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ホッジ双対

数学において、ホッジスター作用素(ホッジスターさようそ、Hodge star operator)、もしくは、ホッジ双対(ホッジそうつい、Hodge dual)は、ホッジEnglish版(Hodge)により導入された線型写像である。ホッジ双対は、有限次元の向き付けられた内積空間外積代数の上で定義されるk -ベクトルのなす空間からn-k-ベクトルのなす空間への線形同型である。

他のベクトル空間に対する多くの構成と同様に、ホッジスター作用素は多様体の上のベクトルバンドルへの作用に拡張することができる。 たとえば余接束の外積代数(すなわち、多様体上の微分形式の空間)に対して、ホッジスター作用素を用いてラプラス=ド・ラーム作用素を定義し、コンパクトリーマン多様体上の微分形式ホッジ分解を導くことができる。

次元と代数

Vを向きつけられた内積空間としnをその次元とする。0 ≤ kn をみたす整数kにたいしホッジスター作用素とは、k-ベクトルEnglish版(k-vectors)から (nk)-ベクトル空間への同型写像のことである。この写像の k-ベクトルの像は、k-ベクトルのホッジ双対と呼ばれる。k-ベクトルの空間およびn-k-ベクトルの空間はともに次元

[math] {n \choose k}={n \choose n - k}, [/math]

である。同じ体の上の同じ次元の 2つのベクトル空間は常に同型であるが、標準的方法で同型となるわけではない。しかし、この場合のホッジ双対は、内積とベクトル空間の向き付けを利用することによって、代数における二項係数のパターンを反映した同型を自然にさだめる。またこれによって k-ベクトル空間の内積を導く。自然な定義とは、この双対関係が理論の幾何学的な役割を果たすことを意味する。

最初の興味深い例は、3次元ユークリッド空間 V である。二項係数は 1, 3, 3, 1であり、ホッジ双対は、2つの 3次元空間、V 自身とV から導かれる 2つのベクトルのウェッジ積の空間の間の同型を確立する。詳細は、#例の節を参照。この場合には、まさに伝統的なベクトル解析であるクロス積(外積)である。クロス積は 3次元でのみ定義されるのに対し、ホッジ双対は一般次元で定義される。


k-ベクトルのホッジスターの定義

非退化対称双線型形式(以下ではこれを内積とよぶ)を持つベクトル空間 V 上のホッジスター作用素(Hodge star operator)は、V外積代数上の線型作用素であり、0 ≤ kn にたいしk-ベクトルを (nk)-ベクトルにうつすもの。

k-ベクトル上の内積 [math]\langle \cdot,\cdot \rangle[/math] は、V 上の内積から、 k-ベクトル [math]\alpha = \alpha_1 \wedge \dots \wedge \alpha_k[/math][math]\beta = \beta_1 \wedge \dots \wedge \beta_k[/math] に対して、

[math]\langle \alpha,\beta \rangle = \det \left (\left \langle \alpha_i,\beta_j \right \rangle \right )[/math]

と定め、これを双線形に拡張することでえられる。

n-ベクトル の空間は 1 次元で、したがって単位n ベクトル ω は二つとりかたがある。このどちらかを選ぶことにより V 上の向き付けが決まる。

ホッジスター作用素は以下の性質をもち、またこれにより決定される。2つの k-ベクトル α, β が与えられたとき、

[math]\alpha \wedge (\star \beta) = \langle \alpha,\beta \rangle \omega[/math]

である。

説明

V を内積をもつ n-次元ベクトル空間とすると、上で述べたように各 kにたいし[math]\wedge^k V[/math]にも内積をさだめることができる。これらをすべて[math]\langle\cdot, \cdot\rangle[/math] で表すとする。[math]\wedge^n V[/math] は 1 次元で、その長さ 1 のベクトルのうち一つ ω を固定してこれを向きとする。 k-ベクトル λ とn-k-ベクトル θ にたいし [math]\lambda \wedge \theta \in \bigwedge^n V [/math] が得られる。 これは上で選んだ ω のスカラー倍になる。

[math]\lambda \in \bigwedge^k V[/math] を固定し、上でさだまるスカラーを [math]f_{\lambda}(\theta)[/math] とかくと、一意に線形形式

[math]f_{\lambda} \in \left(\bigwedge^{n-k} V\right)^{\! *}[/math]

