ファウストボール
ファウストボール(独: Faustball、英: Fistball)は、ドイツ発祥の球技。5人の選手と、最大5人の控え選手の2チームで、ネット越しにボールを打ち合う球技である。ドイツ語ではballはバルと発音されるので、実際はファウストバルであり、現地の発声により近いのは ファォストバルである。Faustとは、ドイツ語で「拳」を意味し[1]、英語圏ではフィストボールとも呼称される。
男女別の世界ファウストボール選手権大会(一般、U-18)が開催されている。ワールドゲームズの公式競技である。
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歴史
ファウストボールというゲームがいつ始められたかは、はっきりとは分かっていない。しかし、その起源はヨーロッパの南部、おそらくイタリアにあると考えられている。紀元前3世紀の記録書には、拳で革のボールを打つゲームの発想の記載があり、恐らくファウストボールは世界で最も古いスポーツの一つである。240年に、ローマ皇帝ゴーディアンによって、このボールスポーツの試合の最初の記録が行われている。ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテも、彼の旅行記「イタリア紀行」にて、このスポーツについて言及している。
ゲオルグ・ウェーバーが、1870年にドイツにファウストボールを導入した。初期には主に体操選手によって行われ、1885年には ドレスデンにおいてのドイツ体操祭で初めてゲームが行われた。1894年にはウェーバーは、まだ現在のルールとは大きく異なるものの、ファウストボールをより競争力のあるスポーツにした。この間、ファウストボールはドイツ近隣諸国に広がり、また南米や西アフリカなどにおいても、ドイツの移民が普及した。1913年には、ドイツで初のドイツ選手権が行われた。体操からは離れ、1927年にはドイツで組織化されたファウストボールに、約12000のチームが参加した。ファウストボールの急速な普及とスキルの向上により、ルールは変更され、ゲームはよりダイナミックになった。
一方、日本でのファウストボールの歴史はまだ浅い。1997年8月に行われたワールドゲームズ・ラハティ大会で、JWGA(日本ワールドゲームズ協会)の有志がこの競技を目撃し、日本に伝えた。同年末に秋田県ファウストボール協会が設立され、翌1998年に日本ファウストボール協会と改称、国際スポーツ連盟にも加盟した。同協会は、1998年の第2回女子ファウストボール競技・世界選手権大会(オーストラリア)に日本代表視察団を派遣した。1999年の第10回男子ファウストボール世界選手権大会(スイス・オルテア)に初めて日本代表選手団を派遣した。2001年の第6回ワールドゲームズ(秋田市)では男子競技5位の成績を収めた。
ルール
ゲーム概要
ファウストボールは、2つのチームがバレーボールのように2つのハーフコートで対面するゲームである。中心線と網目状のネットが中央を区切っている。プレーヤーやボールが、ネットやネット両側の柱(ポスト)に触れると、ファールとなる。各チームは5人の選手で構成され、腕や拳でボールを打つ。
ボールタッチ
ボールは、プレーヤーがタッチする前にワンバウンドすることは許される。ツーバウンドすることはファールとなる。そして、1ターンにつき最大3人の異なるプレーヤーがボールにタッチすることができ、多くとも3人目のプレーヤーがボールを相手コートに返さなくてはならない。
ボールは腕や拳で打つ。すなわち手を開いて打つことや、腕以外の部分で打つことはファールである。
得点のカウント
一方のチームがファールをした場合、もう一方のチームの得点となる。ファールをしたチームがサーブ権を得る。1セットは11点先取制である。10点対10点となった場合には、一方のチームが2点をリードするか、または15点に達するまで延長される(15点対14点で終了できる)。勝利のために必要なセット数は、大会によって異なる。第1回ファウストボール・ブンデスリーガでは、5セット先取制であった。第2回ファウストボール・ブンデスリーガでは、3セット先取制であった。
ファール
以下のファールを犯すと、反対チームに得点が入る。
- ボールまたはプレーヤーが、ネットまたはポストに触れる。
- ボールがコート外で接地する。
- ボールがツーバウンドする。
- ボールが、ネットの下を横切って相手フィールドに入る。
- チームの3人以上のプレーヤーがターン中にボールに触れる(3人目のプレーヤーは、反対側のハーフフィールドにボールを入れなくてはならない)。
- 同一のプレーヤ―が、ターン内に2回ボールに触れる。複数回のボールタッチがある場合は、それぞれのプレーヤーが異なる必要がある。
- サーバーが、サーブラインに触れるか、それを超える。
- ボールが、上腕または前腕または拳以外の身体に触れる。また、手掌でボールに触れる。
ファウストボールコート
ファウストボールでは、コートサイズは50m×20m(ハーフコートあたり25m×20m)に設定されている。屋内の場合、40m×20mの小さめのコートとなる(ハーフコートあたり20m×20m)となる。これはハンドボール場の通常のサイズに対応するので、通常は既存の外線が使用される。サービスラインは中心線から3mである。線はコート内に属し、ボールのオンラインはファールではない。
コートを分けるネットは、網状の赤色と白色のリボンである。2本のポストの間に張られ、その上端の高さは2m(男性)または1.90m(女性)である。U-12での高さは1.60mで、U-14での高さは1.80mとなっている。競技場には屋外エリア(後方8m、側面6m)が含まれているが、屋内ではその限りではない。
世界選手権歴代開催地と優勝国
男子
- 1968年第1回リンツ世界選手権大会( オーストリア):西ドイツ
- 1972年第2回シュヴァインフルト世界選手権大会( ドイツ):西ドイツ
- 1976年第3回ノヴォ・アンブルゴ世界選手権大会( ブラジル):西ドイツ
- 1979年第4回ザンクト・ガレン世界選手権大会( スイス):西ドイツ
- 1982年第5回ハノーバー世界選手権大会( ドイツ):西ドイツ
- 1986年第6回ブエノスアイレス世界選手権大会( アルゼンチン):西ドイツ
- 1990年第7回フェクラブルック世界選手権大会( オーストリア):西ドイツ
- 1992年第8回ジャンキーウェ世界選手権大会( チリ):ドイツ
- 1995年第9回ウィントフック世界選手権大会(ナミビアの旗 ナミビア):ドイツ
- 1999年第10回オルテア世界選手権大会( スイス):ブラジル
- 2003年第11回ポルトアレグレ世界選手権大会( ブラジル):ブラジル
- 2007年第12回オルデンブルグ世界選手権大会( ドイツ):オーストリア
- 2011年第13回パッシング世界選手権大会( オーストリア):ドイツ
- 2015年第14回コルドバ世界選手権大会( アルゼンチン:ドイツ
- 2019年第15回ヴィンタートゥール世界選手権大会( スイス)
女子
- 1994年第1回ブエノスアイレス世界選手権大会( アルゼンチン):ドイツ
- 1998年第2回フィラッハ/リンツ世界選手権大会( オーストリア):ドイツ
- 2002年第3回クリチバ世界選手権大会( ブラジル):スイス
- 2006年第4回ヨナ世界選手権大会( スイス):ドイツ
- 2010年第5回サンティアゴ世界選手権大会( チリ):ブラジル
- 2014年第6回ドレスデン世界選手権大会( ドイツ):ドイツ
- 2016年第7回クリチバ世界選手権大会( ブラジル):ドイツ
- 2018年第8回リンツ世界選手権大会( オーストリア)
脚注
- 注
- 出典