ムチン

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ファイル:Mucin.jpg
ムチンの構造。コアたんぱく質に糖鎖が結合している。

ムチン (mucin) は動物の上皮細胞などから分泌される粘液の主成分として考えられてきた粘性物質である。粘素と訳されることもある。ムチン(mucin)はmucus(粘液)を語源とする[1]

実際には分子量100万~1000万の、を多量に含む糖タンパク質(粘液糖タンパク質)の混合物であり、細胞の保護や潤滑物質としての役割を担っている。食品としてみると水溶性食物繊維に分類される[2]オクラ里芋のネバネバ成分もムチンと称されているが、日本国外の文献では植物由来のものは必ずしもムチンとは呼ばれていないことも多い[1]

構造

ムチンはアポムチンと呼ばれるコアタンパクが、無数の糖鎖によって修飾されてできた巨大分子の総称である。コアタンパクの主要領域は大半がセリントレオニンからなる10~80残基のペプチドの繰り返し構造であり、このセリンまたはトレオニンの水酸基に対し、糖鎖の還元末端のN-アセチルガラクトサミンα-O-グリコシド結合(ムチン型結合)により高頻度で結合している。

一般的に、糖鎖はN-アセチルガラクトサミン、N-アセチルグルコサミンガラクトースフコースシアル酸などから構成される。糖鎖はムチンの分子量の50%以上を占め、ムチンのもつ強い粘性や水分子の保持能力、タンパク質分解酵素への耐性など、さまざまな性質の要因となっている。

ムチンには、上皮細胞などが産生する分泌型ムチンと、疎水性の膜貫通部位を持ち細胞膜に結合した状態で存在する膜結合型ムチンがある。

ムチンのコアタンパクは総称してMUCと呼ばれており、発見順に番号が振られている。このコアタンパクをコードする遺伝子は、ヒトムチンは少なくとも20種類[1](MUC1, 2, 3A, 3B, 4, 5AC, 5B, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 15, 16, 17, 18, 19)あることがわかっており、うちMUC2, 5AC, 5B, 6は分泌型ムチン、MUC1, 3A, 3B, 4, 11, 12, 13は膜結合型ムチンである[3]

性質

一般的に強い粘性(ぬめり)を持ち、保水性も非常に高い。

生体内のムチン

動物の分泌する粘液にはほぼ全てムチンが含まれており、口腔、胃、腸をはじめとする消化器官や鼻腔、腟、関節液、目の表面の粘膜は、すべてムチンに覆われているといえる。ムチンは杯細胞から分泌され、粘膜表面を物理的に外的刺激から保護している[4]。また、ウナギをはじめとする一部の魚類特有の体表のぬめりもムチンである。

ムチンを含む食品

脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 丑田公規 (2009). “クラゲから抽出される"ムチン" ―その応用可能性”. 科学 (岩波書店) 79 (4): 415-416. 
  2. 五明紀春 監修 (2005). 食材健康大事典. (株)時事通信社. 
  3. Mucin”. . 2016年6月30日閲覧.
  4. 服部正平 監修 (2016). ヒトマイクロバイオーム研究最前線. (株)エヌ・ティー・エス, 119-120.