が存在して、任意の [math]\theta \in \bigwedge^{n-k} V [/math] にたいして [math] \lambda \wedge \theta = f_{\lambda}(\theta) \omega[/math] となる。 この線形形式に対し、リースの表現定理により一意に (n − k)-ベクトル、[math]\star \lambda \in \bigwedge^{n-k} V [/math] が存在し、

[math]\forall \theta \in \bigwedge^{n-k} V: \qquad f_{\lambda}(\theta) = \langle \theta, \star \lambda\rangle.[/math]

を満たす。いいかえると、この (nk)-ベクトル λ は 内積

[math]\left(\bigwedge^{n-k} V\right)^{\! *} \cong \bigwedge^{n-k} V.[/math]

により導かれた同型の下で [math]f_{\lambda}[/math] の像となる。このようにして、

[math] \star : \bigwedge^{k} V \to \bigwedge^{n-k} V[/math]

が得られる。

ホッジスターの計算

[math]\omega = e_1\wedge \cdots \wedge e_n[/math] となるように順序付けされた直交基底 [math](e_1,\cdots,e_n)[/math] が与えらえると、

[math]\star (e_1\wedge e_2\wedge \cdots \wedge e_k)= e_{k+1}\wedge e_{k+2}\wedge \cdots \wedge e_n.[/math]

と計算できる。

より一般に偶置換 [math](i_1, i_2, \cdots, i_n)[/math] にたいしても

[math]\star (e_{i_1} \wedge e_{i_2}\wedge \cdots \wedge e_{i_k})= e_{i_{k+1}} \wedge e_{i_{k+2}} \wedge \cdots \wedge e_{i_n},[/math]

となることが分かる。

スター作用素のインデックス記法

インデックス記法を使うと、ホッジ双対は、n-次元完全反対称レヴィ・チヴィタテンソル(Levi-Civita tensor)と k-形式の添字の縮約により得られる。これはレヴィ・チヴィタの記号から|det g|1/2 だけずれている。ここでg を内積(計量テンソル)とした。ここで行列式は、たとえばローレンツ多様体の接空間のようにg が正定値でない場合もあるので絶対値をとる必要がある。

このように[1]

[math](\star \eta)_{i_1,i_2,\ldots,i_{n-k}} = \frac{1}{(k)!} \eta^{j_1,\ldots,j_k}\,\sqrt {|\det g|} \,\epsilon_{j_1,\ldots,j_k,i_1,\ldots,i_{n-k}}[/math]

と書く。ここに ηk の任意の反対称テンソルである。レヴィ・チヴィタテンソル同じ内積 g を使い、レヴィ・チヴィタテンソルの定義と同様に、インデックスを上げたり下げたりするEnglish版(indices are raised and lowered)。任意のテンソルを同じように表示できるが、結果は反対象である。これはテンソルの対象な成分が完全反対称レヴィ・チヴィタ記号との縮約により消去されるからである。

スター作用素のよくしられた例は、n = 3 次元の場合で、このとき 3 次元のベクトルと 3 × 3 歪対称行列の対応と見なすことができる。これはベクトル解析において暗に使われていて、たとえば、2つのベクトルのウェッジ積からクロス積を作りだすことができる。特に、ユークリッド空間 R3 では、容易に、

[math]\star \mathrm{d}x=\mathrm{d}y\wedge \mathrm{d}z[/math]
[math]\star \mathrm{d}y=\mathrm{d}z\wedge \mathrm{d}x[/math]
[math]\star \mathrm{d}z=\mathrm{d}x\wedge \mathrm{d}y[/math]

であることが分かる。ここに dx, dy と dzR3 上の標準の直交な微分 1-形式である。3次元におけるホッジ双対は、明らかにクロス積とウェッジ積を関連付ける。微分幾何学へ限定しない詳細な説明は、パラグラフを改める。

3次元の例

ホッジ双対を3次元へ適用すると、軸性ベクトル2-ベクトルEnglish版(bivector)の間の同型の間の同型、つまり軸性ベクトル a と 2-ベクトル A を対応させることができる。すなわち、[2]

[math]\mathbf{A} = \star \mathbf{a}\qquad\mathbf{a} = \star \mathbf{A}[/math]

