|year = 2011<br />
|title = [[月刊ニュータイプ]] 2011年7月号<br />
|publisher = 徳間書店<br />
|isbn =<br />
|ref = ニュータイプ201107<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|year = 2009<br />
|title = [[読売新聞]]2009年1月14日付夕刊「PopStyle」<br />
|publisher = [[読売新聞社]]<br />
|isbn =<br />
|ref = 読売2009<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|year = 2011<br />
|title = [[週刊新潮]] 2011年5月5・12日ゴールデンウイーク特大号<br />
|publisher = [[新潮社]]<br />
|isbn =<br />
|ref = 新潮2011<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|year = 2011<br />
|title = 週刊[[SPA!]] 2011年5月17日号<br />
|publisher = [[扶桑社]]<br />
|isbn =<br />
|ref = SPA!2011<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|author = <br />
|year = 1999<br />
|title = 手塚治虫の旧約聖書物語・2巻「十戒」<br />
|publisher =[[集英社文庫]]<br />
|isbn = 4-08-747117-9<br />
|ref = 旧約聖書物語1999<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|author = <br />
|year = 1980<br />
|title = [[月刊OUT]]1980年11月号<br />
|publisher =みのり書房<br />
|isbn = <br />
|ref = OUT198011<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|author = <br />
|year = 1981<br />
|title = アニメックVol.20<br />
|publisher =ラポート<br />
|isbn =<br />
|ref = アニメック20<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|year = 2012<br />
|title = 月刊[[アニメスタイル]]第6号<br />
|publisher = 株式会社スタイル<br />
|isbn =<br />
|ref = アニメスタイル201202<br />
}}<br />
* {{Cite book|和書<br />
|year = 2012<br />
|title = アニメーション監督 出﨑統の世界<br />
|publisher = [[河出書房新社]]<br />
|isbn =<br />
|ref = 大山・林2012<br />
}}<br />
* {{Cite web<br />
|author = <br />
|url = http://www.style.fm/<br />
|title = WEBアニメスタイル<br />
|work = 株式会社スタイル<br />
|language = 日本語<br />
|accessdate = 2011年6月19日<br />
}}<br />
* {{Cite web|author =|url =http://homepage.mac.com/wayang_gamelan/interview/dezaki/index.html|title =出崎統インタビュー|work =藤子FCネオ・ユートピア|language =日本語|accessdate =2011年6月19日|archiveurl =https://web.archive.org/web/20040205042319/http://homepage.mac.com/wayang_gamelan/interview/dezaki/index.html|archivedate =2004年2月5日|deadlinkdate =2017年9月}}<br />
* {{Cite web<br />
|author = <br />
|url = http://blog.goo.ne.jp/mcsammy/c/34eae4ab0f2ae1bfbd1a08dc68236609<br />
|title = 虫プロあしたのジョー<br />
|work = 真佐美ジュン<br />
|language = 日本語<br />
|accessdate = 2011年6月19日<br />
}}<br />
<br />
* 別冊宝島編集部 (編集):「完全解析! 出﨑統 アニメ「あしたのジョー」をつくった男」、宝島社、ISBN 978-4800282583(2018年3月26日)。<br />
<br />
== 関連人物・項目 ==<br />
*[[杉野昭夫]]<br />
*[[丸山正雄]]<br />
*[[出﨑哲]]<br />
*[[杉井ギサブロー]]<br />
*[[りんたろう]]<br />
*[[藤岡豊]]<br />
*[[小林七郎]]<br />
*[[鈴木清司]]<br />
*[[山本又一朗]]<br />
*[[芝山努]]<br />
*[[椛島義夫]]<br />
*[[荒木伸吾]]<br />
*[[竹内啓雄]]<br />
*[[大賀俊二]]<br />
*[[高屋敷英夫]]<br />
*[[波多正美]]<br />
*[[西久保瑞穂]]<br />
*[[大橋学]]<br />
*[[川尻善昭]]<br />
*[[中村隆太郎]]<br />
*[[福島敦子 (アニメーター)|福島敦子]]<br />
*[[森本晃司 (アニメーター)|森本晃司]]<br />
*[[大森英敏]]<br />
*[[近藤勝也]]<br />
*[[安藤真裕]]<br />
*[[篠原俊哉]]<br />
*[[須藤昌朋]]<br />
*[[虫プロダクション#株式会社虫プロダクション(旧虫プロ)|旧虫プロダクション]]<br />
*[[東京ムービー]]<br />
*[[マッドハウス]]<br />
*[[スタジオあんなぷる]]<br />
*[[手塚プロダクション]]<br />
*[[高橋プロダクション]]<br />
<br />
{{DEFAULTSORT:てさき おさむ}}<br />
[[Category:日本のアニメーション監督]]<br />
[[Category:日本の脚本家]]<br />
