ヒッポメネース
ヒッポメネース(古希:Ἱππομένης)、またはメラニオーン(古希:Μελανίων、Μειλανίων)[1]は、ギリシア神話の人物。アルカディアのアムピダマースの息子[2]、またはオンケーストスのメガレウスの息子[3]で、アタランテーの夫。ケイローンの弟子としても知られ、困難に立ち向かう意志において他の弟子を凌ぐとされた[4]。碑文では、カリュドーンの猪狩りに参加したとされる[5]。
神話
ヒッポメネースは主にアタランテーへの求婚で知られ、この神話はアポロドーロス[2]、オウィディウス[6]、セルウィウス[7]、ヒュギーヌス[8]などによって記されている。
ヒッポメネースは処女の狩人、アタランテーに恋をするが、彼女は結婚をすることを拒んでいた。しかし神託で結婚するように警告されると、彼女は、自分と結婚したい男性は徒競走で彼女に勝利しなければならない、そして敗者は殺害する、と宣言した。彼女は俊足で有名であった。あるいはヒュギーヌスなどによれば、彼女の父が彼女の結婚を望み、徒競走で負けるはずがないと考えたアタランテーがこの条件を提示したともされる。
アタランテーは求婚者たちを次々と打ち負かしたが、ヒッポメネースは走る速度ではなく策略を以って彼女に勝利した。彼は、公正な勝負ではアタランテーに勝てないことを知っていたため、アプロディーテー[注 1]に祈って助けを求めた。
アプロディーテーは彼に3つの黄金の林檎を与え、これを1つずつ落としてアタランテーの気を引き付けるように教えた。オウィディウスによれば、この林檎はキプロス島のタマソスにあるアプロディーテーの聖なる林檎の木から取られたとされる[9]。また、セルウィウスはこれをヘスペリデスの園の林檎であるとしている。アタランテーは、2つ目の林檎までは再度追いつくことが出来たが、3つ目の林檎を拾おうと立ち止まった際にヒッポメネースが競走に勝利した。3つの林檎全てと、彼自身の可能な限りの速さを必要としたが、最終的に彼は勝利し、アタランテーを妻にする権利を手にしたのである。
後に、アタランテーとヒッポメネースは、彼の故郷への旅の途中にキュベレーの聖域で交わったことにより怒りを買って獅子に変えられた。オウィディウスとセルウィウスによれば、ヒッポメネースがアプロディーテーの助力への返礼を怠ったために怒り、キュベレーの神殿に2人が立ち寄った際に彼らを愛欲で狂わせて交わらせ、これによってキュベレー(ヒュギーヌスによればゼウス)が彼らを獅子に変えたとされる。その後、彼らはキュベレーの戦車を牽いているとされ、セルウィウスはこの戦車を地球そのものと考えていた。
いくつかの記述では、ヒッポメネース(メラニオーン)はパルテノパイオスの父であるとされる[10][11]が、パルテノパイオスはアレース[12]、またはメレアグロス[13]の子とされる場合もある。
系図
脚注
注釈
- ↑ アプロディーテーは男女の愛を拒絶するアタランテーに反感を持っていた。
出典
- ↑ "Μελανίων"はアポロドーロス(『ギリシア神話』3.9.2)、パウサニアース(3.12.9)が使用した。"Μειλανίων"はクセノポーンの『狩猟について』(1.2および7) で使用される。"Ἱππομένης"はテオクリトス(『牧歌』3.40)、エウリーピデース(散逸した作品。『ギリシア神話』に記載あり。)の他、多くのローマ人の著作家によって使用されている。オウィディウスの『恋の技法』(2.188) やプロペルティウス (1.1.9) は、"Μειλανίων"のラテン語での綴り"Milanion"を使用している。
- ↑ 2.0 2.1 アポロドーロス『ギリシア神話』3.9.2。
- ↑ オウィディウス『変身物語』10.605。
- ↑ クセノポーン『狩猟について』1.2および7。
- ↑ Corpus Inscriptionum Graecarum, 8139, 8185a.
- ↑ 『変身物語』10. 560-707。
- ↑ 『アエネーイス』の注釈書、3.113。
- ↑ 『神話集』185。
- ↑ 『変身物語』10.644。
- ↑ アポロドーロス『ギリシア神話』3.6.3。
- ↑ パウサニアース『ギリシア案内記』3.12.9。
- ↑ アポロドーロス『ギリシア神話』3.9.2で示唆される。
- ↑ ヒュギーヌス『神話集』70, 99, 270。