臨床検査技師

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臨床検査技師(りんしょうけんさぎし、: Medical technologist, Biomedical laboratory scientist)は、病院などの医療機関において種々の臨床検査を行う技術者である。日本においては、臨床検査技師等に関する法律により規定される国家資格である。

古くは医師自らが検査を行っていたものであったが、医療の分業化と検査の高度化が進み、現在の医療に臨床検査技師は不可欠の存在となっている。コ・メディカルの一種。

業務

法律上の位置づけ

臨床検査技師は、医師又は歯科医師の指示の下に、

  1. 微生物学的検査
  2. 血清学的検査
  3. 血液学的検査
  4. 病理学的検査
  5. 医動物学的検査
  6. 生化学的検査
  7. 生理学的検査(厚生労働省令で定めるもの)

を行うことを業とする。

1~6は検体検査である。

生理学的検査の定義[1]

  • 心電図検査
  • 心音図検査
  • 脈派検査
  • 超音波検査
  • 脳波検査
  • 呼吸機能検査
  • 筋電図検査
  • 熱画像検査
  • MRI(磁気共鳴画像検査)
  • 重心動揺計検査
  • 基礎代謝検査
  • 眼振電図検査
  • 眼底写真検査
  • 毛細血管抵抗検査
  • 経皮的血液ガス分圧検査
  • 聴力検査
  • 基準嗅覚検査及び静脈性嗅覚検査
  • 電気味覚検査及び濾紙ディスク味覚定量検査

この生理学的検査のうち、MRI(磁気共鳴画像検査)と、超音波検査診療放射線技師も、また眼底写真検査(無散瞳)は視能訓練士および診療放射線技師も業とすることができる。

検体採取

高い精度と迅速かつ適切な処理が要求される検査においては、検体の不適切な採取方法や処理方法によっては検査結果に重大な影響を及ぼすことがあるため、これらに精通した臨床検査技師が検査に先立って採血などの検体採取から一貫して行うことが望ましいため、臨床検査技師による採血および体表などからの検体採取がそれぞれ下記の一定条件下で行うことが認められている。[2]

採血

  • 検査目的で耳朶、指頭及び足蹠の毛細血管並びに肘静脈、手背及び足背の表在静脈その他の四肢の表在静脈から血液を採取する行為。[3]

血液の採取量に関して、かつては検査に供する為の採血という性質から厚生省通達でおおむね20ml以内とされていたが[4]、現在では医師が必要であると認めた場合においては20ml以上の採血量も可能とされている。[5]

(血液以外の)検体採取[6]

  •  鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、咽頭拭い液その他これらに類するものを採取する行為
  •  表皮並びに体表及び口腔の粘膜を採取する行為(生検のためにこれらを採取する行為を除く。)
  •  皮膚並びに体表及び口腔の粘膜の病変部位の膿を採取する行為
  •  鱗屑、痂皮その他の体表の付着物を採取する行為
  •  綿棒を用いて肛門から糞便を採取する行為

(血液以外の)検体採取は、2014年の法改正によるものであるが、大学のカリキュラムに取り入れられる2016年の大学入学者が卒業する2020年の国家試験から適用される。 したがって、これまでの免許取得者は元より2019年までの免許取得者についても、厚生労働省指定の講習会の修了者でなければ同業務は行えない。[7]

その他

検体検査については業務独占とされていないので、法的には全くの無資格者でも行うことは可能とされているが、実際には無資格者が職を得ることは困難である。

また、臨床検査技師は病理学的検査に関連し、病理医が行う病理解剖の補助を務めることもある。病理解剖助手の資格とは別であるものの、1988年に医道審議会死体解剖資格審査部会がまとめた病理解剖指針の中で、解剖の補助者は臨床検査技師が行うべきであり、死体からの血液採取、摘出臓器の標本作成、縫合等の医学的行為についても臨床検査技師等が行うべきであるとした[8]

また、監察医が行う解剖(死体検案業務)の補助として、胸腹腔開検の際に、臨床検査技師が臓器の摘出の他、切開、縫合、検体の採取、薬化学、病理組織学的検査などを行う場合がある。

臨床検査は元来医師が行っていたものであり、法的には医師は(「医業と重複しない歯科医業」を除く)全ての医療行為を「医業」として行うことができ、看護師は診療の補助の範囲で検査を行うことができるとされているため、現在でも上記の臨床検査業務のうち一部検査については、医師や看護師が行うこともある。

