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季節性情動障害

季節性情動障害(きせつせいじょうどうしょうがい、: Seasonal Affective Disorder; SAD)とは、うつ病のサブタイプの一つで、ある季節にのみ、体のだるさや疲れやすさ、気分の落ち込みなどの症状が出る気分障害冬季うつ病 (Winter Depression)[1]季節性気分障害Seasonal depression)、季節性感情障害などともいう。

独立した気分障害とは扱われず、最新の『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版(DSM-5)では季節型(with seasonal pattern)との修飾語を持つ反復性大うつ病(Recurrent major depressive disorder)に含まれる[2]。『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』(ICD-10)では同様に「F33 反復性うつ病性障害」に含まれる。

症状

抑うつ、倦怠感、気力の低下、過眠、過食[3](体重増加、炭水化物や甘い物を欲する傾向が強まる)などの症状が見られるのが特徴。患者の大部分は、冬以外の季節では健康な状態であることが多い。

冬だけでなく、夏や梅雨の季節など、他の季節に発症するSADもある。夏型は食欲低下(体重減少)、不眠などの症状が出ることが多い。

原因

冬型のSADは、冬季を中心に発症し、高緯度地域における発症率が高いことから、日照時間が短くなる[3]ことに原因があると考えられている。メカニズムはまだ良く分かっていないところもあるが、次のような説がある。

  • 体内時計をつかさどるメラトニンが、日照時間が短くなることで分泌のタイミングが遅れたり、分泌が過剰となるために体内時計が狂ってしまう。
  • 光の刺激が減ることで神経伝達物質のセロトニンが減り、脳の活動が低下してしまう。

疫学

SADの有病率は、米国ではフロリダ州で1.4%、アラスカ州で9.9%[4]、英国では単独統計ではないが有病率は高いとされている[5]

治療

英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインでは、うつ病性障害のサブタイプや患者の個性に基づいて治療を変えることへの根拠は乏しい(little evidence)ため、様々な治療戦略を取っ換え引っ換えし続けることのないよう述べている[1]

光療法
高照度光療法日光浴がもっとも有効とされる。午前中〜昼間に行うのが効果的だが、夜間に強い光を浴びるのも有効である[3]
薬物療法
薬品による治療も存在する[1][3]
心理療法
専門家による認知行動療法も効果がある(「うつ病#認知行動療法」も参照)[1][3]

NICEは、季節的な冬季うつ病(winter depression that follows a seasonal pattern)について、抗うつ薬や心理療法よりも光療法を好む患者には、光療法の有効性の根拠は不明確(uncertain efficacy)であることを伝えるよう述べている[1]。光療法の効果については、軽中程度のSAD患者を対象とした、光療法、SSRI、プラセボを比較するRCT研究が待たれているとNICEは述べている[5]

システマティックレビュー

2015年のコクランレビューでは以下である。光療法は、46人でのランダム化比較試験という小規模な試験にて有効性が示されているため結論を導けず[6]メラトニン(ホルモン)、アゴメラチン(日本国外での抗うつ薬)では、証拠は不十分であり調査のためのランダム化比較試験を必要とし[7]、心理療法では結論は導けなかった[8]ブプロピオン(日本国外での抗うつ薬)は再発予防に有効だが、その恩恵を受けるのは5人服用ごとに1人の割合であり、副作用のある薬であるため治療のメリットとデメリットについて、またより害の少ない方法について情報提供されること[9]

出典

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 英国国立医療技術評価機構 2009, Guidance chapt.1.6.
  2. 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 季節性感情障害 (SAD)”. Royal College of Psychiatrists. . 2015閲覧.
  3. (2014) Abnormal Psychology, 6th, New York, New York: McGraw-Hill Education, 179. ISBN 978-1-259-06072-4. 
  4. 5.0 5.1 英国国立医療技術評価機構 2009, Research recommendations chapt.4.4.
  5. Nussbaumer B, Kaminski-Hartenthaler A, Forneris CA, et al. (November 2015). “Light therapy for preventing seasonal affective disorder”. Cochrane Database Syst Re (11): CD011269. doi:10.1002/14651858.CD011269.pub2. PMID 26558494. 
  6. Kaminski-Hartenthaler A, Nussbaumer B, Forneris CA, et al. (November 2015). “Melatonin and agomelatine for preventing seasonal affective disorder”. Cochrane Database Syst Re (11): CD011271. doi:10.1002/14651858.CD011271.pub2. PMID 26560173.  季節性感情障害の予防のためのメラトニンおよびアゴメラチン
  7. Forneris CA, Nussbaumer B, Kaminski-Hartenthaler A, et al. (November 2015). “Psychological therapies for preventing seasonal affective disorder”. Cochrane Database Syst Re (11): CD011270. doi:10.1002/14651858.CD011270.pub2. PMID 26560172. 
  8. Gartlehner G, Nussbaumer B, Gaynes BN, et al. (November 2015). “Second-generation antidepressants for preventing seasonal affective disorder in adults”. Cochrane Database Syst Re (11): CD011268. doi:10.1002/14651858.CD011268.pub2. PMID 26558418. 

参考文献

関連項目