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miniwiki - 利用者の投稿記録 [ja]
2024-05-21T13:06:11Z
利用者の投稿記録
MediaWiki 1.31.0
小銃
2018-09-11T15:03:19Z
<p>124.141.10.80: /* 着剣機構 */誤字修正</p>
<hr />
<div>{{Multiple image<br />
|width=350<br />
|direction=vertical<br />
|image1=Baker rifle (no bayonet).png<br />
|caption1=[[ベイカー銃]]、[[19世紀]]のライフル<br />
|image2=Rifle Springfield M1903.jpg<br />
|caption2=[[スプリングフィールドM1903小銃|M1903]]、20世紀初頭の[[ボルトアクション方式|ボルトアクション]]ライフル<br />
|image3=Garand.jpg<br />
|caption3=[[M1ガーランド]]、半[[自動小銃]]<br />
|image4=Stgw 90.jpg<br />
|caption4=[[SIG SG550]]、[[アサルトライフル]]<br />
|image5=AUG A2 407mm klein 03.jpg<br />
|caption5=[[ステアーAUG|ステアーAUG A2]]、[[ブルパップ方式|ブルパップ式]]アサルトライフル<br />
}}<br />
'''小銃'''(しょうじゅう)は、[[兵士]]が個人用に使うための[[軍用銃]]で、[[軍隊]]では最も一般的な[[小火器]]である。<br />
<br />
小銃一般を指し、'''ライフル'''([[英語|英]]:Rifle)あるいは'''ライフル銃'''と呼ぶこともある。この表現は[[ライフリング]]に由来するが、ライフリングを有する銃の全てがここで言うライフルに当てはまるわけではない。また、日本語で「小銃」といった場合、本来はライフリングの有無を考慮しない([[#定義]]を参照)。<br />
<br />
== 概要 ==<br />
[[File:Lgehumble 1400.jpg|thumb|ハンド・カノンを射撃する兵士(1405年頃)]]<br />
小銃とは、兵士が両手で保持し照準して発射する火器を言う{{sfn|床井|2013|p=133}}。[[近代]]から[[現代 (時代区分)|現代]]にかけて、主に[[歩兵]]一個人が携行する最も基本的な[[武器]]('''歩兵銃''')として使用されている。近距離から遠距離まで、広い範囲の[[射撃]]をこなせる万能性を持つ。<br />
<br />
1人で持ち運べることや、射撃の自由度が高いことが求められるため、重量や反動が過大で立射ができない銃は小銃とは呼びがたく、この点から[[火力支援]]用の[[機関銃]]や、[[対物ライフル]]([[対戦車ライフル]])などは小銃に含まれない。ただし、初期の小銃には軽量化が不十分で支え棒([[一脚]])を用いるものが存在した。<br />
<br />
小銃の前身は、16世紀頃まで存在していたハンド・カノン([[:en:Hand cannon|Hand cannon]])やハンド・ガン(Hand gun)と呼ばれる小型の大砲である。15世紀頃からは小型化が進められ、現在小銃と呼ばれる銃器に近い形状のものが現れ始めていた。この中で大砲と小銃という区別が生まれ始め、[[火縄銃|火縄式]]発火装置(マッチロック)の発明がこれを決定づけた。固定式照門を備えた火縄銃は照準および発砲が非常に容易く行える為、これによって小銃は個人用の携帯火器として大砲と明確に区別されるようになったのである{{sfn|小山|1941|p=52}}。<br />
<br />
最も初期の小銃としては、スペインで開発された{{仮リンク|アルクビュス銃|en|Arquebus}}がある。これを装備したスペイン銃兵やドイツ傭兵は、剣類を主に配備された他国軍を各地で打ち破った。16世紀には火縄式の火種に関する欠点の克服を試みた[[ホイールロック式|歯輪式]]発火装置(ホイールロック)が開発されたが、火縄式よりも高価であり、また構造の複雑性故信頼性も低かった。そのため、歯輪式の採用は狩猟用や騎兵用といった限定的な範囲に留まった{{sfn|小山|1941|pp=52-55}}。<br />
<br />
16世紀を通じて小銃は普及・発展し、旧来の[[重騎兵|重装騎馬戦術]]を完全に無価値なものとした。一方で当時の小銃は再装填に時間がかかり、装填時の隙を突いて行われる騎兵や槍兵の攻撃に銃兵隊は対処できなかった。その為、各国の軍全体に占める銃兵の割合は徐々に増加してはいたものの、16世紀末の時点でも全体の半分には達しない程度だったという{{sfn|小山|1941|pp=56-58}}。<br />
<br />
1640年頃には[[銃剣]](バヨネット)が発明された。これによって従来装填の合間を狙って行われていた[[騎兵]]の突撃にも対処しうるようになり、小銃兵の戦術的価値は大いに高められた{{sfn|小山|1941|p=95}}。後に近接戦闘能力の高い[[アサルトライフル]]が普及し、かつてほど重要なものとはみなされなくなった。しかしいまだ着剣装置は小銃に必須のものと見做されていることがほとんどである。<br />
<br />
ライフルと呼ばれる小銃が登場した頃は、[[前装式]](マズルローダー)かつ火縄式(マッチロック)の銃が主流であった。その後、着火方式は[[フリントロック式|燧発式]](フリントロック)、[[銃用雷管|管打式]](パーカッションロック)へと発展した。19世紀後半には弾丸と発射薬、雷管を一体化させた[[実包]](カートリッジ)が発明され、これを用いた[[後装式]](ブリーチローダー)の小銃が普及し、さらなる連発式小銃の研究も進められた。実包自体の研究も盛んに行われ、従来の[[黒色火薬]]よりも高いガス圧を安定して得られる[[無煙火薬]]の登場により、弾丸を小口径化・軽量化しても十分な威力が得られるようになった。実包の小型化は連発式小銃の開発をさらに推し進め、やがて次弾の装填を自動で行う自動小銃へと繋がっていった{{sfn|床井|2013|p=132}}。<br />
<br />
== 定義 ==<br />
=== ライフルの定義 ===<br />
{{仮リンク|ブリタニカ辞典|en|Encyclopædia Britannica Online}}では、ライフルを次のように定義している<ref>{{Cite web |author= |date= |url= http://global.britannica.com/technology/rifle |title= Rifle |work= |publisher= britannica.com |accessdate=2015-07-30}}</ref>。<br />
{{quote|ライフルとは、ライフリングを施された銃身を有する火器である(すなわち、銃身内側に発射体に回転を与える浅い螺旋状の溝を有し、これによって飛翔中に安定させる)。滑腔銃身と比較して、ライフリングを施された銃身は、発射体に高い精度を与える。ライフルという名称は、ほとんどの場合肩撃ち式の火器を指し、場合によっては複数人で運用されるライフル砲や[[無反動砲|リコイルレス・ライフル]]にも使われる。野砲、拳銃、機関銃もライフリングを施された銃身を有するが、これらは通常ライフルとは呼ばれない。<ref group="note">原文:"rifle, firearm with a rifled bore—i.e., having shallow spiral grooves cut inside the barrel to impart a spin to the projectile, thus stabilizing it in flight. A rifled barrel imparts much greater accuracy to a projectile, as compared with a smoothbore barrel. The name rifle, most often applied to a weapon fired from the shoulder, may also denote a crew-served weapon such as a rifled cannon or recoilless rifle. Although field guns, pistols, and machine guns have rifled barrels, they are not normally referred to as rifles."</ref>}}<br />
<br />