[[Category:日本の演出家]]<br />
[[Category:東芝の人物]]<br />
[[Category:東京都区部出身の人物]]<br />
[[Category:1943年生]]<br />
[[Category:2011年没]]</div>
126.114.83.232
ジャック・ドンガラ
2018-01-31T11:11:40Z
<p>126.114.83.232: </p>
<hr />
<div>[[Image:JackDongarra.jpg|right|thumbnail|ジャック・ドンガラ]]<br />
<br />
'''ジャック・ドンガラ'''(Jack Dongarra)は、[[テネシー大学]][[計算機科学]]科[http://www.cs.utk.edu]特別栄誉教授。[[オークリッジ国立研究所]]計算機科学・数学部門特別栄誉研究員、[[ライス大学]]計算機科学科客員教授を兼任。[[マンチェスター大学]]計算機科学科・数学科[[チューリング]][[フェロー]]。テネシー大学 Innovative Computing Laboratory [http://icl.cs.utk.edu] 創立者。<br />
<br />
[[1972年]]にシカゴ州立大学数学科を卒業後、[[1973年]]イリノイ工科大学修士課程を修了、[[1980年]]にニューメキシコ大学クリーブ・モラー門下で[[応用数学]]の学位を得た。その後1989年まで[[アルゴンヌ国立研究所]]上席研究員を務めた。<br />
<br />
[[線形代数]]分野の数値アルゴリズム、[[並列処理]]、スーパーコンピュータ利用技術、プログラミング手法、並列計算ソフトウェアなどを専門とし、高品質な数学ソフトウェアの開発及び評価、文書化を行う。 [[EISPACK]]、[[LINPACK]]、[[Basic Linear Algebra Subprograms|BLAS]]、[[LAPACK]]、[[:en:ScaLAPACK|ScaLAPACK]] [http://www.netlib.org/scalapack]、[[Netlib]]、[[Parallel Virtual Machine|PVM]]、[[Message Passing Interface|MPI]]、NetSolve[http://icl.cs.utk.edu/netsolve]、[[TOP500]]、[[:en:Automatically Tuned Linear Algebra Software|ATLAS]]、PAPI[http://icl.cs.utk.edu/papi]などの仕様策定・実装に携わった他、200以上の論文・著書を執筆。[[アメリカ科学振興協会]]、[[Association for Computing Machinery|ACM]]、[[IEEE]]フェロー。[[全米技術アカデミー]]会員。<br />
<br />
半年に一度の頻度で発表されるいわゆるスーパー計算機の上位500番までの格付けとしてのTOP500とそれに用いられるハイパフォーマンスLINPACKベンチマークの創始者として、一般社会向けマスコミ記事などには最も良く知られている。<br />
<br />
== 外部リンク ==<br />
* [http://www.netlib.org/utk/people/JackDongarra/ Jack Dongarra's Homepage]<br />
* [http://history.siam.org/oralhistories/dongarra.htm Lengthy oral history interview conducted with Dongarra by Thomas Haigh on behalf of SIAM]<br />
<br />
{{Normdaten}}<br />
<br />
{{DEFAULTSORT:とんから しやつく}}<br />
[[Category:アメリカ合衆国の数学者]]<br />
[[Category:数値解析研究者]]<br />
[[Category:アメリカ合衆国の計算機科学者]]<br />
[[Category:ACMフェロー]]<br />
[[Category:IEEEフェロー]]<br />
[[Category:テネシー大学の教員]]<br />
[[Category:アルゴンヌ国立研究所の人物]]<br />
[[Category:オークリッジ国立研究所の人物]]<br />
[[Category:存命人物]]<br />
[[Category:数学に関する記事]]</div>
126.114.83.232
ベクトルのなす角
2017-10-11T17:38:17Z
<p>126.114.83.232: </p>
<hr />
<div>[[平面]]や[[空間]]上では、ふたつの[[幾何ベクトル|ベクトル]]のなす[[角]]は[[図形]]的に求めることができる。<br />
そしてベクトルはさらに、図形とは無関係なベクトルに一般化されるが、この一般的なベクトルでも二つの'''ベクトルのなす角'''を定義することができ、それにはベクトルの長さと内積を用いる。<br />
<br />
==定義と性質==<br />
任意の[[零ベクトル|零]]でないベクトル <math>x,y</math> について、次の値がベクトルのなす角となる。<br />
<br />
:<math> \theta = \mathrm {Arccos} \frac{\langle x,y \rangle}{||x|| \cdot ||y||} </math><br />
<br />
&lt;''x'', ''y''&gt; は ''x'', ''y'' の[[内積]]、||''x''|| は ''x'' の[[ノルム]](長さ)である。[[主値]]は 0 ≦ ''θ'' ≦ ''&pi;'' とするのが普通である。<br />
<br />
ベクトルのなす角が 0 の場合、二つのベクトルは[[一次従属]]すなわち方向が同じであり、''π''/2 の場合は[[直交]]する。<br />
<br />
==類似度==<br />
ベクトルのなす角 ''θ'' の余弦である次の値をベクトルの'''類似度'''として、以下を定義する。<br />
<br />
:<math> \cos \theta = \frac{\langle x,y \rangle}{||x|| \cdot ||y||} </math><br />
<br />
この値は0から1の間の値を取るが、2つのベクトル'''x''', '''y'''の向きが等しい([[一次従属]])ほど1に近づき、類似していることが分かる。<br />
<br />
n個の要素をもつデータをn次のベクトル空間に落とし込み、それらがどれだけ類似しているかを比べるのにこの性質が利用されることがあり、特に'''cos類似度'''と呼ばれる。<br />
この類似度を高速に算出するアルゴリズムに{{仮リンク|MinHash|en|MinHash}}などがあり、文章間の類似度判定などに用いられる。<br />
