操作

エアフォースワン

ファイル:Barack Obama meets his staff in Air Force One Conference Room.jpg
VC-25内部。カンファレンス・ルームでの一コマ。立っている人物のうち左端がバラク・オバマ大統領
ファイル:Lyndon B. Johnson taking the oath of office, November 1963.jpg
ケネディ大統領暗殺事件で、急遽エアフォースワンの内部で執り行われたリンドン・ジョンソン大統領就任。機内で行われた唯一の例である
ファイル:USAF C-32A.jpg
エアフォースツーとして運用されているC-32、空港や整備などの事情でC-32をエアフォースワンとして使用する場合もある。

エアフォースワン英語: Air Force One)は、アメリカ合衆国大統領が搭乗した際にアメリカ空軍機が使用するコールサイン。大統領が搭乗していない時や、大統領の任期が飛行中に終了した時[注 1]は、その機体がアメリカ合衆国大統領専用機であっても、このコールサインは使われない。航空交通管制においてアメリカ大統領搭乗機を明確にする目的で用いられる。

1959年以前は、その時々のミッションナンバーで呼ばれていたため他の機と似かよったナンバーになり混同されることがあった。

定義

『エアフォースワン』の定義

エアフォースワン」と言った場合、1990年以前はボーイング707を改造したVC-137、それ以降はボーイング747を改造した専用機 (VC-25) の事をさすことが多いが、それは大統領が外遊等で、空軍機ながら星条旗マークを掲げ「UNITED STATES OF AMERICA」と表記されカラーリングまで変えられたこの専用機に乗ることがほとんどであるために起こる誤解・誤用である。

正確には上記専用機のほか戦闘機、軍用輸送機を問わず、アメリカ空軍(USエアフォース)の航空機に大統領が搭乗すればその搭乗機のコールサインに「エアフォースワン」を用いる[注 2][注 3]

副大統領の場合、「エアフォースツー」

副大統領が搭乗した場合のコールサインは「エアフォースツー」になる。なお、副大統領が単独で移動する場合、現在はボーイング757の派生型であるC-32が充てられることが多い。事件や事故によって大統領と副大統領が同時に失われる事態を防ぐため、通常は同じ目的地に移動する際も別の飛行機に乗るようになっている。

海軍機、陸軍機、海兵隊機、沿岸警備隊機の場合

同様に、大統領が他の軍などの航空機に搭乗した場合、そのコールサインは以下のようになる[1]:

本コールサインを使用する機体は通常ヘリコプターVH-3DVH-60Nの大統領専用機体が存在する。
1957年から1976年まで、海兵隊と共に輸送を担当していたヘリコプターが本コールサインを用いた。
2011年現在までのところ、2003年5月1日、カリフォルニア州サンディエゴ沖の太平洋に浮かぶ原子力空母エイブラハム・リンカーン」に向かうためにブッシュ大統領を乗せた対潜哨戒機S-3 ヴァイキングが使用した一例のみ。
2016年現在までのところ、本コールサイン使用実績は無し。
通常アメリカ大統領は、プライベートな場合を含め民間機に乗ることはないが、リチャード・ニクソンだけがしばしば用いた民間機が本コールサインを使用した。

ちなみに大統領家族の搭乗機の場合はエグゼクティブワン・フォックストロットとなり、シークレットサービスまたはホワイトハウスのスタッフが必要と判断した場合に使用。軍用機・民間機の区別はない。フォックストロット(Foxtrot)はF(familyの頭文字)を示すフォネティックコード

歴史

ファイル:Theodore Roosevelt and Archibald Hoxsey (1910).jpg
飛行前のセオドア・ルーズベルト元大統領と パイロットのArch Hoxsey

導入前の歴史

1903年12月17日ライト兄弟が世界で初めて有人動力飛行を成功させた。

そして1910年10月11日、既に後継者のウィリアム・タフトに引き継いでいたセオドア・ルーズベルト元大統領が、現在のランバート・セントルイス国際空港で行われたカウンティ―フェアで初期型のライトフライヤー号による短時間飛行を行った[2]。これが大統領の航空機による旅の始まりだった[3]