つまり銃身に旋条([[ライフリング]])を有する火器<!-- のうち、砲ではなく銃に分類されるもの (そんなことはない、戦車砲もライフル砲/滑腔砲の分類あり)-->全般がライフルであるが、単にライフルという場合、普通は小銃を指す。[[全米ライフル協会]](NRA)の立法行動研究所(NRA-ILA)では、「ライフリングを施された肩撃ちの銃」(A shoulder gun with rifled bore.)という定義を紹介している<ref>{{Cite web |author= |date= |url= https://www.nraila.org/about/glossary/ |title= Glossary |work= |publisher= NRA-ILA |accessdate=2015-07-31}}</ref>。<br />
<br />
ライフリングはさまざまな[[銃]][[砲]]に刻まれているため、本来「ライフル」という語は小銃のみを指すものではなかった。小銃一般を指して「ライフル」と表現することもあるが、これは[[アメリカ独立戦争]]の際、当時珍しかった{{仮リンク|ライフルド・マスケット|en|Rifled musket}}([[英語|英]]:Rifled musket, ライフリングが施されたマスケット銃)を装備した[[ミニットマン]]が、従来の[[マスケット銃|マスケット]]を装備した[[イギリス軍]]を[[狙撃]]して悩ませた故事に基づく。それ以来、「ライフル」という言葉は小銃という意味合いを含むようになり、施条自体は「ライフリング」と表現されるようになったという{{sfn|かの|2012|p=18}}。<br />
<br />
=== 小銃の定義 ===<br />
日本語における小銃とは、ライフリングを有さない[[火縄銃]]や[[マスケット銃]]などを含む言葉である。<br />
<br />
日本では江戸時代の終わり頃まで、[[銃]][[砲]](GUN)のうち、大きいもの(砲)を「大銃」とよび、小さいもの(銃)を「'''小銃'''」と呼んでいた{{sfn|かの|2012|p=12}}。明治時代に入ると大きいものを「砲」と表現するようになったため、「大銃」という表現は次第に使われなくなり、歩兵が用いる個人用銃を指す「小銃」という言葉のみ残ったのである{{sfn|かの|2012|p=22}}。当時の銃砲はライフリングが無いわけであるから、小銃という言葉は本来ライフリング(腔綫もしくは施条)のあるなしを区別しないのである([[#銃身]])。<br />
<br />
[[防衛省]]では、'''Rifle'''の英単語に対応する語として「小銃」を当て、「個人携行の基本となる肩撃ち銃。使用目的によって,歩兵銃,騎銃,突撃銃,そ(狙)撃銃などがある。」と定義している<ref name="MOD_01">{{Cite web |date= 2009-05-13 |url= http://www.mod.go.jp/trdi/data/pdf/Y/Y0002B.pdf |title= 防衛省規格 火器用語(小火器)|format=PDF |publisher= [[防衛省]] |accessdate=2015-07-31}}</ref>。<br />
<br />
=== 日本での法律上の規定 ===<br />
日本の法律上、小銃とは軍用銃のみを指し、同一の火器であっても民間で所有されるものは'''猟銃'''として区別される{{sfn|かの|2012|p=22}}。また、[[銃砲刀剣類所持等取締法]](銃刀法)における猟銃とは「ライフル銃」および「ライフル銃以外の猟銃」の2分類から成り、「ライフル銃以外の猟銃」はさらに「散弾銃」と「ライフル銃及び散弾銃以外の猟銃」に分かれる。空気銃は猟銃に含まれない別分類とされている<ref>{{Cite web |author= |date= 2009-12-28|url= http://www.nikkaren.jp/pdf/q&a.pdf |title= 銃砲刀剣類所持等取締法等一部改正施行に係るQ&A |work= |publisher= 日本火薬銃砲商組合連合会 |accessdate=2016-03-20}}{{リンク切れ|date=2017年10月}}</ref>。<br />
<br />
'''狩猟用ライフル'''(所持目的が狩猟用であるライフル銃)を所持する場合は猟銃(法的な区分による猟銃であり狩猟目的とは限らない散弾銃や競技用ライフル銃)を10年以上継続して所持しているという実績が必要である。また、狩猟用ライフルは[[狩猟法]]の規定により口径が5.9ミリ以下の物は認められない。<br />
<br />
'''競技用ライフル'''の場合は[[日本体育協会]]の推薦が必要となり、射撃大会などの成績により認定される段級位に応じて、'''エアライフル'''、'''小口径ライフル'''(口径5.6ミリ)、'''大口径ライフル'''(口径8ミリ以下に限られ、口径5.6ミリであってもセンターファイヤーの物は大口径として扱われる)が所持できる。この場合必ずエアライフルからはじめなければならず([[バイアスロン]]および[[近代五種競技|近代五種]]用のライフル銃は[[ビームライフル]]からでも可である)、小口径を経て大口径ライフルへと段位を積み重ねる必要がある。また、推薦要件は手動単発式ライフルのみであるため、小口径・大口径の競技銃は'''ボルトアクション'''に限られ、狩猟用のような'''半自動式ライフル'''は競技用として所持できない(ライフル協会などの推薦が出ないため)。また、狩猟用、競技用共構造として5発を超える装弾が装填できる弾倉を持つ物は許可されない(薬室内1発+[[弾倉]]内5発の物は可)。<br />
<br />
== 構造 ==<br />
=== 銃身 ===<br />
[[ファイル:105mm tank gun Rifling.jpg|thumb|right|200px|[[ライフリング]]の構造。写真は火砲([[戦車砲]])の断面]]<br />
[[ファイル:Arisaka Type 99 rifling.jpg|thumb|right|200px|[[九九式短小銃]]の腔線。下部の逆T字部分が着剣装置]]<br />
{{main|ライフリング}}<br />
現在の小銃はほとんどが'''ライフリング'''('''施条'''、'''腔線''')を有し、ここから転じた'''ライフル'''という語は小銃とほぼ同義となっている。また、ライフリングという語自体は[[古フランス語]]のRiflerに由来し、元々は「削る」などの意味を持っていた。施条銃身から撃ち出される[[弾丸]]は、ライフリングに浅く食い込みながら進む事で回転運動を与えられ、[[ジャイロ効果]]により滑腔銃身よりはるかに高い直進性・低伸性を得るため、精密な射撃([[狙撃]])が可能となる。<br />
<br />
ライフリング自体は15世紀中頃に開発されていたものの、いくつかの技術的問題からほとんど普及していなかった。実用的なライフル銃(施条銃)は1740年代にイギリス人科学者{{仮リンク|ベンジャミン・ロビンス|en|Benjamin Robins}}によって理論的に発明され、その後の[[アメリカ独立戦争]](1775年 - 1783年)、[[ナポレオン戦争]](1803年 – 1815年)を通じて実際に運用された。19世紀に入ると、イギリスで前装式ライフル銃として[[ベイカー銃]]や[[ブランズウィック銃]]が開発されている。この頃までにライフリングの利点は広く認識されていたものの、本格的な普及には至らなかった。前装式小銃にライフリングを施した場合、銃口から弾丸を装填することが非常に困難となったためである。やがて一回り小さい弾丸を装填後に押しつぶしライフリングに食い込ませる膨張式弾薬が開発され、これを更に発展させた長形弾丸([[ミニエー銃#ミニエー弾|ミニエー弾]])を用いる[[ミニエー銃]]の開発(1849年)によって施条銃身を有するマスケット({{仮リンク|ライフルド・マスケット|en|Rifled musket}})の普及が始まったのである{{sfn|小山|1941|pp=146-147}}。<br />
<br />
なお、近代以降の日本における「小銃」とは、本来は上述のライフリングの有無や前装式・後装式の区分に関わらず、比較的長銃身で個人が携行する銃器の総称であり、欧米における狭義の「ライフル」とは厳密には意味が異なる。<br />
<br />
=== 着剣機構 ===<br />
軍用小銃には原則として[[銃剣]]を取り付けるための着剣装置が設けらている。着剣装置がない銃ではソケットタイプの銃剣を銃口にかぶせることで着剣できるようになっているものが多く、全長が短い[[ブルパップ]]小銃によくみられる(通常の着剣装置より銃剣を含めた長さを長くできるため)。<br />
<br />
小銃が普及し始めた頃、射撃後の再装填には非常に時間がかかったため、その合間を狙って[[騎兵]]による突撃を受けて追い散らされることが多く、これに抗するには槍で槍衾を作る必要があった。1640年頃には銃剣が発明されたことで小銃は槍としての役割を兼ねることとなり、かつて銃兵の天敵であった騎兵にも対処することが可能となった{{sfn|小山|1941|p=95}}。またかつての小銃は発射速度や命中精度が低く、小銃の撃ち合いだけでは決着がつかず、隊伍が乱れたところで銃剣突撃を行うのが通例であった。現代の小銃は近接射撃能力の高いアサルトライフルが主流であり、かつてほど銃剣は重要なものではなくなった。<br />