が成り立つ。ここに、 は双対作用素を表す。これらの双対関係は、実、および複素クリフォード代数 C3(R) の単位擬スカラーEnglish版(Unit pseudoscalar)の作用により以下のように記述できる[3]i = e1e2e3 (ベクトル {e} は 3次元ユークリッド空間の中での直交基底である)は、次の関係式に従う[4]

[math]\mathbf{A} = \mathbf{a}i\,,\quad\mathbf{a} = - \mathbf{A} i. [/math]

ベクトルの双対は i をかけることにより得ることができる。これは次のように代数の幾何学的な積English版(geometric product)の性質を使って説明できる。

[math]\begin{align} \mathbf{a}i &= \left(a_1 \mathbf{e_1} + a_2 \mathbf{e_2} +a_3 \mathbf {e_3}\right) \mathbf {e_1 e_2 e_3} \\ &= a_1 \mathbf{e_2 e_3} (\mathbf{e_1})^2 + a_2 \mathbf{e_3 e_1}(\mathbf{e_2})^2 +a_3 \mathbf{e_1 e_2}(\mathbf{e_3})^2 \\ &= a_1 \mathbf{e_2 e_3} +a_2 \mathbf{e_3 e_1} +a_3 \mathbf{e_1 e_2} \\ &= (\star \mathbf a ) \end{align}[/math]

また、{eem} によりはられる双対空間においても、

[math]\begin{align} \mathbf{A} i &= \left(A_1 \mathbf{e_2e_3} + A_2 \mathbf{e_3e_1} +A_3 \mathbf {e_1e_2}\right) \mathbf {e_1 e_2 e_3} \\ &= A_1 \mathbf{e_1} (\mathbf{e_2 e_3})^2 +A_2 \mathbf{e_2} (\mathbf{e_3 e_1})^2 +A_3 \mathbf{e_3}(\mathbf{e_1 e_2})^2 \\ &=-\left( A_1 \mathbf{e_1} + A_2 \mathbf{e_2} + A_3 \mathbf{e_3} \right) \\ &= - (\star \mathbf A ) \end{align}[/math]

である。ここでは次の関係式

[math](\mathbf{e_1e_2})^2 =\mathbf{e_1e_2e_1e_2}= -\mathbf{e_1e_2e_2e_1} = -1 [/math]

および、

[math]\mathit{i}^2 =(\mathbf{e_1e_2e_3})^2 =\mathbf{e_1e_2e_3e_1e_2e_3}= \mathbf{e_1e_2e_3e_3e_1e_2} = \mathbf{e_1e_2e_1e_2} = -1[/math]

を用いた。

これらの双対 i 関係式は、任意のベクトルに対して適用できる。ここで双対は、クロス積 a = u × v として生成された軸性ベクトルを、2-ベクトルに値を持ち 2つのEnglish版(polar)(つまり、軸性ではない)ベクトル uv外積 A = uv へと関係付けることに適用される。2つの積は、行列式を使う同じ方法で、記法 em = eem を使い、次ぎのように書き表すことができる。

[math]\mathbf a = \mathbf{u} \times \mathbf{v} = \begin{vmatrix} \mathbf{e}_1 & \mathbf{e}_2 & \mathbf{e}_3\\u_1 & u_2 & u_3\\v_1 & v_2 & v_3 \end{vmatrix}\,,\quad\mathbf A = \mathbf{u} \wedge \mathbf{v} = \begin{vmatrix} \mathbf{e}_{23} & \mathbf{e}_{31} & \mathbf{e}_{12}\\u_1 & u_2 & u_3\\v_1 & v_2 & v_3 \end{vmatrix}.[/math]

これらの表現は、2つのタイプのベクトルは、ℓ, m, n が巡回的(cyclic)な関係式

[math]\star \mathbf e_{\ell} = \mathbf e_{\ell} \mathit i =\mathbf e_{\ell} \mathbf{e_1e_2e_3} = \mathbf e_m \mathbf e_n \,, [/math]

と、再び ℓ, m, n が巡回的な関係式

[math]\star ( \mathbf e_{\ell} \mathbf e_m ) =-( \mathbf e_{\ell} \mathbf e_m )\mathit{i} =-\left( \mathbf e_{\ell} \mathbf e_m \right)\mathbf{e_1e_2e_3} =\mathbf e_{n} [/math]

の 2つの結果として、ホッジ双対であることを示される[2]

