クロモジ

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江戸時代創業の日本で唯一の楊枝専門店さるや(2018年2月17日撮影)

クロモジ(黒文字、Lindera umbellata)は、クスノキ科落葉低木を高級楊枝の材料とし、楊枝自体も黒文字と呼ばれる。香料の黒文字油がとれる。

特徴

本州四国九州などの低山や疎林の斜面に分布する。
は高さ5メートル程度まで成長する。若枝ははじめがあるが次第になくなり、緑色のすべすべした肌に、次第に黒い斑紋がでることが多い。古くなると次第にざらついた灰色樹皮に覆われる。

は洋紙質で楕円形、深緑でつやはない。葉裏はやや白っぽい。

雌雄異株は黄緑色で、が出るのと同じ頃、葉脇から出た散形花序に咲き、雄花には9本の雄蕊、雌花には子房がある。
果実は液果で10月頃に黒熟する。葉や枝には芳香がある。

利用

黒文字の名は若枝の表面にでる斑紋を文字に見立てたものといわれる。古くからこれを削って楊枝を作る。特に根本に皮を残すのが上品とされる。現在でも、和菓子など特に選ばれたところではクロモジの楊枝が使われる。

千葉県の久留里地域ではクロモジの楊枝作りが明治期から副業として行われており[1]上総楊枝として特産品化されている[2]


枝葉を蒸留することでとれる黒文字油は、テルピネオールリモネンなどを含有する。現在はあまり使われないが、香料としてかつては化粧品、石鹸などに盛んに使われ、輸出もされた。

枝(烏樟)や根(釣樟)を薬用にもする(養命酒など)。

クロモジのの煎じ汁がによいという風習が、長野県阿智村や喬木村にある[3]

風習

東北北越では鳥木と呼ばれ、狩りの獲物をクロモジの木の枝に刺し、神への供物とする風習がある。鷹狩で取った獲物を贈る際にクロモジの枝で結ぶことが多く、鳥柴とも呼ばれる。

近縁種

クロモジ属は東南アジアなどの旧世界熱帯から温帯にかけて100種ほど、北アメリカに数種がある。日本にもダンコウバイアブラチャン、ヤマコウバシ、シロモジなどが自生する。テンダイウヤク漢方薬にされ、ほかにも香料、薬用や食用に用いられたものがある。

クロモジには類似種や変種が多い。種内の変種としては

  • オオバクロモジ var. membrancea (Maxim) Mojama - 葉が一回り大きくて楕円形。関東北部以北に分布。
  • ヒメクロモジ var. lancea Mojyama - 葉の幅が狭い。本州南部に分布。

よく似た別種としては

  • ケクロモジ Lindera sericea (Aieb. et Zucc.) Blume - 葉脈が葉裏に突き出ることなど、いくつかの点で区別される。近畿以西の本州、四国、九州に分布。
    • ウスゲクロモジ var. glbrata Blume - 基本変種より葉がやや薄い。

参考文献

  • 草川俊「有用草木博物事典」(東京堂出版)

出典

  1. 『地方特産品ニ関スル調査』農林省経済更正部、昭和12年10月、118-119頁
  2. 『全国副業品取引便覧』日本産業協会、大正15年4月、141-142頁
  3. 『信州の民間薬』全212頁中82頁医療タイムス社昭和46年12月10日発行信濃生薬研究会林兼道編集