日本における資格

臨床検査技師国家資格

日本において臨床検査技師として業務を行うために合格する必要のある臨床検査技師国家試験を受験するには、臨床検査に関わる3年制の短期大学、3年制・4年制(夜間部)の専門学校、4年制及び6年制大学を卒業することが必要である。 しかし傾向として、4年制大学を志望する学生が増えており、大学院への進学もまた多くなってきている。

このほか、薬学部獣医学部、理学部などにおいて薬学、獣医学、理学などの課程に加えて臨床検査に関わる一定の科目(医用工学概論、臨床検査総論、臨床生理学、臨床化学,放射性同位元素検査技術学)を取得した者や、医学部医学科、歯学部歯学科の卒業者および医師・歯科医師免許取得者も臨床検査技師国家試験の受験資格を有するが、合格率は総じて低い。

臨床検査技師国家試験:合格者累計/受験者累計。

昭和46年~平成24年:179,598人/293,888人。

昭和46年~昭和52年:52,840人/72,856人。(含特例講習会受講者32,197人、科目免除者13,362人)/(含特例講習会受講者33,461人、科目免除者27,000人)

昭和53年~平成1年:53,485人/114,452人。(含科目免除者13,500人)/(含科目免除者33,953人)

平成2年~平成24年:73,273人/106,580人。

認定資格

国家資格である臨床検査技師を対象、または臨床検査技師が資格要件となる認定資格を以下に記す。いずれも学会の認定資格であり法的な規定があるわけではないが、実質的に独占業務資格となっているものもある。主立ったものを以下に示す。

臨床(衛生)検査技師を対象とする資格認定制度

一級・二級臨床検査士

公益財団法人 日本臨床検査同学院が実施する。
臨床検査技師の上級資格で各分野に細分化されている。経験と、高度な知識を持つことを証明するもので、一級試験は非常に難しい。

緊急臨床検査士

日本臨床検査同学院が実施する。
日本臨床検査医学会所定の緊急臨床検査資格認定制度。生化学検査、血液検査、血清検査、微生物検査、輸血検査、生理検査の幅広い知識と技術が必要。

細胞検査士国際細胞検査士

細胞検査士は、日本臨床検査医学会と日本臨床細胞学会が臨床検査技師から認定し、指導医の監督指導のもと細胞診スクリーニングを行うことができる。学会認定資格であり国家資格(免許)ではないが、一般的に認定資格を保有している者が業務に携わる。実質的に独占業務資格となっている。 合格率は例年低く高度な知識と技術を求められる試験で、受験には1年以上の業務経験が必要であるが、認定大学および認定養成所では国家資格取得見込みで細胞検査士資格試験を受けることができる。

認定輸血検査技師

一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会が実施する。
認定輸血検査技師は輸血検査において高度な知識と技術が求められ、合格率が低く難関となっている。

認定臨床微生物検査技師感染制御認定臨床微生物検査技師(ICMT)

一般社団法人 日本臨床微生物学会が実施する。

認定血液検査技師

一般社団法人 日本検査血液学会が実施する。

臨床検査技師免許が資格要件となる認定制度

超音波検査士超音波指導検査士

公益社団法人 日本超音波医学会が実施する。
超音波検査士は、臨床経験を有し超音波認定医の推薦を受け筆記試験合格者に与えられる。認定資格は対象臓器ごとに細分化されている。

超音波指導検査士は超音波検査士の上位認定資格であり、面接試験・実技試験が新たに追加された。

健康運動指導士

心臓リハビリテーション指導士

第一種・第二種消化器内視鏡技師

内視鏡業務に携わる。(日本消化器内視鏡学会の認定資格)

認定サイトメトリー技術者

日本糖尿病療養指導士

一般社団法人 日本糖尿病療養指導士認定機構が実施する。
資格取得や維持にかかる支援などの面で、施設側の理解不足ということもあり看護師や管理栄養士に比べて資格取得者が少ない。

CRC(治験コーディネーター

NST専門療法士

一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会が実施する。
薬剤師、管理栄養士、看護師についで取得者が多く栄養サポートチームに参加することの望ましい職種となっている。