[math]\star (\mathbf u \wedge \mathbf v )=\mathbf {u \times v}\,,\quad\star (\mathbf u \times \mathbf v ) = \mathbf u \wedge \mathbf v.[/math]

i を用いた の、よく使われている関係式[5] は、

[math] \mathbf {u \times v} = -(\mathbf u \wedge \mathbf v ) i \,,\quad \mathbf u \wedge \mathbf v = (\mathbf {u \times v} ) i \ [/math]

である。

4次元

n = 4 の場合では、ホッジ双対は 2-ベクトルのなす空間の自己準同型として作用する(つまり、 4 − 2 = 2 であるので、ホッジ双対は 2-形式から 2-形式への写像である)。このときホッジ双対は対合であり、よって、ホッジ双対は自分から自分自身への自己双対反自己双対な部分空間へ分解し、その上でホッジ双対がそれぞれ +1 , -1 として作用する。

他の有用な例は、n = 4 次元の計量の符号 (+ − − −) と 座標 (t, x, y, z) を使いミンコフスキー空間に対し、([math]\varepsilon_{0123} = 1[/math] を使い、) 1-形式に対し、

[math]\star \mathrm{d}t=\mathrm{d}x\wedge \mathrm{d}y \wedge\mathrm{d}z[/math]
[math]\star \mathrm{d}x=\mathrm{d}t\wedge \mathrm{d}y \wedge\mathrm{d}z[/math]
[math]\star \mathrm{d}y=\mathrm{d}t\wedge \mathrm{d}z \wedge\mathrm{d}x[/math]
[math]\star \mathrm{d}z=\mathrm{d}t\wedge \mathrm{d}x \wedge\mathrm{d}y[/math]

であり、一方、2-形式に対し、

[math]\star (\mathrm{d}t \wedge\mathrm{d}x) = - \mathrm{d}y\wedge \mathrm{d}z[/math]
[math]\star (\mathrm{d}t \wedge\mathrm{d}y) = \mathrm{d}x\wedge \mathrm{d}z[/math]
[math]\star (\mathrm{d}t \wedge\mathrm{d}z) = - \mathrm{d}x\wedge \mathrm{d}y[/math]
[math]\star (\mathrm{d}x \wedge\mathrm{d}y) = \mathrm{d}t\wedge \mathrm{d}z[/math]
[math]\star (\mathrm{d}x \wedge\mathrm{d}z) = - \mathrm{d}t\wedge \mathrm{d}y[/math]
[math]\star (\mathrm{d}y \wedge\mathrm{d}z) = \mathrm{d}t\wedge \mathrm{d}x[/math]

である。

双対性

ホッジスターは双対性を定義する、つまりホッジスターを二回適用することで符号を除き外積代数の恒等写像を定める。n-次元空間 V の中の Λk(V)k-ベクトルが与えられると、

[math]\star {\star \eta}=(-1)^{k(n-k)}s\eta[/math]

を得る。ここに sV 上の内積の計量の符号English版(metric signature)である。特に、s は内積テンソルの行列式の符号である。このように、たとえば、n = 4 で内積の符号が、(+ − − −) 、または、(− + + +) であれば、s = −1 である。通常のユークリッド空間では符号は常に正であり、従って、s = 1 である。ホッジスターが擬リーマン多様体へ拡張されると、上の内積は対角形式での計量であると理解される。

上のことから、 の逆写像が

[math] \begin{cases}\star^{-1}:\Lambda^k \to \Lambda^{n-k} \\ \eta \mapsto (-1)^{k(n-k)}s{\star \eta} \end{cases}[/math]

で与えられることがわかる。n が奇数であれば、任意の k に対し k(nk) は偶数であり、n が偶数であれば、 k(nk)k の偶奇はひとしい。従って、

[math]\begin{cases} \star^{-1} = s\star & n \text{ is odd} \\ \star^{-1} = (-1)^k s\star & n \text{ is even} \end{cases}[/math]

である。ここに k は作用した形式の次数である。

多様体上のホッジスター

上の構成を向きづけられた n-次元のリーマン多様体、あるいは擬リーマン多様体余接空間に対しても適用でき、k-形式ホッジ双対 (nk)-形式を得る。すると、ホッジスターは多様体上の微分形式のL2-ノルムである内積を与える。[math]\Lambda^k(T^*M)[/math]切断 ηζ に対し、

[math](\eta,\zeta)=\int_M \eta\wedge \star \zeta = \int_M \langle \eta, \zeta \rangle \; \mathrm{d} \text{Vol} [/math]

