単純集合

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単純集合(たんじゅんしゅうごう、英:simple set)とは、数理論理学における再帰理論で扱われるある種の集合。帰納的可算だが帰納的ではない集合の例。

ポストの問題との関係

単純集合はエミール・ポストによってチューリング完全でなく再帰的でもない帰納的可算集合の研究の中で考案された。そのような集合が存在するかどうかはポストの問題として知られる。ポストはこの問題の解答のために2つの事を証明する必要があった。ひとつは、単純集合は空集合にチューリング還元できないということである。いまひとつは、停止問題は単純集合にチューリング還元できないということである。彼が成功したのは前者であり(これは定義より明白)、後者は多対一還元についてのみ遂げられた。

このような集合が存在することはフリードバーグムチニクにより1950年に独立に証明された。そこでは優先法と呼ばれる手法が用いられた。彼らは単純だが停止性問題を還元できない集合の構成を与えた。[1]

性質

  • 集合 [math]I \subseteq \mathbb{N}[/math]免疫(immune)とは、[math]I[/math] は無限集合であるが、任意の指標 [math]e[/math] に対して [math]W_e \text{ infinite} \implies W_e \not\subseteq I[/math] が成り立つことをいう。あるいは同じことであるが、[math]I[/math] の無限部分集合で帰納的可算なものが存在しないことをいう。
  • 集合 [math]S \subseteq \mathbb{N}[/math]単純(simple)とは、それが帰納的可算であり、補集合が免疫であることをいう。あるいは同じことであるが [math]S[/math] が補無限な帰納的可算集合であって、任意の帰納的可算な無限集合と交わることをいう。
  • 集合 [math]I \subseteq \mathbb{N}[/math]実効的免疫(effectively immune)とは、[math]I[/math] は無限集合であるが、帰納的関数 [math]f[/math] が存在して、任意の指標 [math]e[/math] に対して [math] W_e \subseteq I \implies \#(W_e) \lt f(e)[/math] が成り立つことをいう。
  • 集合 [math]S \subseteq \mathbb{N}[/math]実効的単純(effectively simple)とは、それが帰納的可算であり、補集合が実効的免疫であることをいう。任意の実効的単純集合は単純かつチューリング完全である。
  • 集合 [math]I \subseteq \mathbb{N}[/math]超免疫(hyper-immune)とは、[math]I[/math] は無限集合であるが、[math]p_I[/math] は計算可能な関数によって支配されないことをいう。ただし [math]p_I[/math][math]I[/math] の元を昇順に枚挙する関数である。[2]
  • 集合 [math]S \subseteq \mathbb{N}[/math]超単純(hyper-simple)とは、それが帰納的可算であり、補集合が超免疫であることをいう。[3]任意の超単純集合は単純である。

免疫集合の中には、補集合が同じく免疫であるものもある。このような集合の対は bi-immune[4]と呼ばれる。bi-immune集合は(定義により帰納的可算ではないので)単純集合ではない。

性質

  • 単純集合の集合とクリエイティブ集合の集合の和集合は交わりを持たない(非交和)。単純集合がクリエイティブであることはなく、その逆もない。
  • 集合がクリエイティブであることとm-完全であることとは同値である。ゆえに単純集合はm-完全でない。
  • 単純または余有限(cofinite)である集合の系(collection)は、帰納的可算集合のの中でフィルターを形成する。

脚注

  1. Nies (2009) p.35
  2. Nies (2009) p.27
  3. Nies (2009) p.37
  4. 訳注:「双免疫」などと訳すべきかも知れないが、定訳不明のため原語のまま

参考文献

  • Robert I. Soare, Recursively Enumerable Sets and Degrees, Springer-Verlag, 1987. ISBN 0-387-15299-7