<br />
{{DEFAULTSORT:へくとるのなすかく}}<br />
[[Category:線型代数学]]<br />
[[Category:幾何学]]<br />
[[Category:初等数学]]<br />
[[Category:数学に関する記事]]<br />
[[Category:角度]]<br />
[[Category:人工知能]]</div>
126.114.83.232
アドリアン=マリ・ルジャンドル
2017-09-29T06:08:00Z
<p>126.114.83.232: /* ルジャンドルの肖像画 */</p>
<hr />
<div>{{Infobox scientist<br />
|name = アドリアン=マリ・ルジャンドル<br />
|image = Legendre.jpg<br />
|image_width = <br />
|alt = <br />
|caption = ルジャンドルの[[肖像画]]<br />
|birth_name =<br />
|birth_date = {{生年月日と年齢|1752|9|18|死亡}}<br />
|birth_place = {{FRA987}} [[パリ]]<br />
|death_date = {{死亡年月日と没年齢|1752|9|18|1833|1|10}}<br />
|death_place = {{FRA1830}} パリ<br />
|death_cause = <br />
|residence = <!-- 居住 --><br />
|citizenship = <!-- 市民権 --><br />
|nationality = <!-- 国籍 --><br />
|field = [[統計学]]、[[数論]]、[[代数学]]、[[解析学]]<br />
|workplaces = <!-- 研究機関 --><br />
|alma_mater = <!-- 母校 --><br />
|doctoral_advisor = <!-- 博士課程指導教員 --><br />
|academic_advisors = <!-- 他の指導教員 --><br />
|doctoral_students = <!-- 博士課程指導学生 --><br />
|notable_students = <!-- 他の指導学生 --><br />
|known_for = [[ルジャンドル変換]]、[[楕円函数]]<br />
|influences = <!-- 影響を受けた者 --><br />
|influenced = <!-- 影響を与えた者 --><br />
|awards = <!-- 主な受賞歴 --><br />
|author_abbreviation_bot = <!-- 命名者名略表記(植物学) --><br />
|author_abbreviation_zoo = <!-- 命名者名略表記(動物学) --><br />
|signature = <!-- 署名(ファイル名のみ) --><br />
|signature_alt = <br />
|footnotes = <!-- 備考 --><br />
}}<br />
'''アドリアン=マリ・ルジャンドル'''('''Adrien-Marie Legendre'''、[[1752年]][[9月18日]] - [[1833年]][[1月10日]])は、[[フランス]]の[[パリ]]<ref group="注釈">[[トゥールーズ]]出身ともされる。</ref>出身の[[数学者]]。[[統計学]]、[[数論]]、[[代数学]]、[[解析学]]で様々な功績を残した。中でも[[整数論]]や[[楕円積分]]に大きく貢献したとして名高い。<br />
<br />
== 生涯 ==<br />
1752年9月18日、パリかトゥールーズで生まれた。[[:en:Collège des Quatre-Nations|マザラン]]学校にて学んでいるが、この頃から既に[[数学]]に優れていた<ref>{{Harvnb|彌永ほか|1976|p=595}}。</ref>。また、ルジャンドルが数学に関する影響を受けた人物であるマザラン学校の[[神父]]であり、数学を教えていたJoseph François Marie([[1738年]] - [[1801年]])は自身の著書にルジャンドルの業績を紹介した。この著書が後に同国の[[哲学者]]、[[物理学者]]、数学者である[[ジャン・ル・ロン・ダランベール]]に認められ、パリ陸軍学校<br />
の[[教授]]となった。<br />
<br />
[[1780年]]、[[ベルリン・アカデミー]]が「[[媒質]]に対抗して[[運動 (物理学)|運動]]している[[物体]]の[[軌道]]」と言う[[問題]]を出題し、ルジャンドルはこれを解くためにパリ陸軍学校の教授を辞めた。<br />
<br />
[[1782年]]、弾道論に関する[[論文]]をベルリン・アカデミーに提出してアカデミー賞を受賞した。<br />
<br />
[[1783年]]、[[アカデミー・デ・シアンス]]の[[会員]]となる。<br />
<br />
[[1787年]]、[[パリ天文台]]、[[グリニッジ天文台]]の[[測地]]に貢献し、[[王立協会]]の会員になる。<br />
<br />
[[フランス革命]]が起きた後、[[1789年]][[7月14日]]にフランス革命政府に好意を寄せていたものの、邪で生臭い[[政策]]に[[協力]]することができず、パリの裏町に逃避した。<br />
<br />
裏町に逃避していたため、ルジャンドルは[[公職]]に就いていなかったが様々な[[研究]]が認められて[[パリ科学アカデミー]]の会員に選ばれ、[[1794年]]に[[エコール・ポリテクニーク]]の卒業試験の委員にもなった。<br />
<br />
[[1798年]]の著書『[[#CITEREFルジャンドル2007|数の理論に関する試作]](''Essai sur la Théorie des Nombres'')』は、[[ドイツ]]の[[天文学者]]、数学者、物理学者である[[カール・フリードリヒ・ガウス]]の[[1801年]]の著書『整数論(''[[Disquisitiones Arithmeticae]]'')』の登場により、影に埋もれることとなった<ref name="小堀憲">[[#Reference-Kotobank-ルジャンドル|ルジャンドル]] - [[小堀憲]]。</ref>。<br />
<br />
[[1815年]]に退職して3000[[フラン]]の[[年金]]を貰ったが、[[政府]]により年金を没収されることとなる。<br />
<br />
