スペクトル分類

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スペクトル分類(スペクトルぶんるい、spectral classification)は、恒星の分類法の一つである。スペクトル分類によって細分された星のタイプをスペクトル型 (spectral type) と呼ぶ。恒星から放射された電磁波を捉え、スペクトルを観察することによって分類する。恒星のスペクトルはその表面温度や化学組成により変わってくる。表面温度により分類する狭義のスペクトル型(ハーバード型とも)と、星の本来の明るさを示す光度階級 (luminosity class) があり、両者を合わせて2次元的に分類するMKスペクトル分類が広く使われる。

表面温度による分類

テンプレート:ヘルツシュプルング・ラッセル図 スペクトル型を数万ケルビンの高温度星から3千ケルビンの低温度星まで温度系列として並べる。恒星の色は表面温度によって左右され、高温度星は青白く、低温度星は赤みを帯びて見える(色温度も参照)。

温度の違いはスペクトルの吸収線に影響を及ぼす。高温の天体では水素の吸収線が、低温の天体ではその他の重元素による吸収線が強く現れる傾向にある。また特に低温の星では、原子に加えて分子の吸収線も見られるようになる[1]

表面温度 K
O 29,000-60,000
B 10,000-29,000 青~青白
A 7,500-10,000
F 6,000-7,500 黄白
G 5,300-6,000
K 3,900-5,300
M 2,500-3,900

このスペクトル型配列の覚え方である "Oh Be A Fine Girl, Kiss Me!"(ああ、お上品な女の子になってキスしてください!)は有名。

アルファベットが不規則な並びになっているのは、もともとハーバード大学天文台エドワード・ピッカリングらが、恒星のスペクトルのパターンを分類して、見かけの単純なものからA B C……と振っていったが(ハーバード分類)、後に表面温度とスペクトルとが対応していると分かり、高温から並べ直した結果O B A F G K Mという順になったためである[2]

各型はさらに等分され、高温な方から0〜9と番号が振られる。すなわち、A型で最も高温の星はA0,最も低温の星はA9となる。

近年、褐色矮星などの分類も可能にすべく拡張され、O B A F G K M L T Yとなった。

表面温度 K
L 1,300-2,500 暗赤
T 600-1,300 赤外線
Y 600以下 赤外線

また、高温度星ではウォルフ・ライエ星を分類するW型、低温度星では炭素星を分類するC型や酸化ジルコニウムの吸収線が多いスペクトルを示す星を分類するS型といった型もある。W型の表面温度はO型と同じかそれより高く、C型の表面温度はK型~M型と同程度、S型の表面温度はM型と同程度である。白色矮星は略称であるDBと書かれる事もある。

光度階級による分類

表面温度によるスペクトル型が同じ恒星でも、星によって線スペクトルの強度や線幅は異なっている。これは吸収線を作り出す恒星大気部分の密度や圧力が、星によって異なるためである。恒星大気の密度や圧力は、その恒星の表面重力の強さで決まる。恒星の表面重力は恒星の質量に比例し半径の2乗に反比例するため、半径の大きな星ほど相対的に重力は弱く、大気の密度や圧力も小さい。よって、様々な元素の線スペクトルの強度比や線幅を調べることで、その星の半径や光度を推定することができる。このような方法でスペクトルを分類したものを光度階級と呼ぶ。

光度階級は基本的には以下の5段階に分けられる。a(明るい), ab(中間の明るさ), b(暗い) などと細分化される場合もある。また、さらに上の階級として0極超巨星)を、さらに下の階級としてVI準矮星)、VII白色矮星)を設ける事もある。他にも特徴を持つものは、別の添え字を付けて表される。

光度階級 種類
I 超巨星
II 明るい巨星(輝巨星
III 普通の巨星
IV 準巨星
V 主系列星(矮星)
添え字 特徴
e スペクトルに輝線を含む
m A型金属線星の特徴を持つ
n スペクトル線の幅が広い
nn スペクトル線の幅が非常に広い
p 特異なスペクトルを持つ(元素記号は特に強く現れる元素)
s スペクトル線の幅が狭い
ss スペクトル線の幅が非常に狭い
v スペクトルが変化する

スペクトル分類とHR図

温度によるスペクトル分類は、ヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)を作成する際に横軸として使用されることがある。HR図の横軸には他に星の温度や色指数を用いる方法もある。

参考文献

  1. 斉尾英行 『星の進化』 培風社〈New Cosmos Series〉、1992年、p.10-13。
  2. 君が天文学者になる4日間 予習テキストの「第2章 星の色と分類」


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