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miniwiki - 利用者の投稿記録 [ja]
2024-06-14T06:31:15Z
利用者の投稿記録
MediaWiki 1.31.0
収斂進化
2018-05-19T14:52:40Z
<p>58.80.141.82: /* 動物の場合 */ トビネズミ、ハネジネズミはどちらも有袋類ではないので表記位置を変更</p>
<hr />
<div>{{出典の明記|date=2010年12月}}<br />
[[ファイル:European mole detail of muzzle and paws.jpg|right|250px|thumb|モグラとケラは前足の外形がよく似ている。ヨーロッパモグラ ''Talpa europaea'']]<br />
[[画像:Leg of Gryllotalpa.jpg|thumb|right|177px|ケラの一種 ''G. gryllotalpa''の前脚]]<br />
'''収斂進化'''(しゅうれんしんか、{{lang-en-short|convergent evolution}})とは、複数の異なるグループの生物が、同様の[[生態的地位]]についたときに、系統に関わらず身体的特徴が似通った姿に[[進化]]する現象。<br />
<br />
== 概説 ==<br />
明らかに類縁関係の遠い生物間で、妙に似通った姿、あるいは似通った器官を持つ場合がある。中には[[ジャコウアゲハ]]の幼虫と[[シカクナマコ]]の子供のように、どう考えても関係がない場合もあるが、それぞれにその姿をしているのが生活の上で役に立っていると分かる場合もある。たとえば、[[モグラ]]の前足は分厚く、爪が強く、指その物は短くなっており、明らかに穴を掘るために役立つ形である。そして、同じく穴を掘って暮らしている[[昆虫]]の[[ケラ]]の前足を見ると、やはり丸っこくて、周りに爪状の突起があり、動かし方も良く似ている。これらは、いずれも穴を掘るための器官としての[[適応]]の結果であると考えられ、元々は大きく形が異なっていた節足動物と脊椎動物の足がそのために外見的に似た形となったと考えられる。この様な現象の事を'''収斂進化'''、あるいは単に'''収斂'''と言う。<br />
<br />
このような例は、異なる地域で生物相が大きく違っているのに、あるいは系統的に大きく離れているのに、それらが似たような場所で似たような生活をしている生物同士の間で見られる。これは、それらの生物が、それぞれの[[生物群集]]の中で、非常によく似た[[生態的地位]]にある場合に見られる、と言われる。つまり、同じような生活をするものには、同じような形態や生理が要求され、そのため似た姿に[[進化]]する、というのである。たとえばオーストラリアの有袋類である[[フクロモモンガ]]と[[リス]]の仲間である[[モモンガ]]とは、外見が非常によく似ている。このような現象は、様々なところで見受けられるが、特に、空を飛ぶ、穴を掘る、水中を高速で移動するなど、生物にとって拘束の大きい条件下でよく見られる。形態の選択肢が少ない、と言ったところであろう。<br />
<br />
生理的な面での収斂現象もある。たとえば動物は[[排出器]]を通じて窒素を含む分解産物である[[アンモニア]]を排出するが、この物質は水に溶け、動物体には有害である。このため、水生動物はそれを水に溶けた形で排出する。しかし、陸では水分補給が限定されるから、このような排出は行えず、しかも体内に蓄積するわけにも行かない。そのため、爬虫類や鳥類ではアンモニアから[[尿酸]]を合成し、固形物の形で排出する。同様に陸上[[節足動物]]である[[昆虫]]なども尿酸を排出する。これらの分類群は全く独立に陸上進出したものであるから、この性質も独立に身につけたものであるはずである。<br />
<br />
== 関連する現象 ==<br />
収斂は、全身の姿にも、個々の器官にも見られる場合がある。先のモグラとケラの例では、それぞれの前足がそっくりであるだけでなく、全身の姿にもやや類似が見られる。体表が細かい毛で覆われている点も似ている。前足に関しては、モグラでは[[内骨格]]の五本指の掌からの変形であるのに対して、ケラでは[[外骨格]]の形態の変化で似た姿になっている。この例のように、本来は異なった起源をもつ器官が、類似の働きと形をもつ場合に、それらのことを[[相似 (生物学)|相似器官]]と言う。<br />