[[1825年]]から[[1830年]]頃にかけて著された『[[楕円関数論]](''Traité des Fonctions Elliptiques'')』は名著とされている<ref name="小堀憲" />が、同分野は後世の[[19世紀]]になり[[ノルウェー]]の数学者である[[ニールス・アーベル]]、ドイツの数学者である[[カール・グスタフ・ヤコブ・ヤコビ]]によって発展していったため、ルジャンドルの業績は余り目立たないものとなった<ref name="小堀憲" />。<br />
<br />
1833年1月10日、パリで亡くなる。<br />
<br />
== 業績 ==<br />
ルジャンドルの研究は多くの数学者に受け継がれ、さまざまな理論が生み出された。{{要出典範囲|例えば、アーベルの[[楕円関数|楕円関数論]]の研究や、ガウスによる[[最小二乗法]]や数論の研究などは、ルジャンドルの仕事が元となっている。|date=2017年9月}}<br />
<br />
[[1825年]]9月に[[フェルマーの最終定理]]の ''n'' = 5 の場合の証明を完成させた。この証明は1825年6月の[[ペーター・グスタフ・ディリクレ|ディリクレ]]の証明の残された部分を補完するものだったので、ディリクレとルジャンドルの論文は独立に証明されたものではなく、二人で協力したものでもなかった<ref>{{Harvnb|足立|2006|p=150}}</ref>。<br />
<br />
数論では、オイラーによって予想された[[平方剰余の相互法則]]の証明を試みたが、当時は証明されていなかった[[算術級数定理]]を使ったため不完全な証明となった。平方剰余の相互法則は[[1801年]]にガウスによって『[[Disquisitiones Arithmeticae|整数論]]』で最初の証明が発表され、算術級数定理は[[1837年]]にディリクレによって証明される。[[1796年]]に[[素数定理]]を予想し、[[1798年]]に出版した著書『[[#CITEREFルジャンドル2007|数の理論に関する試作]]』で発表している。素数定理は[[1898年]]に[[ジャック・アダマール]]と[[ド・ラ・ヴァレ・プーサン]]によって独立に証明される。<br />
<br />
ルジャンドルは、[[楕円積分]]の分類など、楕円関数論に関連する研究も多く行っているが、ヤコビやアーベル、ガウスの到達した逆関数の重要性にまでは気づいていない。<br />
<br />
[[解析力学]]では、[[ラグランジアン]]から[[ハミルトニアン]]を導く時に用いる[[ルジャンドル変換]]に、その足跡を残している。<br />
<br />
== ルジャンドルの肖像画 ==<br />
[[ファイル:Louis Legendre.jpg|thumb|これは長らく数学者アドリアン=マリ・ルジャンドルの肖像画とされていたが、フランスの[[政治家]]である{{仮リンク|ルイ・ルジャンドル|en|Louis Legendre}}の肖像画である。]]<br />
[[2005年]]までに凡そ2世紀もの間、ルジャンドルの肖像画はフランスの[[政治家]]である{{仮リンク|ルイ・ルジャンドル|en|Louis Legendre}}の肖像画と間違われていた。<br />
単純にルイ・ルジャンドルの肖像画に"ルジャンドル"と書かれてあったものを政治家のルジャンドルではなく数学者のルジャンドルであると判断してしまったのが誤りの原因とされている<ref>[http://www.ams.org/notices/200911/rtx091101440p.pdf Changing Faces: The Mistaken Portrait of Legendre]、2013年1月4日閲覧。</ref>。<br />
<br />
== 著作 ==<br />
* {{Cite book|和書|author=李珍大(リゼンド)|others=[[大村邦英]]訳|year=1879|month=9|title=幾何学通書|publisher=浜田法尊|volume=巻之1|ref={{Harvid|李珍大|1879}}}}<br />
* {{Cite book|和書|author=A.M.ルジャンドル|others=[[高瀬正仁]]訳|year=2007|month=12|title=数の理論|publisher=海鳴社|isbn=978-4-87525-245-0|ref={{Harvid|ルジャンドル|2007}}}}<br />
<br />
== 注釈・脚注 ==<br />
=== 注釈 ===<br />
<references group="注釈"/><br />
<br />
=== 脚注 ===<br />
<references/><br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
* {{Cite book|和書 |author=[[足立恒雄]] |title=フェルマーの大定理 整数論の源流 |publisher=筑摩書房 |series=ちくま学芸文庫 |date=2006-09-10 |isbn=978-4-480-09012-6 |ref={{Harvid|足立|2006}} }}<br />
* {{Cite book|和書 |author= 彌永昌吉 |authorlink= 彌永昌吉 |coauthors= [[中村誠太郎]]、[[三村征雄]]、[[湯川秀樹]] |editor= [[相賀徹夫]] |others= |title= 万有百科大事典 16 物理・数学 |origdate= 1976-4-20 |url= |format= |accessdate= |edition= 初版 |date= |year= |publisher= [[小学館]] |location= |series= [[日本大百科全書]] |language= 日本語 |ref={{Harvid|彌永ほか|1976}} }}<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
* [[ガウス=ルジャンドルのアルゴリズム]]<br />
* [[ルジャンドル関数]]<br />
* [[ルジャンドル記号]]<br />
* [[ルジャンドル多項式]]<br />
* [[ルジャンドル定数]]<br />
* [[ルジャンドル予想]]<br />
* {{仮リンク|ルジャンドル (クレーター)|en|Legendre (crater)}} - ルジャンドルの功績を讃えて名付けられた[[クレーター]]<br />
* {{仮リンク|ルジャンドル (小惑星)|en|26950 Legendre}} - ルジャンドルの功績を讃えて名付けられた[[小惑星]]<br />
* [[エッフェル塔に名前を刻まれた72人のフランスの科学者の一覧]]<br />
<br />
==外部リンク==<br />
* {{Kotobank|ルジャンドル|2=[[小堀憲]]}}<br />
* {{MacTutor Biography|id=Legendre}}<br />
<br />
{{Normdaten}}<br />
{{DEFAULTSORT:るしやんとる あとりあん まり}}<br />
[[Category:フランスの数学者]]<br />