である(切断の集合は、[math]\Omega^k(M)=\Gamma(\Lambda^k(T^*M))[/math] と書かれることが多い。[math]\Omega^k(M)[/math] の元は、外 k-形式と呼ばれる)。

さらに一般的には、向き付けされていない場合は、k-形式のホッジスターを (nk)-擬微分形式English版(pseudo differential form)、すなわち、標準ラインバンドル Ω n(M) に値を持つ微分形式として定義することができる。


余微分形式

多様体上のホッジ双対の最も重要な応用は、余微分(codifferential) δ を定義することである。

[math]\delta = (-1)^{nk + n + 1}s\, {\star \mathrm{d}\star} = (-1)^k\,{\star^{-1}\mathrm{d}\star} [/math]

とする。ここに、リーマン多様体に対し、d外微分s = 1 とする。

[math]\mathrm{d}:\Omega^k(M)\to \Omega^{k+1}(M)[/math] に対し、[math]\delta:\Omega^k(M)\to \Omega^{k-1}(M)[/math] である。 余微分は反微分ではない。これは外微分と異なる。

余微分は外微分に随伴する、すなわち [math] \langle \eta,\delta \zeta\rangle = \langle \mathrm{d}\eta,\zeta\rangle [/math]である。 ここに ζ は (k+1)-形式であり、ηk-形式である。 これは滑らかな微分形式に対するストークスの定理より従う。このことは

0=[math]\int_M \mathrm{d}(\eta \wedge \star \zeta)=\int_M (\mathrm{d}\eta \wedge \star \zeta - \eta\wedge \star (-1)^{k+1}\,{\star^{-1}\mathrm{d}{\star \zeta}})=\langle \mathrm{d}\eta,\zeta\rangle -\langle\eta,\delta\zeta\rangle[/math]

となるとき、つまり、M は境界を持たないか、または、η あるいは ζ が境界値が 0 を持っているときである。 (もちろん、真の随伴性は、滑らかな微分形式の閉包として、適切な位相ベクトル空間への連続に接続した後に、これらの事実が成り立つ。)

注意すべきは、微分形式は、d2 = 0を満たすので、余微分は対応する性質 [math]\! \delta^2 = s^2{\star \mathrm{d}{\star {\star \mathrm{d}{\star}}}} = (-1)^{k(n-k)} s^3{\star \mathrm{d}^2\star} = 0 [/math] をみたす。

ラプラス・ド・ラーム作用素[math]\! \Delta=(\delta+\mathrm{d})^2 = \delta \mathrm{d} + \mathrm{d}\delta[/math] で与えられ、 ホッジ理論の心臓部をなす。この作用素は対称、すなわち [math]\langle\Delta \zeta,\eta\rangle = \langle\zeta,\Delta \eta\rangle[/math] であり、 非負 [math]\langle\Delta\eta,\eta\rangle \ge 0 [/math]である。 ホッジ双対は、調和形式を調和形式へ写像する。ホッジ理論の結果として、ド・ラームコホモロジーは自然に調和 k-形式の空間と同型となり、ホッジスターはコホモロジー群

[math]\star : H^k_\Delta(M)\to H^{n-k}_\Delta(M),[/math]

の同型をもたらす。これは H k(M)ポアンカレ双対性と標準的に同一視される。

3次元での微分

3次元では、 作用素と外微分 d の組み合わせは、古典的作用素 gradcurldiv を生成する。このことは次のようにして分かる。d は、0-形式(函数)から 1-形式へ、1-形式から 2-形式へ、2-形式から 3-形式へ(3-形式へ作用させると 0 となる)作用素である。0-形式 [math]\omega=f(x,y,z)[/math] に対し、成分表示された第一の場合は、grad 作用素と同一視される。

[math]\mathrm{d}\omega=\frac{\partial f}{\partial x}\mathrm{d}x+\frac{\partial f}{\partial y}\mathrm{d}y+\frac{\partial f}{\partial z}\mathrm{d}z.[/math]

第二の場合は、 作用素により、1-形式上の作用素([math]\eta=A\,\mathrm{d}x+B\,\mathrm{d}y+C\,\mathrm{d}z[/math])を成分で示すと、curl 作用素である。

