くちびるに歌を
くちびるに歌を | |
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著者 | 中田永一 |
発行日 | 2011年11月24日 |
発行元 | 小学館 |
ジャンル | 青春小説 |
国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
形態 | 四六判 |
ページ数 | 290 |
公式サイト | くちびるに歌を 小学館 |
コード | ISBN 9784093863179(単行本) |
『くちびるに歌を』(くちびるにうたを)は、中田永一の青春小説。NHK全国学校音楽コンクールの課題曲となった「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」の作者であるアンジェラ・アキのテレビドキュメンタリーをもとに小説化された[1][2]。
2011年11月24日に小学館より出版され、2013年12月6日には文庫版が刊行された。また、ジュニア向け小説として2015年2月18日に小学館ジュニア文庫版が発売された。映画化され、2015年2月28日に公開された。
Contents
あらすじ
長崎県・五島列島のとある島の中学校。合唱部顧問の松山ハルコは産休に入るため、代わって松山の中学時代の同級生、「元神童で自称ニート」の臨時教員・柏木ユリに、1年間の期限付きで合唱部の指導を依頼する。
それを知ったその学校の中学生の中には柏木の美貌目当てに合唱部に入部したいという男子生徒が続出、桑原サトル・向井ケイスケ・三田村リクらが入部したが、もともと合唱部には女子しかおらず、以前から合唱部に所属していた仲村ナズナ・長谷川コトミ・辻エリなど、受け入れる側の女子生徒と軋轢が生じる。さらに柏木は7月に諫早市で行われるNHK全国学校音楽コンクール長崎県大会出場にあたっても独断で男子との混声での出場を決め、合唱部の男女生徒間の対立は深まるばかり。
その一方、柏木は課題曲「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」にちなみ、「誰にも見せる必要はないから、15年後の自分に向けて手紙を書け」と部員に宿題を出す。これを受けて彼らがそれぞれに書く手紙、あるいは登場人物同士の会話を通じて、彼らがそれぞれに抱えている秘密と心の傷も明らかになっていく。その後合唱部内でのある事件を経て、これまでやる気のなかった合唱部所属の男子生徒もコンクールに向けて真面目に練習に打ち込み始めるなど次第に部内のわだかまりが解消されていき、やがて長崎県大会の本番に挑むことになる。
主な登場人物
教師
- 柏木ユリ
- 高校卒業後に上京、音楽学校のピアノ科を卒業した後も東京でプロのピアニストとして活動し暮らしていたが、故郷の中学校の臨時職員に採用され、帰郷して音楽の講師に着任する。美貌とは対照的に口調はぶっきらぼうで、教え方もあまり熱心ではない。ボロボロの軽トラックで通勤している。
- なお、実写映画版では彼女にも誰にも言えない悲しい過去があり、それが原因でピアノから遠ざかってしまった設定が追加されている。
- 松山ハルコ
- 本来の音楽教師。柏木とは中学校の同級生で、柏木が以前交際していた男性と結婚している。出産のため1年間休職中。
- 実写映画版では(登場人物の中では)唯一ユリの悲しい過去を知っている。
男子合唱部員
- 桑原サトル
- 中学校の男子生徒の中でも背が低く、地味で目立たない存在。自閉症の兄がいる。自分が生まれてきたことを負い目に感じていることから学校では常に周囲と距離を置き、自他ともに認める「ぼっち上級者」となっている。
- NHK全国学校音楽コンクール長崎県大会出場にあたって佐世保に前泊した際、長谷川コトミと共に事件に巻き込まれ、長谷川を庇って負傷。血まみれになりながらもホテルに帰還するが、この一件によってその後、女子部員から「普段は頼りないけど、いざとなったら身を挺して守ってくれる」と慕われることになる。
- 三田村リク
- 柔道部と合唱部を掛け持ちしている。真面目で優しいしっかり者。体育会系の風貌の反面かなりの読書家で、桑原にお勧めの本の紹介もしている。
- 向井ケイスケ
- 交友関係は広く、学年中の生徒に顔が利く。柏木の美貌目当てに合唱部に入部、その後も真面目に練習に取り組まなかったが、あることをきっかけにその後は男子部員のリーダー的存在となる。お調子者で勉強もできないが、仲村ナズナの家庭環境を持ち出して悪口を言った後輩の男子部員を殴りつけるなど正義感も強い。
- 出産に臨む松山のために合唱コンクール会場でとっさの判断である計画を実行する策士の面もある。
女子合唱部員
- 辻エリ
- 合唱部部長。銀縁眼鏡をかけ、真面目な優等生。合唱部への男子の入部が判明した際には反対派の急先鋒となる。
- 仲村ナズナ
