ダイクロマティズム

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ダイクロマティズム(: dichromatism)あるいはポリクロマティズム(: polychromatism)とは物体や溶液の色相が色素の濃度や物体・溶液の厚さ(光路長)に依存して変化する現象である[1][注 1]。ダイクロマティズムを示さない物質の場合には、色素濃度や物体の厚さが変化しても色相は変化せず明度彩度のみが変化する。ただしこの場合も人間が微妙な色相の変化を感知出来ないだけであり、実在する色素の場合必ずダイクロマティズムは起きると言える。

ダイクロマティズムの例

明確なダイクロマティズムを示す物質の例は、パンプキンシードオイルブロモフェノールブルークロロフィルサフランである。例えば、スプーンに入れたパンプキンシードオイルの中央部分(光路長が長い)は暗い赤色に見え、周辺部分(光路長が短い)は明るい黄緑色に見える[1]。また、スパイスのサフラン(色素濃度が濃い)は赤色をしているが、これを少量加えて炊いた米であるサフランライス(色素濃度が薄い)は黄色となる[2]。植物種により葉の色相が緑から黄緑まで異なるのもクロロフィルのダイクロマティズムによるものであると説明されている[2]

原理

ランバート・ベールの法則によればある波長の光の透過率は溶液に含まれる色素の濃度に対して右肩下がりの指数関数の形で減少する[注 2]。こうした色素一般の分光学的性質により、吸光係数の異なる複数の波長により構成される可視光が色素溶液を透過する時、これらの波長の透過光に占める比率は色素濃度や光路長によって変化する。人間が感知する光の色は概ね400nmから700nmの波長の光の割合によって決まるので[注 3]、この領域の波長の光の割合が変わることは光(物体)の色が変わることを意味している。RGB等色関数[注 4]等を用いて透過光のスペクトルがどのような色を示すのか計算することでダイクロマティズムを数学的に説明することができる[1][2]

関連項目

脚注

  1. Kreft and Kreft (2007)の論文において初めてダイクロマティズムという用語・概念が明確に提唱された。
  2. ランバート・ベールの法則の A = -log(I/Io) = εcl の式を変形すると I = Io・(1/10)εcl となる。
  3. 等色関数の定義する可視波長領域は380nmから780nmである。各波長の赤色・緑色・青色の度合いを示すRGB等色関数のr関数、g関数、b関数は400nmから700nmの範囲で大きな値を取る。
  4. RGB等色関数の具体的数値はこちらの文献のTable B1 を参照:CIE Technical Report. Colorimetry. CIE 15:2004. ISBN 3-901-906-33-9

参考文献

  1. 1.0 1.1 1.2 Kreft S and Kreft M (2007) Physicochemical and physiological basis of dichromatic colour, Naturwissenschaften 94, 935-939.
  2. 2.0 2.1 2.2 Kasajima I and Sasaki K (2014) Dichromatism causes color variations in leaves and spices, Color Research and Application, DOI: 10.1002/col.21934