<br />
大戦中のドイツは生産簡略化のために自動小銃から銃剣を廃し、戦後も威圧的な印象を与える銃剣を用いなかった。しかし現在のドイツの小銃にも着剣装置は備えられている。また[[アメリカ陸軍]]においては[[ルイス・ミレット]]大尉によって1951年に実施されたものが最後の大規模な銃剣突撃とされており、2010年には基礎戦闘教練(Basic Combat Training)から銃剣刺突の項目が廃止された<ref>{{Cite web |author= |date= 2010-07-19 |url= http://www.army.mil/article/42500/2010-brings-major-transformation-to-basic-combat-training/ |title= 2010 brings major transformation to Basic Combat Training |work=[[アメリカ陸軍|U.S. Army]] |publisher= |accessdate=2015-12-01}}</ref>。しかし銃剣そのものが廃止されたわけではなく、近接戦闘訓練の一環として残っている。<br />
<br />
=== 閉鎖機構 ===<br />
初期の小銃は、[[銃口]]もしくは銃身の途中から[[弾丸]]と発射薬を詰めて使用される[[前装式]]が主なものだったが、遮蔽物に隠れたり伏せたままで再装填を行うことが難しいなどの問題があった。1830年代には近代的な[[後装式]]小銃の開発が進められ、1836年にはフランス人{{仮リンク|カシミール・ルフォーショウ|fr|Casimir Lefaucheux}}が初めて実用的な製品を開発した。また、同年にはプロイセンの{{仮リンク|ヨハン・ニコラウス・フォン・ドライゼ|de|Johann Nikolaus von Dreyse}}が最初の実用的な[[ボルトアクション方式|ボルトアクション式]]である[[ドライゼ銃]]を発表している。後装式小銃は前装式小銃に比べてあらゆる点で優位を認められつつ、一方で当初は閉鎖機構や新型[[実包]](各種[[薬莢]]で弾丸・発射薬・着火薬を一体化させたもの)の信頼性に問題があったため、すぐには普及しなかった。1850年代に入ると、技術発展に従い機械部品の精密加工が可能となり、十分に信頼しうる後装式小銃の製造が始まった。1860年代までに前装式小銃はほとんど使用されなくなった{{sfn|小山|1941|pp=150-151}}。<br />
<br />
現代の小銃に使用されているのは、各種[[薬莢]]で弾丸・発射薬・着火薬を一体化させた[[実包]]を用いる後装式であり、薬莢を銃身後端([[薬室]])部に差し込んで発火させた際に、発射時の圧力で薬莢が飛び出さないよう[[遊底]]で閉鎖するためのボルトアクション式をはじめとする各種の方式が考案された。<br />
<br />
=== 給弾・装填機構 ===<br />
単発銃の装填時間の長さと、それに起因する時間あたりに可能な射撃数の少なさは大きな欠点と見なされていた。改良のための試行錯誤は早い段階から始められており、初期には複数の銃身および閉鎖機構を組み合わせた多銃身銃がいくつか考案されている。また、これをさらに発展させ軽量化を図ったのが単一の銃身および閉鎖機構と複数の薬室を組み合わせた回転式銃(リボルバー)である。<br />
<br />
1860年3月、アメリカで{{仮リンク|クリストファー・マイナー・スペンサー|en|Christopher Miner Spencer}}が、最初期の弾倉式連発銃である[[スペンサー銃]]の特許を取得した。スペンサー銃は銃床内に固定式のチューブ型弾倉を備え、7発の実包を収めることができる。装填に手間がかかり、1分間あたり15発程度しか射撃できなかったものの、[[南北戦争]]中には強力な銃器として重宝された。同時期には[[ウィンチェスターライフル|ウィンチェスター銃]]、[[ヘンリー銃]]といった連発銃も開発されている。1860年代末、最初のボルトアクション式連発銃{{仮リンク|ヴェッテルリ銃|en|Vetterli rifle}}が開発され、その後もチューブ型弾倉を用いる連発銃の改良が進められた。1885年、オーストリア人技師{{仮リンク|フェルディナント・マンリッヘル|en|Ferdinand Mannlicher}}が尾筒弾倉式あるいは中央弾倉式として知られる形式のボルトアクション式連発銃を初めて開発した。これは尾筒内に固定式弾倉を設けた方式で、チューブ式弾倉と異なり複数発の実包を同時に装填することが可能だった。以後、尾筒弾倉式ボルトアクションは世界各国に普及し、長らく標準的な連発銃の形態として採用されていた{{sfn|小山|1941|pp=247-249}}。<br />
<br />
現代の小銃では固定式または着脱式の弾倉に実包を保持する形式のものが大部分となっている。弾薬の小口径化に伴い[[弾倉]]の装弾数は年々増加する傾向にある。ひとつの弾倉で50-100発もの実包を保持し、小銃を簡易な[[分隊支援火器]]とできる弾倉もある。<br />
<gallery><br />
File:Spencer rifle diagram.png|初期のチューブ型弾倉式連発小銃、[[スペンサー銃]]<br />
File:Mannlicher M1885 - Kromar.jpg|初期の尾筒弾倉式連発小銃、{{仮リンク|マンリッヘル M1885|sl|Manliherica M.85}}<br />
</gallery><br />
<br />
=== 自動化機構 ===<br />
1880年代には無煙火薬の発明による初速や射程の向上、製銃技術自体の発展を受け、小口径小銃の普及が進んだ。装填や排莢が自動化された小銃、すなわち自動小銃の開発が始まったのもこの頃であり、1882年にアメリカのウィンチェスター社が最初期の半自動小銃を発表しているほか、1908年にメキシコの{{仮リンク|マヌエル・モンドラゴン|en|Manuel Mondragón}}将軍が開発した[[モンドラゴンM1908|モンドラゴン小銃]]は、初めて軍の制式小銃として採用された自動小銃だった{{sfn|小山|1941|pp=249-252}}。<br />
<br />
現代の自動小銃では、主に[[ガス圧作動方式]]もしくは[[ブローバック#遅動ブローバック方式|遅動ブローバック方式]]の自動化機構が採用されている。<br />
<br />
== 種類 ==<br />
=== ボルトアクション小銃 ===<br />
[[ファイル:Mauser m98.jpg|thumb|right|200px|Gew 98と銃剣・実包・挿弾子(クリップ)]]<br />
{{main|ボルトアクション方式}}<br />
ボルトアクション小銃(ボルトアクションライフル)は、手動で遊底(ボルト:薬室に弾を送り込み薬室後部を閉鎖する部品)を操作し、薬室の閉鎖・開放を行う火器のことである。日本語では'''鎖閂式'''(ささんしき)とも呼ばれる。<br />
<br />
ボルトアクション機構はプロイセンの{{仮リンク|ヨハン・ニコラウス・フォン・ドライゼ|de|Johann Nikolaus von Dreyse}}が開発した[[ドライゼ銃]]で初めて採用された。各種のボルトアクションライフルはドライゼ銃を改良した系譜に連なっている。<br />
<br />
19世紀中後半から20世紀中半にかけて多く使用された。手動でボルトを操作して装填するため連射速度は遅いが、堅牢単純な構造かつ製造コストの安さで高い信頼性と命中精度を有し、[[アサルトライフル]]([[自動小銃]])が普及するまで代表的[[歩兵]]銃であった。<br />
<br />
現在では[[狙撃銃]]など、発射速度より精度を重視する場面において使用が限られているが、民生用途ではスポーツ用や狩猟用など現在でも幅広く使用されている。<br />
<br />
==== 代表的なボルトアクションライフル ====<br />
* [[ドライゼ銃]](ドイツ)<br />
* [[シャスポー銃]](フランス)<br />
* [[Gew88]](ドイツ)<br />
* [[Gew98]](ドイツ)<br />
* [[Kar98k]](ドイツ)<br />
* [[ルベルM1886ライフル|ルベル M1886]](フランス)<br />
* [[MAS 36小銃|MAS 36]](フランス)<br />
* [[リー・エンフィールド#Short Magazine Lee-Enfield Mk III|(リー・エンフィールド) SMLE Mk III]]<br />
* [[リー・エンフィールド#Rifle No.4 Mk I|(リー・エンフィールド) No.4 MK I]](イギリス)<br />
* [[モシン・ナガンM1891/30|モシン・ナガン M1891]](ロシア)<br />
