ヤコビ和

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数学におけるヤコビ和(ヤコビわ、: Jacobi sum)とは、ディリクレ指標によって形成されるある種の指標和English版のことを言う。簡単な例として、ある素数 p を法とする二つのディリクレ指標 [math]\chi[/math][math]\psi[/math] に対するヤコビ和 [math]J(\chi, \psi)[/math] は、次のように定義される。

[math] J(\chi,\psi) = \sum \chi(a) \psi(1 - a). \, [/math]

ここで和は p を法とする全ての剰余 a = 2, 3, ..., p − 1 についてなされる(したがって a と 1 − a のいずれも 0 とならない)。ヤコビ和はベータ関数の有限体における類似物である。このような和は円分の理論との関連で19世紀初頭にヤコビによって導入された。ヤコビ和は一般に、ガウス和 [math]g[/math] の冪乗の積へと分解できる。例えば、指標 [math]\chi\psi[/math] が非自明であるとき、[math]J(\chi, \psi) = g(\chi)g(\psi) / g(\chi\psi)[/math] となるが、これはガンマ関数についてのベータ関数の公式と似たものである。非自明なガウス和 [math]g[/math] の絶対値は p1/2 であるため、指標 [math]\chi\psi,\chi,\psi[/math] が非自明であるなら、[math]J(\chi, \psi)[/math] の絶対値もまた p1/2 となる。ヤコビ和 J は、非自明なガウス和 [math]g[/math] が属する円分体よりも小さい円分体に属する。例えば [math]J(\chi, \psi)[/math] の被加数には 1の p 乗根は含まれないが、1 の (p − 1)-乗根の円分体に属する値が含まれる。ガウス和のように、ヤコビ和は円分体における素イデアル分解がわかっている。このことについてはシュティッケルベルガーの定理English版を参照されたい。

[math]\chi[/math]ルジャンドル記号である時は、[math]J(\chi, \chi) = -\chi(-1) = -(-1)^{(p+1)/2}[/math] となる。一般にヤコビ和の値は、対角形式English版局所ゼータ関数との関連で現れる。ルジャンドル記号に関するヤコビ和の結果は、p 個の元からなる有限体上の射影直線である円錐断面上の点の数 p + 1 に対する公式を導く。1949年のアンドレ・ヴェイユの論文は、この議論に再び多くの注目を集めるものであった。実際、20世紀後半のハッセ=ダベンポートの関係により、ガウス和の冪の性質は再び現代的な話題となっている。

一般のヤコビ和による対角超曲面に対して局所ゼータ関数を記述できる可能性を指摘するとともに、Weil (1952) はヤコビ和のヘッケ指標としての性質を示した。 これはアーベル多様体の虚数乗法が確立されるとともに、重要な概念となった。問題におけるヘッケ指標は、例えばフェルマー曲線English版ハッセ・ヴェイユのゼータ函数を表現する際に必要となるものであった。それらの指標の導手については、Weil によって未解決問題とされていたが、後の研究によってそれらは決定された。

参考文献

  • B. C. Berndt, R. J. Evans, K. S. Williams, Gauss and Jacobi Sums, Wiley, 1998.
  • S. Lang, Cyclotomic fields, Graduate texts in mathematics vol. 59, Springer Verlag 1978. ISBN 0-387-90307-0. See in particular chapter 1 (Character Sums).
  • André Weil, Numbers of solutions of equations in finite fields, Bull. Amer. Math. Soc. 55 (1949), 497–508.
  • André Weil, Jacobi sums as Grössencharaktere, Trans. Amer. Math. Soc. 73 (1952), 487–495.