[[Category:数論学者]]<br />
[[Category:18世紀の学者]]<br />
[[Category:19世紀の自然科学者]]<br />
[[Category:18世紀の数学者|520918]]<br />
[[Category:19世紀の数学者|-520918]]<br />
[[Category:パリ出身の人物]]<br />
[[Category:数学に関する記事]]<br />
[[Category:1752年生]]<br />
[[Category:1833年没]]</div>
126.114.83.232
マルコフの不等式
2017-01-13T03:32:02Z
<p>126.114.83.232: /* 関連項目 */</p>
<hr />
<div>'''マルコフの不等式'''は[[確率論]]で、[[確率変数]]の非負値[[関数 (数学)|関数]]の値が、ある正の[[定数]]以上になる[[確率]]の[[上限]]を与える不等式である。[[アンドレイ・マルコフ]]が証明した。<br />
<br />
マルコフの不等式は確率と[[期待値]]の関係を述べたもので、ランダム変数の[[累積分布関数]]に関して大まかではあるが有用な限界を与える。<br />
<br />
==定式化==<br />
マルコフの不等式は、[[測度論]]的には、(''X'',&Sigma;,&mu;) を[[測度空間]]とし、''f'' を拡張[[実数]]値(無限大もとりうる)[[可測関数]]とし、 ''t'' > 0 とすれば、<br />
<br />
:<math> \mu(\{x\in X|\,|f(x)|\geq t\}) \leq {1\over t}\int_X f\,d\mu</math><br />
<br />
であることを述べる。空間の測度が 1 である特別な場合(つまり確率空間である)には、次のように言い換えられる:<br />
<br />
''X'' を任意の確率変数とし、''a'' > 0 とすると、<br />
<br />
:<math>\textrm{Pr}(|X| \geq a) \leq \frac{\textrm{E}(|X|)}{a}</math><br />
<br />
==確率論における証明==<br />
測度空間が確率空間である場合は証明が単純でわかりやすいので、この場合の証明をまず別に示そう。<br />
<br />
任意の事象 ''E'' に対して、''I''<sub>''E''</sub> を ''E'' の特性確率変数、つまり ''E'' が起きるならば ''I''<sub>''E''</sub> =&nbsp;1 、そうでないならば =&nbsp;0 であるとする。すると、事象 ''X''&nbsp;&ge;&nbsp;''a'' が起きるならば ''I''<sub>(''X''&nbsp;&ge;&nbsp;''a'')</sub>&nbsp;=&nbsp;1 であり、''X''&nbsp;<&nbsp;''a'' ならば ''I''<sub>(''X''&nbsp;&ge;&nbsp;''a'')</sub>&nbsp;=&nbsp;0 である。そこで<br />
<br />
:<math>aI_{(|X| \geq a)} \leq |X|\,</math><br />
<br />
ゆえに<br />
<br />
:<math>\operatorname{E}(aI_{(|X| \geq a)}) \leq \operatorname{E}(|X|)\,</math><br />
<br />
ここでこの不等式の左辺は<br />
<br />
<br />
:<math>a\operatorname{E}(I_{(|X| \geq a)})=a\Pr(|X| \geq a)\,</math><br />
<br />
と同じであることがわかる。従って<br />
<br />
:<math>a\Pr(|X| \geq a) \leq \operatorname{E}(|X|)\,</math><br />
<br />
となり、 ''a'' > 0 だから、両辺を ''a'' で割ればよい。<br />
<br />
==一般的証明==<br />
<br />
任意の可測集合 ''A'' に対して、 1<sub>''A''</sub> をその[[指示関数|特性関数]]、つまり ''x'' &isin; ''A'' ならば 1<sub>''A''</sub>(''x'') = 1 、そうでなければ 0 としよう。''A''<sub>''t''</sub> を ''A''<sub>''t''</sub> = {''x'' &isin; ''X''| |''f''(''x'')| &ge; ''t''} として定義すれば、<br />
<br />
:<math>0\leq t\,1_{A_t}\leq |f|1_{A_t}\leq |f|</math><br />
<br />
となり、ゆえに<br />
<br />
:<math>\int_X t\,1_{A_t}\,d\mu\leq\int_{A_t}|f|\,d\mu\leq\int_X |f|\,d\mu</math><br />
<br />
ここで、この不等式の左辺は<br />
<br />
:<math>t\int_X 1_{A_t}\,d\mu=t\mu(A_t)</math><br />
<br />
と同じであることに注意しよう。すると<br />
<br />
:<math>t\mu(\{x\in X|\,|f(x)|\geq t\}) \leq \int_X|f|\,d\mu</math><br />
<br />
であり、また ''t'' > 0 であるから、両辺を ''t'' で割れば<br />
<br />
:<math>\mu(\{x\in X|\,|f(x)|\geq t\}) \leq {1\over t}\int_X|f|\,d\mu</math><br />
<br />
となる。<br />
<br />
==応用例==<br />
* マルコフの不等式は、[[チェビシェフの不等式]]の証明に用いられる。<br />
* ''X'' を非負[[整数]]値確率変数とする([[組合せ論]]でよくあるように)と、マルコフの不等式で ''a'' = 1 とすることにより <math>\textrm{Pr}(X \neq 0) \leq \textrm{E}(X)</math> が得られる。''X'' をある[[集合]]の[[濃度 (数学)|濃度]]とすると、これからこの集合は[[空集合]]ではないことが証明される。このように存在証明への応用も可能である。<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
* [[チェビシェフの不等式]]<br />
* [[Hoeffding(へフディング)の不等式]]<br />
<br />
{{DEFAULTSORT:まるこふのふとうしき}}<br />
<br />