* [[モシン・ナガンM1891/30|モシン・ナガン M1891/30]](ロシア)<br />
* [[カルカノM1891|カルカノ M1891]](イタリア)<br />
* [[カルカノM1938|カルカノ M1938]](イタリア)<br />
* [[スプリングフィールドM1903小銃|スプリングフィールド M1903]](アメリカ)<br />
* [[村田銃]](日本)<br />
* [[三十年式歩兵銃]](日本)<br />
* [[三八式歩兵銃]](日本)<br />
* [[九九式短小銃]](日本)<br />
* [[クラッグ・ヨルゲンセン・ライフル|クラッグ・ヨルゲンセン]](ノルウェー)<br />
* [[シュミット・ルビンM1889|シュミット・ルビン M1889]](スイス)<br />
<br />
=== レバーアクション小銃 ===<br />
[[ファイル:Winchester 73 open.JPG|thumb|right|150px|レバーアクションのトグル・ジョイント機構]]<br />
レバーアクションは、ライフル銃の機関部下側に突き出した用心鉄(引鉄のガード)部分をレバー化し、これを下に引き、それをまた戻すことによって遊底を前後に動かし、薬室から薬莢を排除すると同時に次弾を装填して薬室を閉鎖する仕組みである。レバーアクションの閉鎖機構は尺取虫状の[[トグル機構|トグル・ジョイント機構]]を採用したものが代表例である。日本語では'''底碪式'''(ていがんしき)とも呼ばれる。<br />
<br />
レバーアクションは[[スミス&ウェッソン|S&W]]社の創立メンバーが製造・販売した最初期の連発銃である{{仮リンク|ヴォルカニック銃|en|Volcanic Repeating Arms}}として発明され、[[ヘンリー銃]]として普及し、[[ジョン・ブローニング]]による改良で完成され、[[ウィンチェスター]]社によって大量販売された。<br />
<br />
レバーアクションは可動部の多い構造になることから強度面に問題があり、また、弾倉内に弾薬を縦に並べる方式を取るため、先端の尖った形状の弾頭が使えず、発火薬である[[雷管]]を[[薬莢]]底版の中心に配置した“センターファイア”方式の弾薬が使えない(縦列装弾の弾倉に先尖弾やセンターファイア方式の弾薬を装弾すると、衝撃で暴発する可能性が高い)ため、強力な弾薬が使用できない、という欠点があった。また、その操作方法上、伏射姿勢を取り難いため、軍用銃の主流にはなれなかったが、民生用として広く普及した。また、この閉鎖方式を応用して[[ショートリコイル]]方式の自動装填機構と組み合わせたのが、[[ハイラム・マキシム]]が発明した[[マキシム機関銃]]である。<br />
<br />
* [[ヘンリー銃]](アメリカ)<br />
* [[ウィンチェスターライフル|ウィンチェスター M66/M1873/M1892/M1894]](アメリカ)<br />
<br />
=== 自動小銃 ===<br />
[[ファイル:Rifle Ljungman AG42.jpg|thumb|right|200px|AG m/42]]<br />
{{main|自動小銃}}<br />
自動小銃は、[[ボルトアクション方式|ボルトアクション]]を発展させ、ボルトの駆動を従来の手動から[[ガス圧作動方式]]もしくは[[ブローバック#遅動ブローバック方式|遅動ブローバック方式]]を利用して自動装填化した小銃をさし、20世紀中半から現代まで広く使用されている。<br />
<br />
軍用向けの製品にはフルオート射撃機能を持つものもあり、形態によって[[アサルトライフル]]に分類されている製品も多い。また、全自動連射可能な物を「自動小銃」と称し、単射のみのものは「'''半自動小銃'''」と呼び分けられる場合もある。<br />
<br />
多くの国ではフルオート射撃機能を持つ火器の民間人による所持を制限ないし禁止しているため、これを除いた製品が自動小銃として市販されている。<br />
<br />
==== 代表的な自動小銃(半自動小銃) ====<br />
* [[ピダーセン自動小銃|ピダーセン]](アメリカ)<br />
* [[M1ガーランド]](アメリカ)<br />
* [[シモノフM1936半自動小銃|シモノフ M1936]](ロシア)<br />
* [[トカレフM1940半自動小銃|トカレフ M1940]](ロシア)<br />
* [[ワルサーGew43半自動小銃|ワルサー Gew43]](ドイツ)<br />
* [[モンドラゴンM1908]](スイス)<br />
* [[ZH-29半自動小銃]](チェコスロバキア)<br />
* [[四式自動小銃]](日本)<br />
* [[MAS 49半自動小銃|MAS 49]](フランス)<br />
<br />
=== アサルトライフル ===<br />
[[ファイル:Sturmgewehr 44.jpg|thumb|right|[[StG44 (突撃銃)|StG44]]]]<br />
[[ファイル:AK-47 type II Part DM-ST-89-01131.jpg|thumb|right|200px|[[AK-47]]]]<br />
[[ファイル:M16A1_brimob.jpg|thumb|right|200px|[[M16A1]]]]<br />
{{main|アサルトライフル}}<br />
アサルトライフルとは、自動小銃のうち実用的な全自動射撃能力を有するものを指す。現代的なアサルトライフルの原型は、[[第二次世界大戦]]中に[[ナチス・ドイツ]]で開発された[[StG44 (突撃銃)|MKb42(MP43/StG44)]]だと言われている。<br />
<br />
MKb42は[[独ソ戦]]で使用され、これを鹵獲した[[ソビエト連邦|ソ連]]は[[1943年]]にアサルトライフル開発計画をスタートさせ、その成果として[[AK-47]]が生まれた。一方で[[アメリカ軍|米軍]]では従来型の自動小銃を使用し続けたため、[[ベトナム戦争]]中にAK-47を装備した共産側勢力([[ベトナム人民軍|北ベトナム軍]]・[[南ベトナム解放民族戦線|ベトコン]])に苦戦し、これに対抗する火器として[[M16自動小銃|M16]]を採用した。<br />
<br />
M16にはデザインに起因する作動不良の問題があり、姉妹製品の[[AR-18]]の影響を受けたアサルトライフルが各国で採用されるようになり、日本においても[[89式5.56mm小銃|89式小銃]]が採用されている。<br />
<br />
==== AK-47およびAKM/AK-74 ====<br />
{{main|AK-47}}<br />
'''AK-47'''({{lang-ru|Автомат Калашников-47, АК-47}}、「1947年式カラシニコフ自動小銃」の意)は、[[ソビエト連邦|ソ連]]の技術者(軍人)である[[ミハイル・カラシニコフ]]が開発した[[アサルトライフル]]である。そのため、AK-47系列の小銃は'''カラシニコフ銃'''とも呼ばれる。<br />
<br />
[[第二次世界大戦]]に従軍し負傷して入院したカラシニコフは、戦闘中に見聞した[[ドイツ]]の[[短機関銃]]が持つアドバンテージに大きな影響を受けて、銃器デザインに没頭するようになり、いくつかの試作品を製作した事で{{仮リンク|ウラジーミル・フョードロフ (火器設計者)|label=ウラジーミル・フョードロフ|en|Vladimir Grigoryevich Fyodorov}}([[フェドロフM1916]]の開発者)が指揮する、新型小銃の開発プロジェクトに参加を許された。<br />
<br />
カラシニコフの設計は、ドイツの[[MP43]]の基本構成から強い影響を受けていたが、内部構成は米国の援助物資として送られた[[M1ガーランド]]や[[U.S.M1カービン]]を参考としており、結果として優れた銃が完成し'''AK-47'''として[[ソビエト連邦軍|ソ連軍]]に採用された。<br />
<br />
AK-47は、採用後もプレス加工部品を増やして生産性が高めた改良型の'''AKM'''となり、[[RPK軽機関銃]]など、アサルトライフルの範囲に留まらない多くの派生型を生み出した。[[1974年]]には[[弾薬]]を[[アサルトライフル#小口径高速弾|小口径高速弾]]に変更した[[AK-74]]に発展している。<br />
<br />
AK系統の銃は内部に意図的に隙間を取ってあるため、[[北極]]圏の低温や砂漠の高温で起きる金属の伸縮にも耐え、製造時に部品の寸法に多少の誤差があっても許容できるため、製造技術の低い国でも量産が可能で信頼性も非常に高い。そのため東欧諸国や[[共産圏]]を中心に世界中で生産されるようになり、密造銃を含め全世界で約5億丁程度が流通していると見られる。<br />
<br />
