東武東上線
東上線（とうじょうせん）は、東武鉄道の鉄道路線のうち以下の総体である。
本項では、この路線群全体について詳述する。
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概要
この項における「東上線」とは、路線群（路線グループ）である。対して伊勢崎線・日光線・野田線を中心とした路線網は「本線」と呼ぶ[1]。東上線は開業時は東上鉄道という東武鉄道とは別の会社であり、線路もつながっていないのは会社同士が合併したことに起因する。
この時東上の現業部門の一部を継承したのが東武鉄道東上業務部である。東上線に対して本線は「東武線」として案内することがあったが、2006年以降は運転系統の変化や一部路線および一部区間での路線愛称の導入などから、本線だけを取り上げて「東武線」とする機会は減り、一方で野田線を本線とは別に取り扱う場合も多くなった。
逆に東上線においては「東武鉄道」と案内すべきところまで「（東武）東上線」と表記するなど路線群呼称が頻出する点が大きく異なっている。一例としては駅の標識、東上業務部発行の宣伝物などで、独自のロゴマークすら存在する。
西板線など、東上線と本線を連絡する路線の計画もあった（西板線は本線に属する計画であった）が、頓挫した[2]。また1968年に事実上計画を中止した高島平線は東上線系では唯一の未成線となった。
西板線が頓挫したため、東上線と本線・野田線との間で車両を輸送する場合は、秩父鉄道秩父本線が使われている[3]。
東上業務部
2015年6月まで、東上線を担当する現業部門として鉄道事業本部の直下に「東上業務部」があった。東上業務部の事務所は東京都墨田区押上一丁目1-2→二丁目18-12の本社ビルではなく、東上本線池袋駅に近い豊島区西池袋一丁目10-10に設置されていた。東上業務部は営業・運転・運行管理などの部署と駅務・乗務員を持ち、車両・施設系（保線・工務・電気）を除く現業部門は本線のそれとは別個の組織となっていた[4]。
東上業務部と本線の部署との間には人事交流がなく、営業について本社は東上業務部に対して不干渉で[5]、独立色が強かった。一方、東上線内で東上業務部が管轄していなかった施設には森林公園検修区（車両）、川越工務管理所、川越電気管理所、診療所川越分院（人事部直属）があり、東上線自体が本社から独立した組織になっているわけではなかった。
2015年（平成27年）7月1日付で東武鉄道社内の業務組織一部改正に伴い、東上業務部は廃止され、運行管理部門については、本線系統と同じ鉄道事業本部の直下の運輸部内に東上運行管理所を移管、営業関連部門については、鉄道営業本部直下の営業部に新たに設置された東上営業支社に移管された[6][7]。これにより、東上線系の業務についても池袋から押上の本社に移転した。押上の本社は2009年9月に一丁目1-2から二丁目18-12に移転したが、移転先の社屋は東上線系の業務スペースを既に確保していた。
本線・野田線との相違
- 沿線情報のフリーペーパーは、東武全線で配布されている「マンスリーとーぶ」のほかに、東上線限定の沿線情報を掲載した別冊子の「ゆぁ東上」が発行される。
- 1990年代以降東上業務部独自に「東武東上線時刻表」を制作している。一方、本線の駅で販売されている「東武線時刻表」には東上線は掲載されていなかったが、2016年3月26日改正の「東武時刻表」には東上線が掲載された[8]。
- 駅名標のデザインは、白地に青のライン。野田線に類似しているが、野田線にある空色の細線はない。2008年以前に整備されたものは、白地に文字・ラインが茶色ないし臙脂色で、ラインが矢印型でない太めの横線と本線とではデザインが異なっていた。本線系統の駅名標はひらがなが主体の表記に対し、東上線系統は漢字主体の表記となっている。
- 本線および野田線の駅看板が白と桃の2色で「東武鉄道 （駅名）」と表記されているのに対し、東上線系統では駅看板は白と紺の2色で「東武東上線 （駅名）」という表記になっている（本線同様「東武鉄道」またはCIロゴが表記されている物も存在する）。2008年6月以前は本線と同じ茶色を基調としたデザインで「東武東上線 （駅名）」だった。
- 自動改札機・自動券売機などは、本線が桃系なのに対し、東上線は青系の色が使われている[9]。
- ホームの駅名標の枠の色が本線では茶色なのに対して、東上線では青が使用されているほか、時刻表のデザインも本線と東上線では異なっている。
- Tobu-dobutsu-koen Station sign 20160612.jpg
本線の駅名標・時刻表（東武動物公園駅）
- Tobu Obusuma Station platform 20161118.jpg
東上線の駅名標・時刻表（男衾駅）
- 「東上東京メトロパス」が、「東武東京メトロパス」（本線および野田線の駅発着）と名称を分けて発売されている。
- 「Look for Nature 池袋から 東武東上線」というオリジナルのロゴマークがある。このロゴは1974年に商標登録を決定した[10]。かつての広告には「池袋から東上線」と書かれ、その左脇に小さく「東武」と記されていた[11]。また、東武鉄道は2011年から東京スカイツリーをモチーフにした新しいCIロゴを導入した[12]が、CIロゴの脇に「東武鉄道」と書かれたバージョンのほかに「東武東上線」と書かれたバージョンが別に存在する[13]。