第二次世界大戦以前は、大統領が海や山を越えるような旅行を行う事は稀であった。無線通信と交通手段の不足によって長距離旅行は非現実的なもので、大統領が遠くの国に旅行する必要があった場合、鉄道が最も安全で信頼性の高い選択であった。

1930年代後半になり、ダグラス DC-3などの実用的な航空機が登場し、リーズナブルな旅行手段としてアメリカの旅客数が増えた。信頼性が高まるとともに、商業目的の旅客や政府関係者の利用も増えていった。

エアフォースワンの導入

任期中に初めて航空機に乗った大統領は、フランクリン・ルーズベルトである。大統領旅行のために特別に取得された最初の航空機は、1933年に引き渡されたダグラス ドルフィン水陸両用飛行機で、アメリカ海軍によってRD-2として設計され、ワシントンD.C.アナコスティア海軍基地(en)に配備された。この飛行機には、4人の乗客の為に贅沢な内装と、小型のセパレート睡眠用客室が施されていた[4]。航空機は、1933年から1939年にかけて、大統領輸送の任に付いていた[5]。しかし、実際に大統領がこの航空機に搭乗したというレポートはない。

第二次世界大戦中、ルーズベルト大統領は1943年のカサブランカ会談に参加する為、パンアメリカン航空が所有するボーイング314飛行艇 Dixie Clipperに乗って、8,890 kmを飛行している[6]。大西洋でのドイツ潜水艦の脅威は、要人の大西洋横断手段としての空の旅を最適なものとした[7]

ファイル:Sacred Cow airplane.jpg
フランクリン・ルーズベルト大統領の "the Sacred Cow"(聖なる牛)と愛称が付けられた ダグラス C-54

大統領の移動を商業航空会社に頼る事に対する懸念から、アメリカ空軍司令部は軍用機の転換を総司令命令として発令した[8]。選ばれたのはC-87A シリアルナンバー41-24159 の機体で、1943年にルーズベルト大統領の海外渡航のための大統領使用機「Guess Where II 」へと特別に改装された。

これが受け入れられれば最初の大統領執務に使用される機体、いわゆるエアフォースワンになるはずであったが、シークレットサービスが就役中のC-87の議論のある安全性に関する記録を精査した後で「Guess Where II 」を大統領の移動に使用することをきっぱりと断った[9]。C-87はB-24リベレイター爆撃機の改造機であったため、訪問先への攻撃的な印象を与えかねないため大統領は使用しなかったが、他の政権上層部の移動には利用されたようである。「Guess Where II 」はエレノア・ルーズベルトの数度のラテンアメリカ諸国への慈善旅行に使用された[9]。C-87は1945年にスクラップにされた[9]

その後シークレットサービスは、大統領専用機としてダグラス C-54を再設計した。the Sacred Cowというニックネームを付けられたVC-54Cには、無線電話、寝室、そして大統領就任前に患ったポリオによって車椅子で移動しているルーズベルト大統領の為に、開閉式のエレベーターが設えられた。そしてこの機体は、1945年2月のヤルタ会談に出席するルーズベルト大統領を乗せ飛行した[8]

1940年代‐1950年代

1945年4月にルーズベルト大統領が亡くなり、副大統領であったハリー・S・トルーマンが大統領を引き継いだ。1947年の国家安全保障法(National Security Act 1947)は、トルーマンがVC-54Cの機上で署名した[8]。1947年、大統領専用機は、ダグラス_DC-6(空軍向けのC-118 Liftmaster)を改造したVC-118 Independence(トルーマンの故郷の名前から)が引きついた。これはエアフォースワンとしての役割を果たす最初の航空機で、先頭部分のペイントは白頭鷲を模している。

エアフォースワン』のコールサインの使用は、ドワイト・D・アイゼンハワー政権で決まった。この決定は、1953年に大統領専用機(Air Force 8610)と同じコールサインを持っていたイースタン航空の商用飛行機(8610)が、同じ空域に入り混乱が生じた事件によるもので、コールサインが被らない専用のコールサインが付けられた。エアフォースワンとしての最初の公式飛行は、アイゼンハワー政権下の1959年に大統領専用機 Columbine II に対して使用された。

ファイル:Lockheed VC-121E Super Constellation.jpg
アイゼンハワー大統領が使用した VC-121 Columbine III