安価で信頼性が高いことから、[[開発途上国|発展途上国]]の軍隊や武装組織が好んで使用することでも知られている。幼い[[少年兵]]ですら運用できるこの銃は[[紛争|地域紛争]]を激化させる要素として国際問題化すらしている。[[中央アジア]]では、[[アフガニスタン紛争 (1978年-1989年)|ソビエト連邦のアフガニスタン侵攻]]の際、[[ムジャーヒディーン]]に大量供与され、その一人で、後に[[アメリカ同時多発テロ事件]]の首謀者として知られることになった[[オサマ・ビンラディン]]も愛用していたことで知られる。<br />
<br />
==== M16/M16A1/M16A2 ====<br />
{{main|M16自動小銃}}<br />
'''M16自動小銃'''は、[[ベトナム戦争]]中に採用された[[アサルトライフル]]である。原型は著名な銃器設計技師である[[ユージン・ストーナー]]が開発した[[AR-10]]およびAR-15で、M16はこれを発展改良したものである。<br />
<br />
[[1960年代]]に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]がベトナム戦争に本格介入するようになると、[[スプリングフィールドM14|M14]]のフルオート射撃時の反動制御の困難さと携行弾数の少なさが、敵方の共産軍([[ベトナム人民軍|北ベトナム軍]]・[[南ベトナム解放民族戦線|ベトコン]])が使用するAKや[[SKSカービン|SKS]]に比して劣っている点が問題視されるようになり、[[アメリカ空軍|空軍]]が基地警備用に採用していたM16を試験的に使用したところ、軽量さと携行弾数の多さから兵士に好評を得たため、[[アメリカ陸軍|陸軍]]・[[アメリカ海兵隊|海兵隊]]でも制式採用された。これによりM14は退役することになったが、海兵隊にはM16への更新を拒否してM14を使い続けた部隊もあった。このM14は、後に[[バトルライフル]]と言う区分で評価されていくことになる。<br />
<br />
アルミ合金のレシーバーを採用することからくる脆弱さ、デザインに起因する[[ガス圧作動方式#M16の作動不良|作動不良]]と、これを防ぐためのメンテナンスサイクルの短さといった欠点があるものの、[[ガス圧作動方式#リュングマン式|リュングマン式]]と軽量のボルト・グループを採用したため命中精度に優れ、部品の多くに[[アルミニウム合金]]や[[繊維強化プラスチック|繊維強化樹脂]]を用いて徹底した軽量化が図られており、弾薬30発を装填しても重量は4kgを切る([[M16自動小銃#M16A2(645)|M16A2]])という、現代アサルトライフルのトレンドを作ったモデルである(実際に各国で採用されたアサルトライフルの多くは姉妹製品のAR-18を基にしたものが多い)。<br />
<br />
ベトナム戦争中に実戦投入されて以来、この銃は改良が繰り返され、[[M16自動小銃#M16A1(603)|M16A1]]、A2、A3、A4とバリエーションが発展し、[[カービン]]型の[[M4A1カービン|M4]]/M4A1と共にアメリカ軍で長く使用されている。日本では漫画『[[ゴルゴ13]]』で、主人公が愛用していることから一般人の間でも比較的知られた存在である。<br />
<br />
==== 他の代表的なアサルトライフル ====<br />
* [[H&K G3|G3]](ドイツ)<br />
* [[H&K G36|G36]](ドイツ)<br />
* [[FN FAL|FAL]](ベルギー)<br />
* [[FA-MAS]](フランス)<br />
* [[64式7.62mm小銃]](日本)<br />
* [[89式5.56mm小銃]](日本)<br />
* [[ステアーAUG|AUG]](オーストリア)<br />
* [[Rk 62]](フィンランド)<br />
<br />
=== バトルライフル ===<br />
{{main|バトルライフル}}<br />
バトルライフルはアサルトライフル出現後の概念で、[[7.62x51mm NATO弾]]のような大口径のフルロード弾を発射する為、フルオート射撃時の制御は極めて困難で、自ずとセミオート射撃を主として運用される様になった[[自動小銃]]。前述の[[スプリングフィールドM14]]が典型例とされる。<br />
<br />
古くは、バトルライフルと云う用語は単に「軍用の小銃全般」という意味で使われていた。<br />
<br />
=== カービン ===<br />
[[ファイル:M1 Carbine.jpg|thumb|right|200px|U.S.M1カービン]]<br />
[[ファイル:M4-Transparent.png|thumb|right|200px|M4カービン]]<br />
{{main|カービン}}<br />
カービンは「騎兵銃(騎銃)」とも称し、本来は[[騎兵]]など乗馬本分者が用いるための小銃であった。通常の[[歩兵]]銃に比べ、馬上で取扱いやすいように銃身が短くなっている。<br />
小銃の歴史は短縮化の歴史であり、[[第二次世界大戦]]時に[[ナチス・ドイツ]]が主力小銃として運用した[[Kar98k]](「1898年式短騎兵銃」の意)は、[[Gew98]]の騎兵銃型にあたるKar98aをさらに短銃身化したものである。[[20世紀]]初頭から戦間期にかけて、世界では歩兵銃と騎兵銃を統一化する動きがなされ(スプリングフィールド M1903、MAS36、Kar98k、カルカノ M1938、九九式短小銃)、従来はカービン(騎兵銃)とされていた銃身長の小銃が主力小銃となっていった。<br />
<br />
カービンは軽便銃として[[砲兵]]・[[工兵]]・[[輜重兵]]・[[戦車]]兵などの個人自衛用として、あるいは[[エアボーン|空挺部隊]]などで使われるようになり、また、[[第一次世界大戦]]を境に[[戦間期]]から第二次世界大戦にかけて騎兵の存在価値が消滅したことから、単に銃身の短い小銃がカービンと呼ばれるようになった。<br />
<br />
現代では、アサルトライフルの銃身を短縮して扱いやすくしたものがアサルトカービンやカービン・モデルと呼ばれている。<br />
<br />
==== 代表的なカービン ====<br />
* [[M1カービン]](アメリカ)<br />
* [[三八式歩兵銃|三八式騎銃]](日本)<br />
* [[四四式騎銃]](日本)<br />
* [[モシン・ナガンM1891/30|モシン・ナガン ドラグーン]](ロシア)<br />
* [[モシン・ナガンM1891/30|モシン・ナガン M1938]](ロシア)<br />
* [[SKSカービン|SKS]](ロシア)<br />
* [[XM177]](アメリカ)<br />
* [[M4カービン|M4A1]](アメリカ)<br />
* [[H&K G36|G36K]](ドイツ)<br />
* [[H&K HK416]](ドイツ)<br />
* [[H&K XM8]](ドイツ)<br />
<br />
=== 狙撃銃 ===<br />
[[ファイル:Pre-1964 Winchester Model 70 2.jpg|thumb|right|200px|ウィンチェスターM70]]<br />
{{main|狙撃銃}}<br />
狙撃銃は、「スナイパーライフル」とも呼ばれる銃である。高精度を出すため、長銃身のライフル銃を原型にして設計、もしくは精度の高い小銃が選出選抜され改造されたもの。<br />
<!--<br />
==== 代表的な狙撃銃 ====<br />
* [[スプリングフィールドM1903小銃|スプリングフィールド M1903A4]](アメリカ)<br />
* [[M1ガーランド#M1C/Dガーランド・スナイパーライフル|M1C/D]](アメリカ)<br />
* [[M14 (自動小銃)#M21|M21]](アメリカ) <br />
* [[ウィンチェスターM70|M70]](アメリカ)<br />
* [[M24 SWS]](アメリカ)<br />
* [[レミントンM700|M40]](アメリカ)<br />
* [[Kar98k#狙撃銃|Kar98k]](ドイツ) <br />
* [[H&K PSG-1|PSG-1]](ドイツ)<br />
* [[ワルサーWA2000|WA2000]](ドイツ)<br />
* [[リー・エンフィールド#狙撃銃タイプ|No.4 Mk I (T)]](イギリス)<br />
* [[L96A1]](イギリス)<br />
* [[九七式狙撃銃]](日本)<br />
* [[九九式狙撃銃|九九式短狙撃銃]](日本)<br />
* [[豊和M1500|豊和 M1500ヘビーバレル]](日本)<br />
* [[モシン・ナガンM1891/30|M1891/30]](ロシア)<br />
* [[ドラグノフ狙撃銃|SVD]](ロシア)--><br />
<br />
{{-}}<br />
<br />
=== 対戦車ライフル・対物ライフル ===<br />
[[ファイル:M107 1.jpg|thumb|right|200px|バレットM82]]<br />
