瘢痕

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骨盤の腸骨における肥厚性瘢痕
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種痘接種箇所に終生残る瘢痕
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天然痘によってあばた面となった塩田三郎(1864年撮影)

瘢痕(はんこん、scar)とは、潰瘍創傷梗塞による壊死などによって生じた、様々な器官組織欠損が、肉芽組織の形成を経て、最終的に緻密な膠原線維結合組織に置き換わる事で修復された状態。英語のscarという言葉はギリシア語のschara(暖炉の意)に由来する。あばたとも言う。

皮膚の瘢痕には、いわゆる傷跡(成熟瘢痕)から、赤く盛り上がる異常な瘢痕(肥厚性瘢痕)や、肥厚性瘢痕が正常皮膚にも広がっていく瘢痕(ケロイド)、さらに引きつれたもの(瘢痕拘縮)などの状態がある。瘢痕の形成過程を瘢痕化あるいは器質化と呼ぶ。

瘢痕の性質

  • 熱傷や創傷治癒でできた瘢痕は、脂腺汗腺がないので、元々の組織の正常の皮膚より機能的に劣る。表面がつるりとして、やや光沢がある。また、関節の近くにあり瘢痕拘縮すれば、運動障害をきたす。また瘢痕は種々の変形の原因となる。機能的異常があれば、手術の適応になる。
  • 下部になどがある、頭部など摩擦しやすい四肢末梢の切断端などには、瘢痕が形成されて数十年後など長期間後、瘢痕の形成の可能性もある。
  • 皮膚以外の瘢痕に心筋梗塞の組織がある。同部の収縮力は正常の心筋より劣る。

異常瘢痕

  • コラーゲン異常産生により、肥厚性瘢痕とケロイドができる。肥厚性瘢痕は盛り上がった塊であり、ケロイドは元々の創部を越して形成されたより高度の瘢痕である。肥厚性瘢痕は当初は紅斑があるが、時期がたてば正常色になる。ケロイドは腫瘍性に盛り上がり放置しても治癒傾向はない。底部に胸骨がある前胸部とか、周辺から引きつられる肩部とか、ピアスをいれた耳などに好発する。創傷治癒の力の関係で、好発部位がある。痒みがある場合もある。
  • ニキビの跡が瘢痕になる場合もある。天然痘の跡も深く沈んだ凹型の瘢痕となる。自覚症状がなければ放置してもいいが、患者が希望すれば治療の対象になる。

治療

  • 形成外科手術の後、しばらくテープ圧迫するのは瘢痕形成を予防するためである。新しい瘢痕には圧迫する種々の方法で (pressure garments) 瘢痕形成を抑える。副腎皮質ホルモンの局所注射は、瘢痕を平坦化させるが、量が多いと逆に凹形の萎縮を作る。
  • 瘢痕を削る治療法 (Dermabrasion) や、レーザーなどもあるが専門医で行う必要がある。
  • 肥厚性瘢痕の場合手術も行われるが、十分その後の瘢痕再発の対策が必要である。ケロイドは手術すると通常増悪する。
  • 凹部の瘢痕にコラーゲン注射をする治療法もある。

関連項目

参考文献

  • 日本獣医病理学会編集『動物病理学総論 第2版』文永堂出版 2001年 ISBN 4-8300-3183-2

外部リンク