<br />
なお、収斂が起きるときには、様々な系統から、同じような形へと進化して行く。つまり、同じ方向への進化が異なった場で起きているので、この現象を[[平行進化]]という。<br />
<br />
また、下で述べる有袋類の多様化のような現象は[[適応放散]]と呼ぶ。これは起源を同じにする生物が、異なった環境の要求に応じて多くの異なった姿になったというふうに解せられる。いわば収斂の逆の現象であるが、それぞれの地域での適応放散の結果が、それぞれの個々を見比べた場合に収斂を起こしているのもよくある現象である。<br />
<br />
なお、異なった生物の間によく似た形質が見いだされる例に、[[擬態]]がある。ただし、これはどちらか片方が、もう片方の種に似た姿であることで何らかの利益を得るため、それに似る方向に進化したものであり、モデル生物なしにはその存在が考えられない。その点で、収斂はモデルとは無関係に、その姿に適応的意味があるので、異なった現象と言える。しかし、比較的近縁な生物が同様な[[保護色]]を身にまとえば同じような形になりやすい、と言うようなこともあるから、両方が働く場合もあり得る。<br />
<br />
== 例 ==<br />
=== 動物の場合 === <br />
; [[フクロネズミ目|有袋類]]と[[真獣下綱|有胎盤類]](真獣類)との間に見られる収斂進化のセット<br />
: [[オーストラリア大陸]]には本来は有袋類以外にはほとんど哺乳類が存在しなかった。これは、有袋類が分化した時期より少し後、真獣類が分化する前に他の大陸から分離し、その後陸続きになることがなかったためと言われる。したがって、他の地域ではさまざまに分化し、多くの目に分かれた哺乳類たちが占めた生態的地位を、有袋類(と[[単孔類]])のみで占めることとなった。事実、有袋類に見られる多様性は[[クジラ]]などを除けば真獣類のすべてにほぼ匹敵するほどにもなっている。その中で他の地域ですでに名前を付けられた動物に似た姿のものがオーストラリアで発見された場合、その名にフクロをつけて呼ばれることが多かった。その、名の元になったものと、フクロ付きのものの関係が収斂である。以下に代表的な例を挙げる。<br />
:* [[フクロネコ]]と[[ネコ]]:小型脊椎動物を捕食<br />
:* [[フクロアリクイ]]と[[アリクイ]]:小型無脊椎動物を捕食<br />
:* [[フクロモモンガ]]と[[モモンガ]]:樹上生活と[[滑空]]に適応<br />
:* [[フクロモグラ]]と[[キンモグラ]](モグラよりむしろこちらの方が似ている):砂に潜って小動物を漁る<br />
:* [[フクロオオカミ]]と[[オオカミ]]:大型動物を追跡して捕食<br />
:* [[キノボリカンガルー属|キノボリカンガルー]]と[[サル目|サル]]:[[熱帯雨林]]で果実等を主食とする比較的大型の樹上動物が占める[[ニッチ]]に適応した形態や生活史を持つ種が多く見られる。<br />
:* [[ティラコスミルス]]と[[スミロドン]]:犬歯が巨大化したトラに似た猛獣<br />
<br />
: [[オポッサム|フクロネズミ]]は<!-- [[ネズミ]]から進化したわけではないし、ネズミもフクロネズミから進化したわけではない。しかし、どちらも同じ様な環境に置かれ、その中で最も効率よく生存するために進化した結果が似たような外見になっているのである。-->[[ネズミ]]というより[[ジネズミ]]などに似ているが、この例は、どちらかと言えば哺乳類の原始的形態に近い姿をもつ、つまりあまり特殊化していないものであるために似た姿なのであって、収斂と言うのは当たらないかもしれない。<br />
<br />
;[[トビネズミ]]と[[ハネジネズミ]]<br />
:跳躍するため、後肢が長く発達したネズミ或いはネズミ様の小動物<br />
<br />
;アリクイと[[アルマジロ]]と[[センザンコウ]]と[[ツチブタ]]と[[ハリモグラ]]<br />
:上記のフクロアリクイもそうだが、これらはシロアリなどを中心に食べるため口先が細めで歯が退化、舌が長い、強靭な爪を持つなどの特徴がある。<br />
