同期電動機

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同期電動機(どうきでんどうき)は、シンクロナスモーター (Synchronous motor, SM) とも呼ばれ、同期速度で回転する電動機である。加えられる交流電流が作る周囲の回転磁界によって回転子が吸引されて追従し回転する[1]

特徴

始動時に加えられる電力の周波数が高いと、停止している回転子が追従できず自ら回転を始められないため、駆動電源を周波数制御しないものでは別に始動用のモータを備えたり、他方式のモータ機構を内蔵したりして対応している。半導体によるインバータ制御回路を一緒に用いることで高い制御性が得られる[注 1][1]

相差角とトルク

相差角(トルク角)とは、界磁が発生する無負荷誘導起電力と、電機子電圧の位相差δのことである。同期電動機のトルクはsin(δ)に比例して大きくなり、δ=90度の時に理論的な最大トルクとなる(円筒機の場合。突極機の場合は異なる)。また、電機子電圧の周波数に同期して回転しているため、出力はトルクに比例する。負荷のトルクが大きくなりすぎると「同期外れ(脱調)」のため停止する。この時のトルクを「脱出トルク」といい、相差角にして50 - 70度の範囲にある。

電機子反作用

界磁が作った磁束を、電機子電流(負荷電流)が乱す作用である。電機子電圧と電機子電流の位相差(力率角)によって様子が異なる。

交差磁化作用(横軸反作用)
力率が1の時、界磁極の回転方向前側の磁束を強め、後側の磁束を弱める作用である。
電動機の場合、磁束が回転子よりも進み、磁束は回転子を加速方向に引っ張る。
発電機の場合、逆に、磁束が回転子よりも遅れ、磁束は回転子を減速方向に引っ張る。
これは「磁力線には縮もうとする力が働く」というマクスウェル応力に基づいて、トルクが発生することに対応する。
増磁作用(直軸反作用)
力率が遅れのとき、磁束を強める方向で作用する。
減磁作用(直軸反作用)
力率が進みのとき、磁束を弱める方向で作用する。

なお、同期発電機と同期電動機で、増磁作用/減磁作用に対する電機子電流の進み/遅れは逆になる。この関係は、弱め励磁/強め励磁と無効電力を出すか取るかで理解すると統一できる。

界磁電流を絞った弱め励磁では、同期機が発生する電圧(無負荷誘導起電力)は系統の電圧(電機子電圧)よりも低く、同期機は系統から遅れの無効電力を吸収する。以下、遅れの無効電力を単に無効電力と書く。この場合、電機子反作用は増磁作用になる。同期発電機から見た負荷は進み力率(容量性)で無効電力を発生している。同期電動機なら電源から見て遅れ負荷(誘導性)で無効電力を吸収している。

界磁電流を多く流した強め励磁では、同期機が発生する電圧(無負荷誘導起電力)は系統の電圧(電機子電圧)よりも高く、同期機は系統へ無効電力を供給する。この場合、電機子反作用は減磁作用になる。同期発電機から見た負荷は遅れ力率(誘導性)で無効電力を吸収している。同期電動機なら電源から見て進み負荷(容量性)で無効電力を発生している。

分類

  • 基本型
  • 派生型
    • ステッピングモーター(歩進電動機)- 半導体制御回路が付随することで、入力されるパルス電力に同期して1ステップずつ回転するものである。理論上は上記の4種のいずれの型も可能であるが、PM型と可変リラクタンス型が主体である[1]

仕様

  • 無効電力 : トルク一定の負荷を負って回転しているとき界磁電流を大きくすると、進み側に増大する[2]

脚注

注釈

  1. 電気自動車には三相交流による誘導モータかPM同期モータが使用されている。エレベータではPM同期モータが主流である。同期モータには入力電流の位相を調整する働きがあり、特殊な利用方法として、送電系統中の一次変電所の受電端に「同期調相機」として設置することで、電流の位相や大きさを調整するのに用いられる。
  2. 電磁石同期電動機はブラシとスリップリングを備える。

出典

  1. 1.0 1.1 1.2 井意出萬盛著、『「モータ」のキホン』、ソフトバンククリエイティブ、2010年4月10日初版第1刷発行、ISBN 9784797357141
  2. 電気主任技術者国家試験問題平成16年度第3種

関連項目