- 小学校5年次に父親が愛人と共に蒸発。その後、母がガンで死去したため、男性に対して恨みを持っている。
- 辻と同じく合唱部男子入部反対派だったが、幼なじみでもある向井から過去に向井宛に書いた手紙の存在を暴露されたため、中立の立場を余儀なくされる。
- 長谷川コトミ
- 合唱部ではソプラノのパートを担当。誰に対しても優しく、桑原から「天使がこの世にいるとしたら、きっと彼女のような姿をしている」と評されるほどの美少女。辻・仲村とは違い、「課題曲の『手紙』を混声で歌いたい」という理由で男子入部に肯定的なスタンスをとっている。
- NHK全国学校音楽コンクール長崎県大会出場にあたって佐世保に前泊した際、個人的な計画を実行に移すために桑原を同伴してある場所へ出向くが、そこで事件に巻き込まれる。
その他
- 神木
- 長谷川と同じ集落で育った1つ上の先輩。以前は長谷川と交際していたが、中学校卒業後に五島を離れ、現在は親戚の家に下宿しながら佐世保市内の高校に通っている。
漫画
モリタイシの作画で漫画化され、『ゲッサン』で2013年4月号から2014年8月号まで連載された。
- 単行本
映画
くちびるに歌を | |
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Have a song on your lips | |
監督 | 三木孝浩 |
脚本 |
持地佑季子 登米裕一 |
原作 | 中田永一 |
製作 |
長澤修一 水口昌彦 都築伸一郎 中村理一郎 他 |
製作総指揮 | 豊島雅郎 |
出演者 |
新垣結衣 木村文乃 桐谷健太 恒松祐里 井川比佐志 |
音楽 | 松谷卓 |
主題歌 |
アンジェラ・アキ 「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」 |
撮影 | 中山光一 |
編集 | 伊藤潤一 |
制作会社 | アスミック・エース |
製作会社 | 「くちびるに歌を」製作委員会 |
配給 | アスミック・エース |
公開 |
2015年2月28日 2015年9月4日 |
上映時間 | 132分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 3.86億円[3] |
2015年2月28日公開の日本映画。配給はアスミック・エース。主演は新垣結衣[2][4]。監督は『陽だまりの彼女』、『ホットロード』などの三木孝浩。
監督の三木は映画化にあたり、生徒たちの15年後が柏木になるような物語、15歳の自分と大人が交わす往復書簡のような映画にしたいと構想していた。新垣を柏木役に起用した理由としては、新垣が先生ぽくない人だからとし、まだ大人になりきれない柏木が生徒と向き合ううちに大人になっていく柏木を求めているからとしている。また、新垣の明るいイメージとのギャップも大事なことだったとしている[5]。ピアノ未経験者の新垣は撮影前に3か月の特訓を行い撮影に挑んだ[1]。合唱部の生徒役については全員をオーディションを行ったうえで起用。こちらも半年間に渡る合唱練習を経て撮影に挑んでいる[6]。
撮影は2014年7月より約2か月をかけて、五島列島を中心に全編に渡り長崎県で行われた。三木は映画化決定より前に五島列島を訪れて調査を行っており、五島列島で撮影をしたいと思った理由として、映画を五島列島の穏やかさで包みたかったとしている[6]。
映画のキャンペーン中には女子部員7人(恒松、葵、柴田、山口、朝倉、植田、高橋)がアイドルユニット・Lips!を自主的に結成[7][8]。お遊びでセルフプロデュースしたものだったが、2015年3月24日にはポニーキャニオンから『壁ドン 〜拝啓、勇気を出せない君へ〜 (アカペラver.)』とのタイトルで楽曲が配信されるまでに至った[9]。
キャスト
主要なキャストについては、映画公式サイトの「キャスト」を参照[10]。
中五島中学校教師
中五島中学校合唱部
- 仲村ナズナ - 恒松祐里
- 桑原サトル - 下田翔大
- 関谷チナツ - 葵わかな
- 辻エリ - 柴田杏花
- 長谷川コトミ - 山口まゆ
- 向井ケイスケ - 佐野勇斗
- 三田村リク - 室井響
- 横峰カオル - 朝倉ふゆな
- 福永ヨウコ - 植田日向
- 神木マイ - 高橋奈々
- 篠崎シュウヘイ - 狩野見恭兵
- 菊池ジュンヤ - 三浦翔哉
仲村家
桑原家
その他
声のみの出演
スタッフ
- 監督:三木孝浩
- 原作:中田永一『くちびるに歌を』
- 脚本:持地佑季子、登米裕一
- 撮影:中山光一
- 照明:松本憲人
- 録音:矢野正人
- 美術:花谷秀文
- 装飾:西尾共未
- 編集:伊藤潤一
- 音楽:松谷卓
- 主題歌:アンジェラ・アキ「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」(EPICレコードジャパン)