:発見当初はこういった生物は互いに近縁と考えられ、まとめて「貧歯目」というカテゴリーに入れられていたが、研究が進むにつれ収斂進化の結果と分かり、アリクイとアルマジロ以外は近縁性がないとして別々のグループに分離された。(この辺の経緯について詳しくは[[異節上目]]と各生物の項を参照)<br />
<br />
; [[魚竜]]と[[イルカ]]と[[サメ]]、[[ペンギン]]<br />
: これらは水中を高速で遊泳する姿への進化である。特にイルカと魚竜の場合、いずれも陸生動物からの水中への適応であり、非常に似た姿である。魚竜は[[爬虫類]]でありながら[[卵胎生]]で子供を産む点でも共通する。つまり生理における収斂である。<br />
: また、体色においても(魚竜のそれは不明だが)背面の黒、腹面が白というほぼ共通の配色をもち、これは水中での[[保護色]]の基本である。<br />
: なお、サメ、魚竜は体を左右にくねらせ、尾ひれは左右に扁平なのに対して、イルカはむしろ垂直方向の動きで推進力を得ていて、尾ひれは上下に扁平である。部分的には選択肢もある、というところである。<br />
: また、[[ペンギン]]もこれらと似通った体制や配色を持ち、とくに水中遊泳時には、そのことがはっきりと見てとれる。ただしペンギンの場合、とくに産卵・抱卵・育雛に関して陸上生活への依存があり、進化上のブレークスルーを越えないかぎり、これらの行動を水中に移すことは難しい。現状では「陸上で過ごせる体」も維持しなければならないために、体のサイズにも制約があり、また、ある程度は異なった体制にならざるを得ない。<br />
; [[ジュゴン]]と[[アザラシ]]と[[ラッコ]]<br />
: [[象]]に近縁なジュゴン([[カイギュウ目]][[ジュゴン科]])、[[クマ]]に近縁なアザラシ([[食肉目]][[イヌ亜目]]-[[アシカ科]])、[[イタチ]]に近縁なラッコ(食肉目イヌ亜目-[[イタチ科]])は、海洋への進出時期が異なる。しかし、胴長のずんぐりした体型、短い手足と同じ軌跡を辿っている。これらの海生の哺乳類は、収斂進化の代表的な例としてよく挙げられるものである<ref>『Convergent evolution of the genomes of marine mammals』Nature Genetics 47, 272–275 (2015) </ref><ref>西原克成『追いつめられた進化論―実験進化学の最前線』2001年、p.9</ref>。<br />
; [[昆虫の翅]]と[[鳥]]・[[コウモリ]]・[[翼竜]]の[[翼]]<br />
: これらのうち、後三者のそれはいずれも[[脊椎動物]]の前足に由来するものであるから[[相同|相同器官]]ではあるが、それぞれ独立に発達したものなので収斂と言ってよいだろう。<br />
: おのおのの翼の構造は全く異なる。鳥の場合は太くて狭い腕に[[羽毛]]が生えて幅広い翼を形成している。コウモリと翼竜のそれは長く伸びた指の間に膜を張ったものであるが、コウモリは四本の指の間に張っている。対して、翼竜はたった一本の指でそれを支えており、残りの指を翼指としている。<br />
: このように構造的には異なっているものの、全体的な[[翼平面形]](概ね先細の細長い形状)や[[翼型]](全体に薄い断面形)は良く似ている。これは、[[流体力学]]・[[構造力学]]的な要請から、飛行のために適当な翼形状が自ずと決まってくることによる。<br />
: 一方、昆虫の翅は起源も異なり、サイズと飛行速度が小さく[[レイノルズ数]]が小さい(鳥などが10<sup>4</sup> - 10<sup>5</sup>程度であるのに対して、10<sup>3</sup> - 10<sup>4</sup>程度)ため、構造や翼型にはかなりの差も見られるが、それでも全般的な形状としては似ており、翼の一種として扱える。たとえば[[トンボ]]の翼型は流線形ではなくギザギザした平板状ではあるもののやはり薄く、平面形もわりと細長い<!--ただし細長いのは昆虫の翅としては例外的なのでしたっけ-->。ほかにはたとえば[[コガネムシ]]の後翅は折りたたみ方がコウモリのそれとよく似ている。これは細い骨組みで支えられた膜からなる翼を、うまく'''折りたたむ'''ための収斂と見ることもできる。<br />