{{main|対戦車ライフル|対物ライフル}}<br />
対戦車ライフル(対戦車銃)は、第一次世界大戦で登場した[[戦車]]に対抗する目的で開発された銃(ないし、[[砲]]に分類)である。いわば威力(貫通力)に特化した大型のライフル銃である。<br />
<br />
しかし、人間が受け止められる反動には限界がある事から大型化には限度があり、そのため、戦車の[[装甲]]強化についていく事ができず、結果として第二次大戦中後期頃には[[対戦車兵器]]としては陳腐化した。現在においては、名前と目標を変えて対物ライフルとして使用されている(なお、戦前から対戦車ライフルはその威力をもって[[トーチカ]]や[[機関銃]]座の破壊、[[装甲車|軽装甲車両]]や非装甲車両の撃破など[[歩兵砲]]的用途に使用されることも多かった)。<br />
<br />
==== 代表的な対戦車・対物ライフル ====<br />
* 対戦車ライフル<br />
** [[マウザー M1918|Mauser M1918]](ドイツ)<br />
** [[デグチャレフPTRD1941|PTRD 1941]](ロシア)<br />
** [[シモノフPTRS1941|PTRS 1941]](ロシア)<br />
** [[ボーイズ対戦車ライフル|ボーイズ]](イギリス)<br />
** [[ラハティ L-39 対戦車銃|L-39]](フィンランド)<br />
** [[九七式自動砲]](日本)<br />
* 対物ライフル<br />
** [[バレットM82|M82]](アメリカ)<br />
** [[アキュラシーインターナショナル AW50|AW50]](イギリス)<br />
{{-}}<br />
<br />
=== 競技用ライフル ===<br />
[[ファイル:AnSchaft1.jpg|thumb|right|200px|アンシュッツ製の競技用ライフル]]<br />
'''競技用ライフル'''は、標的射撃専用のライフル銃で、射撃場で競技のみに使用されるため可搬性や耐久性よりも集弾性や調整の容易さを重視している。また、ルールの範囲内でパームレストの変更やウェイトの取り付け、バットプレート(肩当て)やチークピース(頬当て)の調整機構、精密な調整ができる[[照準器|マイクロサイト]]を持ち、競技会場で微調整を行えるように調整用のボルト類が露出しているため一般的な銃とは異なる外観の物が多い。民間向けのスポーツモデルをベースにしたものと、競技専用に設計されたものがある。<br />
<br />
一部種目を除き連射の必要がないため基本的に[[ボルトアクション方式]]で、装弾数は一発が主流である。競技が盛んなヨーロッパには大手の銃器メーカー以外にも、[[アンシュッツ (銃器メーカー)|アンシュッツ]]や[[ァインベルクバウ]]など競技銃専門の中小メーカーが多数存在し、サードパーティー製の調整部品も多い。競技用の拳銃も特徴は同じである。<br />
<br />
[[クレー射撃]]も狩猟用ではなく競技用の散弾銃を使用する。<br />
<br />
競技に関しての詳細は[[射撃競技]]を参照。<br />
<br />
=== 狩猟用ライフル ===<br />
'''狩猟用ライフル'''は、主に狩猟射撃に用いる小銃で、狩猟対象に応じて様々な種類の銃や口径、実包(弾薬)がある。実包はウサギなどの小型動物を必要以上に傷つけない小口径で殺傷力が低いものから(.22LRなど)、シカやクマなどの大型獣を仕留める大口径で殺傷力が高いもの(.30Car、.308Winなど)、ゾウなど超大型獣用の極めて大きな破壊力と遠射性を備えた特殊なもの(.300WinMag、.338LapuaMagなど)まで多彩である。<br />
<br />
日本では鳥獣保護法により口径5.9mm以下のライフル銃を狩猟に使用する事は禁じられているため、オリジナルが.223レミントン(5.6ミリ)であるライフルは狩猟用途の場合は口径を6mm以上に改造して所持されている(競技用としては5.6ミリのままでも所持可能。当然.22LR実包を使用するライフルも競技用としてのみ所持可能)。<br />
<br />
銃はボルトアクション式や半自動式のものが数多く商品化されている。また、鳥や小動物猟用に圧縮空気やガスにより弾丸を発射する[[空気銃]](エアライフル、ガスライフル)という銃もある。これらの狩猟用ライフルは一般人の所持を前提としているため、治安上の問題から多くの国では全自動式の所持は規制されており、装填弾数も制限されている場合がほとんどである。<br />
<br />
狩猟用といっても一般人がスポーツとして楽しむ場合がほとんどであるため、標的射撃と兼用で使えるものや趣味性の高い銃も少なくなく、[[アサルトライフル]]から全自動機能を取り除いた「スポーター」と呼ばれる民間版([[M16自動小銃|M16]]→[[AR-15]]、[[H&K G3|G3]]→[[H&K HK91]]、[[ステアーAUG|AUG]]→SPPなど)の小銃もある。<br />
<br />
日本の[[銃砲刀剣類所持等取締法|銃刀法]]では狩猟射撃用、標的射撃用ライフルを双方とも'''猟銃'''と定めている。ただし前述したようにそれぞれ所持に必要な要件は異なる。<br />
<br />
==== 代表的な狩猟用ライフル ====<br />
* [[レミントンM700]](アメリカ)<br />
* [[ウィンチェスターM70]](アメリカ)<br />
* [[ブローニングBAR]](アメリカ/[[ブローニングM1918自動小銃|M1918]]とは別に開発された狩猟用自動ライフル)<br />
* [[ウェザビー MkV]](アメリカ/54度の開閉角度による素早いボルト操作が身上のボルトアクションライフル)<br />
* [[Gew98#競技用と狩猟用|マウザー M98オリジナル]](ドイツ/第2次大戦の[[Kar98k]]のアクションを現代に復活させた狩猟モデル)<br />
* [[マンリッヒャー クラシック]](オーストリア/[[マンリッヒャーM1895]]の伝統を今に伝える狩猟モデル)<br />
* [[サコーM75フィンライト]] (フィンランド/狩猟用ボルトアクションライフルのベストセラー)<br />
* [[豊和ゴールデンベア]](日本/サコーライフルをベースに開発された、戦後初の民生向け国産大口径ライフル)<br />
* [[豊和M300]](日本/自衛隊に納入していたM1カービンを民生向けに改良した国産自動ライフル)<br />
* [[豊和M1500]](日本/国産唯一の大口径ボルトアクションライフル。S&W M1500、モスバーグ M1500、ウェザビー・バンガードとして各国にOEM供給されている)<br />
* [[ブローニング A-BOLT]](アメリカ/日本のミロク製作所もOEM生産を行っているボルトアクションライフル)<br />
* [[メルケル M160ダブルライフル]](ドイツ/水平二連式のライフル。獰猛な肉食獣を狩るサファリハンティングに於いては「確実に二発発射出来る」この形式の銃が用いられる)<br />
<br />
== 脚注 ==<br />
{{脚注ヘルプ}}<br />
=== 注釈 ===<br />
{{Reflist|group="note"|}}<br />
<br />
=== 出典 ===<br />
{{reflist|2}}<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
*{{Cite book|和書<br />
|year = 2013<br />
|title = オールカラー最新軍用銃事典<br />
|author = 床井雅美<br />
|publisher = 並木書房<br />
|isbn = 4890633030<br />
|ref={{SfnRef|床井|2013}} <br />
}}<br />
<br />
*{{Cite book |和書 <br />
|author= [[小山弘健]]<br />
|year= 1941<br />
|title= 近代軍事技術史<br />
|publisher= [[三笠書房]]<br />
|id= {{NDLJP|1439954}}<br />
|ref={{SfnRef|小山|1941}}<br />
}}<br />
<br />
*{{Cite book|和書<br />
|year = 2012<br />
|title = 銃の科学 知られざるファイア・アームズの秘密<br />
|author = かの よしのり<br />
|publisher = SBクリエイティブ<br />
|isbn = 4797364122<br />
|ref={{SfnRef|かの|2012}} <br />
}}<br />
== 関連項目 ==<br />
{{commons|Category:Rifles}}<br />
* [[小銃・自動小銃等一覧]]<br />
* [[狙撃銃一覧]]<br />
