右手系

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ファイル:Cartesian coordinate system handedness.svg
左手系座標系(左図)と右手系座標系(右図)。

右手系(みぎてけい、: right-handed system)または正系(せいけい、positive-oriented system)は、線型代数学における座標系で、右手の法則right-hand rule)に従うものを指し、左手系と区別される。多くの分野では右手系が標準とされ、左手系は非標準的とされる[1]

右手系・左手系という性質は、直交座標系とは限らない座標系に対しても考えられる。より抽象的には、順序付けられた基底に対して定義される。また、3次元に限らず、2次元以上の任意の次元ユークリッド空間に対しても定義される。

定義

n ≥ 2 とする。n 次元ユークリッド空間 Rn において、j 番目の座標が 1 でその他が 0 であるベクトルを、ej と表すこととする。<e1, …, en> は、Rn の標準的な基底である。任意に2通りの基底 A := <a1, …, an> と B := <b1, …, bn> を取ったとき、その間の変換行列正則行列となる。その行列式であるときに AB は同値であるとして同値関係を定義すると、基底全体の集合はちょうど2つの同値類に類別される。標準的な基底と同値である基底は右手系であるといい、同値でない基底は左手系であるという。

性質

  • 標準的な基底は右手系である。
  • <a1, …, an> が右手系であるとき、その中の2つのベクトルの順序を入れ替えたもの、例えば <a2, a1, a3, …, an> は左手系になる。より一般に、n対称群の元 σ に対し、<aσ(1), …, aσ(n)> が右手系であることと、σ の符号が +1 であることは同値である。
  • 基底 A = <a1, …, an> に対し、n正方行列 (a1, …, an) の行列式が正ならば A は右手系であり、負ならば左手系である。

一般のベクトル空間

VR 上の n 次元ベクトル空間とする。Rn の場合と同様に、V の基底全体の集合も、2つの同値類に類別される。そのどちらの元を右手系と呼び、どちらの元を左手系と呼ぶべきかは自然には定まらない。同型写像 φ RnV をひとつ定めたならば、<φ(e1), …, φ(en)> と同値である基底を右手系と呼ぶことはできる。

関連項目

参考文献

  • 『数学入門辞典』岩波書店、2005年、ISBN 978-4000802093
  • 齋藤正彦『線型代数入門』東京大学出版会、1995年、ISBN 978-4130620017

脚注

  1. ただし測量航海術地理学などの分野はこの左手系の使用は標準的であり、北基準式で、x 軸が北方向(緯度の正方向であり方位角の基準方向)、y 軸が東方向となる(→平面直角座標系)。