アイゼンハワーは、プロペラ4発機を使用することにした。ロッキード コンステレーションの軍用機(C-121)を改造した Columbine II (VC-121A 48-610)、Columbine III (VC-121E 53-7885) が使用された[10]Columbineの名称は、ファーストレディーのマミー・アイゼンハワーによるもので、彼女の出身州であるコロラド州(Columbine、和名:ソライロオダマキ)から命名された。また、2機のエアロコマンダーが加えられ、エアフォースワンの最小サイズの区分が設けられた。

Boeing 707とジェットの時代の始まり

ファイル:VC-137-1 Air Force One.jpg
SAM 26000は、ケネディ35代大統領からクリントン42代大統領の時代まで使用された。
ファイル:Air Force One SAM 27000.jpg
SAM 27000は、ニクソン37代大統領からジョージ・W・ブッシュ43代大統領まで使用された。

1958年のアイゼンハワーの任期の終わりに、空軍は3機のボーイング707ジェット機VC-137として設計された物で、大統領非搭乗時のコールサインはSAM 970,971,972。SAMはSpecial Air Missionの略)を加えた[11]。アイゼンハワーは、エアフォースワンのジェット機を最初に使うことになった大統領となった。

SAM 26000

1962年10月、米空軍は、Boeing 707の空軍向け長距離仕様機ボーイングC-137ストラトライナーを改造したSAM 26000を購入した[12]

SAM 27000

1972年12月に、SAM 26000は、VC-137のSAM 27000と交代したが、最終的には1998年の退役までバックアップとして保管された[13]

Boeing 747-200

ロナルド・レーガン政権下で、ボーイング747を使ったVC-25Aを2機発注し、1986年に完成、1987年に初飛行したが[14]、核爆発によって発生する電磁パルス(EMP)対策の追加仕様変更によって納期が遅れ、1990年に最初の1機が引き渡されることとなった。

この2機の大統領非搭乗時のコールサインは、テールナンバーにちなみ「SAM28000」、「SAM29000」が使用される。

Boeing 747-8

従来のVC-25Aの老朽化と費用対効果の悪化により、更新が検討されている[15]。2015年1月28日に、空軍は後継機としてボーイング747-8を2021年頃に導入する事を発表した[16][17]

-8は、従来機より1機多い3機体制となる予定である。当初は3機とも新造機となる予定だったが、このうち2機は、ドナルド・トランプが要求した購入費用の削減策として、経営破綻で引き渡されずにボーイングが保管していたトランスアエロ航空向け機材2機(シリアルナンバー42416・42417)を改修する方針に変更された[18]。この2機の購入費用は、改造費込で39億ドル(日本円換算で約4200億円)となり、当初の試算より10億ドル以上軽減された[19]。-8ベースのエアフォース・ワンの運用は2024年に始まる予定である[20]

実機

ファイル:ShimadaK1998-VC137B-SAM970-af1M.jpg
シアトルに展示されているVC-137B/SAM-970(B707-120)。
展示機

退役した空軍大統領専用機の主要な機体は、オハイオ州国立アメリカ空軍博物館、そしてワシントン州シアトル航空博物館English版に展示されている。最初のジェット版専用機Special Air Missions 970(機体はボーイング707-120)は同館から貸し出されてボーイングの博物館に展示中[1]。SAM 27000はカリフォルニア州シミバレーにあるロナルド・レーガン・プレジデンシャル・ライブラリーに展示されている。

ケネディが使っていた VC-118A Liftmaster は、アリゾナ州ピマ・エアー & スペース・ミュージアムEnglish版に展示されている。

リンドン・B・ジョンソン歴史公園には、リンドン・B・ジョンソンが使用していたロッキード ジェットスターが展示されている。ジョンソンが持っていた牧場には滑走路があったが大きな飛行機は止められなかったので、小型のジェットスターで近くのバーグストロム空軍基地まで移動して他の大きな機体に乗り換えていた[21]

レーガンとクリントンが使用していたダグラスC-9は、キャッスル航空博物館English版に展示されている[22]