; [[ピロテリウム]]と[[ゾウ]]<br />
; [[脊椎動物]]と[[頭足類]]の目<br />
: [[イカ]]はヒトの目に似た原理のカメラ眼を持っており、しかもとても視力がよい。しかし光学的な構造は似ていても、両者はかなり原始的な動物から分岐した後に、別個の過程を経て目を獲得したため、その起源は異なる。イカの目の内部構造を見てみると、[[網膜]]につながっている[[視神経]]の向きがヒトとは逆であることがわかる。すなわち、イカの目は視神経が眼球の外側についているため、結像の邪魔にならない。そのため視力がよく、[[盲点]]が存在しない。<br />
<br />
=== 植物の場合 ===<br />
植物の場合にも、類似の例はある。<br />
* 乾燥した地域に生育する[[多肉植物]]には、系統が異なってもよく似た姿のものが見られる。特に、[[サボテン科]]と[[トウダイグサ科]]、[[ガガイモ科]]のものにはそっくりなものが多々ある。<br />
* [[食虫植物]]では、[[ウツボカズラ]]と[[サラセニア]]、それに[[フクロユキノシタ]]が互いによく似た仕組みの、[[落とし穴]]式の罠を葉に形成する。<br />
* [[水草]]にも互いによく似たものがある。例えば[[スイレン]]と[[ハス]]は最近まで同じ[[スイレン科]]に入れられていたが、全く系統の異なるものであることがわかった。[[ミツガシワ科]]の[[アサザ]]、[[トチカガミ科]]の[[トチカガミ]]なども見かけは似ている。また、藻類である[[シャジクモ]]と種子植物の[[マツモ]]はその形状が非常によく似ている。<br />
* [[花]]の形では、[[虫媒花]]に特化した花の形として、たとえば[[唇花]](くちびるばな)型が様々な系統に散見される。これは、下側に平たく広がる[[唇弁]]に虫が乗った状態で[[花粉媒介]]をさせるための適応であると考えられる。<br />
* [[ネナシカズラ]]と[[スナヅル]]。前者は[[ヒルガオ科]]、後者は[[クスノキ科]]であるにもかかわらず、ともに一見葉を持たない[[つる性]][[寄生植物]]である。<br />
* [[キイチゴ]]と[[桑]]の実<br />
<br />
=== 微生物の場合 ===<br />
[[微生物]]においても、たとえば[[細胞性粘菌]]の[[タマホコリカビ]]と[[接合菌]]の[[ケカビ]]のように、縁の遠いものにも外見のよく似たものが見られる例はある。これを収斂ということはできなくはないが、むしろ、構造が小さいために形態に関してあまり選択肢が多くなく、どうしても似てしまう、という傾向があるようである。分生子形成菌([[不完全菌]])にも、単純な[[分生子]]を形成するものには、その有性世代がわかった場合、複数の系統が含まれていたという例がある。[[鞭毛虫]]は、極めて多様な系統の生物の集まりであるが、系統を異にするものにもその外形に似た形のものがよくあるのも同様に考えて良いだろう。<br />
<br />
ただし、たとえば[[タイヨウチュウ]]は、はっきりした特殊な活動の型を持っていながら、[[多系統]]であることがわかっている。これは真の意味での収斂の例と見て良いかも知れない。菌類においても[[水生不完全菌]]は水中での胞子形成への適応として独特な形の分生子を作ることが知られるが、一つの属と見なされたものに複数の系統が含まれることが知られた例があり、これなども収斂進化と見ていいだろう。<br />
<br />
== 脚注 ==<br />
<references/><br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
* [[生態的地位]]<br />
* [[相同]]<br />
* [[擬態]]、[[カモフラージュ]]<br />
* [[言語連合]]<br />
<br />
{{biosci-stub}}<br />
{{DEFAULTSORT:しゆうれんしんか}}<br />
[[Category:生物学的進化]]</div>
58.80.141.82
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