* [[ライフル射撃]] / [[射撃]]<br />
* [[ウェリントンの勝利]] - 曲の途中でライフルの射撃音が使われる<br />
<br />
== 外部リンク ==<br />
* [http://www.nramuseum.org/gun-info-research/a-brief-history-of-firearms.aspx A Brief History of Firearms] - NRA Museums<br />
<br />
{{デフォルトソート:しようしゆう}}<br />
[[Category:小銃|*]]</div>
124.141.10.80
四十日抗争
2018-07-18T15:57:32Z
<p>124.141.10.80: /* 衆院選での敗北 */</p>
<hr />
<div>'''四十日抗争'''(よんじゅうにちこうそう)は、[[1979年]]([[昭和]]54年)に起きた[[自由民主党 (日本)|自由民主党]]内の[[派閥]]抗争。自民党史上最大の危機といわれた。<br />
<br />
1979年(昭和54年)[[10月7日]]の[[第35回衆議院議員総選挙]]における自民党の敗北から、[[11月20日]]の[[第2次大平内閣]]の本格的発足までの約40日の間、自民党内で抗争が行われたためこの名がある。<br />
<br />
== 経緯 ==<br />
=== 衆院選での敗北 ===<br />
[[第35回衆議院議員総選挙|1979年の衆院選]]で自民党は248議席しか獲得できず<ref>『大平正芳』 249頁。</ref>、前回[[第34回衆議院議員総選挙|1976年の衆院選]]の獲得議席249議席を下回った。1976年当時[[自由民主党総裁|党総裁]]だった[[三木武夫]]は選挙結果を受け辞任に追い込まれており、また前[[福田赳夫内閣 (改造)|福田内閣]]時には議席の積み増しを見込んでの[[福田赳夫]]による解散への動きを[[宏池会|大平派]]と[[木曜クラブ|田中派]]が阻止していた<ref>『自民党戦国史』中巻 第二部 1 戦う決意 p.117</ref>だけに、当然のごとく[[大平正芳]]総裁への責任を問う声が上がった<ref name="oohira">『大平正芳』 251頁。</ref>。<br />
<br />
しかし大平は、[[田中角栄]]の支えもあり、続投を表明した<ref>『大平正芳』 250頁。</ref>。そのため、大平政権下で反主流派となっていた[[清和会|福田派]]・[[政策科学研究所 (派閥)|中曽根派]]・[[番町政策研究所|三木派]]・[[自由革新同友会|中川グループ]]は辞任要求を強めた<ref name="oohira"/>。主流派の[[宏池会|大平派]]と[[木曜クラブ|田中派]]は[[中道政治|中道政党]]との[[連立政権]]を模索し、反主流派は最終手段として自民離党、新党結成を画策するなど、党内は修復不可能なまでに分裂した。<br />
<br />
自民党は首相候補が一本化できないために、国会を開会することができなかった。[[日本国憲法第54条]]の規定による国会開会の期限が迫ってきたので、10月30日に[[特別国会]]を開会するも、開会日は[[内閣総理大臣指名選挙|首班指名投票]]なしで散会という異常事態となる。<br />
<br />
=== 党内抗争 ===<br />
大平は選挙後に行われた三木・[[中曽根康弘]]・[[福田赳夫]]との会談で、党分裂を心配した中曽根の「実力者会談に大平の進退を預け、最終的に福田が判断する」という案を蹴り、党機関に進退を一任すべきと主張、政権に固執する姿勢を鮮明にした。そのため、大平になんらかの形で責任を取らせた上で政権存続を認めようと考えていた福田の怒りや中曽根の失望を買い、反主流4派は辞任要求を強めた。反主流派内の穏健派の見方として(当時の日本人の感覚からして)判断をゆだねられた福田が「大平君は辞めなさい、あとはわしがやる」と言い出すことはまずないと考えられていた<ref>[[戸川猪佐武]]『[[小説吉田学校]]』第7巻</ref>。一方で、大平側のアドバイザーであった[[伊藤昌哉]]は、[[毎日新聞]]から受けた確認取材をもとに、福田や[[西村英一]][[自由民主党副総裁|副総裁]]に進退を預けてしまえば[[宮澤喜一]]を擁立する裁定が下されるのではないかと警戒し、その旨を大平に進言していた<ref>『自民党戦国史』 中巻 第二部 6 調停付かず pp.242-248 </ref><ref group="注釈">福田は、総裁任期を一期つとめて大平に政権を譲るという[[大福密約]]を反故にして[[自由民主党総裁選挙|総裁選]]に現職出馬した経緯がある。また、かつて、福田を後継者に据えようとしていた[[佐藤栄作]]は、[[内閣改造]]を条件として[[前尾繁三郎]]の総裁選での支持を取り付けたが、当選後にその約束を反故にし、これにより派内の求心力を失った前尾を追って大平が[[宏池会]]の会長に就任している。</ref>。<br />
<br />
西村副総裁は調停に奔走し、三木・中曽根・福田と相次いで会談した。福田の「総理・総裁分離案」または「期限付き政権存続」の方向で話が進むのであれば責任をとった形になるため、大平との会談に応じるという意向をもとに、西村は大平に大平自身の進退を自分に一任しなければ調停できないと主張した。大平も玉虫色表現で一任を認めた。西村はそれを基に福田と大平の会談をセットしたが、大平は西村に反主流派と主流派の意見をとりまとめを一任しただけで、最終的には自分で判断すると考えていたため、大平が進退を含めて一任したと解釈した西村・福田との間で食い違いが生じ、会談は決裂に終わった。<br />
<br />
その後、大平は西村への進退の一任を決断したものの、時すでに遅く、反主流派では強硬論が台頭し、結束が高まっていた。首相候補問題と大平首相の責任問題は党機関へ一任することで進められていったが、ここでもその党機関を代議士会(衆院議員のみからなり、反主流派優勢)とするか、[[両院議員総会]](衆参両院の議員からなり、主流派優勢)とするかで対立することになる。<br />
<br />
主流派の大平派と田中派は、両院議員総会での首相候補決定を決断する。一方、反主流派は福田を首相候補とするために、「自民党をよくする会」を結成した。反主流派は両院議員総会が行われるはずの党ホールを、[[椅子]]で[[バリケード]]を作って封鎖し、物理的に両院議員総会を阻止しようとした。[[浜田幸一]]が反主流派と交渉に臨むも解決できず、交渉を打ち切って実力行使でバリケードを強制撤去し<ref group="注釈">当時から有名な場面であったが、後に浜田がタレントとしてバラエティ番組に出演するようになると、「暴れているんじゃない、片づけているんだ」という当人の述懐とともに、幾度となくこのシーンが再放映された。</ref>、何とか両院議員総会を開催にこぎつけた。両院議員総会では大平首相を首相候補とすることを決定するが、反主流派はそれを無視する形で、独自に[[福田赳夫]]を首相候補とすることを決定した。<br />
<br />
党分裂を回避したい一部勢力は、分裂回避のために、「大平総理・福田総裁」という総理・総裁分離案、「次回総裁公選を翌年1月に繰り上げ・翌年1月まで大平体制維持」とする妥協案を出したが、前者は大平や田中が「第一党の総裁が総理となるのが議会制民主主義の常道」としてこれを蹴り、後者は反主流派の領袖である福田・三木・中曽根・[[中川一郎]]が大平が1度辞任するということで了承はしたものの、[[山中貞則]]ら強硬派が「大平が次回総裁公選に出馬しないことを了承しなければ認められない」と主張し、不調に終わる。<br />
<br />
=== 首班指名選挙 ===<br />
[[11月6日]]、[[内閣総理大臣指名選挙|首班指名選挙]]が行われるが、首相候補として同じ自民党から大平正芳と福田赳夫の2人が現れるという、前代未聞の事態となった。<br />
<br />
;衆議院・1回目投票の結果<br />
*大平正芳 135票<br />
*福田赳夫 125票<br />
*[[飛鳥田一雄]]([[日本社会党|社会党]]) 107票<br />
*[[竹入義勝]]([[公明党]]) 58票<br />
*[[宮本顕治]]([[日本共産党|共産党]]) 41票<br />
*[[佐々木良作]]([[民社党]]) 36票<br />
*[[田英夫]]([[社会民主連合|社民連]]) 2票<br />
<br />