セキュリティ

詳細な装備については、それぞれの機体のページを参照の事。

脱出ポッド
映画などで脱出ポッドパラシュートデッキが備えられているが、装備された事例はない[23][24]
対電磁パルス防御
電子機器には核兵器の爆発による電磁パルス対策が施されている。
攻撃に対する各種防御装置
対空ミサイル攻撃に対する防御手段として、ミサイル警報装置や赤外線誘導ミサイルの誘導を妨害する赤外線対抗手段(略称:IRCM、例:フレアや、AN/ALQ-204 Matador、AN/AAQ-24 ネメシスなど)、レーダーを妨害するチャフなどの装備を有する[25]

注釈

  1. 第37代ニクソン大統領辞任の瞬間は機上であったため、飛行中にコールサインが変更された。
  2. 映画「エアフォース・ワン」で、大統領が乗り移ってきたのを確認した輸送機パイロットが、自機に付与された従前のコールサインから「エアフォースワン」へ切り替え無線交信するシーンがあるが(そして、それは死亡したと思われていた大統領の救出に成功し、大統領が生存していることの宣言でもあった)、これは正しい解釈である。
  3. 第36代大統領リンドン・ジョンソンは第35代ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺を受けて、ケネディが乗るはずの飛行機の中で大統領宣誓をしたが、大統領宣誓が完了した瞬間から当該航空機に「エアフォースワン」のコールサインの使用が可能となった。

出典

  1. Order 7110.65T (Air Traffic Control) FAA規則 February 11, 2010
  2. Tr's flight was risky, flier says 動画も含む
  3. Hardesty 2003, pp. 31–32.
  4. "Mayflower Of The Air Ready For President." Popular Mechanics, May 1933.
  5. Donald 1997, p. 364.
  6. Hardesty 2003, p. 38.
  7. Hardesty 2003, p. 39.
  8. 8.0 8.1 8.2 "Factsheet: Douglas VC-54C SACRED COW." National Museum of the United States Air Force. Retrieved: 19 October 2009.
  9. 9.0 9.1 9.2 Dorr 2002, p. l34.
  10. Petersen, Ralph M. "53-7885 c/n 4151." Lockheed Constellation Survivors. Retrieved: 16 July 2013.
  11. "First of 3 Jets for President and Top Aides Is Unveiled." The New York Times, 28 April 1959, p. 3.
  12. Walsh 2003, p. 63.
  13. Thomma, Steve. "Presidential Plane Heads for History; This Air Force One Served Every President Since Kennedy. A Museum is Next." The Philadelphia Inquirer, 20 May 1998, p. A14.
  14. Jenkins 2000, pp. 55–56.
  15. Trimble, Stephen. "US considers Airbus A380 as Air Force One and potentially a C-5 replacement." Flight Global, 17 October 2007. Retrieved: 6 December 2016.
  16. "AF Identifies Boeing 747-8 platform for next Air Force One." United States Air Force, 28 January 2015. Retrieved: 28 January 2015.
  17. Capaccio. Anthony. "Boeing to build Air Force One replacement with bids for systems." Bloomberg News, 28 January 2015. Retrieved: 25 April 2015.
  18. 米空軍、次期大統領専用機に元トランスアエロの747-8購入 新古機でコスト削減 - Aviation Wire 2017年8月6日
  19. 新しいエアフォースワン2機、4200億円で購入へ 米政府 - CNN.co.jp 2018年3月1日
  20. 「航空最新ニュース 次期エアフォース・ワンは新古機の747-8に」 『航空ファン』2017年11月号(通巻779号) 文林堂 P.124
  21. "Lyndon B. Johnson National Historical Park." Aviation Museums. Retrieved: 7 July 2012.
  22. Douglas VC-9C | Castle Air Museum, Atwater & Merced” (en-US). Castle Air Museum. . 2017閲覧.
  23. J.F.O. McAllister (1997年7月28日). “Air Force One: On the Real Thing, No Pods and No Parachutes”. TIME & CNN. . 2016閲覧.
  24. Russell Berman (2015年1月31日). “Air Force One-Point-Three - After a quarter-century of service, the aging presidential airplanes are being replaced by a pair of state-of-the-art Boeing 747-8s”. The Atlantic. . 2016閲覧.
  25. Air Force One Has New Defensive Systems, Antennas

参考文献

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関連項目

外部リンク

  • Air Force One - ボーイング社が製造した歴代の大統領専用機を紹介するページ

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