クランプス

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クランプス: Krampus,ハンガリー語: Krampusz)は、ヨーロッパ中部伝説の生物であり、主にドイツ東南部のバイエルン州[1]オーストリア中部・東部[2]ハンガリールーマニア北部のトランシルヴァニア地方とスロヴェニアにおいて、クリスマス・シーズンの間に、聖ニコラウスに同行する行事でもある。

概要

よい子供にプレゼントを配る聖ニコラウスと対照的に、クランプスは悪い子供に警告し罰を与えると信じられている。 クランプスには、ルプレヒトなどの怪物も同行することがある[3]。 ドイツ及びオーストリアの文化の影響のため、クランプスの伝説はその他にセルビア北部、ルーマニア南部のワラキア地方ブルガリアポーランド南部(シロンスク地方も含む)、クロアチアチェコスロバキア及びイタリア北部において広く分布している。

Krampus という単語は、鉤爪を意味する古高ドイツ語の単語「Krampen」(クランペン)に由来する。アルペン地方では、クランプスは夢魔に似た生物として表現される。伝統にのっとり、12月の最初の2週間、特に12月5日の晩になると、若者はクランプスの扮装をして、錆びた鎖と鐘を持ち、子供と女性を怯えさせながら通りを練り歩く。また農村地域の中には、特に若い少女へのクランプスによる鞭打ちの笞による体罰)を伴う伝統がある。クランプスは通常、悪い子供を連れ去り、地獄の穴に投げ入れるための籠を背負ったイメージで表される。そして、鞭を振るいながら、子供を捕まえて、親の言うことを聞くように、勉強するのだぞと厳しくさとす[4]

近年のクランプスの装束は、Larve(ラルフェ、木製の仮面)、羊の皮及びから成っている。手作りの仮面の製造には相当程度の努力を要するため、村落の多くの青年がクランプスの行事に参加する。

バイエルン南西部の高山に位置するオーベルストドルフでは、der Wilde Mann(デア・ヴィルデ・マン、野人)の伝統が生かされている。彼は毛皮を身に付け錆びた鎖と鐘を持ち、子供(と大人)を怯えさせる点でクランプスに似ているが、角がなく、聖ニコラウスの同伴者ではない。

オーストリアの2月内乱の余波で、クランプスの伝統は、ナチス・ドイツと同盟したオーストリアのファシストたちの標的であった。

日本では、2015年からクランプスジャパンという団体がパレードを実施しており、志村坂上駅すぐの商店街(12月の第1日曜)でイベントがある。

脚注

  1. バイエルン・シュヴァーベン地方を除く。
  2. フォアアールベルク州チロル州は除く。
  3. 植田重雄 『ヨーロッパの神と祭り-光と闇の習俗』早稲田大学出版部、1995年、71頁。
  4. 芳賀日出男 『ヨーロッパ古層の異人たち』東京書籍、2003年、80頁。

関連項目