白銀比

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白銀比(はくぎんひ)と呼ばれるものは以下の2つがあり、いずれも無理である。

  1. 1:1+√2の比。貴金属比のひとつ(第2貴金属比)。
  2. 1:√2の比。その [math]1:\sqrt{2}{}\equiv{}\sqrt{2}:2[/math] という性質から、紙の寸法などに用いられている。

1:1+√2の白銀比

1:1+√2の白銀比(はくぎんひ、英語: silver ratio / silver mean / silver constant)は、貴金属比のひとつの第2貴金属比であり、1:1+√2である[1]。近似値は1:2.414、約5:12。英語でsilver ratioなどと言った場合はこちらを指す。

白銀数

1:1+√2の白銀比において

[math]1 + \sqrt 2 = 2.4142135623\dots \approx \frac{12}{5}[/math]

は、二次方程式 x2 - 2x - 1 = 0 の正のであり、これを白銀数(はくぎんすう、英語: silver number)という。しばしばギリシア文字τ(タウ)で表される[2]。 ふたつの量 a, bab より小さいとする)の比が白銀数であるということは、b - 2aa との比が ab との比と等しいということを示している。

一方、このときの白銀比を1:(τ-1)のように定義することがある[2]。これは後述のもう一つの白銀比と一致している。なおこの立場では、青銅比[math]1:\frac{1 + \sqrt{13}}{2}[/math]と定義されている。

数学的性質

白銀数の連分数展開は

[math]1 + \sqrt 2 = 2 + \cfrac{1}{2 + \cfrac{1}{2 + \cfrac{1}{2 + \cdots}}}[/math]

である。

白銀数 rsは有理数に2 の平方根を添加した代数体における代数的整数になっており、 rsの共役数は

[math]r_{\rm s}^\sigma = 1 - \sqrt 2 = - \frac{1}{1 + \sqrt 2} = -\frac{1}{r_{\rm s}}[/math]

によって与えられる。任意の自然数 n について、 (rs)n + (rsσ)n は有理整数になるが、rsσの絶対値が1/2より小さいため、この有理整数は (rs)nにもっとも近い自然数を与えている。nが大きくなっていくとき (rsσ)n は 0 に収束するから、R/Zにおける (rs)n の像は原点(の像)を唯一の集積点として持ち、特に (rs)nの小数部分は均等に分布していないことがわかる。

1:√2の白銀比

ファイル:TomoyukiMogi(SilverRatio).gif
赤枠の長方形は3つとも1:√2
ファイル:TomoyukiMogi(SilverRatio Half).gif
1:√2の白銀比の長方形の長辺を半分に折ってできる長方形は、折る前の長方形と同じ辺の比となっており、折る前と後の長方形について図のように引いた対角線は直角に交わっている。
ファイル:TomoyukiMogi(EqualThreeParts SquareRoot2).gif
1:√2の白銀比の長方形及びその長辺を半分に折ってできる長方形について図のように引いた対角線の交点(2箇所)は縦横どちらについても3等分するための位置として成り立っている。
ファイル:TomoyukiMogi(Root2 And EqTriangle).gif
1:√2の白銀比の長方形(緑色)の対角線の長さは、当該長方形の短辺の2倍の長さの辺を持つ正三角形(赤色)の高さとなっている。

1:√2の白銀比(はくぎんひ)は、1:√2である。近似値は1:1.414、約5:7。紙の寸法などに用いられる。

[math]\sqrt{2} = 1.4142135623\dots \approx 7 / 5[/math]

これは先の第2貴金属比としての白銀比から、ちょうど1を引いた値となっている。

白銀長方形と工業規格

一辺と他辺が1:1+√2となる長方形白銀長方形英語: silver rectangle)と呼ぶ。また、1:√2の白銀比の長方形も白銀長方形と呼ばれる[2]ため注意が必要だが、こちらはルート長方形とも呼ぶ。以下、混同を防ぐため、1:1+√2の白銀比の長方形を「1:1+√2白銀長方形」、1:√2の白銀比の長方形を「1:√2白銀長方形」とする。

ISO 216規格で定められる紙の寸法は1:√2白銀長方形となっているが、このような紙を向かい合う長辺の中点を結ぶ線分により2分割する(簡単に言うと、短辺を合わせるように折る)と、それもまた1:√2白銀長方形となる、すなわち元の紙と相似となる。例としてA4規格の紙を2分割して得られる長方形がA5規格である。

そもそも [math](\sqrt{2})^2 = 2[/math] であることから、2倍の等比数列にすると間隔がありすぎる、といったような場合にその半分の等比数列として、他にも数多く利用されている。また、写真レンズの開口比(いわゆる絞り値、F値)の 1, 1.4, 2, 2.8, 4, 5.6, 8, ... という系列のように、対象がパラメタの値の自乗で変化するようなものにも現れることがある。

1:1+√2白銀長方形と1:√2白銀長方形には相関性がある。1:1+√2白銀長方形から最大限の大きさの正方形を切り取ったときに残る長方形は1:√2白銀長方形となり、1:√2白銀長方形から最大限の大きさの正方形を切り取ったときに残る長方形は1:1+√2白銀長方形となる。

脚注

  1. Buitrago, Antonia Redondo (2008). "Polygons, Diagonals, and the Bronze Mean", Nexus Network Journal 9,2: Architecture and Mathematics, p.321-2. Springer Science & Business Media. ISBN 9783764386993
  2. 2.0 2.1 2.2 岩本誠一・江口将生・吉良知文 黄金・白銀・青銅 : 数と比と形と率と

関連項目

外部リンク