類数問題

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数学では、(虚二次体の)ガウスの類数問題(Gauss class number problem)は、通常に理解されているように、 各々の n ≥ 1 に対し類数が n である虚二次体の完全なリストをもたらした。この問題の命名は偉大な数学者カール・フリードリヒ・ガウス(Carl Friedrich Gauss)にちなんでいる。この問題は、また、代数体の判別式の項で記述することもできる。実二次体にも関連した問題があり、その振る舞いは

[math]d \to -\infty[/math]

である。

この問題の困難な点は、限界の有効(effective)な計算である。与えられた判別式に対し、類数を計算することは易しく、類数の非有効(ineffective)な下界を求める方法はいくつかあるが(非有効とは、計算はできないが、定数であるということのみわかることを意味する)、しかし有効な限界を求め(リストの完全な証明)は難しい。

元々のガウスの予想

問題を提示したのは、1801年にガウスが Disquisitiones Arithmeticae の (Section V, Articles 303-304) に提示したことであった。[1]

ガウスは Article 303 で虚二次体について議論し、最初に 2つの予想を提示した。Article 304 では 3つの実二次体についての予想を提示した。

ガウスの予想(Gauss Conjecture) 類数は無限大となる傾向がある
[math]d\to -\infty[/math] につれて、[math]h(d) \to \infty[/math] となる.
ガウスの類数問題(Gauss Class Number Problem) 小さな類数のリストアップ
小さな類数が与えられ(例えば、1 とか 2 とか 3 ) たとき、ガウスは与えられた類数を持つ虚二次体のリストを提示し、それらが完全なものであると信じた。
類数が 1 である実二次体は無限個あると、ガウスが予想した。

元々のガウスの虚二次体の類数問題は、現代の命題とは重要な違いがあり、容易な形となっている。彼は、(代数体の)判別式が偶数の値をもつものに限定し、基本的といえない判別式を使った。

本問題の状況

ガウスの予想
ハイルブロン(Heilbronn)により、1934年に解決(虚二次体)
小さな値の類数のリスト
類数 1: ベイカー(Baker) (1966), スターク(Stark) (1967), ヒーグナー(Heegner) (1952)により解決
類数 2: ベイカー(Baker) (1971), スターク(Stark) (1971)[2]により解決
類数 3: 1985年に解決[2]
類数 h が 100 まで: ワトキンス(Watkins)により2004年に解決[3]
類数が 1 である実二次体は無限にあるか
未解決

類数 1 の判別式のリストアップ

テンプレート:Details 虚二次体に対しては、類数が 1 である体の基本的な(fundamental)判別式は、

[math]d=-3,-4,-7,-8,-11,-19,-43,-67,-163\ [/math]

である。

類数が 1 である体の基本的ではない(non-fundamental)判別式は、

[math]d=-12,-16,-27,-28\ [/math]

であるので、類数が 1 の体の判別式が偶数の基本的な場合と基本的ではない場合は(元々のガウスの問題)、

[math]d=-4,-8,-12,-16,-28\ [/math]

となる。

現代の発展

1934年、ハス・ハイルブロンEnglish版(Hans Heilbronn)はガウスの予想を証明した。同じことであるが、与た任意の類数に対し、その類数を持つ虚二次体は有限個しかない。

同じく1934年には、ハイルブロンとエドワード・リンフォートEnglish版(Edward Linfoot)は、類数が 1 の虚二次体が多くとも 10個しかないことを示した(9個は知られているが、多いとしてももうひとつ)。結果は、有効でなく(計算可能ではないという意味、有効な結果を参照)、残っている体の大きさの限界を示すことができない。

より近年の発展は、n = 1 の場合がクルト・ヒーグナーEnglish版(Kurt Heegner)により議論され、モジュラ形式モジュラ方程式English版(modular equation)を使い、そのような体は存在しないことを示した。この仕事は最初は受け入れられなかったが、より最近のハロルド・スタークEnglish版(Harold Stark)やブライアン・バーチEnglish版(Bryan Birch)により評価され、ヒーグナーの仕事が理解されるようになった。スターク・ヒーグナーの定理English版(Stark–Heegner theorem)やヒーグナー数English版(Heegner number)を参照。実際は、同時期にアラン・ベイカー(Alan Baker)は、数体の対数の線型形式上のベイカーの定理として知られていて、完全に異なる方法で解かれている。n = 2 の場合は、少し後でベイカーの仕事の応用として、原理的には解くことが試みられている。(Baker (1990)を参照)

類数 1 の虚二次体の完全リストは、[math]\mathbf{Q}(\sqrt{k})[/math] でこの k は次の中の一つである。

[math]-1, -2, -3, -7, -11, -19, -43, -67, -163.\ [/math]

一般の場合は、ドリアン・ゴールドフェルドEnglish版(Dorian Goldfeld)の類数問題は、楕円曲線L-函数に関連しているであろうという発見を待っていたかのようである。これは、原理的には、有効な判別式の問題をL-函数の多重ゼロ点の存在を確立することの問題へ還元する。後日、グロス・ザギヤの定理の基礎の上になされることとなった。従って、当時は有限な計算として計算することができ、与えられた類数の完全なリストを結果することができるようになった。実際の実験では、完全であるはずのリストは比較的単純な方法で行うことができ、何が問題かは確実となっている。n = 100 までの場合は、現在のところ2004年になされている。ワトキンス(Watkins) (2004) を参照。

実二次体

実二次体の場合は状況が全く異なっていて、全く少ししか知られていない。この理由は、類数の解析的公式に入ってくる類数が [math]h[/math] ではなく、つまり、[math]\epsilon[/math]基本単数としたとき、[math]\log\epsilon[/math] と考えられるからである。この余剰な因子が制御することが難しい。類数 1 の実二次体が無限個、現れるのではないかと考えられている。

コーヘン・レンストラ(Cohen-Lenstra)の発見[4]は、二次体の類数の構造についてのより詳細な一連の予想である。実数体について、それらの予想は約 75.446% の確率で類数が 1 を持つであろうというものであり、計算と一致する結果である。[5]

参照項目

脚注

  1. The Gauss Class-Number Problems, by H. M. Stark
  2. 2.0 2.1 Ireland, K.; Rosen, M. (1993), A Classical Introduction to Modern Number Theory, New York, New York: Springer-Verlag, pp. 358–361, ISBN 0-387-97329-X 
  3. Watkins, M. (2004), Class numbers of imaginary quadratic fields, Mathematics of Computation, 73, pp. 907–938, http://www.ams.org/mcom/2004-73-246/S0025-5718-03-01517-5/home.html 
  4. Cohen, ch. 5.10
  5. te Riele & Williams

参考文献

外部リンク