[[Category:確率論]]<br />
[[Category:不等式]]<br />
[[Category:数学に関する記事]]</div>
126.114.83.232
スツルムの定理
2016-12-28T13:58:35Z
<p>126.114.83.232: /* スツルムの方法 */</p>
<hr />
<div>'''スツルムの定理'''(スツルムのていり、{{lang-en-short|Sturm's theorem}})とは、実係数一変数[[多項式]]の任意に指定された実区間に含まれる(重複を含めない)実零点の個数を決定する方法である(扱える区間としては無限区間、半無限区間も含む)。<br />
<br />
[[代数学の基本定理]]によれば(一般には複素係数の)一変数[[多項式]]の重複を込めた複素零点の個数はその多項式の次数に等しいが、スツルムの定理では実係数多項式の実零点の個数を重複を考慮せずに扱っている。<br />
<br />
== スツルム列 ==<br />
実区間<math>[a,b]</math>が与えられたとき、次の4つの条件を満足する実係数をもつ[[多項式]]列<br />
:<math> f_0(x),~f_1(x),~f_2(x),~\cdots,~f_L(x)</math><br />
は区間<math>[a,b]</math>においてスツルム列(スツルム関数列)をなすという。<br />
# 列中にある任意の隣り合う2つの多項式<math>f_k(x)</math>と<math>f_{k+1}(x)</math>は、区間<math>x \in [a,b]</math>に於いて共通の零点を持たない。<br />
# 列中にある任意の隣り合う3つの多項式<math>f_{k-1}(x)</math>、<math>f_k(x)</math>、<math>f_{k+1}(x)</math>について、区間<math>[a,b]</math>に於ける多項式<math>f_k(x)</math>の零点<math>z</math>に対して、その両側の多項式の<math>z</math>に於ける値の符号は逆になる(つまり<math>z\in[a,b]</math>かつ<math>f_k(z)=0</math>ならば<math>f_{k-1}(z) f_{k+1}(z)<0</math>である)。<br />
# 列の最後の多項式<math>f_L(x)</math>は 区間<math>x \in [a,b]</math>に於いて一定の符号を持つ(つまり<math>f_L(x)</math>は区間<math>x \in [a,b]</math>に零点を持たない)。<br />
# <math>f_0(x)</math>の区間<math>x \in [a,b]</math>に於ける任意の零点を<math>z</math>とすれば、<math>f_0'(z) f_1(z) > 0</math>である。ここで<math>f_0'(x)</math>は<math>f_0(x)</math>の導関数を表す。<br />
<br />
=== ユークリッドの互除法によるスツルム列の生成 ===<br />
上の条件を満足するスツルム列の一つとして、[[多項式]]<math>f(x)</math>とその[[微分]]<math>f'(x)</math>について<br />
:<math>f_0(x)=f(x)</math><br />
:<math>f_1(x)=f'(x)</math><br />
とおき、これに[[ユークリッドの互除法]]を適用することで得られる多項式列がある:<br />
:<math>\begin{matrix}<br />
f_0(x) & = & g_1(x)f_1(x)-f_2(x)\\<br />
f_1(x) & = & g_2(x)f_2(x)-f_3(x)\\<br />
f_2(x) & = & g_3(x)f_3(x)-f_4(x)\\<br />
* & \vdots & \\<br />
f_{l-1}(x) & = & g_l(x)f_l(x)~~~~~~~~~~\\<br />
\end{matrix}</math><br />
このとき<math>f_l(x)</math>は<math>f_0(x)</math>と<math>f_1(x)</math>との[[最大公約数]]であり、さらに<math>f(x)=0</math>と<math>f'(x)=0</math>が共通根をもたない、<br />
すなわち<math>f(x)=0</math>が単根のみをもつとき、<math>f_l(x)=</math>定数<math>\ne0</math>を満足する。<br />
<br />
また、3重対角化された[[対称行列]]<math>A</math>からなる[[行列]]<math>\lambda I-A</math>の[[主小行列式]]により構成される多項式列や、最高次の係数が正である[[直交多項式]]の列も<br />
区間<math>[a,b]</math>においてスツルム列をなす。<br />
<br />
== スツルムの定理 ==<br />
実係数多項式の列<math>f_0(x),f_1(x),f_2(x),\cdots,f_l(x)</math>は<math>x \in [a,b]</math>でスツルム列をなし、<math>f_0(a)f_0(b)\neq0</math>であるとする。<br />
このとき、<math>x</math>を固定して関数値の列<br />
:<math> f_0(x),~f_1(x),~f_2(x),~\cdots,~f_l(x)</math><br />
を左から右に見ていったときの符号(正負)の変化の回数を<math>N(x)</math>とすると、方程式<math>f_0(x)=0</math>の区間<math>[a,b]</math>内における解の個数は<br />
:<math> N(a)-N(b)</math><br />
で与えられる。<br />
<br />
== スツルムの方法 ==<br />
スツルムの定理を用いることで、区間<math>[a,b]</math>内に存在する<math>f(x)=0</math>の実根の個数を求めることができるが、これを利用して区間縮小法により実係数をもつ[[代数方程式]]の実数解を求めることができる。<br />
<br />
たとえば区間<math>[a,b]</math>を2等分して<math>[a,(a+b)/2],[(a+b)/2,b]</math>なる二つの区間に分け、各区間における根の個数をスツルムの定理によって求める、という手順を繰り返してしだいに区間を狭くしていく。<br />
そして、一つの根だけが存在する区間を十分に小さくすることで、根の[[近似値]]を得ることができる。([[二分法]])<br />
<br />