臨床検査技師の知識技術が生かされる認定制度

臨床細胞遺伝学認定士一級動物実験技術師診療情報管理士電子顕微鏡一般技術認定不妊カウンセラー・体外受精コーディネーター認定臨床エンブリオロジスト第1種第2種ME技術実力検定試験医療情報技師磁気共鳴(MR)専門技術者医用質量分析認定士

指定講習会修了証で技術を保証

平衡機能技術講習聴力測定技術講習バイオセーフティ技術講習会

申請要件による認定制度

認定臨床化学者臨床ME専門認定士日本ICD(感染制御ドクター)認定マススクリーニング学会認定技術者

日臨技認定センター資格

認定一般検査技師認定病理検査技師認定認知症領域検査技師認定心電検査技師認定管理検査技師認定臨床染色体遺伝子検査技師認定救急検査技師

日本臨床衛生検査技師会(認定一般検査技師, 認定病理検査技師, 認定認知症領域検査技師, 認定管理検査技師, 認定臨床染色体遺伝子検査技師), 日本不整脈心電学会(認定心電検査技師),日本臨床救急医学会(認定救急検査技師)が実施する。
各検査分野に関して高い専門性を証明する認定資格である。

臨床検査技師と関連のある資格

衛生検査技師

衛生検査技師は、臨床検査技師の業務のうち、生理学検査以外の検査、すなわち検体検査を行うことができる。業務独占部分のない名称独占資格である。 かつては医学、歯学、獣医学又は薬学の正規の課程を修めた(卒業した)者であれば、申請により無試験で厚生労働大臣から免許を受けることができた。 しかし、臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第39号)により、平成23年4月からは新規の免許は交付されなくなった。 今までの免許取得者はこれまで同様に業務を行うことができる。

労働衛生コンサルタント

臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律(昭和33年法律第76号)第2条第1項の臨床検査技師又は同条第2項の衛生検査技師として10年以上その業務に従事した者は労働衛生コンサルタントの受験資格が付与される。

国際臨床検査技師

米国臨床病理学会(ascpi)による認定制度で、米国と同様のカリキュラムと認められれば受験資格を得られる。

日本における現状

臨床検査技師は、診療放射線技師と同様に就職難であると言われることが多いが、医療施設における結婚や出産に伴う女性の離職率は他の医療職に比べて低い。

医療施設における臨床検査技師の求人減少の原因は、かつては機械化の進展による省力化が原因といわれて久しいが、近年はむしろ診療報酬点数引下げにより採算がとれないことから経営側が検査職の採用枠の増数を渋り、人手が足りず現場も人員を求めているのに採用枠が少ないという矛盾が生じていた。 しかし、近年は機械化省力化は限界に近付いており、また、検査料診療報酬も底打ちとなって、むしろ微生物検査や外来迅速検査加算・採血料の増額、鼻腔咽頭検体採取料の新設などにより、改善のきざしがある。

臨床検査技師は、国家試験に合格して就職したとしても、実際の現場で使えるようになるまでには数年かかるといわれている。近年は就職先の多くが即戦力を求める傾向が強い上に、医師における研修医制度のような育成システムが臨床検査技師にはないため、採用後知識や技能を得て一人前になるまでの数年間はハードなものになることが予想される。 また、他の医療職同様に卒後教育の重要性が指摘されている。

団塊の世代の大量退職は、求職者にとっては喜べるものではあるが、病院にとっては団塊世代退職後の優秀な人材確保が大きな課題となっている。

近年チーム医療の精神の普及により、患者への検査内容の説明、糖尿病療養指導や院内感染対策チーム、栄養サポートチームへの参加など、業務内容は広がりを見せている。

さらに、体外受精に関わる胚培養の業務にも多くの施設では臨床検査技師が携わっている。

また、国境なき医師団の参加資格としても認められており、日本だけにとどまらず世界で活躍する臨床検査技師も増えつつある。

日本の臨床検査技師免許を持つ著名人

脚注

  1. 臨床検査技師等に関する法律施行規則第1条
  2. 臨床検査技師等に関する法律第20条の2
  3. 臨床検査技師等に関する法律施行令第8条
  4. 昭和45年12月3日付の厚生省医務局長通達(医発第1416号)
  5. 平成20年1月17日、医政医発第0117001号
  6. 臨床検査技師等に関する法律施行令第8条の2
  7. 地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律附則第32条
  8. 病理解剖指針について(昭和63年11月18日付厚生省健康政策局長通知健政発第693号)

関連項目