- スクリプター:古保美友紀
- VFXスーパーバイザー:鎌田康介
- 音響効果:岡瀬晶彦
- スタイリスト:望月恵
- ヘアメイク:内城千栄子
- 制作担当:松村隆司
- 助監督:清水勇気
- 協力:長崎県フィルムコミッション(JFC)、五島市、新上五島町、長崎県教育委員会、長崎市教育委員会、五島市教育委員会、日本自閉症協会
- 特別協力:九州商船、キャンパス、ソラシドエア
- 後援:全日本合唱連盟
- 制作プロダクション・配給:アスミック・エース
- 製作:「くちびるに歌を」製作委員会(アスミック・エース、ポニーキャニオン、小学館、電通、レプロエンタテインメント、巖本金属、GyaO!、KDDI)
公開
ロケ地の福江島での先行上映や、さぬき映画祭、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭での招待上映がされたのち、2015年2月28日に新宿ピカデリー他全国260スクリーンで封切られ、週末興行成績は観客動員は7万2900人(4位)、興業収入は8303万3900円(5位)を記録した[12]。10代から70代までの幅広い年代が鑑賞している[13]。
評価
全国公開前に行われた試写会では鑑賞者の95パーセントが感動したと回答した[6]。ぴあ映画の調査による2月27日、28日に公開された新作映画を対象とした満足度調査では13作品中1位を獲得した[13]。
受賞
- ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015 - ゆうばりファンタランド大賞(観客賞)イベント賞[14]
- 第8回東京新聞映画賞(2016年)[15]
関連商品
- くちびるに歌をオリジナルサウンドトラック(2015年2月25日、ERJ、ESCL-4381)
- 映像ソフト(2015年9月2日、ポニーキャニオン[16])
- Blu-ray 愛蔵版【初回限定生産 2枚組】
- DVD 愛蔵版【初回限定生産 2枚組】
- DVD 通常版
脚注
- ↑ 2.0 2.1 アンジェラ・アキの名曲がモチーフ!新垣結衣主演で「くちびるに歌を」映画化(シネマトゥデイ、2014年7月8日)
- ↑ 『キネマ旬報』2016年3月下旬 映画業界決算特別号、83頁。
- ↑ 新垣結衣が美人音楽教師に!主演&初の教師役で映画『くちびるに歌を』製作決定(MovieWalker、2014年7月8日)
- ↑ パンフレット
- ↑ 6.0 6.1 6.2 “特集『くちびるに歌を』 観客が見た/聴いた“感動の合唱””. ぴあ映画生活 (2015年2月20日). . 2015閲覧.
- ↑ “新垣結衣主演作から若手7女優によるユニット結成! サビはトイレの中で誕生”. マイナビニュース (マイナビ). (2015年3月24日) . 2015閲覧.
- ↑ 映画『くちびるに歌を』番外編 可愛すぎる合唱部!その名もLips♪ - YouTube (アスミック・エース)
- ↑ “映画「くちびるに歌を」から誕生! 恒松祐里・葵わかな・柴田杏花らが参加する可愛すぎる合唱部「Lips!」がついに配信デビュー!”. GirlsNews (レゾリューション). (2015年6月16日) . 2015閲覧.
- ↑ キャスト 映画『くちびるに歌を』公式サイト
- ↑ 11.0 11.1 “鈴木亮平&前川清、ガッキー主演「くちびるに歌を」に“まさかの”声だけ出演”. 映画.com (2015年1月5日). . 2015閲覧.
- ↑ “【国内映画ランキング】「アメリカン・スナイパー」V2、「くちびるに歌を」4位、「幕が上がる」は5位”. 映画.com (2015年3月2日). . 2015閲覧.
- ↑ 13.0 13.1 “新垣結衣主演の『くちびるに歌を』に高い満足度!”. ぴあ映画生活. ぴあ (2015年3月2日). . 2015閲覧.
- ↑ “新垣結衣主演×アンジェラ・アキ主題歌×三木孝浩監督『くちびるに歌を』ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で受賞”. billboardjapan (2015年2月25日). . 2015閲覧.
- ↑ “「くちびるに歌を」が第八回東京新聞映画賞受賞!三木孝浩監督が喜び語る”. 映画.com (2016年3月2日). . 2016閲覧.
- ↑ “主演・新垣結衣 監督・三木孝浩で贈る感動作、映画「くちびるに歌を」がBD&DVD化”. Pony Canyon News MOVIE. ポニーキャニオン (2015年6月12日). . 2015閲覧.
外部リンク
- くちびるに歌を 小学館特設サイト
- 映画『くちびるに歌を』公式サイト - 映画予告篇 (YouTube) が視聴可能
- 映画『くちびるに歌を』特設サイト