- 車両の行先表示器における表示が異なる。
- 方向幕車
- 正面種別幕に英字が入る（本線系は野田線およびLED表示器の車両を除き英字なし）。
- 側面方向幕の種別が横書き・英字入り（本線系は「快速」「急行」「準急」などが、野田線や区間が入る場合、およびLED表示器の車両を除き、縦書き・英字なし）。
- なお9000系9101Fの場合、2013年春に幕が更新されるまで普通（各駅停車）の側面幕に種別の表示が無かった（本線所属の20000系やフルカラーLED化改造前の9000系量産車も同様）。
- 回送・試運転幕は行先同様青地の白抜きで英文字も表記されている。回送はOUT OF SERVICE。試運転はTEST RUNである。これに対して本線系統は赤地に白抜きであり東京メトロ日比谷線乗り入れ車の20000系（2009年頃に回送・試運転・行先とも英字入りに交換）、およびLED表示器の車両と野田線所属車（いずれも東上線と異なり回送がNOT IN SERVICE）を除き英文字表記がない。また、南栗橋車両管区工場エリアから出場する東上線所属の8000系・10030系電車でも試運転が新栃木（8両編成車は加須）まで運転されることから本線系統でも東上線・野田線タイプの回送・試運転幕を見られることがある。
- 東上業務部の廃止（池袋に設置していた。東上線系の業務移管後は本線系と同じく押上の本社内に同線系の業務機能を設置）後、本線系でも野田線では、2016年の急行の運転開始に伴う種別・方向幕の更新時に、東上線に準じた英字入りの種別幕・側面方向幕を採用した。
- 3色LED方向幕車（プラットホームの3色LED式行先案内も）
- 2008年6月まで、「普通」の表示色は緑・「準急」の表示色は橙で、本線とは逆だった。
- 10030系修繕車のフルカラーLEDにおける種別の表示が本線系統と異なる。本線系統では50000系列に準じた書体となる一方で、東上線所属のものでは本線に比べて「普通」の書体がやや太くなっているほか、「急行」や「準急」など地色がカラー、白文字で表示される種別では文字に黒縁が入る
- 2000年11月30日に車掌が方向幕を変更するようになるまでは、有楽町線直通（当時副都心線は未開業）と秩父鉄道線直通を除き、全列車の行先表示が「池袋⇔成増」「準急 池袋⇔川越市」のような双方向表示だった（本線系では桐生線や大師線などの支線普通列車において見られた以外は「準急 浅草」「普通 北千住」のような行先のみの表示）。
- Tobu8000-8111 Sadamine.jpg
双方向表示の方向幕（イベント時の復元）
- 1988年頃までの8000系は、種別表示に方向幕を使用せず、貫通路窓下のサボ受けへ差し込むタイプだった。普通列車（各駅停車）は種別表示なし。
- かつて在籍した7300系・7800系の方向板は、運転台窓下に装着された、日めくり式の双方向表示のものであり、種別表示は貫通路窓下のサボ受けへ差し込むタイプだった（東武本線は、行先表示が貫通路窓下への差し込み式サボ・単駅表示、種別表示が助手席窓下）。
- Tobu 7800 Hikifune Station.jpg
本線で使用されていた7800系（曳舟駅）
- 方向幕・方向板が双方向表示なのは、1960年代に行われた合理化の結果、池袋駅以外に方向幕を変更する駅員の配置が無くなったためにとられたものである。東上線のような比較的長距離の通勤路線で始発駅と行先の両方を表示する路線は比較的珍しい存在だった。本線系統でもこのような表示は、一部の支線内折り返し列車に限られており、東上線の特色の一つとなっていたが、2000年12月1日から種別と行先のみを表示するようになった。
脚注
- ↑ 路線概要（東武鉄道公式サイト）
- ↑ 東武博物館館長・花上嘉成の回想によれば、国鉄川越線を買収し、大宮駅で野田線と接続するという構想も存在した（「鉄道ピクトリアル」2013年10号（第880号）p68-69）。
- ↑ その時は、秩父型ATSを搭載した8000系か、あるいは秩父鉄道の電気機関車の牽引で回送される。
- ↑ 東武鉄道会社概要
- ↑ 2007年12月刊行「鉄道ピクトリアル」臨時増刊号（第799号）の東武鉄道特集P197-198
- ↑ 業務組織の一部改正及び人事異動のお知らせ (PDF) - 東武鉄道、2015年6月26日
- ↑ 東上営業支社の新設と同時に東武本線系統でも、スカイツリーライン営業支社、アーバンパークライン営業支社、北関東営業支社が新設・移管されている。
- ↑ 1980年代後半から1990年代前半にかけては、東武の全路線を掲載した大判の時刻表が発行されていたこともある。
- ↑ ただし定期券が発売可能なタイプの自動券売機は、本線・東上線のどちらも青系
- ↑ 東武鉄道百年史［資料編］、p938、1998年。
- ↑ 鉄道ピクトリアル2008年1月臨時増刊号（第799号）p148、1956年の「フライング・トージョー号」の広告。
- ↑ 東武鉄道株式会社様 - 事例詳細01（トッパン ブランド コンサルティング、2013年3月24日閲覧）
- ↑ 東武スカイツリーライン・東上線 3月16日（土）ダイヤ改正にあわせて時刻表を発売！（東武鉄道 2013年2月14日 2013年3月24日閲覧）