また、区間<math>[a,b]</math>において<math>a</math>を固定して<math>b</math>を<math>N(a)-N(b)=1</math>になるまで小さくし、それから[[二分法]]を用いて<math>b-a\le\varepsilon</math>になるように<math>a,b</math>の値を近づけることで根の最小値を決定し、そして次に小さい根を決定する、といったように根の近似値を小さい根の方から、あるいは大きい方から得ることもできる。<br />
<br />
このように[[二分法]]や[[ニュートン法]]などの[[求根アルゴリズム]]を用いてスツルムの定理から根の近似値を求める手法を'''スツルムの方法'''という。<br />
<br />
実対称行列あるいはエルミート行列の[[固有値問題]]においても、指定された実区間にある固有値の個数(重複度を含めた)を求めることにより区間縮小法により固有値の存在範囲の狭めて近似値を求めるスツルムの二分法として応用される。<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
* 高木貞治、「代数学講義(改訂新版)」第3章''スツルムの問題,根の計算'', 共立出版、1965年(初版は1930年、改訂版は1948年)<br />
* {{Cite book|和書|author=森正武|authorlink=森正武|year=2002|month=2|title=数値解析|publisher=共立出版|isbn=4-320-01701-3|}}<br />
* {{Cite book|和書|author=夏目雄平・小川建吾|year=2002|month=3|title=計算物理I|publisher=朝倉書店|isbn=978-4-254-13713-2|}}<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
* [[代数方程式]]<br />
* [[固有値問題]]<br />
* [[二分法]]<br />
<br />
{{DEFAULTSORT:すつるむのていり}}<br />
[[Category:応用力学]]<br />
[[Category:数値解析]]<br />
[[Category:解析学の定理]]<br />
[[Category:数学に関する記事]]</div>
126.114.83.232
ヒルベルト行列
2016-09-24T13:22:20Z
<p>126.114.83.232: /* 性質 */</p>
<hr />
<div>[[線形代数学]]において[[正方行列]] <math>H</math> が'''ヒルベルト行列'''(ひるべるとぎょうれつ、Hilbert matrix)であることの定義は,その <math>(i, j)</math> [[行列要素|要素]] <math>H_{i,j}</math> が次のような[[分数#数としての分数|単位分数]]であることである:<br />
<br />
:<math> H_{i,j} = \frac{1}{i+j-1}</math><br />
<br />
例として5次のヒルベルト行列を示す:<br />
<br />
:<math>H = \begin{bmatrix} <br />
1 & \frac{1}{2} & \frac{1}{3} & \frac{1}{4} & \frac{1}{5} \\[4pt]<br />
\frac{1}{2} & \frac{1}{3} & \frac{1}{4} & \frac{1}{5} & \frac{1}{6} \\[4pt]<br />
\frac{1}{3} & \frac{1}{4} & \frac{1}{5} & \frac{1}{6} & \frac{1}{7} \\[4pt]<br />
\frac{1}{4} & \frac{1}{5} & \frac{1}{6} & \frac{1}{7} & \frac{1}{8} \\[4pt]<br />
\frac{1}{5} & \frac{1}{6} & \frac{1}{7} & \frac{1}{8} & \frac{1}{9} \end{bmatrix}</math><br />
<br />
このようなものを定義する動機としては次のような積分を考えると良い:<br />
<br />
:<math> \int_{0}^{1} (x^{i-1})(x^{j-1})\,dx = \int_{0}^{1} x^{i+j-2} \, dx = \frac{1}{i+j-1} = H_{i,j} </math><br />
<br />
すなわちヒルベルト行列は区間[0,1]での <math>x</math> の[[冪乗]]に対する[[グラム行列]]である。<br />
<br />
==歴史的経緯==<br />
<br />
ヒルベルト行列の初出は[[ダフィット・ヒルベルト]]の論文集<ref><br />
David Hilbert, ''Collected papers'', vol. II, article 21<br />
</ref>に収められた論文 "Ein Beitrag zur Theorie des Legendreschen Polynoms"<ref><br />
David Hilbert, Ein Beitrag zur Theorie des Legendreschen Polynoms, ''[[Acta Mathematica]]'', vol. 18, 155-159, 1894<br />
</ref>である。<br />
この論文は{{仮リンク|近似理論|en|Approximation theory}}における以下の問題を扱っていた:<br />
<blockquote><br />
[[区間 (数学)|区間]] <math>I = [a, b]</math> が与えられたとき、任意の小さな正数εに対し、"整数"係数の非零な多項式 <math>P</math> を適当に選んで、積分<br />
<br />
:<math>\int_{a}^b P(x)^2 \, dx</math> <br />
<br />
をεより小さくできるだろうか? <br />
</blockquote><br />
ヒルベルトは、ヒルベルト行列の[[行列式]]の[[漸近線|漸近形]]を使って区間の長さ <math>b-a</math> が4未満ならばこれが可能であることを示した。<br />
<br />
ヒルベルトは <math>n</math> 次のヒルベルト行列 <math>H</math> の行列式を閉じた式で求めた:<br />
<br />
:<math>\det(H)={{c_n^{\;4}}\over {c_{2n}}}</math> <br />
<br />
ここで <math>c_n</math> は次のように書ける:<br />
<br />
:<math>c_n = \prod_{i=1}^{n-1} i^{n-i}=\prod_{i=1}^{n-1} i! </math><br />
<br />