[math]\mathrm{d}\eta=\left({\partial C \over \partial y} - {\partial B \over \partial z}\right)\mathrm{d}y\wedge \mathrm{d}z + \left({\partial C \over \partial x} - {\partial A \over \partial z}\right)\mathrm{d}x\wedge \mathrm{d}z+\left({\partial B \over \partial x} - {\partial A \over \partial y}\right)\mathrm{d}x\wedge \mathrm{d}y.[/math]

ホッジスター作用素を適用することは、次を意味する。

[math]\star \mathrm{d}\eta=\left({\partial C \over \partial y} - {\partial B \over \partial z}\right)\mathrm{d}x - \left({\partial C \over \partial x} - {\partial A \over \partial z}\right)\mathrm{d}y+\left({\partial B \over \partial x} - {\partial A \over \partial y}\right)\mathrm{d}z.[/math]

最後の場合は、 を作用させると、1-形式 ([math]\eta=A\,\mathrm{d}x+B\,\mathrm{d}y+C\,\mathrm{d}z[/math]) から 0-形式(函数)を得て、成分で示すと div 作用素である。

[math]\begin{align} \star\eta &= A\,\mathrm{d}y\wedge \mathrm{d}z-B\,\mathrm{d}x\wedge \mathrm{d}z+C\,\mathrm{d}x\wedge \mathrm{d}y \\ \mathrm{d}{\star\eta} &= \left(\frac{\partial A}{\partial x}+\frac{\partial B}{\partial y}+\frac{\partial C}{\partial z}\right)\mathrm{d}x\wedge \mathrm{d}y\wedge \mathrm{d}z \\ \star \mathrm{d}{\star\eta} &= \frac{\partial A}{\partial x}+\frac{\partial B}{\partial y}+\frac{\partial C}{\partial z}. \end{align}[/math]

この表現の有利な点のひとつは、どの場合でも成り立つ恒等式 d2 = 0 が、残る 2つをまとめ、curl(grad( f )) = 0div(curl(F)) = 0 と得る。特に、マクスウェルの方程式は、外微分とホッジスター作用素で表すと、特別に単純でエレガントな形となる。

ラプラシアンも得ることができる。上の情報と Δ f  = div grad f という事実を使うと、0-形式 [math]\omega=f(x,y,z)[/math] に対し、

[math] \Delta \omega =\star \mathrm{d}{\star \mathrm{d}\omega}= \frac{\partial^2 f}{\partial x^2} + \frac{\partial^2 f}{\partial y^2} + \frac{\partial^2 f}{\partial z^2}[/math]

となる。

脚注

  1. The Geometry of Physics (3rd edition), T. Frankel, Cambridge University Press, 2012, ISBN 978-1107-602601
  2. 2.0 2.1 Pertti Lounesto (2001). “§3.6 The Hodge dual”, Clifford Algebras and Spinors, Volume 286 of London Mathematical Society Lecture Note Series, 2nd, Cambridge University Press. ISBN 0-521-00551-5. 
  3. Venzo De Sabbata, Bidyut Kumar Datta (2007). “The pseudoscalar and imaginary unit”, Geometric algebra and applications to physics. CRC Press. ISBN 1-58488-772-9. 
  4. William E Baylis (2004). “Chapter 4: Applications of Clifford algebras in physics”, in Rafal Ablamowicz, Garret Sobczyk: Lectures on Clifford (geometric) algebras and applications. Birkhäuser. ISBN 0-8176-3257-3. 
  5. David Hestenes (1999). “The vector cross product”, New foundations for classical mechanics: Fundamental Theories of Physics, 2nd, Springer. ISBN 0-7923-5302-1. 

参考文献

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  • Jurgen Jost (2002) Riemannian Geometry and Geometric Analysis. Springer-Verlag. ISBN 3-540-42627-2. A detailed exposition starting from basic principles; does not treat the pseudo-Riemannian case.
  • Charles W. Misner, Kip S. Thorne, John Archibald Wheeler (1970) Gravitation. W.H. Freeman. ISBN 0-7167-0344-0. A basic review of differential geometry in the special case of four-dimensional spacetime.
  • Steven Rosenberg (1997) The Laplacian on a Riemannian manifold. Cambridge University Press. ISBN 0-521-46831-0. An introduction to the heat equation and the Atiyah-Singer theorem.
  • Tevian Dray (1999) The Hodge Dual Operator. A thorough overview of the definition and properties of the Hodge dual operator.