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アニス


アニス (anise, Pimpinella anisum) はセリ科一年草。古くから香料や薬草として利用されてきた。原産地はアナトリア半島ギリシアエジプトといった地中海東部地域である。

概要

開花期には花茎が伸びて高さ50cmほどの高さにまで成長する。種のように見える果実をアニス果(別名アニシード aniseed)と呼び、香辛料として用いる。西洋茴香(セイヨウウイキョウ)と表示されることもある。香りの主成分はアネトールであり、同じ成分を持つフェンネルシード(ウイキョウ)、甘草(カンゾウ)と似た甘い香りがある。シキミ科の八角(スターアニス)も同じアネトールを含むが、アニスと植物学上の類縁関係にはない。八角はアニスと似た味と香りを持ち、より安価であるため、アニスの代用品として使用されることがある。

果実は長さ5mm程度で2つに結合した心皮からなる双懸果であり、強い芳香を持つ。地上に出ている部分は若いうちは野菜として食用にされる。セロリと食感が似ており、香りはアニシードよりもずっと弱い。

歴史

古代エジプトではミイラを作る際の臭い消しの一つとして用いられた。エジプト最古の医薬書エーベルス・パピルスにもアニスが記載されている。

アニスは古代ギリシアの時代には主として薬草として扱われ、母乳の分泌を促進する、あるいは分泌期間を延ばすものと信じられてきた。ローマ人は胃のもたれを解消するため、アニスケーキを食した。他にも、健胃剤、駆虫剤、去痰剤、歯磨き粉の成分として使われてきた。

イーストン聖書辞典1897年)によると、新約聖書の「マタイによる福音書」23章23節に出てくる「アニス」は、現在ではイノンドと呼ばれる植物を指している。

ヨーロッパでは、カール大帝が各地に作った香料植物園で9世紀頃から栽培が始まっている。しかし、原産地から遠いイギリスでは栽培が普及せず、ヨーロッパから輸入されていた。その希少さから1305年には特別な課税の対象となった。集まった税金ロンドン橋の修理のための資金となった。やがてエジプトから種子が入るようになり、15~16世紀にはイギリスでも一般家庭で栽培され始めた[1]

16世紀のイギリスの本草書である「バンクスの本草書」には「アニスは肝臓の機能停止を防ぎ、不快なガスの排出を促し、主要な体液の流れを促進する」とある。また、アニスを携帯していれば邪視による災難を避けられる、といった魔よけとしての効能も持つと信じられてきた[2]。植民地時代のアメリカには、リウマチの痛みが収まるまでタバコにアニス油とローズマリー油を混ぜてパイプでふかすという民間療法があった。

利用

ケーキクッキーなどの菓子類やパンアブサンウーゾイエーガーマイスターなどのリキュールの他、カレー魚介類、鶏などの料理、クリームスープ、ソースにも使用される。時には息の香りを良くするためや、消化剤としてや、頭痛を鎮めるためにも用いられる。

果実を水蒸気蒸留することで、揮発性のアニス油が得られ、香料として使うほか、少量を腹の張りや子供の疝痛(発作性の腹痛)の治療薬として使うことがある。アニス油は沸点210℃の黄色の液体で、成分は90%程度がアネトールである。他にカビコールアニスアルデヒドアニス酸テルペンなどを含む。

食用以外ではポプリの作成や入浴剤、狩猟犬の訓練、ネズミ捕りの餌などに利用される。

ギャラリー

脚注および参考文献

  1. 武政三男 『スパイス&ハーブ辞典』、文園社、1997年、pp31-33
  2. マーガレット・B・フリーマン著 遠山茂樹訳『西洋中世ハーブ事典』、八坂書房、2009年、pp50-51
  • バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント(編) 『世界の食用植物文化図鑑』 山本紀夫(訳)、柊風舎、291ページ。ISBN 978-4-903530-35-2。

外部リンク