ヒルベルトは次のような興味深い事実を指摘している。すなわちヒルベルト行列の行列式の逆数は整数であり、その整数は[[ルジャンドル多項式]]に関連するある種の超幾何多項式の[[判別式]]として書ける。これは次の恒等式からも分かる:<br />
<br />
: <math>{1 \over \det (H)}={{c_{2n}}\over {c_n^{\;4}}}=n!\cdot \prod_{i=1}^{2n-1} {i \choose [i/2]}<br />
</math> <br />
<br />
<math>\log c_n</math> に対して[[オイラー=マクローリンの総和公式]]を適用することで、ヒルベルトは次の漸近形を得た:<br />
<br />
:<math>\det(H)=4^{-n^2+r_n}</math><br />
<br />
ここで誤差項 <math>r_n</math> は <math>o(n^2)</math> である。より正確な漸近形は[[階乗]]に対する[[スターリングの公式]]を使って<br />
<br />
:<math>\det(H)=a_n\, n^{-1/4}(2\pi)^n \,4^{-n^2}</math><br />
<br />
として得られる。ここで <math>a_n</math> は <math>n\to\infty</math> のとき定数<br />
<math>a_\infty=0.6450... </math> に収束する。<br />
<br />
==性質==<br />
<br />
ヒルベルト行列は[[対称行列]]、特に[[ハンケル行列]]である。<br />
また[[正定値行列]]である。<br />
<br />
ヒルベルト行列は[[:en:totally positive]]、すなわち全ての[[部分行列]]の行列式が正である。<br />
<br />
ヒルベルト行列は悪条件の行列の代表例であり、数値計算において極めて扱い辛い。<br />
例えば[[行列ノルム|2-ノルム]]による[[条件数]]を冒頭の5次行列の例に対し計算すると<math>4.8\times10^5</math>となる。<br />
条件数は次数 <math>n\to\infty</math> に対し <math>O(e^{3.5255n}/\sqrt{n})</math> のように増大する。<br />
<br />
上述の通りヒルベルト行列の行列式は[[閉じた式]]で書けるが、これは[[コーシー行列式]]の特別な場合である。<br />
<br />
ヒルベルト行列の[[逆行列]]も閉じた式で書ける。<br />
具体的には、その <math>(i, j)</math> 要素は<br />
<br />
:<math>(H^{-1})_{i,j}=(-1)^{i+j}(i+j-1){n+i-1 \choose n-j}{n+j-1 \choose n-i}{i+j-2 \choose i-1}^2</math><br />
<br />
であり(<math>n</math> は元のヒルベルト行列の次数)、いずれも整数である。<br />
(このことからも行列式の逆数が整数であることがわかる)<br />
<br />
{{math-stub}}<br />
<br />
==参考文献==<br />
<br />
<references /><br />
* Beckermann, Bernhard. "The condition number of real Vandermonde, Krylov and positive definite Hankel matrices," ''Numerische Mathematik''. '''85'''(4), 553--577, 2000.<br />
* Choi, M.-D. "Tricks or Treats with the Hilbert Matrix," ''American Mathematical Monthly''. '''90''', 301–312, 1983.<br />
* Todd, John. "The Condition Number of the Finite Segment of the Hilbert Matrix," ''National Bureau of Standards, Applied Mathematics Series''. '''39''', 109–116, 1954.<br />
* Wilf, H.S. ''Finite Sections of Some Classical Inequalities''. Heidelberg: Springer, 1970.<br />
<br />
{{DEFAULTSORT:ひるへるときようれつ}}<br />
[[Category:数値線形代数]]<br />
[[Category:数学に関する記事]]<br />
[[Category:行列]]</div>
126.114.83.232
ガンマフィールド
2016-01-29T14:47:38Z
<p>126.114.83.232: </p>
<hr />
<div>'''ガンマフィールド'''(ガンマーフィールド)とは[[第二次世界大戦]]後の[[東西冷戦]]下において[[核戦争]]による[[放射線]]が植物に及ぼす影響を調査するために設置された[[軍事施設]]である。<br />
<br />
1946年に[[アメリカ合衆国]]に設立された[[ブルックヘブン国立研究所]]内に1948年に世界初のガンマフィールドが設置された。アメリカは世界各国に同目的のためにガンマフィールドを輸出した。アメリカは日本に対して無償でブルックヘブンと同じ装置の貸与を提案したが、日本が望んでいたのは放射線照射による突然変異を利用した植物の品種改良のための施設であり、線源の強度などが目的と合致しなかったために独自で開発したガンマフィールドを建設した。<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
* [[鵜飼保雄]] 『植物が語る 放射線の表と裏』[[培風館]]、2007年、178-188頁。<br />
<br />
{{デフォルトソート:かんまふぃいるど}}<br />
[[Category:軍事施設]]<br />
[[Category:米軍基地]]<br />
[[Category:冷戦]]<br />
[[Category:核戦争]]</div>
126.114.83.232
Warning : Cannot modify header information - headers already sent by (output started at /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/extensions/HeadScript/HeadScript.php:3) in /home/users/1/sub.jp-asate/web/wiki/includes/WebResponse.php on line 46