この結果、誰も過半数の票を得ることができず、野党各党を退けた、自民党の上位2名による[[決選投票]]にまでもつれ込んだ。衆議院では大平138票・福田121票という投票結果となり、17票差という僅差で大平が指名された<ref>『大平正芳』 254頁。</ref><ref>[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/089/0001/08911060001002a.html 第089回国会 本会議 第2号 昭和五十四年十一月六日(火曜日)]</ref>。野党各党は、[[新自由クラブ]]が1回目から大平に投票した他は決選投票では棄権に回り、また複数の党が協力して決選投票に駒を進めようとする動きも見られなかった。大平派が公明党を、福田派が民社党を取り込む動きもあったが、両党とも棄権を選んでいる。なお、[[参議院]]では1回目が大平78票・飛鳥田51票・福田38票と続き、大平と飛鳥田の決選投票となったが、福田派と[[ミニ政党]]の一部が大平に回った他は棄権に回り、大平97票・飛鳥田52票で、衆議院同様大平が指名されている<ref>[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/089/0010/08911060010002a.html 第089回国会 本会議 第2号 昭和五十四年十一月六日(火曜日)]</ref>。<br />
<br />
[[組閣]]において、首班指名で大平に投票した新自由クラブ<ref>『大平正芳』 255頁。</ref>と閣内連立を模索して閣僚入りさせようとしたが<ref name="oohira2">『大平正芳』 256頁。</ref>、反主流派が反発して組閣は難航した。[[11月9日]]、大平は[[文部大臣 (日本)|文相]]を自らが臨時代理として兼任する形で[[第2次大平内閣]]を発足させ、新自由クラブとの連立枠としての閣僚人事の余地を残す形で急場を凌いだが、11月20日、最終的に閣内連立を断念し、文相は自民党の[[谷垣専一]]を起用して<ref name="oohira2"/>抗争は一応終結した。<br />
<br />
しかし、この対立感情はその後も依然としてくすぶり続け、翌年の[[ハプニング解散]]につながることになる。<br />
<br />
==衆議院保守系議員の首班指名投票(決選投票)==<br />
{|border="1" cellpadding="3" cellspacing="0"<br />
|-bgcolor="#EEEEEE"<br />
!nowrap|派閥・政党等||大平正芳に投票||福田赳夫に投票||無効票<br />
|-<br />
|大平派||align="center"|50人||align="center"|-||align="center"|-<br />
|-<br />
|田中派||align="center"|48人||align="center"|-||align="center"|-<br />
|-<br />
|福田派||[[園田直]]||align="center"|49人||align="center"|-<br />
|-<br />
|中曽根派||[[越智伊平]]<br>[[大石千八]]<br>[[木村武千代]]<br>[[野中英二]]<br>[[武藤嘉文]]||align="center"|34人||align="center"|-<br />
|-<br />
|三木派||[[有馬元治]]<ref name="ref1" group="注釈">第1回投票では福田、決選投票では大平または無効票を投じた議員</ref><br>[[鯨岡兵輔]]<ref name="ref1" group="注釈"/><br>[[塩谷一夫]]<br>[[地崎宇三郎 (三代)|地崎宇三郎]]||[[三木武夫]]<br>[[井出一太郎]]<br>[[田中伊三次]]<br>[[石田博英]]<br>[[赤城宗徳]]<br>[[河本敏夫]]<br>[[加藤常太郎]]<br>[[森山欽司]]<br>[[丹羽兵助]]<br>[[毛利松平]]<br>[[渋谷直蔵]]<br>[[海部俊樹]]<br>[[藤井勝志]]<br>[[伊藤宗一郎]]<br>[[野呂恭一]]<br>[[大西正男]]<br>[[谷川和穂]]<br>[[菅波茂]]<br>[[坂本三十次]]<br>[[橋口隆]]<br>[[近藤鉄雄]]<br>[[森美秀]]<br>[[山下徳夫]]<br>[[志賀節]]<br>[[辻英雄]]||[[北川石松]]<ref name="ref1" group="注釈"/><br>[[工藤巌]]<br />
|-<br />
|中川グループ||align="center"|-||[[長谷川四郎 (政治家)|長谷川四郎]]<br>[[松沢雄蔵]]<br>[[長谷川峻]]<br>[[中川一郎]]<br>[[古屋亨]]<br>[[中村弘海]]<br>[[石原慎太郎]]<br>[[上草義輝]]<br>[[高橋辰夫]]||align="center"|-<br />
|-<br />
|旧水田派||[[大野明]]<br>[[三原朝雄]]<br>[[中山正暉]]||[[佐藤文生]]<br>[[稲村左近四郎]]||align="center"|-<br />
|-<br />
|旧椎名派||[[綿貫民輔]]||[[荒舩清十郎]]||align="center"|-<br />
|-<br />
|旧石井派||[[坂田道太]]||align="center"|-||align="center"|-<br />
|-<br />
|無派閥||[[内海英男]]<br>[[奥野誠亮]]<br>[[粕谷茂]]<br>[[鴨田利太郎]]<br>[[木村俊夫]]<ref name="ref1" group="注釈"/><br>[[小坂徳三郎]]<br>[[佐藤信二]]<br>[[竹内黎一]]<br>[[浜田幸一]]<br>[[藤田義光]]<br>[[船田元]]<br>[[古井喜実]]<br>[[渡辺美智雄]]||align="center"|-||[[相澤英之]]<br>[[小坂善太郎]]<br>[[椎名素夫]]<br>[[根本龍太郎]]<br />
|-<br />
|[[自由国民会議]]||[[田原隆]]||align="center"|-||align="center"|-<br />
|-<br />
|[[新自由クラブ]]||[[田川誠一]]<br>[[山口敏夫]]<br>[[河野洋平]]<br>[[田島衛]]||align="center"|-||align="center"|-<br />
|-<br />
|無所属||[[田中角栄]]<br>[[橋本登美三郎]]<br>[[渡部正郎]]||[[佐藤孝行]]||[[灘尾弘吉]](議長<ref group ="注釈">[[参議院議長]]とは異なり、衆議院議長は[[内閣総理大臣指名選挙]]で投票しない慣例があるというわけではない。</ref>)<br>[[西岡武夫]]<br />
|}<br />
<br />
中曽根派では、親大平で派閥離脱中の[[渡辺美智雄]]に近いグループが大平に投票している。また三木派では、党内右派の福田に与するべきではないとする議員が大平に投票した。<br />
<br />
== 脚注 ==<br />
<references /><br />
<br />
== 注釈 ==<br />
<references group="注釈" /><br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
*{{Cite book|和書|author=福永文夫|authorlink=福永文夫|title=大平正芳…「戦後保守」とは何か|origdate=2008-12-20|accessdate=2009-04-15|edition=初版|publisher=[[中央公論新社]]|series=[[中公新書]]|isbn=9784121019769}}<br />
* [[伊藤昌哉]] 『自民党戦国史』 中巻 朝日文庫 (1985年、原著1982年)<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
*[[ハプニング解散]]<br />
*[[角福戦争]]<br />
<br />
== 外部リンク ==<br />
*[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/089/0001/08911060001002a.html 衆議院本会議議事録]<br />
*[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/089/0010/08911060010002a.html 参議院本会議議事録]<br />
<br />
{{自由民主党 (日本)}}<br />
{{Poli-stub}}<br />
{{DEFAULTSORT:よんしゆうにちこうそう}}<br />
[[Category:1979年の日本の政治]]<br />
[[Category:自由民主党内の政治抗争]]<br />
[[Category:倒閣]]<br />
[[Category:1979年10月]]<br />
[[Category:1979年11月]]<br />
[[Category:大平正芳]]<br />
[[Category:福田赳夫]]<br />
[[Category:三木武夫]]<br />
[[Category:浜田幸一]]</div>
124.141.10.80
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